タグ「焔姫」のついた投稿作品一覧(49)
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第四章 01
鎮魂の儀から数日たち、この都市国家にもいつも通りの日常が帰ってきていた。
男は王宮の広間で弦楽器を爪弾いていた。目の前では、焔姫が夕の祭事を行っている。
男の脳裏からは、鎮魂の儀を終えた後の悲しげなほほ笑みをたたえた焔姫の姿がどうしても離れなかった。
この国の宮廷楽師となって九...焔姫 18 ※2次創作
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第三章 05
真夜中。
鎮魂の儀を終えた二人は、王宮のバルコニーへとやってきていた。
ろくな休憩も取らず、夜明け前からつい先ほどまで鎮魂の儀を執り行っていた二人は疲労困憊だったはずだが、男はともかく焔姫は疲れている様子などほとんど見せない。
あと数刻もすれば夜が明けて、新たな一日が始まる。
...焔姫 17 ※2次創作
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第三章 04
王宮の入口に、民衆の長い列が出来ている。
それは王宮前の広場だけでは収まらず、その先の大通りへと続いていた。
鎮魂の儀。
それは、民が王宮内に入る事の出来る数少ない機会だった。
正確には、王宮に入るのではない。王宮入口にある、地下洞穴へと向かうのだ。
この国の要とも言える地...焔姫 16 ※2次創作
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第三章 03
王宮のバルコニーで、国王が焔姫の凱旋を待っている。
国王の隣にいるべき妃はいない。男が聞いた話では、焔姫を生んだ時に亡くなったという。
焔姫には死産したという兄以外に兄弟はいない。国王は焔姫の母が亡くなって以降、新たに妃を迎える事をしなかった。
焔姫の血族は国王以外には、国王の...焔姫 15 ※2次創作
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第三章 02
街からやや離れた荒野で、両陣営がにらみ合っている。
その様子を、男は戦場から離れた小高い丘の岩陰から眺めていた。
草木の生えない荒れた平野では、地の利を活かした戦術がありそうには見えなかった。
男のもとには、伝令兼護衛として近衛兵が四人ついていた。そのうちの一人はアンワルという...焔姫 14 ※2次創作
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第三章 01
西方の大国の軍が壊滅してから、四ヶ月が経過した。
焔姫の弁の通り、西方の大国から報復があるような事態にはならなかった。
男がこの都市国家の宮廷楽師として召し抱えられてから、まもなく九ヶ月が経とうとしている。
それだけの時間が経過してなお、男は未だに焔姫の曲が作れていないままだっ...焔姫 13 ※2次創作
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第二章 07
それから、およそ三週間が経過した。
結局、戦は起きなかった。
彼らは味方同士で食糧を奪い合い、裏切り、殺し合ったのだ。
自分たちが生き残るためにこの国に戦を仕掛けるほどの協調性も団結力も無く、皆の意識を統一出来る指揮官もいなかったのである。
そんな中、やっとの事で混乱極まる野...焔姫 12 ※2次創作
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第二章 06
紅蓮の戦装束が、風になびく。
焔姫は戦装束に鎧を重ね、精緻な造りの兜を被っていた。
手にした細身の剣が、中天に昇った陽の光を反射して輝いている。
その戦乙女から少し距離を取る形で、大勢の人々が彼女を取り囲んでいた。これから始まる決闘を今か今かと待ち望んでいるのだ。どこから聞きつ...焔姫 11 ※2次創作
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第二章 05
翌日。
朝の祭事のあと、焔姫は巫女の衣装から戦装束へと着替え、また街の正門前へとやってきていた。
正門前には五百の兵士と将校、そしてナジームもいる。
その最前列に立つ焔姫と彼女についてきた男の前には、昨日の貴族と軍人が再びやってきていた。
「……それで、汝らの意見はまとまったの...焔姫 10 ※2次創作
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第二章 04
その夜。
男は王宮の自室へと帰ってきていたが、街のすぐ近くに大軍がいるのだと思うと、自らに出来る事がないと分かっていてもどこか落ち着かず、なかなか寝つく事が出来なかった。
