●チャリティーイベント大成功
「いやぁ、ほんとにすごかったわね~」
「あの熱気は、なんなんだろうね。ありがたいけど」
イベントの机や椅子をかたずけながら、テトさんとミクちゃんは話し合った。
テトさんの店、「つんでれ」のギャラリーで、チャリティーイベントが盛り上がったのだ。
「ミクさんのファンの男の子たちは、みんなパワーがあるなあ。声を合わせて名前を呼ぶんだもの」
テトさんが目を丸くして言う。
「そうですね。でも、もともとは、女の子向けに考えたキャラクターなんだけどなぁ」
ミクちゃんは、そばに置いた「はっちゅーね」のぬいぐるみを指さして、言った。
「そうなの...あら、ルカさん!」
テトさんは、店の隅に立っている友人のルカさんを見つけた。
「こんちには。すごくにぎやかでしたね」
ルカさんが2人のそばに寄ってきて、言う。
「来てくれてたの?アリガトウ!あ、そうだ、紹介します」
テトさんの紹介で、ルカさんとミクちゃんは互いに挨拶を交わす。
「どうぞよろしくお願いします。...というか、キディディ・ランドで店員さんされてましたよね?」
笑顔で言うルカさんに、ミクちゃんもはずかしそうに答える。
「ええ、ルカさんもよくお店に来てくださってましたよね!お久しぶりです」
●ウチは女子向けで行こうよ
しばらくして。
ミクちゃんと別れて、テトさんとルカさんは、「カフェ・ドナ」にやってきた。
ここは、ルカさんの勤める会社「ハミングス」のお店だ。
2人でお茶を飲みながら、話をしていると、カフェに美里課長が入ってきた。
「あら、テトさん、こんにちは」
「こんにちは」
結局、彼女も2人と同じテーブルについた。
「今日の“つんでれ”のイベント、盛り上がってましたよ」
ルカさんが、上司の美里さんに言う。
「テトさんやデフォ子さんの“ミクドール”もいいけど、“はっちゅーね”のアイテムも、ウチで商品化してみたいと思いました」
「そう、そんなに人気があるの」
美里課長も、興味がありそうだ。
「今日のイベントでは、男の子に人気があったけど。もし作るなら、女の子向けの雑貨を作ってみたらいいかも」
はやくも、ルカさんには、商品の企画が湧いてきたようだ。
「女の子向け?」
「そうです。...ミニポーチとか。デコ・シールでもいいかな。ニコビレや、サンセット・ギャラリーのアーチストの方に頼んで」
「うん、楽しい製品ができるかもね」
テトさんもうなずいた。
「そう、じゃ、覚えとこう。“はっちゅーね”か」
美里課長は、メモを出して書きとめた。
●ソラくんは隠れファン?
美里さんが席を立って仕事に戻り、2人が製品のアイデアの話をしていると、
カフェのシェフのソラくんが、ふらりとテーブルにやってきた。
「あら、お久しぶり。元気でやってる?」
「はい、まぁ」
テトさんの言葉に、照れて笑うソラくん。
「こちら、巡音ルカさん。私の親友...っていうか、ソラ君は知ってるよね、同じ会社だもの」
「ええ、お顔はよく存じてますよ」
「ね、いつも昼食でココ、使わせて使わせてもらってるから」
ルカさんとソラくんは、笑って会釈する。
「そーそー、ソラくん、“はっちゅーね”って知ってる?」
テトさんが聞いた。
「はっちゅーね?うん、知ってますよ。いま、ネットの動画で評判なやつでしょ」
ソラ君は、あごに手を当てて、考えながら答えた。
「たしか、動画サイトでダンスをする動画が、すごい人気みたいだったっけ」
「動画サイト?」
テトさんが聞き返した。
「けっこうディープだね、そういうのも詳しいんだ。おぬし」
「いや、たまたまですよ」
「素直に言おう。ソラくんも“はっちゅーね”ファンなんだ。」
「いえいえ」
ソラくんは、テトさんをにらんだ。
「料理の作り方とか、そんな動画を探してたんですよ。そしたら、かわいいキャラクターが目にとまって」
テトさんは、ニヤニヤして言った。
「よしよし。うちの店にいたときは、料理のことした興味がなかったけどね。おぬしも成長するんだね」d(-_^)
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