タグ「鏡音リン」のついた投稿作品一覧(7)
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* そう、その日確かに俺は死んだ
ザシュッ
鋭利な刃物が肉を切り裂く、おぞましい音が耳にとどいた。
絶対に死んだ!と思うのだが・・・・・・痛みは、ない。
俺は固く閉じていた目をおそるおそる開き、
その光景に息を呑んだ。
まず目を奪われるのは、視界を覆いつくすほどの緑。深い森の木々を思わせるような...ある吸血鬼の孤独について。 第1章8 そう、その日確かに俺は死んだ ※流血表現注意
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病室のカーテンを夜風が揺らす。
病室に灯りはともっていない。なのに充分に明るいのは満月だからか、或いは・・・・・・
「ホントに、いいの?」
窓際に立つ少女。夜空を見上げている。その背丈ほどもある、見事なまでのエメラルドグリーンの髪が、夜風にたなびいている。
ベッドに横たわる少女は沈黙をもって肯...ある吸血鬼の孤独について。 第1章7
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* 死神の影
ぬかった。
そろそろ日付も変わろうかという時間帯。俺は深夜の大通りを急いでいた。
深夜といっても時間はまだ12時前。人通りはそこそこあった。疲れを滲ませて帰途を急ぐもの、酒の香をまとわせて陽気に道ゆくもの、煌びやかな衣装を身にまとい客をひくものとさまざまである。
終わり行く今日を惜し...ある吸血鬼の孤独について。 第1章6 死神の影
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* 14歳の誕生日
いやにキラキラと輝くスカイブルーの隻眼に、俺は辟易していた。
「リン、も一回言って。何だって?」
「ふぁから、ふぁしふぁふぁあふぁしふぁひのふぁんふぉーふぃふぇふぉ、」
「わかんねーから。」
リンは俺の買ってきた食料を、片っ端から口の中に放り込んでいった。一応俺持ち、二人分の朝...ある吸血鬼の孤独について。 第1章5 14歳の誕生日
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* 幼き日々
ガキの頃の話だ。何歳だったかな。オレもリンもまだ小さい頃のことだった。
オレたちはある廃墟で遊んでいた。
随分前にうち捨てられた、金持ちのお屋敷だ。
リンが見つけて、オレたちの遊び場となった。秘密基地のような感覚だった。
元はその庭に植えられていただろうモッコウバラが、野生化し、あた...ある吸血鬼の孤独について。 第1章4 幼き日々
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* 音もなく崩れゆく
その日も、空は青かった。
いや、その日はいつにもまして、空が青かった。
雲ひとつない青天。ぼやける視界で、雲、見えなかっただけかなぁ。
「治らないってどういうこと?」
俺は思わず主治医の兄ちゃんに詰め寄っていた。いきなり立ち上がったせいで、俺の腰掛けていた丸いすはバランスを崩...ある吸血鬼の孤独について。 第1章3 音もなく崩れゆく
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* 幸福な日常の黄昏
「―ン、レン。レンッ!」
「ふぇ?」
その日の朝。俺‐鏡音レンは乱暴にゆさぶり起こされた。
いや、乱暴にゆさぶり起こされるのは、別に珍しいことではない。むしろ日常茶飯事だ。いつも、いっつも俺の部屋に闖入して、ゆさぶるに飽き足らず、気持ち良く夢を見ている弟に跳び乗り格闘技をき...ある吸血鬼の孤独について。 第1章2 幸福な日常の黄昏