カシャン…
軽い音が鳴り、俺の手にわずかな衝撃が走る。目の前で寝ていた一人暮らしの老婆は、時を同じくして息を引き取った。
「レン。上出来だ。次に行くぞ。」
「ああ、ソル。」
俺はマントを振り昨晩泊まった家から、霧のように姿を消した。
次に俺が現れたのは、都会の大通り…の脇にある路地だった。
「俺はさっきの仕事の報告をしてくる。お前は俺が帰ってくるまでに次の獲物を見つけておけ。普段通りだ。執行は二日後の午前五時過ぎ…」
「ずいぶん間が開くじゃないか。」
淡々と話を進めるソルに俺は文句を言う。二日後といっても今は昼過ぎ。俺は退屈が嫌いだ。ノルマを早く済ませ非番になりたい。嫌なものはとにかく早く済ませたいのだ。
「フン。俺の知ったことか。神の決めることだ。じゃあな!」
冷たくそう言い放つとソルは、すうっと消えてしまった。
「はぁ~あ!」
軽くため息を吐く。退屈だ。いつもの通りということは、ターゲットはこの近辺半径2キロ以内にいるのだろう。力を使えば半日もかからずに見つかってしまうだろう。そんなに早く死を意識することはない。
退屈だ。退屈ついでに読者の皆様に自己紹介でもしておこうか。俺は死神のレン=ナイトだ。おっと、そんなに硬くなる必要はない。おれ自身には直接命を奪うような力はない。それは鎌のソルの仕事だ。本名はソルジャー=デスとか言うらしいが、俺は呼びやすいからソルと呼んでいる。俺達は消え逝くもの…死者の魂を回収する仕事を偉大なる神から数千年前に仰せつかり、今もそれに従事している。先ほど回収した老婆の魂は今ソルが神の元へと運んでいる。仕事を果たすために潜んでいた俺を、行き倒れと勘違いして宿を貸してくれた親切な老婆だったが、彼女はあの時死ぬ運命だったのだ。仕方がない。私情によって殺してはならない者を殺したり、殺すべきものを殺さなかったりしてはならない。これが死神界の掟なのだ。
さてと、話すのも飽きてきたな。たまには能力を使わずにターゲットを見つけるのも面白いかもしれない。そう思い俺は街へと繰り出した。俺は死が迫る者がどちらにいるのか分かる。それを能力と呼んでいるのだが、それを使わないとなると多少骨の折れる作業になりそうだ。なぜかというと…大通りは人が多い。そして俺の姿は、死が迫ったものにしか見えないのだ。つまり、歩きにくくて仕方がない。俺は人を掻き分け、泳ぐように人ごみを西へと進んでいった。夕日が眩しい。俺はすれ違う人々をじっと一人一人確認していった。ああ、確認というのは俺のもう1つの能力のことだ。俺は死の迫るターゲットのいる方向が分かるだけでなく、向き合った人間の寿命を見ることが出来るのだ。さすがにどちらの能力も使わないとなるといつまでたってもターゲットに近づけないので、この命の期限を見る力は使っている。しかし一向にここ2、3日で尽きようとしている。命は見つからない。なんだかこうして地道に探すのも飽きてきたし、いつも通り能力を使って探そうかなと考え出したとき、俺はちょうど病院の前に来ていた。病院なら死にそうな人なんて山ほどいるだろうと思い中に入ろうとしたとき、病院の前に豪華な馬車が止まった。
「オレンジゴールド伯爵邸から参りました。先生急患です!!」
馬車の主が病院に向かい大声を上げると、返事のあと30秒ほどの間をおいて白衣の男性と看護師が掛けて来た。
「出してくれ!」
白衣の男性が言うと馬車は荒々しく東に向けて出発した。
ソルに言われた執行までには、まだ丸一日以上ある。少し寄り道しても罰は当たらないだろう。俺はそう思うと滑るように馬車の後を追った。俺の羽織っているマントは俺を風へと変え、馬車に追いつくのに苦労はなかった。
馬車は豪勢な屋敷へと入っていった。俺を含めた四人は慌ただしく屋敷へと入り、一つの豪華な部屋の前にいる。先ほど馬車を操っていた男が前へ出る。
トントン
「旦那様、奥様、お嬢様。お医者様を連れてまいりました。」
そして扉が開かれた。
オレンジゴールドのナイト―鎌を持てない死神の話①―
白黒Pさんの鎌を持てない死神の話(http://www.nicovideo.jp/watch/nm6630292)を勝手に小説にさせていただきました。
探したのですがイマイチ白黒Pさんのページが見つからず、この曲が好きと言う気持ちが先行して(まだエピローグ段階ですが…)書いてしまいました。不都合あればいってください。
そして、JOYSOUNDのカラオケ入曲決定おめでとうございます。
続きはこちら(http://piapro.jp/t/0Hle)
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