欠陥品の投稿作品一覧
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外からは暖かな日の光が差し込み、その部屋にはマスターが本をめくる音だけが響いていた。紙に並ぶ文字を追う目をふと下に向ければ、膝の上には双子の寝顔がある。右にはリン、左にはレンの頭が乗せられ、静かな寝息をたてていた。
「『春眠暁を覚えず』、って所か。そろそろ春の季節かな」
先刻まで話をしていていつの間...背中合わせ
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「テトさん」
ソファーに座りながら充足感の余韻に浸るテトに、マスターが小さな紙袋を差し出した。それを「ありがとうございます」と言いながら、テトは笑顔で受け取る。
「開けてみてもいいですか?」
「うん、どうぞ」
促されたテトが取り出したのは、銀色のネックレスだった。小さな音符を形どったアクセサリに、チ...嘘偽りなく
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腕を伸ばし差し出したのは
それなりに綺麗に包んだ袋
黄色の水玉模様の小さな袋に
結んだリボンは君の好きな色
「先月のお返し」と
つい気恥ずかしさから
素っ気ない言い方になる
それでも君は笑って
「ありがとう」と言う
とても嬉しそうな表情で...気持ちを込めて
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いつもと変わらない朝―少なくとも、寝起き直後のマスターはそう思っていた。
「………なに、あれ?」
マスターの疑問に、返事をする者はいなかった…いや、出来なかった。テトはただ苦笑を浮かべ、リンは嬉々とした眼差しでレンに目を向けていた。当のレンはというと、部屋の隅で丸くなって落ち込んでいる様だった。頭に...たまには甘えてみて
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ベランダに座り晴れ空を見上げながら、マスターは煙を吐く。何か考えてる訳でもなく、ぼーっとした様子でただ空を眺めていた。
「マスター、ここにいたんですか」
声のした方に振り向けば、そこにはテトが立っていた。どうやら、マスターである彼を探していたらしい。
「…何か用?」
「また煙草吸ってますね」
マスタ...照れ隠し?
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白が降り注ぐ景色、すべてがただ一色に染まってる。地面も空も白に包まれ、音さえも吸い込まれた様に世界は静寂だった。
その中をキシキシと足元の雪を踏みしめ、白い息を空に吐きながら歩みを進める人物がいた。黄色の髪に落ちた雪を気にする様子もなく、首に巻かれた青いマフラーを大事そうに着込んでいる。
「………」...白しかない世界で
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心が辛い
この気持ちを抱える事が
胸が苦しい
想いに押し潰されそうで
どうしてだろう
きっかけなんて些細で
何故なんだろう
初めは考えもしなかった
僕にとって大切な
君という一人の存在が...独白
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おかしいのは分かってる
今日は自分も誕生日なのに
でも変に思われても
それでも祝いたかった
君と一緒に生まれた日を
君が生まれてきたこの日を
マスターやテトさんには
たくさん祝って貰ったけど
僕は君の誕生日を
まだ祝ってないから...たとえ、同じ日でも
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「はぁ…寒いですね」
「明日は積もるらしいよ」
しんしんと静かに雪が降る中、マスターとテトは白くなった道を並んで歩いていた。
そこに人気はなく、雪を踏みしめる音がやけに響いて聞こえる。
「そうですか…手袋、持ってくるべきでした」
「だね…なんでつけてこなかったの?」
手を擦り合わせながら、テトは後悔...寒さの中の温もり
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炬燵で暖を取りつつ、レンは上に置かれた篭から蜜柑を一つ手に取る。
この炬燵はここ最近、急に寒さが強くなった為にマスターが引っ張り出した物だ。
「今年は積もるかもな」なんて言ってのを思い出しながらも、彼としてはどっちでも興味はないらしい。
「レ~ン~…」
そう名前を呼ばれて視線を右に向ければ、足どころ...今、この時だけ
