タグ「悪ノ召使」のついた投稿作品一覧(80)
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19.願い
ガクが立て続けにリンに指示を出した。リンはうなずくと、宿ではなく街に向って走った。路地の入り口には、突然の不穏な騒ぎになにごとかと人が集まっていた。しかも青の国の王室の使い馬車が路地に堂々と停まっているのである。
リンは路地から飛び出した。
突然の正装の若い娘の姿に、人々は驚く。ど...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 19.願い
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18. 再会
灼熱の昼間が過ぎ、滝のような夕立が過ぎ、やがて夜がやってきた。
雨の去ったころに青の国の使いの馬車がやってきて、リン王女とメイコ、そしてガクを今夜の晩餐会の会場へと誘って行った。
ひとり残されたレンは、着替えて宿の外へ出た。リン王女には、食事は宿で摂るように言われていたのだが、と...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 18.再会
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17.王女と女王
木を植える祭りの興奮も冷め遣らぬまま、海辺の町には再び夜が来た。
夕方に降った雨のおかげで、今夜はしっとりとした空気が世界を満たしている。一番大きな行事の『木を植える祭』が終わって、下町は今頃、お祭り騒ぎだろうなとリンは想像した。
本日の晩餐会は、少し海から離れた会場だ。潮の...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 17. 王女と女王
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16.夕立
苗が全て植わっても、所定の時間が来ても、青の民の興奮はいっこうに引かず、夕立が訪れてようやく『皇子の成人の儀』はお開きとなった。
雨に追われるようにして、リンとメイコ、そしてガクは宿に戻ってきた。
「やった……」
自室でつかの間の休憩をとるように言われたリンは、そっと後ろ手で扉を閉...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 16.夕立
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15.平和の絆
「レン、」
今日の行事に供をするはずのレンが倒れたと聞き、すぐさまリンは飛んできた。
今朝方はずいぶんとボーっとした印象だったのが嘘のようだ。今にもスカートをからげてガクの部屋の扉に突っ込みそうなところを、寸での所でメイコが肩を押さえて止めた。
「王女様。落ち着いて」
まるで視...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 15.平和の絆
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14.双子の恋 後編・レン
「眠れなかった……」
レンは、ぼんやりと海をみながら思った。
「リン以外の人のことを考えてすごしたのは、初めてだ」
昨夜、リンが青の皇子の宴に出かけている間、散歩に出た町でハクと名乗る娘に出会った。染めた緑の髪に、燃えるような瞳。そしてなにより、勇気のある彼女の行動と...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 14. 双子の恋 後編・レン
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14. 双子の恋 前編・リン
青の国の太陽が、今日も金色に輝きながら上ってくる。朝、真っ白な太陽を迎えた青の国は、この朝も心地よい風が吹いていた。
気温の上がる前の、涼しい海の音と共に、さわさわと玄関や道を掃く箒の音が響く。
リンたちの宿泊している宿も、のんびりと人が動き出した。
メイコも風...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 14. 双子の恋 前編・リン
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13. ヨワネハク 後編
ハクの渡した作品を、ミクの手が撫でた。
と、するりと糸が数箇所解けた。
刺繍の名人と呼ばれるハクの、まさかの失敗か?!
ミクの目がまるくなり、ハクの視線がかたまった。工房主が凍った。
くっ、と誰かが含み笑う声を、真っ白になったハクの意識がとらえた。
「あの子たち...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 13.ヨワネハク 後編
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13.ヨワネハク
夜風に誘われるようにして、ハクは過去を語る。
「実は私、ある人のお付でこの国に来たの。その人、私を嫌な状況から連れ出してくれた恩人なの……レンが髪の理由を聞きたがったんだから、覚悟して聞いて?暗い話よ」
そう言う割には、ハクの顔と口調は明るい。レンは、卓に頬杖をついて、続きを待...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 13.ヨワネハク 前編
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12. 異国の町の出会い
お祭り騒ぎに沸く異国の町を、異国の女がすり抜ける。
ハクだった。夕日よりも美しい真っ赤な燃える瞳に、まるで海岸の森のような、深い緑の髪の色。
すけるような白い肌に赤の瞳、緑の髪のとりあわせは、この国ならずともめずらしい。その不思議な美しさに、道行く人々が振り返る。そし...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 12.異国の町の出会い
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11. 宴
青の国は商人大国だ。大商人らが富をまわし、民を潤わせることによって国を回す。王政のころの王の家は残ってはいるが、カイトから数えて三代前の王が、民の声をより良く聞くためにと議会制度を発足させ、そこから徐々に民政に移行してきた。王家は、今は青の国の象徴として愛され、外国との親善のために働く...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 11.青の宴
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10. 青の皇子
快調に旅を続けてちょうど21日目に、黄の国の船は青の港に到着した。
湿った濃い空気が、久方ぶりに陸地に降り立った黄の国の一行を包む。
「こういう到着は、初めてね」
メイコが父親について商売の仕事を学んでいたころ、港につくとすぐに、陸に一歩踏み出す前に名物の菓子売りや飲み物売り、...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 10.青の皇子
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9. 幕間:黄の国にて.
