タグ「二次創作」のついた投稿作品一覧(89)
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08
爆発音。
一瞬、なにも聞こえなくなる。
視界も明滅して平衡感覚がなくなった。
「危ない!」
耳鳴りがしつつもなんとか立ち上がろうとしたところを、誰かに突き飛ばされる。
抵抗できず、よろめきながら倒れる。
僕を突き飛ばしたやつは、僕が顔をあげたときにはもう、直後に飛来した銃弾に胸を赤...イチオシ独立戦争 8 ※二次創作
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07
こいつは戦争だ。
僕たちはいつだって明日に怯えている。
今日一緒に戦い、一緒に寝た仲間が明日も一緒に生きているとは限らない。
それでも夢を見る。
戦争なんてなくなって、銃もなくなってしまう夢を。
そんな……実現するはずもない夢を。
あれから数ヶ月が経過した。
東ソルコタ神聖解放...イチオシ独立戦争 7 ※二次創作
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06
「……うぅ」
つらい。
くるしい。
下腹部をさすりながら、僕は寝床へと戻る。
寝床はみんなと同じところだ。広い部屋の隅で、肩を寄せあって眠る。
寝転がって睡眠をとる、ということをしたことがない。ベッドというのは寝るためではなく、その……大人との勤めを済ませる場所だから。
一人でいる...イチオシ独立戦争 6 ※二次創作
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05
「なんだこれは……なんなのだ! こんなもので、やつらはどこまでソルコタを馬鹿にするつもりなのだ!」
壁ひとつ向こうで、導師が声を荒らげている。部屋の中にいるのは導師だけだ。ついさきほど、三台の軍用トラックから回収してきた物資をその部屋に移し終え、物資の確認に導師に入ってもらったところだった。...イチオシ独立戦争 5 ※二次創作
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04
半壊した建物から出てきたとき、下のみんなは勝利の雄叫びをあげ、空に向かって銃を乱射していた。
僕を含めて十数人くらいの部隊は、大人の指揮官の他はみな十八歳以下だった。一番年上のオデルが十八歳になったばかり――だったが、どうやら向こうで死んでいるみたいだ。一番下は十一歳のチャールズ。僕らは簡...イチオシ独立戦争 4 ※二次創作
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03
人のいない廃墟となったレンガ造りの建物を抜け、僕は目的地を目指す。
他のみんなは正面から経路を塞いでいるはずだ。
物資を積んでいる車両を待ち伏せするために。
僕の役目は、正面に気をとられている敵の背後からの強襲だ。早すぎれば意味がないし、遅ければ効果が薄い。よくタイミングを見計らわなけ...イチオシ独立戦争 3 ※二次創作
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02
「これは、お前たちが生き残るための戦いなのだ」
導師は僕らに常々そう言い聞かせてきた。
このソルコタという国は、西側のコダーラ族によるソルコタ政府と、東側の導師の率いるカタ族による東ソルコタ神聖解放戦線に分かれ、僕らが生まれるずっと前から争い続けている。
その理由は、僕には難しくてよくわ...イチオシ独立戦争 2 ※二次創作
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イチオシ独立戦争 ※二次創作
※この物語には残虐な描写、グロテスクな表現があります。
01
擦過音。
僕は耳元で爆ぜるその音に、とっさにその場に身を投げ出して、瓦礫の陰に倒れこんだ。
それは反射的なもので、その擦過音が耳元を掠めた銃弾の音だとはっきり認識したのは、倒れこんだあとになってからだっ...イチオシ独立戦争 1 ※二次創作
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8.
その後、二人――みくと本橋――の間に会話はなかった。
なにも言えないでいる本橋に、みくは一礼して、店から去っていった。
テーブルには、手つかずのティラミスが残されたままだった。
家までの帰り道、みくはとぼとぼと歩きながら思う。
明日、自分はまた出勤できるだろうか。
出勤しても――仕...水箱 8 ※二次創作
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7.
