わからない。貴方の声も、物音も。
音の無いセカイに、私は一人…


孤独はいやだ。独りは嫌だよ。
誰か、私を助けてよ…




















<<【がくルカ】キミの声が無いセカイ【音を失った少女】>>





















「おはよー神威くん。」
「あ、巡音さんおはよう。」





私は神威くんと幼馴染で、家が近い。
そして仲が良かった。


勉強や遊び。友達の家に出かけて。
はしゃいで楽しんで、話して歌って。


そんな幸せを、当たり前だと思っていた。
いつまでもこんな日々が続くと思ってた。






小学生のころ、私は“何か”を失った。






「…っ!」
「巡音さん、どうしたの!?」
「…音が遠のいていく…何も、聞こえないっ…」
「巡音さん!」





病気で、耳が聞こえなくなったんだ。
私は歌うのが好きだった。
私は歌を奪われた。




何も聞こえなくなったから、一人になった。
誰とも話せない。誰の声も、聞こえない。
小学校を卒業する前のことだった。





















中学に入り、皆から冷たい視線で見られるようになった。
なにか言ってるけど、何も聞こえないんだ。
冷たい表情をした皆の声も、手を差し伸べる貴方の声も。


やがて病気は悪化し、学校に行けなくなった。



季節は冬。花は枯れ、凍るように寒い、孤独を生み出す。
それはまるで今の私のようだった。



孤独なセカイに一人ぼっちの私に、貴方は接し続けた。









「どうして私に優しくするの?」









私自身には聞こえることのない、‘声’というモノで聞いてみた。
彼は私の手を握り、ただ頷いた。



貴方は何かを言っているけど、何も聞こえないの。
きっと、私をばかにしているんだよね?
私が何も聞こえないのを、いいことにして。



誰か助けてよ。私の、“孤独”という音の無いセカイから。
嫌なの。何も聞こえないの。貴方の声も、私の声も…
一人は、寂しいよ?



貴方はきっと、声で私を馬鹿にしているよね?
なのに、なんでいつまでも優しくするの?



小さいころから一緒に居て、今やっと気づいたよ、貴方への気持ち。
でも貴方は、私がきらいだよね?




寒いよ。孤独っていうのは、何よりも身体が凍りつくんだよ。
ほら、私の手、震えているよ。


私の命はもうすぐ尽きるよ。
どうして貴方は、涙を流しているの?


貴方は私をキライなんだよね?
なぜ私を抱きしめるの?


私の鼓動は、遅くなっていくよ。
こうしてると、貴方の鼓動は私より早いんだね。


貴方は必死に何かを言っている。
何も、聞こえないよ。何を言ってるの?


あぁそうか。わかったよ。
貴方は私を、

愛してるんだね?


貴方が私を抱きしめていると、伝わってくるよ。
貴方の鼓動も、温もりも。

だったら歌うよ。とうの昔に失った‘歌声’というモノで。
私の気持ちを、歌うよ。
私も貴方が好きだよ。


意識が遠のいていく。
もうすぐ死ぬんだね。


もしも願いが叶うならば…
貴方の声が、聞いてみたいよ。

生まれ変わったら、もう一度、貴方の声が、聞いてみたいよ…

きっとまた、会えるよね…


死っていうのは、誰かを悲しませるものなんだね…
貴方の涙を…感じるよ…

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【がくルカ】キミの声が無いセカイ【音を失った少女に】

「貴方の声が聞きたかった」
【CASE1 : 巡音 香】

音が聞こえなくなったらどうなるんだろうと思って書いたものです。

閲覧数:1,540

投稿日:2016/06/02 18:46:09

文字数:1,413文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 姉音香凛

    姉音香凛

    ご意見・ご感想

    なにこれ切ない・・・(ノ_・。)

    ルカがっルカがっ・・・がっくん優しい・・・(´;ω;`)ブワッ

    2011/10/26 18:21:36

    • ゆるりー

      ゆるりー

      香凛さん、メッセありがとうございます!

      切ない感じに書くのは難しいですね。
      音が無い世界っていうのは私にとっては苦痛です。
      それはボカロの皆も一緒かと。

      ルカさん…(ノд<)ウオォォン
      がっくんも想い人が死ぬのを悟り、思わず…←

      一人残されたがっくんはどうしたのか。
      それは考えてなかったので、今から考えます。
      考えたらがっくん目線投稿するかもです。

      2011/10/26 19:01:15

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