そのころの黄の国は、ホルスト卿をはじめとする貴族が国を治めていた。正確に言えば、諸侯が治めるべき各地を治めた結果、黄の国全体が治まっている、という状態である。
「リン王女は、果たして、無事にお役目を果たせるかな」
リンたちを送り出し、王宮都市に戻ったホルストは、待機して...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 9. 幕間:黄の国にて.
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8. 船医兼護衛ガク,語る
リン王女を筆頭に、メイコ、レン、そしてガクとよばれた長髪の船医。
この四人が、黄の国の大使として表に立つメンバーであった。
「なぜ医者であるあなたが、表の人選に入っているの?」
「腕がたつのなら、公的な場でも護衛の役をかねてほしいと、ホルスト殿がおっしゃったのだ」
倹約...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 8. 船医兼護衛ガク、語る
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7. 船の上で
それでも表向きは政務だ。断ることは出来ぬ。
リンは、青の国へと送り出された。
青の国へは港まで馬を使い7日ほど進み、船に乗る。港は、緑の国が使用している湾の隣の入り江だ。
緑の国のものほど穏やかではないが、それでも海に面しているだけよいというものだ。
さまざまな国から来た貿...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 7. 船の上で
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6.5 すべての始まり
市井に流れているほどの情報を、実際に黄の国を担う諸侯らが知らないはずはない。
手は、すでに打たれていた。
そして、楽師にあった次の日に、リンは突然諸侯会議に呼ばれた。
きっとろくなことにならない。
そう覚悟して挑んだ場所で、リンは衝撃の言葉をつきつけられた。
「リン...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 6.5 すべての始まり
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6.『巡り』の印 隠された世界
静かなおやつの時間が過ぎ、やがてベルの音が聞こえた。澄んだ鈴の音は、リンが帰還したというリンとレンの間の秘密の合図だ。
無事に王女の身代わりを果たしたレンは、静かに、堂々と席を立つ。そのドレスのすそ捌きは、実に堂に入ったものだった。
* *...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 6.『巡り』の印 隠された世界
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5. 召使、レン
王宮広場に市の立つ日は要警戒だ。
ここ数刻で悟ったことを,レンは,明るい緑のあふれる中庭を眺めながらぼんやりと回想する.
今日は黄の国の休日.そして月に一度の,市の立つ日だ.
この日ばかりは,王宮で働くものたちもみな,交代で休み,市へ出かける.月に一度の,特別な休日に初夏の...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 5.召使、レン
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2.ミク女王
ミクの率いる『緑の国』は、穏やかな湾と険しい山を持つ。山に囲まれた小さな平地に、人は寄り添うように暮らしている。
緑の国は、かつて黄の国の一部であった。といっても、『黄の国』の一部であった時期はごく短い間であり、歴史として語り継がれるほどの、昔のことである。
『緑の国』の先祖たち...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 2.ミク女王
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私はリン。
私は王女。
私の喜びは国とともにある……!
『悪の娘と呼ばれた娘』
1. リン王女
リンが王女として生を受けた国は、豊かな国だった。豊かな穀物の実る大地は、季節になると国の見渡す限りが喜びで金色に輝く。その光の波打つ様から、この国は「黄の国」と呼ばれていた。
黄は、光の色である...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 1.リン王女