タグ「KAITO」のついた投稿作品一覧(7)
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翌日の朝一番、時之助が寺へやって来た。何やら興奮気味である。
「陽春さま!國八の正体が知れたかもしれやせん!」
「ほう、何故だ」
「昨夜、俺ァなんとお庭番に釘を刺されたんですよ!國八のことを嗅ぎ回るなと!陽春さま、國八ってなァ、もしや公方様の…!」
「末娘だそうな」
「…へ?」
僧衣の両袖にそれぞれ...カンタレラ その7
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「何と申した…?」
駒乃屋の一室では、陽春が凍りついていた。
請われて、國八がもう一度その名を口にする。
「徳川家斉様。わっちの父親は、あなた様のお父上でありんす。…九三郎さま」
まさか。
そんなことがあるのだろうか。
父・家斉には子が多い。ゆえに陽春には、顔も見たことのない兄や姉や妹がいた。
國八...カンタレラ その6
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近頃、花魁は御機嫌である。
鼻唄を歌う姉女郎を見ながら、なつめは折り紙で遊んでいる。
國八の客である陽春が買ってきてくれたものだ。
「おや、可愛くできたじゃないか」
千代紙の蛙をひょいと摘まんで、國八は禿を誉めた。
「陽春さまが御手本を買ってきてくだっしたゆえ、わっちゃァ何でも作れんす。花魁、何でも...カンタレラ その5
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六日後、陽春は再び千代田屋を訪れた。
裏を返すためである。
この日も、國八はなつめだけを連れて現れた。
赤、瑠璃色の二枚の小袖に褐返の本帯を締め、大菊紋様をあしらった飾り帯の地色は金赤である。打掛は上から鉄紺、緋色、甚三紅で、鉄紺地には白糸で小菊が散っていた。
初会と違い國八が傍へ来て酌をしてくれ、...カンタレラ その4
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どこからか、三味線の音が聞こえてくる。夜見世の開始を告げる見世清掻である。
江戸随一の花街は、今日も妖しげに活気づき始めていた。
弘龍寺のある向島から吉原までは、大川橋を渡ってすぐである。
暮れ六つを少し過ぎ、大門前で落ち合った陽春と時之助は、吉原の大通り・仲の町通りを水道尻の方へと歩いていた。
「...カンタレラ その3
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「酷いじゃあありませんか陽春さま!ご自分だけお逃げになって!」
数刻の後、陽春は膳を前に時之助と向かい合っていた。
今日の昼餉は、時之助も陽春の部屋にて相伴している。
「まあ、そうかっかするな。雨に降られたとでも思って」
「雨に降られて、膝から下の感覚がなくなるんですかい」
平生は何くれと忙しく走り...カンタレラ その2
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梅鼠色の空の下、猩々緋の大傘が開く。
「花魁、そろそろ参りんすか」
「あァ、行こうかねえ。なつめ、文は持ったかえ?」
「確かにここにありんす」
「それじゃ、行くとしよう」
一人の遊女が、本漆の三枚歯下駄を踏み出した。
―カンタレラ―
時は寛政、徳川幕府第十一代将軍、家斉の治世。
江戸は向島、日蓮宗弘...カンタレラ その1