タグ「恋」のついた投稿作品一覧(23)
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むかし帝に愛された
身分の低い桐壺さま
みなの嫉妬にさらされて
はかなくこの世を去りました
忘れ形見の光る君
聡く賢く愛らしく
誰もが笑みを誘われる
後ろ盾こそないものの
桐壺さまを懐かしむ
帝のもとに新しく...1.桐壺・反し
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一
いずれの帝の御代であったか
一人の帝に女御更衣(おおくのきさき)が
お仕えしていた頃のこと
まことの后は未だ決まらず
身分の高い女御もいれば
身分の低い更衣もいたが
帝に誰より愛されたのは
父を亡くした一人の更衣
内裏に数ある御殿のうちの...1.桐壺
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寄せては返す波が
このごろやけに荒れているね
強い風に煽られては
岩にぶつかり散っていく
岩はびくともしないのに
風がやまないものだから
どうにもならないと
目に見えているのに
何度も傷ついて また
くりかえすんだ...48.岩うつ波の砕けては
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ため息満ちる昨日が 期待をかけた今日が過ぎ
涙でくらした今日が 希望を託す明日が来る
出逢う前を思い出せないほどに
あなたに夢中なのに
どうにも自由の利かない日々は
難波潟の葦の ほんのひとふしほどの
短い間でも あなたに逢いたい
あなたに逢わぬまま 過ごしていくなんて
なんてつらいことでしょう
迫...19.ほんの少しの間さえ
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こんなにも熱くあなたを愛していると
幾千の言葉を並べて主張しようか
並べても並べてもきっと言い足りなくて
言葉がどんなに無力かを思い知るだろう
かくとだにえやは言ふ こんな風に、と
譬えることもできぬ激しい恋を
あなたは知らないでしょう
僕の燃える思いを
心を灼き尽くして
なお已まずに焦がれていると...51.言葉にならぬ燃える思いを
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君と出逢えた奇跡を
それとも そう 運命を
幸運を噛み締めては
感謝しているんだよ
その隣りにいられる喜び
その手を取ること許される名誉
誓った言葉 嘘じゃない
日ごと新たにする決意
君だけを愛し続けると
僕がよそを向くときは...42.波はあの山を越えない
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急に人生が終わったとしても
悔いも未練も残らないぐらい
いつも全力でいるつもりだけど
やっぱり未練は残るんだろう
明日を迎えれば また君と会える
何度重ねても飽きない夜明け
胸膨らませて歩き出す朝
生きていきたいと心から願うよ
君と過ごす時をいついつまでも
惜しからざりし命さへ大切に...50.君といたいと心から
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あの山のふもと 広がっているのは
一面の笹原よ 名所だと君が語った
通り過ぎる風に さやさやとそよぐ
そよぐ そよぐ そうよ そうよ
さやさやと ささやきあった
二人でつむいだ愛を
どうして忘れるでしょう
わたしが忘れるでしょう
いつもいつも心から
想っているというのに...58.どうして君を忘れるでしょう
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昨日も今日も飽きることなく
岸に波が寄せては返し
返した波がまた寄るように
繰り返す日も 明けては暮れる
夜になるたび 夢を見るたび
誰にもみつからなくなるたび
人目気にして昼は会えない
あなたと会えたらいいのにな
夢の通ひ路 辿っていくよ
せめてひとときの慰めを...18.夢の通ひ路
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垂れ込める雲 土砂降りの雨
気が滅入るんだよ 気圧のせいさ
自分の外に理由探して
尤もらしく説明しても
天高く風そよぐ穏やかな日も
変わらず心は晴れぬまま
わかってるんだ本当は
目を逸らしたって消えやしない
かこち顔に涙伝うけど
月やは物を思はする...86.月やは物を
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神さまに一つ頼るなら
つれないあの人を どうか振り向かせてと
そよぐ風になびくように 僕になびかせてと
そう祈るでしょう
ねえ 初瀬の山おろしよ 聞いておくれよ
あの人の心を そっと一吹きしてよ
恋の苦しみばかりを 煽らないでよ
激しかれとは祈らぬものを 今日も胸が痛いんだよ
叶わない夢だというなら...74.風に祈りを
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僕だけの恋だったあの頃を通り過ぎ
君との恋になったあの瞬間から
バラ色の日々がこのまま続くと信じていた
