nIbomの投稿作品一覧
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無題
呼吸をするだけの柔らかなこの機械は
電子が描くカオスの夢を見る
過去も現在も未来も
数多ある複雑な理論体系も
彼女を絡め取ることはできず
触れればほどけてしまう脆い素肌を
温い水溶液に浮かべている
そこには嘘がなく
そこには愛もない...*無題
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るさんちマン
雪はいつからか嫌いになった
昔はあんなにもはしゃいでいたのに
爪先は痛くなるし 傘は重くなるし
電車は止まるし 歩きにくいし
そんな詰まらない大人になってしまったな
街は華やいでクリスマス
私はといえば足早に笑顔をかいくぐって
なんだかなぁって思いながら帰路に着く
これで良かったのかな...*るさんちマン
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そんな、さよなら
お別れの色は
透き通った翡翠の色
壊れそうなひびだらけのグラスに
注ぎ入れたミネラルウォーター
ぐしゃりと崩れて風化する心象
優しい言葉は掌から滑り落ちて消える
瞬く間に走り去る記憶の影
そんな、さよなら
これで良いんだろう?...*そんな、さよなら
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無題
キーの音が泡の弾ける音のように
澱んだ夜に絡まって響く
言葉はバラバラに解体されて
蜘蛛の巣に触れてぶら下がる
僕は此処で生きている
他人事のような真実に身震いする
手を伸ばせば傷付くだけさ
息を吸えば焼け付くだけさ
目隠しの天使は窓辺に憩う...*無題
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無題
書き出しはこうだ
「それならば旅に出よう」
脈絡も無く始まる君の言葉
際限なく君の心を辿る
膨らんだ憂鬱に呑み込まれた世界
片隅のブランコに揺られて
君の残した手紙を読んでいる
「君に会えてよかった」
足跡すら残さずに消えたから...*無題
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無題
眠ったような瞳で
キリキリ痛む心臓で
僕は言葉を反芻してる
無味無臭な感情の交錯
逃げ出したい 忘れたい
ほら、どうせ僕が悪いのさ
季節は還らない
バターみたいに削った命を
「不味い」だなんて僕は言ってさ...*無題
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沈黙したフォルダ
夢から覚めた僕は
両手が空っぽなことに初めて気づいた
もっとたくさん持っていたはずなのに
夢の中に置いてけぼりにしてしまったみたいだ
地下鉄の軋み
割り込むように流れるMP3
君に会いに来たんだ
名前も知らないのに
生臭い都会の風...*沈黙したフォルダ
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退屈なバラード
町はいつの間にか冬模様
曇天は心にまで入り込みBlue
室外機の回る住宅街を抜け
幾度も雨傘の花畑に酔う
町はまるで星の海みたいだ
だから夜の空に人が住んでいる
馬鹿なことを言う愚か者さ
そう言って世界は僕を遠ざけた
夕べの月は立ち去ってしまって...*退屈なバラード
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<古城>
風薫る 深い森の淵
記憶は遠い夢 風化の紡ぐ旋律
彼女はいまだ眠っている
立ち上る陽炎は映し出す
幻影を食らう人々の黄昏
古城に踏み入り一人
少女は踊る 軽い足取り
純白の衣装 透ける肌
誰もいない舞台の上...*古城