タグ「KAITOの種文庫」のついた投稿作品一覧(44)
-
友人が体調不良で早退したらしい。身体が弱いわけではないはずだけど、早退するほど体調を崩すなど珍しい。
そう思っていた矢先、そいつから電話があった。それがまた妙な電話で、奴は一言も言わないまま電話を切った。
声が出せない程体調が悪いのだろうか。
助けを求めたかったのか何なのか、電話の意図を確かめるため...KAITOの種 番外編6(亜種注意)
-
ほぼ透明なマフラーや色素の薄いほのかに水色をした髪が、内側から紫に染まっていく。滲み出る紫の色はどんどんと濃くなっていき、あっという間に葡萄と同じ色になった。
コウがグレープアイスを食べたのだ。
今日は美鈴と黒ゴマKAITOが来ていて、お土産にと果物のアイスを持ってきてくれた。そのうちの一つ、グレー...KAITOの種32(亜種注意)
-
頭が重くて。痛くて。
息が苦しくて、辛い。
昨日から体調が悪かった。それは自覚している。それでも軽かったし、大丈夫だろうと思っていた。
朝も辛かったが、無理して活動していた。それが祟ったらしい。
会う人会う人皆に心配され、友人にはことごとく帰れと言われた。
体調も最悪だし、仕方なく帰ることにしたが、...KAITOの種31(亜種注意)
-
小さなホールケーキに蝋燭が一本。火が点されたそれを眺める二人の顔はキラキラと輝いていた。
モカとコウの誕生日祝いだ。
…正確にはモカが昨日でコウが明日だがまとめてしまった。何度もケーキ買いたくないし、あまり有り難みがないような気がして仕方なかったからだ。
しかしよく誕生日を忘れないでいたものだと自分...KAITOの種30(亜種注意)
-
気が付くとオルゴールは止まっていた。
話し終えた老女がふう、と息をつく。青年が飲み物でも持ってきましょうか、と尋ねたが老女は静かに断った。
青年の膝の上にある音の止まったオルゴールに老女が手を伸ばす。青年に手渡してもらうと、老女はネジを巻きはじめた。カリカリとネジの音が響く。
「もう歳ね……この程度...思い出とオルゴール3・完(KAITOの種/亜種注意)
-
がさがさと部屋中にビニール袋の音が響く。彼女は家中の“ゴミ”を袋の中に放り込んでいた。別れた彼氏との思い出の品は、彼女にとってゴミでしかなく、あるだけ辛いので捨てる。これが彼女の考え方だった。
あれもこれもと彼女がビニール袋に突っ込んでいる横、机の上で種KAITOが歌っていた。柔らかいがよく通る歌声...思い出とオルゴール2(KAITOの種/亜種注意)
-
陽の光が窓から差し込み部屋を暖める。暖かい空気と、それから歌がこの部屋には溢れていた。
窓際のベットに一人の老女。その直ぐ傍の椅子に、青年が座っている。
歌は青年の口から紡がれていた。柔らかく澄んだ透明な歌声。爽やかと表される声は老女の耳にとてもよく馴染んでいた。
青年は変わった髪を持っていた。薄く...思い出とオルゴール(KAITOの種/亜種注意)
-
街中でイルミネーションが点り、豪華な料理が出てプレゼントをもらう。子供は朝起きると綺麗にラッピングされたプレゼントが置いてあり、サンタに感謝する。
十二月二十五日、クリスマスの事だ。
……どうしよう。
気づけは二十六日、クリスマスは過ぎていた。
売れ残りのケーキが安くなっているのを見て、やっとクリス...KAITOの種29(亜種注意)
-
寒い日が続いている。
雪が降るとか、身を切るような寒さでは決してないのだが、それでも寒い。
年々暖かくなっているとはいえ、前後の季節に比べるとやはり寒い。
要するに、家から出たくない。
外の気温は辛うじて日中十度を越えるぐらいだ。そんな寒い所にわざわざ行きたくない。
そう自分では思っているのに、外に...KAITOの種28(亜種注意)
-
真っ赤に焼けた椛。夕焼けと相俟って、世界が赤く染まっている。
自分にとっては一年ぶり、二人にとっては初めての紅葉を見に来た。
夕焼けで街が赤く変わっていくのはよく見るが、木が紅いとまた別の景色だ。どこまでも、あかい。
「……………真っ赤…ですね……」
肩に乗っているモカが呟く。
