最近、六人でいることも増えてきた。
 転校先でこんなにも早く仲のいい友達ができるとは思っていなかったし、ぽわぽわしているレンカがちゃんと友達を作っているようで良かったという気もするし、なにより、同じような境遇の仲間が二人もいることは心強い。
 まあ、多少、そいつらが茶化してきたとしても…。

 数学の時間、隣の席では安らかに眠ってらっしゃる、鏡音姉。先ほどから先生が熱心にお前を当てていることに、気付け鏡音姉よ。
 リントは持っていたシャーペン(2H)で、リンの腕をプスリと刺した。
「あぅっ!」
 妙な声を上げて、リンはすばやく立ち上がった。流石に2Hは痛かったと見えて、リンは涙目になって鉛筆のあとが残った腕をさすり、リントを睨みつけた。
 リントは何も言わず、そのシャーペンで、教室の前方を指し示した。リンがそちらに目を向けると、困った表情で先生がこちらを見ている。リンは急に恥ずかしくなってきた。
「鏡音、この問題、解いてみろ」
「えっ」
 リンは数学が苦手だ。よくわからないから。
 隣の席にちらちらと視線を送るが、リントはまったく気にしていない風で、リンのほうを見すらしない。少しして、リントはあいていたノートに、大きく答えを書いた。それを、シャーペンでとんとんとノートをたたいて、リンに伝える。
「えっと…『Y=3X+2』…です」
 いって、リントを見ると…笑っている。

 だ ま さ れ た ! !

「――リント君、ちょっと付き合ってよ」
 昼休み、リンはリントの席に、ノートをたたきつけていた。
「なんで俺がお前と付き合うんだよ」
「違うよ!? 勉強に付き合うんだよ!? 何でリント君あたしに対してだけボケなの!?」
「反応が面白いから」
「やめて! 慣れてないから突っ込み超疲れる!
 ただちょっと、数学教えてくれればいいの! リント君の所為で数学の時間、恥かいた!」
「へーへー」
 かったるそうにリンのほうに向き直ったリントを見て、リンは満足げに頷くと、自分の椅子をリントにちかづけた。
「まずは、ここの連立方程式」
「これは、YをXに代入して…」
「代入って何?」
「…」

 結局、数学のテキストを三ページやるだけのことに、放課後までかかってしまった。
 中学二年生にもなって、九九がまともにできないってどういうことだよ…!
「わー、後一問!」
 喜んでいるのはリンだが、もう疲れてしまって、リントは喜ぶ気力もない。
「ここは等積変形が使えるから…」
「でもこことここは…」
「とりあえずそこは置いとけ。まずはこっから考えてだな…」
 そのとき、教室のドアが開いた。

 教室の中から、二人の声が聞こえる。
 ミヤ君とグミちゃんは先に帰った。レン君は自分の教室で本を読みながら、リンちゃんを待っている。私はそろそろ帰らないと、家事が追いつかない。
 そう思って、レンカはリントに一言言って、帰ろうと思っていた。が、リントたちがいるはずの教室の前に来ると、なぜかドアを開きたがらない自分に気付く。手が震えていた。
 意を決して、レンカはドアを開いた。
 思ったより大きな音が鳴って、リントとリンがこちらを見た。
 二人とも少し笑いながら、楽しそうにしている。
 …近い。二人の距離は精々30センチくらいで、膝は今にもぶつかりそうなほどだった。
 レンカの手からスクールバッグが滑り落ちた。
「レンカ? どうした? もう少しで終わるから、待って…」
 リントが言いかけたとき、レンカはそれをさえぎるように、いつになく大きな声でいった。
「私、もう帰るね! リント君、ゆっくりしてきて。それじゃあっ」
「レンカ! ちょ、どうしたんだよ!」
 リントが言うのも聞かず、レンカはスクールバッグをひったくって走り出していた。

 家に着くと、レンカはドアの鍵をかけて、ずるずるとその場にしゃがみこんだ。久しぶりに全力疾走したせいか、息が荒くて、止まらない。
「…っふ…っ、ぅ…っ」
 息だけじゃない。涙も。
 二人が一緒にいたから? 少し距離が近かったから? それがどうかした? だって二人はクラスメイトで、私達は仲のいい友達。友達だから、少しくらい。リント君だって言ってた。少し数学を教えるだけだから。
 自分に言い聞かせるようにレンカは頭の中を駆け巡る疑問に、ただ頭を抱え、答えは出ない。ただ一つ、わかったことは、

「私、リント君のことが好きなんだ…」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Some First Loves 9

こんばんは、リオンです。
遅くなりましてすみません!
昨日は月食見てました! ニコ動で! すみません!
私の住んでるあたりはちょうど雲が厚くて見えませんでした…。
ところでリトリンの二人は意地悪なリント君にリンが振り回されるイメージ。
レカレン(?)はどっちも大人で気を使いあってるイメージです。

閲覧数:419

投稿日:2011/12/11 23:58:56

文字数:1,842文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • アストリア@生きてるよ

    レンカちゃん………っっっ
    何だ切ねぇぞ今回………www私月食見てないww

    リンちゃんの頭脳もレンが持ってちゃったんですね、そしてレン君の運動力をリンちゃんが持ってってしまったんですね、有難うございます((((
    リント君面白いなー…確かにあんな反応されたら面白くてついやっちゃう……ww

    リトリンはたまーにリンちゃんのやり返しが来てリンリトになるとおいしいです(((((爆
    レンレカは非の打ちどころが有るけどない2人のCP……あれ、鼻から赤い液体が……←

    続き楽しみです!レンカちゃんどうなるんだろ……

    2011/12/12 16:00:26

    • リオン

      リオン

      お返事遅くなってしまってごめんなさい! こんばんは、アストリアさん^^

      レンカちゃん可愛いです。
      切ない雰囲気出てたら、よかったです^^私の所は雲で見えなかったので、ニコで見ました。天体好き。

      そうですね、二人はお互いを補い合いつつ、足を引っ張り合っていて欲しいです。
      こちらこそありがとうございます。妄想するだけでご飯三杯はいける。
      ですよねww リンは基本ボケですが、時と場合に応じて突っ込みもこなします。

      リンはリントくんの揚げ足とろうとして、逆に揚げ足取られて立場悪くしそうです。
      レンレカはお互い趣味とか合いそうなので、多分読書とかホラー映画とかで盛り上がると思います。

      続きもしっかりやりますので! よろしくお願いします!!

      2011/12/12 23:44:48

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