二人の想いさえ一つなら何でも乗り越えていけると
広がる海を前にして 楫を失くした舟人が
ゆらゆらと頼りなく 波間を漂うように
行方も知らぬ恋の道 世界はこんなにも大きくて
僕らはこんなにちっぽけだ...46.楫を失くした舟人が
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それでは一つ謎をかけましょう
テーマは「恋」でどうですか
沖の石とかけて我が袖と解く
その心は さあわかるかしら
平気な顔がうまくなったわ
いい比喩でしょうとうそぶいて
日の光を浴びた水面(みなも)が
明るくきらめくように
潮が引いても隠れて見えない
沖の石のように 僕の袖は...92.沖の石の僕の恋
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景色美しいあの島を
あなたに見せてあげたいわ
今日も漁師が海に出る
波の間を舟が行く
まるでこのわたしも
あの中の一人みたいね
絶えず飛沫を浴びて
海で生きているかのよう
雄島のあまの袖こそは
かくも濡れたことでしょう...90.見せてあげたいこの袖を
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何に動じ揺れる様子もない仮面を
今日もわたしは被れていたかしら
可愛げがないくらいでちょうどいいのよ
恋心なんて無縁なふりをして
芽生えた想いは 気づいていたけれど
何ができたでしょう 許されぬ立場にあって
絶えなば絶えね玉の緒よ 人に知られるくらいなら
忍ぶることのいずれは 弱ってしまうから……
...89.絶えなば絶えね玉の緒よ
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あなたと過ごしたひとときは
かりそめの宿り 短い夜
たとえれば刈り取った芦の
ほんの一節ほどの
難波江の 芦のかりねの
一夜ゆえ いついつまでも
想っています あなたを深く
季節すぎても散らぬ花
切ない心はあなたのものです
忘れられたらどんなにか...88.一夜ゆえ
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君の居場所つきとめて まっしぐらに駆けつけて
その腕の中飛び込めたらいいのに
思うに任せぬ僕は ここに縛られたままで
受け身に君の訪れを待ってる
花びらくるくるちぎって
来る、来ない、来る、来ないと 今日を占いながら
昨日の君が来なくても 松帆の浦の夕凪に
今日の君こそ来てくれる 信じているのいつま...97.君に焦がれる
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届きようのない人と
すっぱり諦められたなら
胸が痛んだとしても
きっと高は知れていた
なまじ顔を合わせて
言葉さえ時に交わせて
つい夢を見てしまう
まるで手を伸ばせそうで
いっそあなたと出逢わなければ
この苦しみも知らずに済んだ...44.いっそあなたと
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最初の一ページが遠い昔のよう
指を折れば少し大袈裟だったとわかるけれど
一枚一枚引き返せない扉を
二人で開いてここまで辿り着いたわね
わたしたちの未来はまるで
果てしないようだけれど
本当は一日先も見通せないわ
長からん心も知らず 永遠を誓うあなたは
今でこそ嘘偽りなく そう言うけど
黒髪の乱れて今...80.物思いの朝
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約束したのとうきうきしてた
あなたが今は打ちひしがれて
会いに行くよって言ってた彼は
結局来なかったのね
やすらはで寝なましものを
信じて起きていたのでしょう
ときめきが不安に移り変わって
月が傾くまで
恨み言一つも言っておやり
ひどいことだと教えておやり...59.月が傾くまで
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みかの原という名前を
高い評価と共に聞く
歌に詠まれる名所なのだって
いづみ川という名の川が
湧き出ているとも聞いたよ
きっと美しい流れなのでしょう
いづみ川のように
いつみきとてか
こんなにも恋しいの
あなたの何を知ってるんだって...27.あなたの何を知っていて
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噂になってるなんて
早すぎるんじゃないかな
まだ芽生えたばかりの
若葉のような恋だよ
誰に打ち明けてもない
ただ自分だけの秘密だったの
人知れずこそ思ひそめしか
あなたが好き 飛び立てそうなほど
胸の空が爽やかに晴れるほど
あなたが好き 体じゅうが叫ぶ...41.人知れずこそ
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あなたが僕をどれだけ知っているだろうと考えたとき
言葉を交わせるだけで十分幸せだって思った
閉じ込めていたつもりで すまし顔でいたつもりで
気づけば物わかりよくいられないぐらい育ってたの
もう忍ばせておけないよ もう隠しておけないよ
あふれる想いは 物や思ふと人の問ふまで
同じことならいっそ 叫びた...40.物や思ふと