「ちょっと陰があって、不思議な雰囲気の人...」
さらさらゆれる、りりィさんの金髪を見ながら、テトさんはそう思った。

「じゃ、ダークな感じのドールを作って欲しい、ということですね」
「ええ...そうなんです」
彼女はそう言って、テトさんの目を見つめた。

レストラン「カフェ・ドナ」の席で、雑貨アーティストのテトさんは、
「上海屋」のオーナー、りりィさんと会っていた。

「どうぞ、ごゆっくり」
レストランのシェフで、テトさんの友人のソラくんが、2人のテーブルに特製のカレーを置いていった。


●アクマ・テイストのグッズをで作ろう

「ええ、ワタシもこの間、見ました。“カンテイダン”のライブ」
テトさんは、スプーンでカレーを口に運びながら、言った。
「そうですか。私もこの間、見てました」
りりィさんはうなずいた。

彼女は続けた。
「あのバンドのリーダーのコヨミ君。私も最近知り合ったんです」
りりィさんは、髪をかきあげながら言った。
「彼は、鑑定団というお店もやっています。うちの“上海屋”とは、ライバルでもあり、仕事仲間でもあります」

テトさんは、ほおづえをつきながら、りりィさんの話を聞いている。
「...鑑定団というお店は、大手のゲーム・メーカーの、“デーエノエー”が運営してるんです」

「デーエノエー?有名ですね」
りりィさんはうなずいた。
「ええ。そこは、ウチとも取引があるんです。そこが、テトさんのドールをいたく気に入られてて...」

「ワタシのドールを...」
「ぜひね、“アクマっぽい”テイストの新製品を、一緒に創りませんか?みんなで」
りりィさんは、深い色の瞳でテトさんを見つめて言った。

女性ながら、思わず、ドキリとしてしまったテトさんだった。


●かわいく明るいドールから...

それまで、あまり深く考えていなかったテトさん。
はからずも、「では、前向きに考えます」と答えた彼女だった。

りりィさんがゆっくりとレストランを出ていった、少し後に、
美里課長と、テッドさんが連れ立って入ってきた。

彼女たちを見つけて、テトさんが声をかけた。

さっそく運ばれてきた、ソラくんのカレーを食べながら、
3人は、さっきのりりィさんの話をした。

「テトの悪魔のドール、か。これまでと、路線が違うね」
テッドさんはつぶやく。
「そうね。うちでもテトさんのミク・ドールを扱ってるけど...」
美里課長も言った。
「悪魔バージョンもあるけれど、全体的に“かわいらしい”明るいテイストよね」

「そうね。ミク・ドールで悪魔路線は、あまり掘り下げられないな」
テトさんはほおづえをついて、言った。
「ワタシ、ミクさんに相談してみようか」


●いっちょ新路線で行こうか?

美里課長も言った。
「そうねえ。ミク・ドールには、もうかわいいイメージがあるものね」

「いっちょ、新しい悪魔テイストの新製品を立ち上げるか?テト」
テッドさんは、妹の顔をのぞきこんで言う。

「ミクさんと、デフォ子さんにも相談してみるよ」
テトさんは答えた。ミク・ドールはその3人の共同作品だ。

なじみの客には、シェフみずから、料理をサービスするソラくん。
ソーダ水を運んできて、話を聞くともなく聞いて、彼は思った。

「悪魔として新たに羽ばたいてみたら?テトさん」
口に出して言ってみようと思ったが...
赤い髪を、さらに萌えるように赤くして、悩んでいるテトさん兄妹を見て、そっと見守るだけだった。(-_-;


(part2に続く)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌 (125) りりィさんの申し出 (テトさんの新ドール・part1)

ちがう路線、新しい取り引き。
仕事とはいえ、新しいパートナーを選ぶような、悩みですね。

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投稿日:2011/10/23 14:49:29

文字数:1,472文字

カテゴリ:小説

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