「おいっ!リトレカいるか!?」
ドアを強く開けて部屋に入ってきたのは、クオ。
「「リトレカってまとめんな」」
「で、何の用だよ?」
「どっちもいるよん?」
クオはとても焦ったような顔をしていて、リントとレンカはそんなクオをあまり見た事が無かった。
「お前らが案内していた双子が………!!」
その言葉を聞いた瞬間、リントとレンカは凍りついた。
「まさか………夢に?」
何も言えなくなったリントとレンカの代わりに、カイコが聞いた。
「それは、分かんない………けど」
「レンは!?あいつは頭も良いんだぞ!?簡単に騙されたりとかはされないはずだ!」
「リンは!?行動が早くて明るいけど、あの子は自分が心を許した人しか言う事を聞かないタイプなんだよ!?」
「「どうしてっっ!!?」」
「…リント、レンカ。二人とも落ち着け。別に、夢達に騙されたとも限らんだろう」
そうメイトが言うと、二人はその場に座り込んだ。
「………男の子の……レンって子は崖から落下し、片割れのリンって子はナイフで一突きに…」
クオはゆっくり話した。
と、その時――――
「おいっ!全員いるな!?」
「なっ……お前は、夢の……!」
いきなり部屋に入ってきたのは黄緑の髪の青年………グミヤだった。
「大丈夫、今日はアイツはいない。むしろ俺の独断でここに来た」
「はぁ!?何言ってるのか分かんない!どうせお前が……リンとレンを……!!」
「何しに来たんだよ!?てか、お前なんかの言う事信じるかよっ!どうせ後ろとかにいるんだろ!?」
グミヤに噛み付くようにリントとレンカは言った。
それに対し、急にグミヤは声色を優しくして、
「大丈夫だ。本当にいない。……今日はお前らに詫びをしに来た」
「え………!?」
グミヤを除く、その場にいた全員が驚きに目を丸くした。
「今まで、色んな人を殺してきて、アイツの言うとおりに動いて来て、お前らにも沢山色々なこと、してきた。……その、初音ミクや鏡音リンを殺したことを含めて、だ」
「………レンは?」
訝しむ様にレンカが聞いた。
「あれは元々リンって方が落ちる様になってたんだが、それを片割れのレンが助けた。崖から落としたのは俺じゃない、アイツだ」
「助けたのか、レンが………それで、リンは一人になったのか」
ぶつぶつとリントが考えていると、カイコがグミヤに聞いた。
「それで?謝りに来ただけ?………それだけなら、いらないわ」
「いいや、その詫びに……お前らを、ここから出して、現実世界に戻してやろうかな、って」
そうグミヤが言った瞬間、クオはいきなり立ち上がって叫んだ。
「そんなの……信じるかっ!!お前はミクを殺したっ!!それが俺たち全員を現実に戻すことだけで許されると思ってるのか!?それに、どうせ嘘だろ!!今まで皆がどれだけ騙されたと思ってる!俺は……信じないし、納得もしない!!」
そう言われ、グミヤは悲しげに俯いた。
「あぁ、そうだ。全部認める。………だから、その詫びに、って思ってるんだ」
「だから、それが………!!」
「本当に思ってる!!だって……だってさ、今回殺された奴の事覚えてるか!?全員が、自分から死ぬことを願っていったんだぞ!?そんなの………今更だけど、哀しすぎる……」
「………わかってる、分かってるんだよ……本気なのは、さ」
クオも俯いて、ぽつぽつと呟いた。
「……で、現実に戻されるのは分かった。だが、……いいのか?お前は」
メイトがグミヤに聞いた。
「……いい、大丈夫だ。例えアイツに背くことになろうとも、このままずっとただ生きていくのは出来ない気がするんだ」
「………そうか」
「……やった……レンカ、やっと、戻れるんだ……」
「うん……洋服も、ご飯も、元の世界の物を着て、食べてって出来るんだ、また」
「「やった…!!」」
リントとレンカは二人で手を重ねて、笑いあった。
「ふふっ……」
「…お前は嬉しくないのか?」
「……だって、戻ったってあの二人のように何かある訳でも無いわ。私の所は、空っぽなの。だけど、ここよりはましだったと思うわ」
「思う、だけか」