言う通り真っ赤としか...KAITOの種27(亜種注意)
-
学校とは縛りの多いもので。修学旅行という特別な場で、自由行動なんて言っていても実際は班で固まって移動、さらには必ず行かなくてはならない場所を作る。先生が待っているから、きちんと班で行動していて全員無事だと知らせなくてはならない。
何と言うか、不便で融通の聞かない所だ。そういう所が面白く、この上ない程...KAITOの種 番外編5(亜種注意)
-
「みーっ!」
「お帰りなさい」
二つの声と三つの視線に出迎えられ、少々驚く。玄関でモカとコウとそれからもう一人、黒ゴマKAITOが待っていた。
…やはりいつもと違う感じがする。
黒ゴマKAITO一人いるだけでこんなにも違うものだろうか。
『頼みがあるんです。お願い出来ますか?』
そう美鈴が電話してき...KAITOの種26(亜種注意)
-
満月の夜は星が少ない。月の光が星を飲み込んでしまうからだ。
ベランダで星を見上げながら三人でアイスを食べる。というか二人に食べさせる。
手摺りの上にいる二人が落ちないかと思いつつも、床だと高さ的に見にくそうなので仕方がない。なるべく大人しくしてもらおう。
「マスターっ」
先程からコウはアイスの催促ば...KAITOの種25(亜種注意)
-
机を隠すように覆いかぶさる靄。
水分の多い湿った靄は、近づくと手元が見えなくなるぐらい白い。
大きく息を吸い込んでゆっくり吹くと、ぶわりと舞い上がった。
霧の中から歓喜の声が聞こえる。
「みーっみー!!」
白い机の上では姿は見えないが、跳びはねる影が靄に映っている。
面白いか?
尋ねると間髪入れずに...KAITOの種24(亜種注意)
-
毎朝家を出るときに窓を網戸にしておく。
風が入ってそれなりに涼しいからだ。
だが、今日みたいに風がない日は意味がない。
…暑い。
とっとと家に帰ってクーラーをつけよう。
これは家でじっとしていたら過ごせるような気温なんかではない。
というかモカとコウは大丈夫だろうか。
網戸にしてあるとはいえ、家の中...KAITOの種23(亜種注意)
-
緑茶。ジュース。チョコ。ポテチ。鶏肉。素麺。袋麺の醤油と塩。シーチキンとコンビーフとコーンの缶詰。アイス。
買い物リストを見ながら買った物を思い出す。
…よし、ない!
ホッとしながらリストをしまって地面に置いていた袋を持ち上げる。
…………おっもいんですけど!!
マスターったらどうして重かったりかさ...KAITOの種 番外編4(亜種注意)
-
笹を貰った。
そういえば、今日は七夕だった。
雲のある紅色の空を背中に、道を歩く。
歩く度に乾いた音を立てる笹を見て思う。
願い事か…。
願い事を短冊に書いて笹に飾ると、願いが叶うんだ。
折り紙と画用紙。それから笹を用意して、モカとコウに説明する。
真剣に笹を眺める二人は理解してくれただろうか。
モ...KAITOの種22(亜種注意)
-
玄関に入ると、大きく、コウの声が響いているのがわかった。
…五月蝿い。
美鈴を置いてすたすたとリビングへ向かう。
帰ってきた事に気がついたらしいコウが一層騒ぐ。
五月蝿いぞコウ。
「み!」
精一杯に伸ばしてくる手は、はたしてどういう意味なのか。
黒ゴマKAITOがお帰りなさいですと頭を下げてきた。
...KAITOの種21(亜種注意)
-
アイスとその他諸々が入った袋が重い。
歩く度に揺れ動き、手が痛くなっていく。
その横で美鈴がアイス入りのぶんぶんと袋を振り回している。
そうしていると、やはり高校生のようだ。
ぽつりと美鈴が話しかけてくる。
「…モカ君が熱出した時、何考えましたか?」
美鈴の口調は答えを求めているような感じではなかっ...KAITOの種20(亜種注意)
-
「か…可愛い……!」
何度目かの台詞。
ソファに座る彼女が言った。
視線の先の机にはモカとコウがいる。
黒ゴマイトがその横でため息をつく。
「マスターさっきからそれしか言ってないですよ」
「しょうがないじゃん。クロより断然可愛いんだから」
それを聞いて拗ねたように、顔を膨らませる黒ゴマKAITO。
