「まあ、とりあえず、夕飯にするけど…。何食べる?」
 レンは既に家になじみ始めているグミに聞いた。
「ビーフストロガノフ!」
「無理。」
「えー…。最近はまってるテレビでちょくちょく出てくるんだけど…」
「その話グミヤから聞いた。もうあいつをいじめないであげて」
 例の怪しい子供向け番組だ。
 あの後も時々話題に上がったその番組の中で、『ビーフストロガノフ』という単語はどうやら頻繁に登場するらしく、グミヤはこのごろ、ビーフストロガノフが夢に出てきてうなされることもあるという。
 そういえば、ついこの間のグミとグミヤの喧嘩の中でも、そんなことが議題に上がっていたような気がする。
「ビーフストロガノフ以外で、日本の一般家庭で作られる程度の夕飯で」
「えー…。じゃあ、うーん…、銀鮭の西京漬けで…」
「そんな高級なもの取り揃えとりません。お前の家ではどんな夕飯が出てるんだよ」
 呆れ半分にレンが言うと、グミは少し驚いたように宙を見て、レンに視線を戻すと、
「え、普通にオムライスとか…。ハンバーグとか…」
「じゃあハンバーグにします」
「ちぇー」
 少しふてくされたようにいったグミを無視して、レンはキッチンに立った。
 幸い、ひき肉はある。あとは、ご飯をたいて、付け合せの野菜も冷蔵庫にあるものでどうにかできそうだ。
「ご飯たくのに一時間くらいかかるから」
「はぁい」
 レンは慣れた手つきでコメを軽量し、とぐと、炊飯器に入れた。スイッチを入れて、キッチンから出てくると、レンはグミの大きな荷物を持ち上げてリビングと廊下をつなぐドアの前に立った。
「リンの部屋案内する」

 リンの部屋は女の子らしいピンクやら黄色やらオレンジやらの、リンらしいポップな家具がそろっていた。
 が、どうも散らかっている。友人が来るから、と、急いで片付けはしたらしいが、もともとの汚さがなんとなく分かる。
「いつも片付けろって言ってるんだけど…」
「あはは、あたしの部屋もこんなもんだよー」
 確かに、そんなイメージだな、と思ったが、レンは口に出さないようにした。
 ぬいぐるみとクッションと、漫画、複数の音楽機器に床面積の殆どを占拠され、ベッドと机があるほかには、本棚の一つも見当たらない。だが、家具の一つ一つが可愛らしい。水玉やハート、花柄が沢山。

 荷物を広げて、レンカの部屋に入ったリンは、自分の部屋との差異に驚愕した。
 柔らかいパステルカラーに統一された部屋の中では、ベッドの上には整えられた枕と布団があって、枕元には犬と猫の愛らしいぬいぐるみが置かれている。ベッドの脇には本棚があって、その隣には机がある。部屋に備え付けられた衣装棚には趣味のいい私服が並んでいる。
 まだ引っ越してきて日が浅いためか、家具もそう多くなく、簡素で、シンプルな雰囲気がする。それでも、物が少ない中でも、レンカらしく、しっかりとした感じがする。
「晩飯はどうすんだ?」
 後ろからリントが顔を出した。
「リントくん、お料理できる?」
「豚の餌程度なら…」
「カレーにしよう。私作れる」
 夕飯に関してはどうやら私がしっかりしなきゃいけないみたいだ…。リンは確かに、心の中でそう思ったのだった。

 リントの部屋をそっと覗くと、思いのほか散らかっていて、驚いた。
「勝手に見んな」
 後ろから言われて、また驚く。
「リントくん、部屋汚い」
「煩い。最近はレンカが片付けてくれるから、特に気にしなくなってんだ」
「え、部屋にレンカちゃん入れるの?」
「おう」
 まったく納得が言っていないような顔をしているリンに、リントはなんだよ、といった。
 少なくとも、リンはレンを部屋に入れないし、レンの部屋にリンが入ることも、ここ数年あまり無い。グミはグミヤの部屋に入るというが、勝手に掃除をすることなど無いだろう。
「ベッドの下とか探られたら、どうするの?」
「別にエロ本なんか入ってねぇよ」
 リントはやっとリンの言いたいことを理解したらしく、嫌な顔をして軽くリンの頭をたたいた。
「じゃあ、何処に隠してるの? 本棚の奥?」
「ねぇよ」
 呆れてそういったリントは、リンが反論してこないので、かおをあげた。
「…探すな!」