あれから焔姫は軍本部でナジームの他、数名の軍将校と会議を行い、これからの方針を決定した。
結局、焔姫の言っ...焔姫 09 ※2次創作
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第二章 03
街の正門からは、街一番の大通りの向こうに王宮がたたずんでいるのが見える。
王宮も街中の建物も、そのほとんどが赤茶けた石造りだ。街の周囲は荒れて干からびた大地が広がり、背後には峻厳な山脈。木材は望むべくもなかったが、良質な石材が山から取れたためだ。水が貴重なこの国では、土壁もあまり作...焔姫 08 ※2次創作
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第二章 02
焔姫は物見塔へとやってきていた。眼下の街の正門前では、この国の兵士達が慌てた様子で隊列を整えだしている。
男が慌てて追いかけてくるのを、焔姫は少しばかり冷めた目で見ていた。が、男は決して焔姫のそばを離れようとはしない。焔姫は焔姫で言う事が面倒だったのか、男がついてくる事を特に咎めよ...焔姫 07 ※2次創作
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第二章 01
男が王宮の宮廷楽師として召し抱えられてから、早四ヶ月が経過しようとしていた。
時刻は夕方、太陽が傾き、地平線へと近づく頃。
朝夕の一日二回、王宮の広間で行われている祭事に男は出席していた。
祭事と言っても毎日やるものである事からか、そこまで格式張ったものでは無かった。
祭事用...焔姫 06 ※2次創作
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第一章 05
「おはようございます。貴殿は……もう、お目覚めでしたな」
翌朝。
夜明けすぐ、丁寧なノックと共に四十代後半の男性が男の部屋に入ってきた。
恰幅のいい体型に、人のよさそうな温和な顔。よく見ればその衣服も細かな刺しゅうや装飾品が取り付けられて男性に合わせて揺れている。一見しただけでは...焔姫 05 ※2次創作
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第一章 04
「ここが厨房で、その奥は使用人達の居室じゃ。なれに……それ以上の説明はいらぬな」
「この下に地下水脈の水汲み場と祭事用とは別の祭壇がある。なれにはあまり関係ない所じゃな」
「この通路から先が軍の本部と宿舎じゃ。余が王宮におらぬ時は、大抵ここにおるじゃろう」
「この広間は朝夕の祭事の場で...焔姫 04 ※2次創作
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第一章 03
「ここが、楽師さまのお部屋になります」
王宮の侍女に案内されたその部屋はそこまで広いわけでも調度品が高価なわけでもなかったが、それでも男のこれまでの生活からすれば格段に快適な部屋だった。
部屋は、王宮全体と同じく石造りだった。壁には人が通れない大きさではあるが、開口が作られている。...焔姫 03 ※2次創作
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第一章 02
男は広間の中央まで来ると、焔姫に向かって一礼して床に座った。
あぐらをかき、楽器を胸に抱くように構える。
「先ほどの者と同じく、私もこの国に来て日が浅く、多くを知りません。まだこの国や姫の歌を作るにはいたっておらぬ故、父から語り継いだ歌を披露いたします」
男の言葉に、焔姫はともか...焔姫 02 ※2次創作
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第一章 01
石造りの王宮の広間で、吟遊詩人が歌を歌っている。
石造りの王宮は壮麗だったが、かといって過度な装飾が施されているわけではなかった。
広間の端で控えている男は、中央で歌う吟遊詩人を眺める。男のほとんどボロ同然の服と比べると、彼の服はずいぶん小綺麗だった。彼が言うには、今歌っているの...焔姫 01 ※2次創作
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焔姫 ※2次創作
プロローグ
石造りの部屋で、男が必死の形相で羊皮紙に何かを記している。
それほど広いわけでもないその部屋には、簡素だが作りのしっかりした机と寝台がある。この部屋は男の居室なのだろう。
部屋の外はすでに真っ暗で、深夜のようだった。
机上には小さな器があり、明かり用の油を入れて...焔姫 00 ※2次創作
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