~この話は、ぬるいですが性的な表現があります。
苦手な方はご遠慮ください。~
長い髪を二つに結い上げた少女は、光の中であどけなく微笑んでいた。
少女を中心に、世界が色を取り戻した。止まっていた時計が時を刻み始め、消えていた音が再び流れ始めた。
―カンタレラ―
「本当に瓜二つだろう?」
窓の外、庭で遊んでいる少女を指し、カムイはまるで悪戯が成功した子供のように笑った。その笑顔に釣られるように、カイトも久しぶりの笑みをその口元に薄く浮かべながら頷いた。
「ハツネが、帰ってきたのかと思った。」
そう、少女に視線を向けたまま、呟く。
窓の外、光の中にいる少女は、カイトが愛した女性、ハツネに瓜二つだった。勿論、歳が違う。しかし、艶やかな髪の色も、猫のような大きな瞳も、花びらのような唇も、すべてハツネを思わせた。
光の中、無邪気に微笑む少女の姿に、カイトの胸は鈍く痛んだ。
今は、もういない、ハツネ。
カイトが愛して止まなかったハツネは、カイトと同じく貴族で、カイトよりも少し年上の幼なじみで、そして、カイトの父の愛人だった。
貴族といってもカイトの一族のように莫大な財産を持っているものから、没落してしまっているものまである。ハツネの家は名門貴族だったが、彼女が物心つく前から傾きかけていた。それでも貴族としての対面を守るために、娘を、ハツネを、金を得るためにカイトの父親に売ったのだ。
今までなんの屈託もなく共に過ごしてきたハツネがある日、父に辱められ、父の所有物となり、その日を境に容易く傍にいることは叶わなくなった。
ハツネは父のものであった。カイトは父を憎み、そして、それでもハツネを愛していた。
しかし、ハツネも父も、もう、いない。
カイトだけ一人、残して二人とも死んでしまった。
父の死後、嫡男だったカイトは跡を継ぎ、伯爵となった。愛する人と憎んだ人を二人同時に失い、まるでその代わりのように富と地位を得た。だが、喪失感に胸を穿たれたカイトは文字通り、抜け殻だった。
何をしても取り残され、何を見ても響かず、何を聞いても届かない。
どこにも顔を出さず、ただ家で無為の時を過ごすカイトを見かね、友人であるカムイが彼を連れ出したのが、この屋敷だった。
都市から少し離れた場所にある屋敷。執事が出迎え、通された部屋の窓から示された少女の姿。
少女を目にした瞬間、カイトの時は刻み始めた。
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もっと見る※この話はいっこ前に書いた微熱の音の続きのような話です。
これだけだと、?なところもあるかもしれません。
それでも良いよ!あるいは読んだ事があるよ!という方はどうぞ~
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