「よく、こういうギャラリーには来られるんですか?」
アル夫さんが、にこやかにカイくんに話しかけてくる。
「え?え、ええ...たまに、ですけど」
カイくんは、かぼそい裏声で答えた。
カフェ・ギャラリー「ゆうひ」に居あわせた、お客のカイくんとアル夫さん。
先ほど出ていった、男の子たちと、あわやケンカに...という場面で、
アル夫さんがそれを止めたのだった。
ふだんは仕事で、よく付き合いのあるアル夫さんとカイくん。
でも、アル夫さんは、女装しているカイくんにまったく気付かないようだ。
あろうことか、好意さえ持っているようなフンイキだ。
ギャラリーの絵の作者である、霧雨さんも、
親しげに笑って、近づいてくる。
●また、ぜひお会いしたい...
「あら?もしかして」
その時、部屋のすみから、涼し気な声が聞こえた。
ゆっくりと歩いてきた女の子。カイくんはその子を見てア、と思った。
それは、ユフさんだった。
歩きながら、彼女は、カイくんに目配せをした。
「やっぱり、カイコじゃない。こんなとこで会うなんて、偶然ね」
ユフさんは、彼の前で止まるとそう言った。
「ねえ、もし時間があったら、すぐそばにいい雑貨店があるの。ちょっと、付き合ってくれない?」
「そ、そうね」
カイくんは、そそくさと立ち上がった。彼女は、彼を助けようとしているのだ、と気づいた。
「おや、もうお帰りですか。また、ぜひお会いしたいですね」
アル夫さんは、笑いながら、残念そうに言った。
すると、ギャラリーの奥から、店長のモモちゃんがやってきて言った。
「さあさあ、アル夫さんも霧雨さんも、あちらでお茶でもいかが?」
気のせいか、笑いをこらえているような感じだった。
●お店のマスコットにしようよ
「いやぁ、助かりました。一時はどうなるかと思いました」
ギャラリー「ゆうひ」を出て、少し行った道の曲がり角で、カイくんはユフさんにお礼を言った。
「ヨカッタ。カイさん、ホントかわいらしくみえるから。罪な人ですよ」
いつもクールな彼女だが、おかしそうに微笑んだ。
「こんな女装をさせたのには、私にも責任がありますし」
「いやいや。でも、参りました」
2人は顔を見合わせて笑った。
「でも...ミクさんはこんなこと言ってましたよ」
ユフさんは、思い出したようにつぶやく。
「“アニキの女装は結構、サマになってるから、こんど『しゃべる看板』になってもらおうか”って」
「ええっ」
彼は大声で驚いた。
ユフさんは、こともなげに続ける。
「で、“カイコちゃん”として、お店のマスコットにしようか、って」
「じょ、冗談じゃない」
カイくんは、青くなった。
「俺のウラ声が、流れ続けたら...売上も激減だよ」( ̄Д ̄;;
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ご意見・ご感想
日枝学
ご意見・ご感想
おお助けが入りましたね。これでようやく一安心(笑
こういう、助けるための意図的な演技って良いですね。何か、助ける側と助けられる側が演技を越えたところで以心伝心してる感じが心地よいのかもしれません。仲間内だけで分かる冗談をその仲間相手に言っている時や、冗談で言った皮肉を理解した上でさらに皮肉で返されたときのような何とも言えない気持よさみたいなのと似てるかもしれません。
いつも通り、どこか微笑ましい感じが良いですね。執筆お疲れ様です!
2011/08/01 00:38:14
tamaonion
感想どうも有難うございます。
そうですね!意図的な演技、そういうのは人間と、たまに動物にもあるかもしれませんね。
微妙なニュアンスという感じかな...
ロボットが、こんな行動ができたら、感情に近い機能なのかもしれないですね(笑)
またぜひ感想を聞かせてください!
2011/08/02 22:08:20