...KAITOの種19(亜種注意)
-
雨が降っている。
豪雨とまではいかないが、それなりの量だ。
問題は雨よりも、風。
強い風が吹いていて雨を強くさせている。
意味の無い傘を閉じて、雨をもろに受ける。
あっという間にびしょ濡れになってしまった。
風が強くて元から濡れていたが、傘があるかないかで大分違うな。
水を吸って重くなった服がどんど...KAITOの種18(亜種注意)
-
窓から入ってくる風は湿り気を帯びていて、今すぐにでも雨が降りそうだ。
背中でその風を受けながらフライパンを動かして、綺麗に焼き上がったホットケーキを皿に移す。
ふむ。
我ながら中々上手く作れたと思う。
一枚のホットケーキに包丁を通す。
何等分がいいのだろうか。
普通ならば六等分だが、食べる人の事を考...KAITOの種17(亜種注意)
-
熱くて、熱くて。
頭がぼーっとする。
とにかく熱くて苦しい。
起きてるのか寝てるのかもよくわからない感覚。
周りの音も聞こえているのに、どこか遠い。
何を言っているのか、頭で理解出来ない。
誰の声だろう。
目を開けたつもりでも視界は真っ暗で。意識して今度こそ、とやってみてもぼんやりとしていてよくわか...KAITOの種 番外編3(亜種注意)
-
太陽が一番元気な時間。
マスターが帰ってくるまで、まだまだ余裕がある。
洗濯物はちゃんと干してあるし、さっき掃除機もかけた。
ベッドメイキングもした。
マスターの部屋の窓はもう少し開けておくとして…後は……えーと………。
……無い?終わった?
あ……いやでも買い物はマスターに頼まれてないし。
…やっ...KAITOの種 番外編2(亜種注意)
-
カフェモカアイスとその他いくつかのアイスを自転車の籠にいれて風を切りながら走る。
いくつかの出来事を振り返りながら思う。
己の不甲斐無さと、コウの強さ。
二度、助けられた。
とても大きな二回。
落ち着いたつもりでいて、全く落ち着いていなかった。
冷静に成り切れずにいたせいで周りが見えなくなっていた。...KAITOの種16 後編(亜種注意)
-
何度もお礼を言い、電話を切って、冷蔵庫へと向かう。
そういえば…買い物しないで帰ってきたのだった。
不安だったら種を植えたのと同じアイスの方がいいと言っていたが。
カフェモカアイスあっただろうか。
見落とさないように冷蔵庫を漁る。
…残り一つ。ギリギリだな。
というか足りない気がするが。
とりあえず...KAITOの種16 中編(亜種注意)
-
モカの様子がおかしい。
熱がある。
息も荒い。
とりあえずわかるのは、尋常ではないということ。
泣きじゃくるコウの横で、モカが苦しそうに目を開ける。
「………………ま、す……た…?」
大丈夫か、どうした?
ソファの上にクッションを置き、モカをその上に移動させる。
コウが涙を拭いながらソファに飛び乗っ...KAITOの種16 前編(亜種注意)
-
久しぶりに夕暮れ前に帰途についた。
珍しく早く家に帰れるな。
…あ。そういえばアイスが残り少なかったはずだ。
買ってから帰るか。無いと文句を言われそうだし。
そう思い至って道を変えた。本来真っ直ぐ進むべき所の角を曲がる。
するとそこには妙な光景があった。
「は、な、し、て、く、だ、さ、い~」
「本当...KAITOの種15(亜種注意)
-
陽の光が部屋に差し込んでくる。
暖かい。
ぽかぽかと気持ちが良い。
薄い毛布を手にして窓際へ向かう。
今日こそは昼寝したい。
忙しいのとコウの邪魔で、ここのところ昼寝する暇が無かった。
麗らかな今日。昼寝には最適だ。
陽に当たりながらぬくぬくと眠ろう。
「み」
コウが後ろを付いて回る。...KAITOの種14(亜種注意)
-
春、と呼べるほど暖かい。
寒い日も少なくなった。
ただ天気がころころと変わる。ここ最近雨ばかりだった。
久しぶりに晴れた今朝、気分も自然と良くなるものだ。
雨が嫌いなわけじゃないが、しばらく続くと流石に飽きてきて、太陽が恋しくなる。
まぁそう思えるのも雨のおかげだったりするわけだが。
天気が悪かった...KAITOの種13(亜種注意)
1
- 2