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自宅の前で顔に浮かぶ汗を拭い、走った為に乱れたスーツと荒くなった息を整えた。
一度だけ深呼吸して、目の前の扉のドアノブを掴む。
扉を開いて自宅の中に入って、レンは帰宅を告げた。
「ただいま」
「お帰りなさい、レン!」
すると間を置かずに、部屋からリンが姿を現した。
小走りで駆け寄り、レンの帰宅を笑顔...【新婚みね】一秒でも長く、㎜でも近く【音坂さん】
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オレンジ色の光が街並みを照らし、遠くでは烏の鳴き声が響き渡っていた。
伸びる影を背に、テトとマスターは並んで歩を進める。
「結構、遅くなっちゃったね」
「マスターが、物一つ買うのに悩みすぎなんです」
そう言って、テトは呆れた顔をマスターに向けた。
彼女の両手には、大きめのビニール袋が一つずつある。
...【飴玉】仕返し【後日談】
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ベッドに横たわる君に
僕は笑顔で覆い被さる
羞恥心から顔をそらせば
引き戻して口付けをする
リビングでした時よりも
甘く深く濃厚な口付けを
舌で口の中を好きに弄る度に
甘い吐息と声が静かに漏れる
ひとしきり楽しんだ後に口を離すと
赤い顔で瞳に涙を浮かべる君がいて...【飴玉】もっと見たくて【予告?】
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一緒に座りながら感じる
君の隣に居られる幸せを
横顔を見ながら感謝する
僕の隣に居てくれる君に
視線に気付いて僕に向き
君は笑顔を見せてくれた
それが余りにも可愛くて
僕は優しく口付けをする
君は恥ずかしそうな顔をして
その行為を受け入れてくれた...【新婚みね】僕は君が。【音坂さん】
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「ただいま…」
疲れの混じった声で帰宅を告げるが、返事が返ってくることはなかった。
両親は共働きの為、家にいないのは当然である。
しかし先に帰ってる筈の人物からの返事がない事に、レンにとって予想外であった。
「リン、いないのか?」
先程より声量を大きくして双子の姉を呼ぶが、やはり返事はない。
とりあ...【学パロ】どうして君を【鏡音】
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ソファーの上で寝そべりながら、ちびクオは携帯ゲーム機のボタンを叩いていた。
彼一人しかいない広いリビングに、ゲーム機から発せられる音が鳴り響いている。
真剣な面持ちで画面を見ながら、指を駆使して操作する。
その様子から、かなり悪戦苦闘しているようだった。
「えぇっ!?今の当たるの!!?早く回復しない...【亜種】寝てるときは【ミクオ兄弟】
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「Trick or treat!」
「………………」
ソファーに座ってテレビを見ていたレンは、いきなりの事に言葉を発せずにいた。
「反応薄いなぁ…」
「いや…、やぶからぼうに言われても困るから」
膨れっ面なリンに対し、レンは冷静に意見を述べる。
そんなレンに、リンは説明するように言った。
「今日はハ...Trick and treat ―お菓子も悪戯も―
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ベランダに干された洗濯物が風に吹かれ、空からは暖かい陽射しが降り注いでいた。
そんな静かな空間に、台所から聞こえてくる物音がやけに響くように聞こえる。
「ん~…うん、バッチリ♪」
味見を終えたリンは、鍋にかけていた火を止めてそれに蓋をした。
使った道具類は既に洗われているため、周りの汚れを拭き取るだ...【新婚みね】待つ寂しさ【音坂さん】
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「テ~トさん♪」
そう言ってリンが、取り込んだ洗濯物を畳むテトに呼びかける。
テトは手を止めて、リンの方に目を向けた。
目の前にいるリンの顔には満面の笑顔があって、後ろにはレンもいた。
「どうしたの?二人して」
「えっとね………」
尋ねれば、リンは笑顔のまま言葉を濁す。
後ろで呆れた様子のレンを窺い...「おめでとう」と伝えたかったので
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少しばかり広い部屋に、時を刻む時計の音だけが鳴り響く。
時刻は深夜の一時前、日付が変わってもうすぐ一時間が経とうとしている。
