イチオシ作品

鋸を挽け 鋸を挽け 首に刃を立てて鋸を挽け
鋸を挽け 鋸を挽け 膝の裏側で鋸を挽け
鋸を挽け 鋸を挽け 股から臍まで鋸を挽け
鋸を挽け 鋸を挽け 血の華愛でましょ鋸を挽け
今日もアパートの水道管を赤黒い水が逆流します
異臭騒ぎの真っただ中で僕の内職は続きます
あー あと一人 あと一人 それだけ殺った...

鋸を挽け

深い意味は無いんですけれども、鋸ってどうしてああも魅力的なんでしょうね。
私が言ってるのは、木工とかに使うような、柄ががっしりと付いてて両手で握り込める奴なんですけれども、
まずあの小さな三角形の刃がずらりと並んでるところなんか、肉食動物の口の中のような力強さですよ。人間は野生の形態を模して技術を進化うんちゃらかんちゃらが信じられるフォルムですよね。それが縦挽き様横挽き様と二セット揃ってる辺りは機能美とも言えましょうし、そもそも刃って存在自体が銀色で角度によって光をぎらりと照り返し眩しく、こちらは造形美としての美でしょうに、それをああも並べると武骨の一言、とても美術品とは呼び難い姿に変じる訳ですが、美しいものを並べて異形を作るっていうのは足し算しすぎた破綻、狂気の科学者が怪物を作る時の王道の計算式の結果ですよね。一つ一つの真っ当な要素を無理に繋げて繋げた結果の本能的嫌悪を呼び起こす姿、刀剣の白刃の様に人を魅了することもなく、ただ一つ切断する目的の為に悍ましささえ孕んでしまった美の集合体の成れの果て、それが鋸なんじゃあないかと、まあ、口から出まかせなんですけれども。

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