「まぁね。……貴方こそ、嬉しくないの?」
カイコとメイトは現実世界の事を話し合った。
「……俺の所も、空っぽだ。嘘吐きで偽善者な只の人間に戻るだけだ」
「嘘吐きで偽善者って時点でただの人間じゃないわよ…。でも、まぁ嬉しいんでしょ?ホントは」
「………あぁ」
そういうと、メイトは優しく微笑んだ。
「クオ、貴方は?」
「え……嬉しい、よ。俺がいない間どうなってんだろ、って思うし」
クオも嬉しそうに優しく微笑んだ。
「………じゃあ、帰すから、眠ってくれないか」
「グミヤ、それはダメだよ。させない」
「え……?……う、がはっ!」
「なっ……!!夢…!?」
「はろー、こんにちは。」
笑って挨拶した夢の体には、幾つもの血。
グミヤは名前を呼ばれ振り返った瞬間、その声の主に胸を貫かれたのだ。
自身がいつも使用していた、あのナイフで。
「……ぐ、み……」
「あーあ、ダメじゃん、グミヤ。裏切りはしていいけど、私には禁止って言ったでしょ?それと、案内役を勝手にして頂いた皆さんも、馬鹿ですね♪」
「んだと……!?」
「あっ、ダメ、リントっ!」
夢のほうに駆けていこうとしたリントを、レンカは抑えた。
「だって、言ったじゃん。『この世界からは、もう二度と出られない』って。それなのに、グミヤがあれこれしたからって直ぐに帰れると思っちゃって……笑えるよ、もう」
そう言って笑った夢の顔は。酷く歪んでいた。
「グミ……っ、おまえ、は……」
「五月蠅いよ、グミヤ。黙って」
「う、あぁぁぁぁっっ!!」
夢――グミは、勢いよくグミヤの胸からナイフを引き抜いた。
その痛みに悶えるグミヤを見ていられず、リントとレンカは目を逸らした。
「さてさて、そんじゃー皆さん、改めてこの世界からは二度と出られないことをお教えしましょう!」
パチン、とグミは指を弾いた。
その瞬間、5人の頭に激痛が走り―――
「ん……ここは?」
黄金色――見方によっては黄色やオレンジにも見えるその部屋の色のに囲まれ、5人は目を覚ました。
「あ……テーブルの上」
カイコがテーブルの上に紙が乗っているのに気付き、そこに1番近かったクオが紙を取り、そこに書いてある文章を読み上げた。
「……『その世界、その部屋からは二度と出られません、どうぞその檻の中でご自由に。』……って、なんだよこれ!?」
「……もう、この部屋からも出られなくなったってことなら、私たちは―――」
「…『そこから二度と、帰れない。』…」
「さぁて、グミヤもいなくなって、一人か。まぁいいや、何とも思わないし」
「貴女が何とも思わなくても、私たちは思うのよ」
「え……あ、貴方達は……」
「夢のルールだ。分かってるよな?『生きている本物の人間を殺してはならない。』お前はこれを破った」
「……いえいえ、破ったのは私ではなく、元相棒ですよ?もう居ませんが、ね。それに、あれはとても小さな子供だったでしょう?」
「口調、性格、見た目……確かにあれは幼い子供だったわ。だけど、ここは貴女の世界よ?いくらでもできるはずだわ」
「それに、元相棒、だろ?それはお前が監視出来るだろう?………お前は、今回5人の死亡者を出した。罰せられて当然だ」
「なっ………それじゃあ、認めますよ。殺しました、人間を。正し、4人ですよ?1人は自分から落ちたんです、崖から」
「……何度も言ったでしょう、ここは貴女の世界よ、と。救うことも、まず落とさないようにする事だって十分可能です」
「……それでは、お前は削除させてもらうぞ。これからはこの世界の一部として生きろ。ここに閉じ込められた全ての人間たちは現実に帰させて貰う」
「ふふ………勝手にしてください。ここまで来たら、もう言い訳する気もありませんよ。―――ルカさん、ルキさん」
「…………」
そして、ノイズとともに、グミは消え去った。そして―――
「さぁ、リンや、他の子たちを――」
「あぁ、早く帰して、還そう」
「「『アリス』は2度と出しはしない」」
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