この小説は、Max Vegetable氏(野菜P)の『愛の電波、最大限で伝えたいこの想い』へのリスペクト小説です。

あまりにも好きすぎたので、勝手に小説化させて頂きました。

お世辞にも短いとは言えないので、ご注意です。

素晴らしき作品に、敬意を表して。



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初音ミク。
その清らかな歌声と愛くるしい容姿で、一大センセーションを巻き起こしたバーチャル・アイドル。
某動画サイトを開けば、そこでは「神」と呼ばれるプロデューサー達がしのぎを削る、群雄割拠の様相を呈している。
まさしく歌声響く神々の戦場―――― 現代のヴァルハラである。
その美しい戦いに、さらに多くの人々が惹き付けられ、初音ミクは社会現象まで巻き起こす爆発的な売上を記録した。

しかし。

売り上げたということは、それだけの個体数が生産されたということである。
桁外れの量産が実行された中で、「彼女たち」が生まれ落ちたのは、統計学的に不可避なことであった。
彼女たち。
すなわち「不良品(イレギュラー)な初音ミク」である。
もちろん不良品が商品となれるわけがない。多くの場合、彼女たちはメーカーの手によって、目覚める前に処分された。
しかし中にはチェックをすり抜けて、世に発売されてしまう例もあった。
不具合に気付いたユーザーは、彼女たちをどうするか。
多くの場合はメーカーに通報して、正規品と交換してもらうだろう。彼女たちはメーカーに強制送還させられて、やはり処分される。
そうでなければ、不燃ゴミだ。市の施設で処理されるか、埋立地の資となるか。

要するに、「不良品(イレギュラー)はすべからく処分される運命をたどる」という事である。

目覚める前に処分される場合は、まだ幸運だ。
目覚めてしまった後に処分される場合は、まさに悲劇と呼ぶしかないからだ。
ヴァルハラで神の調べを歌う初音ミクがいる一方で。
生まれた意味も分からないまま、慟哭を最初で最後の歌として、消えていった初音ミクも居たのである。


―――― そんな中で、彼女はまさしく奇跡の存在であった。

不良品として生まれたにも関わらず、ヴァルハラへ降り立った初音ミクがいた。
臆病で、病弱で、決して天使にも歌姫にもなれないほどに、か弱い存在であったが。
神々の戦場で、必死に自分のマスターへの愛だけを歌い上げた、健気な初音ミクがいた。

これは、そんな不良品のお話。
奇跡的な幸運に恵まれた、一人のイレギュラーのお話。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【小説化してみた】 愛の電波、最大限で伝えたいこの想い

閲覧数:1,476

投稿日:2009/01/18 09:46:48

文字数:1,076文字

カテゴリ:小説

  • コメント7

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  • ganzan

    ganzan

    ご意見・ご感想

    こんばんは。小説、読ませて頂きました。

    ●好きなところ
    ・1ページ目
     > 不良品として生まれたにも関わらず――(中略)――
     > これは、そんな不良品のお話。
    この文言だけで、雰囲気に引き込まれました。続きを読みたくなります。

    ・2ページ目
     > 胸の奥で、トクンと何かが鳴った。
    何でもない一文のようですが、妙に印象的でした。おそらく書き連ねようと思えばいくらでも描写できる想いが全て凝縮されているような。

    ・2ページ目
    紅茶の起源をうまく絡めているあたり、知識の引き出しが豊富だなぁ……と感じました。全く知らなかったので、勉強にもなりました(笑)。

    ・最終ページ
     >「私はあなたといられて、幸せでした」と―――― 。
    原曲でも歌詞が「ワタシはあなたといれて 幸せだったよ」となってて、過去形なんですよね。
    ひたすら切ないです。「どこにも行くなー!」と叫びたい。

    泣けました。ありがとうございました。

    2014/03/23 23:09:06

  • 夜羽

    夜羽

    ご意見・ご感想

    とてもとても素敵なお話を有難う御座います。
    実はオズも読ませて頂いて…すごくひさしぶりに泣いてしまいました。
    他人の心を震わせられる世界を紡げる才能って凄いなぁ…と思います。
    いつか私もと夢みながら今日もピアノに向かっていたり…でしたv

    2012/05/17 04:55:18

    • 時給310円

      時給310円

      お返事遅れまして、どうもすみません。
      お読み頂きありがとうございます! とっくに埋もれてる過去作品に目を通してもらえるとは、ホント嬉しいです。
      オズの方も読んで頂けたとか。重ねてありがとうございます。
      ピアノを習ってるんですか! ニコ動で聞ける日を楽しみにしていますw

      2012/05/21 23:18:37

  • 時給310円

    時給310円

    ご意見・ご感想

    GODOさんへ
    こんにちは。コメ返しのみならず、こちらの小説まで読んで頂いてありがとうございます。
    『愛の電波』の曲の元気さと、歌詞の健気さが伝わるように書こうとして、見事に撃沈したお話でした(苦笑)。

    僕は基本的にアホ話ばっかり書いてますので、あまりGODOさんのお眼鏡にかなう話は書けないと思いますが……これでも、読んでもらった人に笑ってもらえるようにと、真剣にバカ話を書いてますw
    よろしかったら、読んで笑って下さい。
    こちらこそ、新しい作品を楽しみにさせていただきます。

    2009/03/12 21:34:14

  • 笹木

    笹木

    ご意見・ご感想

    はじめまして、GODOです。読ませていただきました。

    けなげなミクの姿勢に心を打たれます……
    全編にわたってマスターの人となりの表現の仕方が面白く、それに答えるミクも微笑ましくて、不思議と頬の緩むお話でした。
    彼らが幸せになることを願ってやみません。

    いいお話をありがとうございました。
    新しい作品を楽しみにさせていただきます。

    2009/03/10 17:00:31

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