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18件
君がいなくなったこの世界で
暗闇の中で泣き続きた
僕がおいていかれた理由は
きっと泣いてばかりいたからだ
隠し事をしてました
泣いてばかりいてました
やっと気づいた僕の答えは
君が生きてると信じる事
ある日聞いた話は
世界の針を抜いたら...The_MOTHER.
◆流、今年から受験生
3. 愚かなる願い
一日に少しずつしか進んでいなかった塀も、新しいが魔法が完成してからは一気に進んだ。自分の身長ぶんしか積み上げられなかったレンガも、倍以上の高さにまで伸ばすことができた。
そうして完成したのは、扉などない、高い高い塀。
塀が完成してからも、ミクは庭の改良のために昼間は基本的に...The Beast. 3. 愚かなる願い
ことこ
2. 繰り返される日々と
満月の晩。己の醜さと引き換えに手に入れたのは、美しい姿と永遠にも等しき生。
そして彼女は、「人」を捨てた。
「……今日のは、どうかな」
ぽつりと呟いて、バケツに入れた土を見る。昨晩、調合室に引きこもって作製し、明け方にやっと完成した赤茶色の土は、昨日までとはがらりと配...The Beast. 2. 繰り返される日々と
ことこ
1. お伽噺を求めて
『 』
耳の奥で反響する声。それは、何度も何度も言われ続けてきた4文字の言葉。
どこからともなく聞こえた声を無視しながら、天井まで至る巨大な本棚から一冊の本を抜き出して、たっぷりと被っていた埃を払った。舞い上がったそれに咳き込んで、思わず涙目になる。
本棚に立てかけ...The Beast. 1. お伽噺を求めて
ことこ
時は流れる。
国が滅び新たな治世が始まりそして又滅び。人々が愚かな歴史を繰り返す中、森のはずれに、ずっと変わらずそびえたつ英知の塔があった。その塔はかつて賢者たちが暮らしていた塔。書物が沢山詰め込まれた塔。
そして手が届く届かないにかかわらず、そこに宿る英知はあまりにも難しく、読み解くにあまり...愚者の塔・14~The Beast.~
sunny_m
続けざまに咳をして、そして疲れたというようにため息をこぼして。そして、静かにアヤは目を閉じた。
アヤの寝付きの良さも小さいころからずっと変わりがなかったから、だから一瞬、獣は分からなくなった。徐々に色あせていく皮膚、呼吸をしていない唇。いくら握り返しても応えてくれない、力の抜けた手。
どうやっ...愚者の塔・13~The Beast.~
sunny_m
それは寒い朝だった。
普段目を覚ますよりも早い時間、獣は毛布をひとかかえ持って、一階と二階をつなぐ階段踊り場にある、大きな暖炉の前に仏頂面で向かった。暖炉の火は既に消えかけていて、黒く炭化した薪がくすぶるように微かな赤を宿していた。その前で、この場所の主である老人が丸まって眠っている。
「おい。...愚者の塔・12~The Beast.~
sunny_m
アヤがこの塔に戻った後。かつてアヤが過ごしていた寝床がそのままである事に喜び、結局ちゃんと育てる事が出来ずに植木鉢と土だけが残されている植物の残骸に苦笑し、獣がほとんど手をつけずに箱に入れてしまいこんでいた未知の兵器の設計図を見つけて。アヤは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。」
そう言ってアヤは...愚者の塔・11~The Beast.~
sunny_m
こんこんと何かを叩く音が聞こえて、古びたソファの上で本を読んでいた獣は顔を上げた。何の音だろうか。と獣が首をかしげながら周囲を見回していると、再びこんこんと、強く急くようなノックが響いてきた。
音のした方、窓の外。獣がそちらに視線をやると、背の高い男がいた。
塔の最上階にあるこの部屋の窓を外か...愚者の塔・10~The Beast.~
