AsakiNo9 【0-9】の投稿作品一覧
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グロテスクな太陽と僕との距離感が未だに上手く取れないんだ。
それの何が悪いのかと尋ねられると上手く答えられない。
ただ僕の心は宇宙で最も暗い夜明け前で時間を停止させられている。
手を伸ばせば自分の手さえも見えない暗闇に。
もはや瞬きしているのかさえ分からない暗闇に。
前も後ろも、昨日も明日も分からな...バラ色の夜明け~ショート・スト-リー~
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3.11 僕は何をしていたのだろう? そして何をしただろうか?
もう1年と8ヶ月が経つけど、あの日から多くの被災者はまだあの日に取り残されている。
まだ行方不明の息子、その便りを待つ続ける母親。
数キロ離れた遠くの街では何事もなかったように忙しい風景が流れている。
当たり前だよ。日本全体が立ち止まれ...「生命の賛歌」~ショート・ストーリー~
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<少年Aの証言>
人が生まれ変わるとして
僕は今まで何回くらい死んだのかな?
そもそも僕は僕で居続けられたのかな?
ある時は貧しい国で生まれ幼いまま死んだり、
ある時は激しい戦争の最中で志半ばで死んだり、
顔や性格や時代や生まれ育った国だとか、様々な違いはあるだろうけど。
どれだけ愛し合ったのかな?...美しき代謝 -ショートストーリー-
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何度も読み返した小説に書いてあった
「愛とはこの世で最も美しい存在」
だから僕はその小説に火を点けた
でもやっぱり灰しか残らなかった
愛が砂漠で獲物を待ち続ける蟻地獄ならば
諦めるしかないね
僕もいつか死ぬ ただ早いか遅いかの違いだけさ
ただ後悔があるとすれば
もう一度で良いから君と一緒に冬の星空を...snow by snow ~ショート・ストーリー~
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1969年。
「そう遠くない過去の話でしょ? でもそうね、あなたには歴史的に遠すぎる過去かもしれないわね」
母親の姉が乾いた笑みを浮かべながら言った。
学生運動が盛んだった1月、母親の姉が当時付き合っていた男が逮捕された。
「そんなに珍しいことじゃないわ。だってあの現場にいた殆どの学生は逮捕されたの...Ace Kileer '69 ~ショート・ストーリー~
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僕が彼女から貰った空は、今まで見上げたどんな空よりも聡明で
どこか儚さにも似た限りなく純粋に近い蒼穹色に輝いていた。
ちょうど去年の今日 11月5日だった。
僕の家族が別々の人生を歩む日を迎えた。
僕の心の中には白黒の8ミリビデオのような画質の粗い思い出たちが流れていた。
海水浴に行った日の映像。山...空切りシザーズ ~ Dear★Super☆Star ~ ショート・ストーリー ~
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「後悔したくないと思っているうちは、まだ子供なんだよ」
今考えれば、その言葉が父親の最後の言葉だった。
それが結果的にそうなっただけなのか、予めそう決めていたのかまでは分からないし、
それはもう一生分からないことなのだ。永遠に。
父親が死んでもう20年という歳月が過ぎ去ってしまった。
時間とは残酷な...楽園に対する定義とその副作用 ~ショート・ストーリー~
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昔、この町にも鬼を愛する人が居た。
町の人々から疎まれ避けられていた。
しかし鬼を愛する人は、とても優しくとても笑顔が素敵な女性だったと言う。
毎年夏が来る度に祖母はどこか遠くを眺めながら寂しそうに話してくれた。
この町の近くにある郡山という名の山に山賊が居た。祖母は山のある方角を指す。
しかしここ...鬼を愛する人 ~ショート・ストーリー~
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テレビを眺めるように見ていた。
テレビは今日起こった主な出来事を教えてくれている。
しかし僕の身の周りで起こった出来事は何一つ教えてくれない。
それはそうだ。今日は僕の身の周りで起こった出来事などテレビで知らせるほどではない。
それは幸せなこと。本当にそうだろうか?
そもそも今テレビが教えている内容...チイサナセカイ (ショート・ストーリー)
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「もう死んだ? ねぇ、死んだ?」
枯れ木のてっぺんで羽を休めていたカラスが尋ねてくる。
私は無視する。
もう何時間この樹海を歩き回っただろうか…
全く同じ景色が続いている。
遠くを見渡そうとしても霧が視界の邪魔をする。
空は灰色に覆われ、黄色い枯葉のじゅうたんは歩く度にサクサクと鳴り、
その度に何故...道徳の樹海 (ショート・ストーリー)
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人間とはどういうことだろうか?
人間は人間を愛する。
人間は人間を憎む。
人間は人間を尊敬する。
人間は人間を見下す。
人間とは矛盾で出来た生き物だ。
そんな人間を解明するために私は旅に出た。
・報告書1
私の視界は私ではない他人の視角を捉えていた。
私の知らない人物の視界だ。女性のようだ。...ヒトゲノム ~ショート・ストーリー~
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高校の卒業式を控えた3日前にタカシの死を担任から知らされた。
高校2年のときだった。古文の授業を受けていた時に、
私の2つ後ろの席に座っていたタカシが何の前触れもなく倒れた。
全身を激しく痙攣させ、口からは白い泡を吐いていた。
その日以来、タカシが学校に来ることはなかった。
今思えば、それが私が最後...忘却心中 ~ショート・ストーリー~