そんな時間にテトは何をするでもなく、ただ帰り人を待っていた。
すると外から小さな足音が聞こえきて、それが段々と近付いてくる。
それがドアの前で止み、鍵を解く音が響いた。
そし...家族の形
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暗闇が支配する空間
そこにあるのは
ガラスの壁が隔てるように
座り込んで涙を流す少女
と
壁を背に立ち尽くす少年
想いだけがすれ違って...A wish and thought -③- ~重なる想い~
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気が付けばそこにいて
見慣れた空間を見回して
ゆっくりと歩を進める
歩く先には光はなく
ただただ黒い世界
そして行き着く先には
道を遮るガラスの壁
そして僕は
背中を預ける...A wish and thought -②- ~伝えられない~
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静かな休日の昼下がりに
響き渡る君の優しい歌声
歌うのは好きじゃない
君はそう言ってたけど
歌っている様子からは
その言葉が嘘に思えた
褒めると機嫌を損ねて
歌うのを止めてしまう
だから何も言わずに
歌に耳をかたむける...君の歌
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(暇だなぁ…)
そう思いながら、レンはテレビを眺めていた。
内容は頭に入っていないらしく、ボーッとした表情からそれが伺える。
現在レンは双子の姉と共に、留守番の最中だった。
当の家主であるマスターは、年長のテトと一緒に買い物に出掛けている。
時計を目にやっても過ぎた時間はほんの30分、帰ってくるのは...飴玉より甘いモノ
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目を開いたそこは
真っ黒な世界
深い深い闇
上も下も
右も左も
判別できない
黒しか存在しない空間...A wish and thought -①- ~伝えたい~
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部屋には窓から暖かい陽射しが差し込み、本をめくる音だけが静かに響く。
友人から借りた本が思いの外面白く、ミクオは時間があればそれを読書に費やしていた。
「文字を読むのも悪くないな」と考えながら、ページを進める。
そんな静かな一時を楽しむミクオであったが、それは長くは続かなかった。
―ドタドタドタドタ...【亜種】喧嘩をしても【ミクオ兄弟】
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休憩室にあてがわれたベンチに、レンは腰を落とした。
先程目の前の自販機で買った缶コーヒーを開け、喉に流し込む。
時計を見れば、時間は三時十五分を指していた。
もう少しで仕事が終わると考えると、自然と頬が緩んだ。
「だらしない顔だなぁ」
その声の方にレンが顔を向ければ、青い髪の青年が笑いながら立ってい...【新婚みね】やる気の源【音坂さん】
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部屋の隅でふてくされる君
膝を抱えて文句をつぶやく
普段ならウザったく思うが
原因が自分自身にあるため
ほっとく訳にもいかなくて
「ごめん忘れてた」なんて
嘘に決まっているだろう?
ただそんな君の反応が
なんだか可愛く思えて
つい意地悪したくなる...エリンギウム ~花に気持ちを添えて~
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月もない夜の景色を眺めながら、暗い空間にマスターは紫煙を吐く。
暫くそうやっていると煙草の明かりに誘われたのか、小さな光が揺れながこちらに飛んできた。
指を軽く差し出せば、光は指先に止まった。
「こんな街中で、見れるとは思わなかった…」
そう小さく呟いて煙草をくわえ、再び煙を吐く。
「マスター、何し...生きてるいう事
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レンは頭を抱え、悩んでいた。譜面と呼ぶには粗末な、手書きで紙に並べられた音符や記号を見ながら。
それは彼のマスターに渡されたものでマスターの新曲―――というより、初めての作品だ。その中で難しい部分があり、レンは中々上手く出来ずに悩んでいた。
「♪~、♪…なんか違うなぁ」
歌っては唸る、それを何度も繰...いつか、僕に。
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