 グミヤの目の前に、レンカが腰を下ろした。
「晩御飯…」
「ああ、もうそんな時間か。食べたいものとかは?」
「ううん、私、なんでもいいよ」
「俺も別に…」
 二人とも特に食べたいものも無く、冷蔵庫の中をあさったが、特にめぼしいものも無かった。
「あ、卵沢山あるね。じゃあ、私、オムレツ作るよ」
「でも一応客だし…」
「私、いつもやってるからこっちのほうが落ち着くの。気にしないで」
「そうなのか?」
 レンカはこくんと頷いて微笑んだ。
 グミだったら絶対、天地がひっくり返ってもそんなことは言うまい。
「じゃあ、頼むわ」
「うん。少し待っててね」
 にっこりと笑って、レンカはキッチンに立った。
 そういえば、レンカの私服はモコモコとしていて、柔らかい雰囲気のものが多いんだ、とグミヤは思った。リンとレンの尾行をしたときも、グミヤの部屋に押しかけてきたときも、モコモコしていた気がする。
 シルエットが丸みを帯びて、可愛らしい。
 少しして出てきたオムレツは、とても甘かった。間違って佐藤を入れすぎたのかとも思ったが、すぐに違うと気付いた。
 成程、そういえばリントの奴、甘党だったっけ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Some First Loves 22

こんばんは、あけましておめでとうございます、リオンです。
皆様の平和を残念な文才でぶち壊しに参りました(蹴
皆さん三が日はどう過ごしたんでしょうか。
私はほぼ寝正月、昨日は友人と遊んできました。
年賀状とか沢山来ましたかね?
私の所には鏡音から年賀状が…
きてませんすみません。

閲覧数:463

投稿日:2012/01/05 18:03:07

文字数:2,244文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

  • 関連動画0

  • アストリア@生きてるよ

    あけましておめでとうございます今年もよろしくお願いしますお久しぶりですアストリアです!!

    あー、言い切ったー………今読んでなかった18話くらいから一気に読んできました!遊園地楽しかった!!((((((((

    リンちゃんとグミちゃんの部屋汚いのかー………私の部屋もです(((ぇ
    てかリント君ww夕飯ww豚の餌程度てwwそして相変わらず純粋ww

    グミヤもふつーに家事出来るんですか!隠れモテなわけだ!!←
    リンちゃんはイメージ的に出来ない気が……レン君がいつもやってるだけでリンちゃんも作れるのか……?wwwレン君はグミ相手でもリンちゃん相手でも疲れますなぁ……w

    私の所には「りん」って名前の子から届きましたよ!鏡音じゃないよ!(´;ω;`)←

    今夜も頑張ってくださいー!

    2012/01/06 18:31:31

    • リオン

      リオン

      あけましてめでとうございます!今年も一年よろしくおねがいします^^

      遊園地たのしかったですか(笑 それはなによりです!

      あ、多分私の部屋が一番汚いです。本当に足の踏み場も無い。
      リントくんはなぜか作ったばかりのカレーから醗酵臭がする。レンカちゃんがいればエロ本なんて!

      グミヤは小さいころからグミに色々してあげてて、大抵の事はさらっとこなす、天才肌かと。
      リンも得意ではないけど、カレーとおにぎりくらいは作れます。
      レンはリンといる限りつかれません。リンの笑顔で一瞬で疲れが吹き飛ぶからです<レン君マジリン廃!

      あ、友達のリンからなら私もきました。思いっきり2011って書いてありましたが(笑

      今日もがんばります!

      2012/01/06 18:47:43

  • 美里

    美里

    ご意見・ご感想

    あけましておめでとうございます。今年も迷惑にもお邪魔させていただきます。
    脱字が目立つところが今回はあるんですが、そのほうが面白い(意味的に)ので言いませんww

    ビーフストロガノフwwwまたですか。グミヤ君もビーフストロガノフでうなされるとか、ビーフストロガノフに失礼な気がします。
    いつものように砂糖たくさんいれちゃうレンカちゃん可愛い…。一家に一台でもらえませんか…?

    私には姉がいるのですが、姉の友人からあけおめメールで鏡音の画像が届いてました…。もちろんもらいましたが。鏡音から年賀状が来たらいいのに。

    次も楽しみにしています。

    2012/01/05 17:19:12

    • リオン

      リオン

      あけましておめでとうございます^^本年もよろしくお願いします^^
      了解しましたちゃんと直しておきます、恥ずかしいので!(笑

      元はといえばそんなへんな番組をやってるのが悪いです。グミヤは被害者です。被害者。
      グミヤ「これ、砂糖どんだけ使って…。…山のようにあったはずの砂糖がなくなってる…」
      一家に一台レンカちゃん! 我が家にも欲しいですよ!(笑

      そのお友達私も欲しいです(笑 紹介お願いしていいですか?
      鏡音から貰うまでは望まないので、送りたい。鏡音の住所と郵便番号が知りたいです(ぇ

      次もがんばりますね!

      2012/01/05 18:02:18

オススメ作品

クリップボードにコピーしました