タグ「紅一葉」のついた投稿作品一覧(6)
-
「おい、こっちだ! ついに見つけたぞ!!」
「本当か!? どっちだ?」
「二人ともだ! 両方死んでいるがな」
「畜生、遅かったか」
新月の闇夜の中、村の大半の住人が出向いて二人の人物を探していた。一人は神社の娘。一人は敵国米国の兵士である。
見つけた時にはもう遅く、二人とも絶命していた。場所はこ...紅一葉―6―
-
伊波さんが来て三週間と少しが立った。
彼の足はだいぶ治ってきていて、ほとんど松葉杖なしでも歩けるようになっていた。いいことではあるのだが、少しさみしい気もする。
病に侵されてからこれまで、渡会以外の人とはほとんど話す機会がなかった私にとって伊波さんの存在はとても大きなものだった。話す相手が常に...紅一葉―5―
-
俺が薫さんの家に滞在するようになって二週間がたった。足の方は順調に回復しているようで、渡会医師いわく「そろそろ歩いてみてもいい」とのことらしい。
その渡会医師についてだが、相変わらず俺に対しては常に不機嫌そうな感じでことあるごとに突っかかってくる。まぁ、俺がそれだけ人間として未熟だということらし...紅一葉―4―
-
戻ってきた渡会医師は不機嫌そうだった。とても、再び薫さんの病について聞くことはできそうもなかった。ただ、宣言通り傷を縫うための道具は持って来たようで、持っている革のホルダーからは銀に光る針が見えた。
渡会医師はそのホルダーから針を抜くと、そのまま俺の傷を縫おうとした。
「ま、待て、麻酔はどうした...紅一葉―3―
-
到着した先は一軒の民家だった。まだ森を抜けきらない場所にあるこの民家は何となくだが良家の家と言った印象を受けた。アメリカ育ちの俺でもそう感じるのだから、相当なものである。ここが診療所か何かなのだろうか?
ここに来るまで俺と薫さんはほとんど会話を交わさずに来た。俺自身が痛みを耐えるのに必死だったし...紅一葉―2―
-
ただ寄り添って抱かれていたい
悲しみが空に消えるまで
────────────────────
上空八千メートル。
俺の背後に鈍く光る緑の戦闘機が迫ってくる。
『……しつこいやつだ』
俺の背を見つめる名も知らない日本人二人に俺は悪態をついた。
状況は最悪。機銃によるいくつもの傷をか...紅一葉―1―