【ボカロ】めーちゃんが羊【愛の劇場】
冬の朝陽を浴び、私はゆっくりと目を開いた。
いつもと変わらない朝。
だけれど・・・・
もふもふ
「なにこれぇぇぇ!」
体全体から羊の毛が生えていた。
「どうしたの?めーちゃん!」
「どうしたのー。わっめーちゃん可愛いい!」
「メイコ姉、朝から何?」
妹たちが私の絶叫でリビングに集まってくる。
「私にもわからないのよ!朝起きたらこうなってて・・・」
昨日はいつもの店で歌ったあと、少し酒を飲んで帰ってきた。途中、謎の実験室に拉致された覚えも、全身タイツの宇宙人にキャトルミューティレーションされた覚えもない。
もふもふもふ
「ちょっと!ミク!話聞いてるの!」
「いやぁ~めーちゃんの毛柔らかいなって・・・」
「ほんとーこんなに生えていたらちょっと刈ってもいいよね・・・」
「メイコ姉・・・・家族は助け合えっていつも言ってるよね・・・」
いつの間にかミクとリンは不良系野球漫画ではおなじみ、むかし懐かし「手動バリカン」を握りしめていた。
レンに至っては何故かT字カミソリを持っている。
「ちょっとやめなさいよ・・・」
「ねぇめーちゃん・・・よくミクのネギをおつまみに使ってるよね・・・」
「この前リンのセーラー服を一緒に洗濯して色が移ってピンク色になっちゃったのー」
「メイコ姉、朝バナナダイエットは効果あった?」
ミク、リン、レンの異様な迫力に後ずさる。
「ひぃぃぃぃぃぃ!」
ガチャッ!バタン!
四足で走りながら後ろをみるとミクがネギを持って追っかけてくる。恐らく、リンとレンは車庫に向かってロードローラーに乗り込んでいるんだろう。
「ごめんなさぃぃぃぃぃ!」
私は全速で逃げながら、いつもの悪行を悔いていた。
ピンポーン!ピンポーン!
うらびれたマンション。私は必至に部屋の主を呼び出していた。
ドンドン!ピンポーン!
「はいはい出ますよ」
部屋の主 ー弱音ハクー はいつものように着崩した格好で出てくる。
「ハク!助けて!鬼に追われてるの!」
「鬼?まあ入ってください。メイコさんと私の仲ですから」
「ありがとう!今度飲みに連れてってあげるわね!」
私は安堵しハクの部屋に入る。だが・・・・
ガチャ!
恐る恐る振り返るとハクが部屋の鍵を閉めていた。
「・・・・ハク・・何をしているの?」
「何って逃げられないように施錠をしているんですよ」
「ねぇハク!助けてよ!この前誕生日に飲みに連れて行ったでしょう!」
「でも、酔いつぶれた私を残してそそくさと出て行ったのは誰?」
ハクはまるで獲物を捕らえた猛獣のような表情をしていた。正直、ハクがこんな表情をするのは見たことがない。
ピンポーン!
「ハクさ~ん来たよ~」
「ミクさんが来たようですね。これで今年の冬を越せます。」
「嫌っやめて!助けて!」
「うふふふ」
「うふふふ」
「うふふふふ」
「あははははは」
ハクの部屋にミク、リン、レン、そしてハクの笑いが木霊する。
「嫌っやぁぁぁぁぁ!」
「嫌ぁぁ、やめてレン!そんなところの毛は剃らないでー!」
悲鳴をあげ、起き上がるとそこはいつものリビングだった。
思わず体を見るが、モコモコの羊毛は生えてはいなかった。
「よかった夢だった・・・」
「あっ!めーちゃん起きたんだ。今お水持ってくるね」
「カイトどうしてここにいるの?」
「うん。めーちゃんたらっ帰ってきてすぐリビングのソファーで眠っちゃって、そしたら急にうなされ始めたからいい夢にしてあげようと思って童謡を歌っていたんだ」
「・・・どんな童謡?」
「もちろん、メリーさんのひつゴフッ!」
「あんたは今世紀中永眠してなさい!!!!!!!!」
翌日
レンです。今日は今朝からメイコ姉さんの様子が変です。
「ミク!今日はネギが安いから買ってきてあげるわね」
「めーちゃんありがとう!」
「レンこの前はレンのバナナを勝手に食べてごめんね。今日バナナの特売日だから買ってきてあげるわ」
「リンはみかんが欲しいのー」
「いいわよ」
正直、普段が普段なので何か企んでいそうで怖いです・・・・
そういえばカイト兄ちゃんの姿が見えないような・・・・
コメント2
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ご意見・ご感想
エントツ
その他
ステルス様、はじめましてエントツと申します。よろしくお願いします。
拙作を読んでいただき、楽しんでもらえたようで幸いです。
作中の手動バリカンですが、近所の金物屋で実際売っていますwww。
2009/02/27 15:01:58
ステルス
ご意見・ご感想
初めまして\(^0^*)
読ませて頂きました!
いやー、面白かったです!
バナナダイエットに笑いました。
2009/02/25 19:59:06