「妊娠がわかってからしばらくして、死産になることもなく、その子は生まれました。
元気な男の子でした。
学校に行っていないその頃の私は、漢字が難しくてほとんど書けませんでした。
だから、ゆうき、と平仮名で名前を付けました。
私に生きる勇気をくれた、初めての存在だと思って。
生まれる直前...水箱 7 ※二次創作
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6.
「ごめんなさい。そう言っていただけるのはすごく嬉しいです。でも……ダメなんです。
……え?
いえ、そういうわけじゃありません。私は誰かと付き合っているわけではないですし、今も、きっとこれからも一人です。
自分がどんな人間なのか、てんちょ……本橋、さん……は、ご存じありません。それが……そ...水箱 6 ※二次創作
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5.
「みくさん。今度……一緒にご飯でもどうですか?」
――断らなきゃいけなかったのに、なんでうなずいてしまったんだろう……?
みくはそんなことを考えながら、呆然と眼前のイタリアンを見つめた。
本橋にそう誘われたのは、働き始めて四ヶ月たった頃のことだった。
仕事の流れや、多岐にわたる商品につ...水箱 5 ※二次創作
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4.
みくが次のパート先を見つけるのに、一週間かかった。
一ヶ月くらいはかかってしまうのではないかと思っていただけに、みくは少しだけホッとした。
多少なりともお金が貯まっていたとはいえ、あくまでそれはみくの主観による金額だ。実際のところは全財産が一万円ちょっとしかない金額であり、二十七歳の全財...水箱 4 ※二次創作
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3.
勉強が可能だということと、勉強が得意だということは全く意味が違う。
そんな、当たり前の事実がみくを苦しめる。
漢字の書き取りも苦手だったが、数学はそんなものとは比較にならなかった。
そもそも中学校レベルの数学についていけなかったみくは、特別に小学校レベルの内容から教えてもらっていた。
...水箱 3 ※二次創作
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2.
「お客様。なにかご案内しましょうか?」
その言葉にハッとして、みくは手にしていたベビー服をあわてて棚に戻す。
「あ……ごめんなさい。大丈夫です」
「なにかあればお呼びくださいね。色違いやサイズ違いも案内できますので」
みくの態度に不審そうな態度をとることなく、みくにはできそうにないほがらか...水箱 2 ※二次創作
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水箱 ※二次創作
1.
「え……? パートを辞めたいだって?」
パイプ椅子で向かい合って座っていたスーパーの店長は、そう言ってから弱ったな、と言いたげに頭をかいた。
パートを辞めたい、と言った当の本人――みくは、店長にウダウダと言われることがわかっていたし、そう言われたところで自分が意見を変える...水箱 1 ※二次創作
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13 現在:同日
頭が真っ白になった。
なんてことを。
まさか本当に言ってしまうなんて。
未来の顔を直視できない。
ありったけの罵詈雑言を“彼女”へとぶつける。が、当の“彼女”はどこ吹く風だ。
『言わなきゃいけなかった。だけど言えなかった。だからあたしが代わりに言った。ただそれだけよ。これ...私とジュリエット 13 ※二次創作
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12 現在:2日目
「……」
朝食から帰ってきて、あたしは部屋のバルコニーの安楽椅子で外を眺めていた。
昨夜の夜景とほとんど同じアングルで、山間から市街地と別府湾を見下ろす。宝石のきらめきだったそれは、蒼穹と建物群に様変わりしていて、別世界から現実へと移り変わっていた。
これはこれですごくいい...私とジュリエット 12 ※二次創作
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11 8年前:同日
ロミオとジュリエット。
シンデレラ。
白雪姫。
銀河鉄道の夜。
小さい頃、そんな物語の劇を見に行っていた。
もちろん、両親につれられてのことだ。
生前、休みがなかなか合わないパパとママが珍しく一緒に休める時は、劇を見に行く、っていうのが我が家の一大イベントだったのだ...私とジュリエット 11 ※二次創作
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10 8年前:10月21日
