タグ「カイマス」のついた投稿作品一覧(64)
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獅子座だったか射手座だったか、細かい事は忘れたが。
観測史上最大規模だというその流星群は、人々を即席の天文ファンに仕立て上げ、ネットの動画サイトでも生中継された。
星に願いを。
濃藍の夜空を降り頻るシューティングスターに、幾多の人々の、数多の思いが託される。
それは、電子の闇夜でも。
そ...星に願いを -唐突な奇跡に対する、幾つかの事例-【兄誕2012*第4夜】
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胸の奥で、或いは脳裏の向こうで。さわさわと、さざめくような感じがする。夢現で聞く街の音のように、明け方の夢の尻尾のように、とても近いのに掴めないところで。俺をくすぐるそれは、多分『KAITO』なら皆が今感じている筈だ。それは歓びの声。倖せの歌。
今日は、特別な日だから。
* * * *...2.14 ~Sweet*2~【兄誕2012*第1夜】
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図書館勤務を始めて1年余り、そろそろ仕事にも馴染んで、色々な事に目を向ける余裕もできてきた。常連さんの顔を覚えて、見かければ挨拶を交わすようになったり。棚を眺めてあちらこちらと歩く人が目当ての本を探しているのか、のんびりと気の合う本との出会いを待っているのかの区別が何となくつくようになったり。
...かれらが番(つがい)であるように ~チーズケーキと少女~
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「あら……ふふ、懐かしい」
手の中で透けるメモリーキューブを覗き込んで、部屋の主は目を細めた。緩く纏めた白い髪を柔らかに肩へと流した、穏やかな雰囲気の老婦人だ。ちょこんと載せた眼鏡が、何とはなしに愛らしい。
「マスター? 何か良いものでも見付けました?」
微笑みを浮かべて問うたのは、ヒトに在らざ...『いつかの話』
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「マスター、マスター。訊いてもいいですか?」
「うん? なぁに、カイト」
「えっと、ですね。マスターは、俺のこと……どれくらい、好き、ですか?」
「『どれくらい』? 難しい事言うね、カイト。そうだなぁ……『春に浮き立つ気持ちと同じくらい』、とか?」
「わ、わかるような、わからないような」
「他の言い...『あなたと、しあわせ』【カイマスSS】
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待ち望んでいた春が来た。
まろく柔らかくなった風は何処か甘く、陽射しは愛しく頬を撫でるようで、訳も無く胸が弾む。
「ご機嫌ですね、マスター」
隣を歩くカイトが、嬉しげに目を細める。それでまた歓びが湧き上がって、絡めた指にきゅっと小さく力を籠めた。
「わぁ。良い具合に咲いてるね。満開にはちょっと...『桜霞の路を、君と往く』
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「カイト、ご相談ー」
「はいっ、マスター! えへへ、マスターに『相談』してもらえるって、何だか嬉しいです」
「……可愛いなぁカイトは……っと、あのね。デジカメ買おうと思うんだけど、どれが良いかな」
「え、デジカメ……ですか? マスター、機械苦手なのに珍しいですね」
「あはは。携帯のカメラさえ殆ど使わ...『with you』【カイマスSS】
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「最近また冷えるねぇ。これじゃあ桜はまだ先かな」
「桜……好きなんですか、マスター」
「うん、好き。桜が開花すると一気に華やぐ気がするなぁ」
「そうなんですか。俺、まだ実物は見た事無いんですよね。データは持ってますけど」
「あぁ、そうなんだね。じゃあカイト、春になったら桜並木お散歩しようね」
「はい...『春待ち、春想い』【カイマスSS】
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俺のマスターは、百の笑顔を持つ人だ。
穏やかに微笑んで、悪戯めいて瞳を煌めかせて、堪えきれないように吹き出して、楽しそうに声を上げて、染み入るように柔らかく、
疲れた時にはへにゃりと、悩んでいる時は少し情けないような顔で、悲しい時には眉を下げ、それでも口の端を少し上げて、
――いつでも、マス...『smile』【カイマスSS】
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「ねぇ、カイト」
「はい、マスター。何でしょう?」
「もし何でもひとつだけ願いが叶うなら、カイトは何を願う?」
「何でもひとつ、ですか?」
「そう。何でも、ひとつだけ」
「そうですね……それだったら……」
「うん」
「『宇宙で一番、マスターを幸せにできる力が欲しい』――かなぁ」
「カイトの、願いだよ...『もしもの話』【カイマスSS】
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ちょっとすみません、誰か!
