タグ「KAITO」のついた投稿作品一覧(10)
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店に戻ったるかは裁縫箱を取り出しました。
「それにしても貴方も酷い人ね
私を見た途端『初めまして。こんにちは』だなんて
まるで私達他人みたいじゃないの。嫌な人」
るかは笑いながら言うと
最後にあの裁縫鋏を取り出しまして――…
「『だけど仕事は頑張らなきゃ』」
あの口癖を言いました。
「あら貴方、『こ...円尾坂の仕立屋 終幕
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るかに肩を叩かれた男は振り向きました。
そして――――
『 』
次の日の朝、
るかはいつもの様にお店を開ける準備をしていました。
今日は町中が酷く大騒ぎしています。
「今日は随分騒がしいわね。何かあったの?」
るかが近所の人に聞きました。
「あれ?!るかちゃん知らないの!?
ま...円尾坂の仕立屋 第六幕 -青い襟巻の男 弐-
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「…さぁ、ようやく仕事も一段落したわ……
私が忙しくてあの人が会いに来てくれないのなら
私の方から会いに行きましょう…」
るかは笑いながら裁縫箱を片付けると
仕度に取り掛かりました。
「あの人驚くかしら…今の私を見たら何て言うかしら…
『もう浮気なんかしないよ』って言うかもね…フフフ」
るかは尚も笑...円尾坂の仕立屋 第五幕 -青い襟巻の男-
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その次の日、るかは新しい反物を買いに行きました。
町は昨日よりも俄かに騒ぎ立てています。
「またなにか事件ですか?」
るかは反物屋の主人に聞きました。
「あぁ…次は若い娘が殺されてな。…今度は帯が無くなってたそうだ」
「まぁ。殺した上に着物や帯を盗むなんて嫌なものね」
「あぁ全くだ。るかさんも気ィ付...円尾坂の仕立屋 第四幕 -黄色い簪の少女-
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その日の昼過ぎ、るかは仕立てに使う縫い糸がなくなったので隣町に買いに出かけました。
町はいたって普段と変わらない穏やかで平和な日常です。
「いらっしゃいるかちゃん」
「こんにちは。いつもの糸を下さいな」
「あぁ。待っとくれ……しかしるかちゃんもわざわざこんな遠くまで買いに来なくても近所じゃあもっとい...円尾坂の仕立屋 第二幕 -赤い着物の女-
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次の日、るかは頼まれていた仕立物を届けに町へ出掛けました。
町はいつもと違い何やら不穏な空気に包まれています。
「こんにちは。何かあったんですか?」
るかは届け先の人に尋ねました。
「ああるかちゃんは知らないのか…実は昨日この近くで人が殺されたんだよ」
「まぁ人が…!」
「まぁな…私も噂で聞いたんだ...円尾坂の仕立屋 第三幕 -緑の帯の娘-
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がくぽは小さな温室の中にいた。
白い鳥籠のような形のその中ではたくさんの花々が咲き乱れており中は咲きつくしたらしいどこか甘ったるい香りが立ち込めている。
片隅にただ一つだけ置かれた白いベンチに腰掛けて周りを眺めていると近くの花に爪先が触れた。柔らかな花びらは爪だけで触れていても破れてしまいそうだ。
...バタフライ-がくぽSide-
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昔、マスターが僕にこう言った…
『人間(ひと)は皆自分色の宝石を持っているんだ…宝箱の様に自分だけの部屋を自分色の宝石で飾っているんだよ』
『素敵ですねマスター…その宝石は僕にもあるんでしょうか?』
『さぁ、どうだろうね……』
Jewel~僕だけの宝石~
「マスター。その曲前言っていた新しい曲ですか...Jewel~僕だけの宝石~1
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僕は魅入ったように宝石図鑑を眺めていると……
ふと一枚のページに目が止まった。
そのページに載っていた宝石は――
「『ダイヤモンド』…」
「あぁ…これは世界で一番美しい宝石だよ。」
白でも銀色でもない色のそれは、
図鑑に載っているあらゆる宝石達の中で一際輝いている。
「――とても綺麗ですマスター…」...Jewel~僕だけの宝石~3
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「でも僕はまだまだですよ…
マスターの方が僕より断然上手いです。」
「お世辞が過ぎだよカイト」
はは…と笑いながらマスターはギターを引き続ける。
「そういえば昔、音楽の先生がこんな事を言っていたな」
「『先生』?」
「昔通っていた音楽学校の先生だよ。その先生が言うには『人には誰にも自分だけの宝石を持...Jewel~僕だけの宝石~2