「あ……愛、ちゃん?」
「あれ、海斗さんじゃん。あたしの未来ならここ何日か休んでますよー」
学校が終わって帰ろうとしていた矢先、あたしは海斗さんに校門で呼び止められた。
「メールも返信来ないんで、ちょっと心配してたんですけど」
「そう……か……」
「……?」
なんだか...私とジュリエット 10 ※二次創作
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9 2ヵ月前
「あれ。愛先輩って旅行とか好きでしたっけ?」
深夜、会社のデスクで息抜きに広げていた雑誌に写っている、旅館の若女将に目を奪われていたら、後輩に声をかけられた。
「んー。たまには……いいかなって」
「ウチ、かなりブラックですしねー。休める時にそういう息抜きするって大事ですよね」
「そー...私とジュリエット 9 ※二次創作
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8 現在:2日目
「あれ、おねーさん一人? こんなところで美人に会えるなんて思ってなかったなぁ」
「はいはい。あんたみたいなのに興味ないから、ほっといてくれる?」
未来と深夜まで家族風呂に入った翌日。朝食後にロビーでくつろいでいたら、知らない男に声をかけられた。
コーヒー片手にソファに座ってぼん...私とジュリエット 8 ※二次創作
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7 8年前:10月4日
「実行委員会か……本当、忙しいんだね」
「未来、本当は実行委員会じゃなくて、生徒会なんですけどね」
学園祭のお昼過ぎ、あたしは海斗さんにおごってもらったたこ焼きの最後の一つをほお張りながら、そう告げる。
ついさっきまで未来があたしの隣に座ってて、再会した海斗さんを前にどぎ...私とジュリエット 7 ※二次創作
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6 7年前:5月11日
「ううー……」
「未来、どしたの? 海斗さんとケンカ?」
「いや、そーじゃなくて……」
教室で、そう言いながら未来が机に突っ伏す。
あたしの「海斗さん」という言葉を耳ざとく聞きつけた周囲の男子が、かすかにざわついた。
未来は未だに自分が美人だっていう自覚がない。海斗さん...私とジュリエット 6 ※二次創作
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5 現在:1日目夜
脱衣場から外に出ると、湯気の向こうに圧巻の情景が待ち受けていた。
「ホントだ。きれー……」
「でしょ?」
ちょっと自慢げな未来の言葉も、あんまり耳に入らない。
家族風呂は檜風呂で、小ぢんまりしているとはいえ、二、三人くらいならゆったり入れる大きさだ。上から楓の木も葉を繁らせ...私とジュリエット 5 ※二次創作
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4 10年前
『パパとママに対する気持ちなんて、その程度だったのかしらね』
まさかと思い、婦警さんを突き飛ばして離れようとした。けれど、婦警さんはそもそもあたしがなんで泣き出したのかもわかってなくて、きょとんとしたままだった。そこでようやく、婦警さんと違う声だって遅れて気づいて……でも、じゃあ誰の...私とジュリエット 4 ※二次創作
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3 12-10年前
あたしの両親は、あたしが中学一年の時に死んだ。
交通事故だった。
アクセルとブレーキを踏み間違えた軽自動車が歩道に乗り上げ、周囲の通行人を七人も轢いたあげく、街路樹に衝突して止まった。
七人のうち、未就学児の男の子とそのお祖母ちゃん、そしてあたしの両親の四人がこの世を去っ...私とジュリエット 3 ※二次創作
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2 8年前:10月22日
あたしは、隣で眠る未来の髪をすく。
しばらくお風呂にも入っていなかったみたいで、ついさっきあたしと一緒に入ったのが一週間ぶりくらいだったらしい。その一回くらいじゃ髪質は全然戻ってなくて、あたしが羨ましくてたまらなかったサラサラツヤツヤのストレートだったはずのそれは、今す...私とジュリエット 2 ※二次創作
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私とジュリエット ※二次創作
1 現在:1日目
『次はー、始音温泉。始音温泉でございます。お降りのお客様は、お近くのボタンでお知らせください――』
バスの車窓に流れる山林をぼんやり眺めていたあたしは、運転手のアナウンスにハッとして手近のボタンを押した。
運転手はすごく渋い声で次のバス停での停車を...私とジュリエット 1 ※二次創作