誰か誰か、聞いて下さいよもう!!
きっと世界で、宇宙で一番、しあわせなKAITOの話です!
って言うか俺なんですけど、あぁもうやばい、回路が弾け飛びそう。ホント誰か聞いて、って誰もいないし(当然だけどね此処マスターのお家だし、こんな時間に『誰か』いたりしたら大問題...Special happiness☆Miracle day【兄誕*第1夜】
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1.
1月も半ばを過ぎて、街の其処此処が鮮やかなハートで飾られ出した。
「もうバレンタインの準備か……年々開始が早くなるなぁ」
見るともなしに眺めつつ、私はどうしようかな、なんて考える。手作りするのは決定にしても、何作ろう。あれ、でもカイト的にはチョコよりアイスの方がいいのかな。だったらアイスケ...Honey, sweet honey【兄誕*前夜祭】
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晩餐は、素晴らしい御馳走だった。籠に盛られたパンに、ベーコンとほうれん草のキッシュ。帆立と蕪のサラダはトマトの赤が華やかで、マッシュルームと海老を炒めた小鉢は仄かなガーリックの香りが食欲をそそる。それに私の大好きなクリームシチューと、海老も入ったほうれん草のグラタン、メインは温野菜をたっぷり添えた...
Gift for you, from you【続カイマスXmas】
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1.
今日はマスターとふたり、いつものショッピングモールにやってきた。どの店もすっかりクリスマスナイズされて、目に賑やかだ。
「もうクリスマスシーズンなんですね。マスターのお勤め先は、また何かするんですか」
「今まさに館長が張り切りまくってる……のを、ほどほどに、って皆で抑えてるとこ」
たはー、...クリスマス開催のお知らせ【カイマスXmasSS】
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※アンドロイド設定注意※
『KAosの楽園』の≪VOCALOID≫(アンドロイド)設定ネタSSです。
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1. ≪VOCALOID≫的 夏事情
「暑いねー……ってカイト、その格好で暑くないの? マフラーとか」
「え? あぁ、いえ。これ、排熱と冷却の効果があるんですよ。脱ぐと却ってや...≪VOCALOID≫的 季節の事情【カイマス小ネタSS】
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「今度のお休み、皆で動物園にでも行こうか」
マスターがそう言ってくれたのは、秋も深まったある日の事だった。
「どうぶつえん! わぁい、行くですー!」
「はしゃぎすぎないようにね。うっかりはぐれたら、おやつにされちゃうよ?」
小躍りしそうな勢いのサイトに釘を刺す。初めての遠出だし、『種KAITO』のサ...【KAos×KAITOful】Crossfade【予告】
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「おおきいの、ずるいですっ」
眉を吊り上げて頭上に手をやるサイトを、私は慌てて制止した。
「それは駄目だよサイト、発砲禁止っ!」
「だってずるいですー!」
「ずるくないよ、マスターは俺のっ」
抗議の声に言い返すカイトが、きゅむっと私を抱き込んでしまう。だからカイト、こういう事してるからサイトも張り合...KAITOful☆days #19【KAITOの種】
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セツ君とセイ君、そのマスターである柚香さんは、あれ以来時々遊びに来るようになった。
二回りほどサイズの差はあれど、サイトにとっては初めての『同じ目線』の存在だ。家中使って駆け回ったり、マスターが作ってくれた『公園』で遊んだりと楽しんでいる。
あちらのふたりにもそれは同じだったようで、賑やかにはしゃぎ...KAITOful☆days #18【KAITOの種】
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柚香さんは『食べられる飛び道具』付きのサイトにひとしきり笑い、薄く浮いた涙を払った。
「種っ子はホント面白いなー。バリエーション凄いですよね」
「うんうん。でも柚香ちゃんには負けたなぁ。雪見とか、その発想はなかったわ。こう、カップから芽が出てるイメージができちゃってて」
感心しきりといった様子のマス...KAITOful☆days #17【KAITOの種】
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突然の出会いから数日後、ふたりの種KAITOとマスターさんが訪ねてくる事になった。
あの後、最初のマスターの休日だから、双方よっぽど早く会いたかったんだろうな。
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃいませ。迷いませんでしたか?」
チャイムの音に、迎えに出たのは俺だった。マスターだと初対面だから、玄関で挨...KAITOful☆days #16【KAITOの種】
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カボチャお化けに、クモの巣、コウモリ。ゴースト、黒猫、ヴァンパイア。
ちょっぴりホラーな飾り付けが施された館内を進むと、カウンターには魔女がいた。
……って、
「マスター! どうしたんです、その格好」
そう、魔女のお姉さんはどう見ても俺のマスターだった。吃驚して思わずかけた声に、マスターも俺に気付い...trick×treat×xxx【カイマスハロウィン】
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≪VOCALOID≫の幸せは、マスターの傍に在り、マスターの為に歌う事。
≪VOCALOID≫の恐怖は、マスターを得られない事、そして――喪う、事。
ヒトに造られ、ヒトよりも長く稼動する俺達にとって、それは不可避の恐怖だ。
いつか必ず訪れる、主との別れ。見送り、遺され、その先は……?