sunny_m
朝、獣が自室の書斎に戻ってみるとアヤはまだそこにいた。古びたソファの上に陣取ったアヤは、部屋の中に入ってきた獣に、おはよう。と言いながら睨みつけてきた。どうやら一睡もしていないようで、疲れた色をにじませたその眼の下は黒く隈が浮かびあがっている。
「出ていかなかったのか。」
未だにこの塔に残っている...愚者の塔・9~The Beast.~
sunny_m
アヤの与えてくれた情報で、文献の解読は急速に進んで行った。獣はアヤから教わった言葉を記録し、この国の言葉にして纏めていく。
物事は滞りなく進んで行き、アヤの存在はこの塔の中で当たり前のものとして馴染んだ。
アヤはもう窓の向こうで獣が鍵を開けるのを待たなくて良かった。獣はもう鍵を閉めなかったから...愚者の塔・8~The Beast.~
sunny_m
古い文献に描かれていた、一筆書きの、シンプルな形の文字は「アイ」だとアヤは言った。
「アイ?」
「そう。愛。」
そうアヤは言い、ああ。気がついたように声を上げた。
「この国には愛と同じ意味の言葉が無いな。」
そう呟いて、アヤは思案するように中空を睨みつけた。アイを説明しようと、思考を巡らせているよ...愚者の塔・7~The Beast.~
sunny_m
客が帰った後、獣が書斎に戻って例の文献を紐解いていると、しばらくしてアヤが数冊の本を抱えて部屋の中に入ってきた。
「あんたが言ってたのって、どれ?なんか似てるのがあったから、どれだか分かんなくて全部持ってきたよ。」
そう文句を言いながら本を抱えるアヤに、その辺りに置いておいてくれ。と文献に視線を落...愚者の塔・6~The Beast.~
sunny_m
その日は久しぶりにこの塔へ客がやってきた。
客がやってきた。と言っても塔の中に招き入れて、もてなしたわけではなかった。この王国の支配者の使いの者が塔の扉の前に立ち用件を言い、獣は二階のテラスに出てそれを聞くだけだった。人との、とりわけ有知識層との接触は出来る限り避けたかった。力を持つ人が獣に近づ...愚者の塔・5~The Beast.~
sunny_m
古いソファの上、上体を積み上げたクッションに預けただらしのない恰好で、一字一字をゆっくりと拾い上げるようにアヤが本を読んでいた。飲み物を取りに来たついでに獣はその傍に立ち寄って、ちらりとアヤが読んでいる本に視線を落とす。
「その話、全部アリスの夢だったんだ。白ウサギの穴なんかに落ちてなんかいない。...愚者の塔・4~The Beast.~
sunny_m
少年はアヤと言った。生まれは遠い国で、物心ついた時から旅をして生きてきたのだと言う。旅の資金が底をついたのでこの国で働いていたのだが、心ないものによって襲われたのだと言う。
「何度も危ない目にあってはいたけれど。今回は本当にやばいとおもったよ。腹が減って疲れ切っていたところで襲われたから、やり返す...愚者の塔・3~The Beast.~
sunny_m
この塔には誰もいない。勝手に物音など聞こえるわけがない。
いぶかしげに眉を寄せた獣は、ふと塔の壁に穴が開いていた事を思い出し、風でも吹きこんできたか。と眉間のしわを更に深くした。
閉じられた塔の中では天気などほとんど気にならないが、外は雨。はめ込まれたガラス窓を叩く大粒の水滴に、やはり布でふさ...愚者の塔・2~The Beast.~
sunny_m
―嘘です。本当は傷つきたくなかったんです。
人に嫌気がさしたその者は獣になる事に決めた。人は醜い。自分の愚かさに気がつかない。歴史を紐解けば、今おこなっている事がいかにばかげている事なのか簡単に理解できるのに、それでも、何度も何度も何度も、繰り返す。
人とは、醜く愚かで脆弱な生き物。
そんな...愚者の塔・1~The Beast.~
sunny_m