ラララ。誰かの、歌う声が聞こえる。
この歌声を知っている。この優しい歌声を、ずっと昔から、自分は知っていた。


「ミク、さん」


レンは名前を呼んだ。目を開けると、おかしそうに笑うミクがいた。


「可愛い召使さん。おはよう」


その笑顔が可愛くて、あぁ、とレンは思う。思うけれど、それを行動には移せない。
だからこのやるせない気持ちを、せめて少しでも紛らわそうとレンは微笑んだ。


「おはようございます」


律儀な返答に、ミクはまた笑った。静かな笑顔だった。


「青の国の王子に、嫉妬されてしまうかもしれませんね」


レンはミクの膝から頭を離し体を起こし、振り向いた。その笑みは苦笑ともとれる。今さっきまで、レンはミクに膝枕をしてもらって眠っていた。
その言葉にミクは一瞬きょとんとして、それからぷっと吹き出すと、レンの頭をやさしく撫でた。静かで優しい笑顔で。


「大丈夫よ。絶対に、バレないから」


その言葉に、自分はどんな顔をすればよかったのだろう。

ミクはそんなことには気づかず、そっとレンの頬に触れる。
遠くで、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。


「私の可愛い召使さん。王女様がお呼びよ?」


あぁ。気のせいでは、なかったのか。

少し名残惜しそうにレンは顔を歪めて、ミクの頬にふわりと触れた。そしてふわりと、ミクから離れてしまう。
立ちあがってミクは実に愛らしく、綺麗に笑ってレンを見下ろした。


「じゃあ、また明日。ここで会いましょう」


あぁ、ダメだよ。レンは思う。
思っても、口になど出来ないけれど。


「ええ。…また明日、ミクさん」


長いスカートをひらひらと揺らして、ミクはゆっくりと去っていってしまった。レンはその背中を見つめる。細く、肩幅の狭い、女の子らしい背中を。
レンは振りかけた手をしかしぎゅっと握って、こらえた。唇も目もぎゅっと握る。


「レンー!」


後ろから、残酷な声が聞こえた気がした。








(明日は君を、殺す日)
(僕の可愛い王女様のために)
(彼女のため、に、)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

悪ノ召使-君、-

「緑ノ娘」視点もちょっとイメージしてみました。ちなみにやっぱりCP未満です。CP未満のはず、なんだ…!
やるせないような切なさ好きです。あと微妙なとこで終わったのは力尽きたんです。
ごめんな、さ……!!!

閲覧数:809

投稿日:2009/01/14 13:05:14

文字数:880文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

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