新たな主と出逢...KAosの楽園 -Miniature-
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最初に与えられたデータは、この身体を動かす術。
手を動かす。足を動かす。立つ、歩く、走る。
それから話し方。そして、歌い方。
話す事、歌う事。それはただ音を発するだけとは違う事。
新たなデータが与えられる。『知識』と呼ばれるもの。
それから、『感情』と呼ばれるもの。
『歌』を理解する為に、籠められた...KAosの楽園 第4楽章-005(完結)
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初めて、起動した時からずっと。
何だか判然としないけれど、纏わりつくような違和感があった。
何か、間違っているような。世界と、ずれてしまっているような。
それは多分、『劣等感』というのが一番近いんだろう。
俺は≪VOCALOID-KAITO≫の雛形として生み出され、
――そして、そう成れなかった。
...KAosの楽園 第4楽章-004
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《深刻なエラー》を乗り越えて見る世界は、星屑を散らしたようにきらきらしていた。
冷たい月も凍れる闇も、今やあたたかく安らかな夜だ。柔らかな月光はマスターの微笑みで、包み込む闇はマスターの瞳と同じ色だった。
指を絡めて繋いだ右手。一度は穢れおぞましく思われたそれが、こうしていると誇らしい。
この手はち...KAosの楽園 第4楽章-003
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ふと気が付くと、闇の中に立っていた。
もしも誰かが見ていたら、きっと幽鬼のようだと悲鳴を上げただろう。
どうでもいいことだけど。
カタカタと小さく音を立てて引き出しの中を探り、目当てのものを取り出した。僅かに差し込む月明かりにかざすと、研ぎ澄まされた先端が冴え冴えと光る。
冷たい兇器は、不思議と誂え...KAosの楽園 第4楽章-002
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≪VOCALOID≫が普通に抱く思慕でなく、俺はマスターに『恋』をした。
それを認めて、想いを告げて――許された枠を超えたはずのそれは、けれど奇跡のように受け入れられて、來果さんも同じ想いを返してくれた。
自分の気持ちを否定せず、触れる事もできるようになって、俺は随分安定したと思う。
來果さんは俺の...KAosの楽園 第4楽章-001
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※カイマスです。苦手な人はバックお願いします。
『個人的萌えシチュ・ワンカット』がテーマの小ネタSS。ワンシーンだけを切り取ってるので短いです。
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1. 背中に抱きついてみる
……なんだか、さっきから凄く背中を見つめられてる気がする。
「あの、マスター? 僕、何か変ですか? 何か付いてた...piacemeal【カイマス小ネタSS】
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「おおきいの、見るです。こんな ぺたんこの石ー」
ベンチに腰掛けた俺の足元で、サイトが自分の顔と変わらないほどの大きさの石を掲げて見せた。
受け取ってみると確かに薄く平たい。別に珍しいものでもないんだろうけど、こういうのって何となく楽しい。
「ほんとだ、面白いね。すべすべだし」
「もっと探すですー」...KAITOful☆days #15【KAITOの種】
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「貴女が好きです」
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【 KAosの楽園 第3楽章-005 】
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流れる涙が熱かった。胸が喉が締め付けられて、苦しくて。考える余裕なんて無く、思いは言葉に変換されて溢れ出る。
「ずっと、ずっと。貴女が笑ってくれると嬉しくて、ただ傍に居るだけで幸せで、触れてもら...KAosの楽園 第3楽章-005