文字と言葉に埋もれるひと。
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四時間目はとても眠くなる。お昼休みをはさんだ後は、授業を受けるみんなの背中は丸い。
とくに、国語は嫌いだ。国語担当の坂本の声は間延びしてて、もったりしてる。あんな声で教科書を朗読されたら眠くなるに決まってる。
最前列の西野は、寝たら気付かれると思ってるからがんばって揺れてる体をしっかりさせよう...18回目の青春
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『世界が終わる日のはなし』
C、少年と少女
自分が死んだら、一体どれだけの人が悲しんでくれて、どれだけの人が安堵するのだろう。
僕は十七歳になる少し前に、幼い頃に死んだ母と同じ心臓病にかかった。その日から父親は狂ったように酒を飲んで泣いて、仏壇の前で写真の中の母に謝り続けていた。
もともと身体...『世界が終わる日の少年少女について』Pat.C
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『世界が終わる日の少年少女について』
B、少女のはなし
三階の離れ校舎の一番奥に理科室がある。その廊下から本校舎へ向かう廊下の途中に移動教室以外じゃめったに使わないトイレがあって、そこはとても汚いことをする場所にうってつけだった。
ピンク色のタイルが色褪せて濁った色になっている。扉を開けるとそ...『世界が終わる日の少年少女について』Pat.B
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『世界が終わる日の少年少女について』
A、少年のはなし
「なあ、世界が二十一日で滅亡するって知ってる?」
「あー、マヤ文明とかいうやつだろ」
「そうそう。でも実際そんなこと言われても実感わかないよなあ」
「ほんとほんと」
僕はそう答えながら、教室の壁にかけられているカレンダーに目をやった。二十一日...『世界が終わる日の少年少女について』Pat.A
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激情ストイック
富士の樹海では、実際のところ、方位磁石は狂わないのだという。
調子を合わせることよりも、狂う方がとても簡単で容易い。距離の測り方も、関係性も崩してしまうことの方が楽で脆く、そして呆気無い。
くっついてみたいと思うのは簡単で、でも実際には難しい。彼と私の距離は、物理的な距離は近か...激情ストイック
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入り込んだ部屋は音も無く
僕と君は冷たい床に寄り添った
なにも聴こえない なにも喋らない
問うことも笑うことも、消えてしまう
12の思念をばらまいても
おなじ場所に居られない
36の希望を抱いても
反転した箱に振り回される
時間も無く温度も無く息も伝わらない
( 聴こえるかな? )...キューブ
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ビルの隙間の四角形の空 とどかないな
横断歩道横切って、人の隙間で息をした。
半透明の電話ボックス 聴こえるのはなに?
線は途切れてなんにも伝わりはしないのにね
改札の向こう 僕たちは二人きり
電車の窓まで 君と僕で一人ずつ
突き抜けのカフェでまちあわせ
250円のカフェラテと 上目のアイスココアで...おとのふるまち
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雨降る夜に 灯りともして
傘をくるり回して水たまり
光のメロディ、アスファルトに落として
誰も見てない世界
誰も知らない世界
公衆トイレの相合い傘とか
道ばたのチョーク遊びとか
いつか消え去ってしまうのさ
届かないと知っているのに
朧月夜に手を伸ばす...澪標
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古ぼけた懐中時計 いつもの午後3時25分
毎日向かう電話ボックス
雨にぼやかされるビニール傘立てかけて
冷えた指先でボタンを押す
何度も押し続けて来た11桁
rainy,rainy,
ねえ湿気も雨も吹き飛ばしてよ
ねえ見えない曇りも空も綺麗にさ
機械越しに届く音声
昨日も、今日も、明日も無くて...rainy
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赤色三角の標識の下
蹲る雀を 爪先でつつく
鳴く 鳴かない
きみはしゃがみこんで
一人でさけんだんだ
そのまま そのまま
通り過ぎることが出来たなら泣くこともなかったさ
鳴かなかった
涙は出なかった
ばらまいた言葉は風に砕かれ青い空に消えてしまって...はろー、色褪せた君へ。どうぞ。
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十六番地にある古く寂れたロッカーを誰も知らない。
その街は、誰もが行けるという街ではない。
第三土曜の夜に、砂糖水を小瓶に入れて月明かりに15分照らす。小瓶と言っても、サイズは問わない。自分の手を広げ、手のひらから指先までを起てた時に隠れるサイズで良い。蓋は閉めてはいけない。
もしも土曜の夜が雨で月...わすれさられたまち