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第十章 悪ノ娘ト召使 パート8
初めに意識を取り戻したのはアレクだった。自らがまだ生きていることに不信感を覚えながら立ち上がったアレクは、近い距離で気を失っているメイコに駆け寄るとすぐにメイコを抱き起こし、少し焦る様な声でメイコに向かってこう声をかけた。
「メイコ隊長。」
まさか、もうこと切れ...ハルジオン60 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第十章 悪ノ娘ト召使 パート7
戦の音が止んだわ。
私室の窓から戦闘の様子を眺めていたリンは、唐突に静まった周囲の空気を確かめるように耳をそばだてた。先程、メイコらしい赤髪の剣士が王宮玄関へと侵入して行く姿が見えたが、もうすぐここにも反乱軍がやってくるのだろうか、と考える。どうしてこんなことに...ハルジオン59 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第十章 悪ノ娘ト召使 パート6
メイコの反乱が勃発した時、守備に残っていた人物がレンで無ければどうなっていたか。歴史にもしも、はあり得ないが、もしも、を想像して考察することが未来の人類に共通する癖として存在する様子である。この時、レンはロックバード伯爵が言い残した言葉を忠実に実行していた。即ち、メ...ハルジオン58 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第十章 悪ノ娘ト召使 パート5
黄の国王立軍が青の国の軍の迎撃の為に王宮を出立してから、四日ほどが経過した。
その頃、反乱の準備を完成させ、後は蜂起するタイミングを待つばかりであったメイコは黄の国城下町の一角、南西地区にある地下倉庫を仮の拠点として最終の確認をアレクと共に行っていたのである。その...ハルジオン57 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第十章 悪ノ娘ト召使 パート4
カルロビッツの戦い。
ミルドガルド中世史における最大規模の戦いの一つと呼ばれることになったその戦いは、ミルドガルド中世史における最後の覇権戦争であったと後の世に評価されることが多い。その戦いの火ぶたがが開かれる直前、ロックバード伯爵はガクポと共に最後の軍議を行うこ...ハルジオン56 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第十章 悪ノ娘ト召使 パート3
魔術の気配がするわ。
十名ほどの兵士達と共にメイコの自宅を取り囲んだルカは、自宅に向けて声をかけた直後に魔術の波動を感じ、喉が枯れるような感覚に陥った。そのまま、右手を扉に向けて翳す。この気配はワープの魔術の波動であるはず。だとすれば、この場所にはもう人間は存在し...ハルジオン55 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第十章 悪ノ娘ト召使 パート2
これで、今日の仕事は終わりだな。
一つの商家を襲ったレンは、まるで日常業務を終えた直後の様に軽い調子でそう考えるとバスタードソードを鞘に収めた。最近、略奪に慣れ過ぎているのかもしれない、とレンは思ったが、それに対する感慨は不思議と何も湧かなかった。ここで奪った財宝...ハルジオン54 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第十章 悪ノ娘ト召使 パート1
「グミ殿から報告です。『反乱の準備は全て整った。』とのことです。」
シューマッハ将軍がカイト王にその報告をもたらしたのは秋も深まる十一月に入ってからのことであった。割合北方に位置する青の国の王宮周辺では北風が吹き荒れ、後は初雪がいつになるか、というタイミングを待つ...ハルジオン53 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第九章 陰謀 パート8
「ごめんね、グミ殿。料理なんて久しぶりで。」
誤魔化す様にそう言ったメイコの表情をグミは呆れ切った表情で眺めることになった。料理と言っても、紅茶を淹れただけだ。どうしてそれだけの行為にここまで時間がかかったのだろうか、という疑問は当然グミの心中に湧き起こったが、今日はメイ...ハルジオン52 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第九章 陰謀 パート7
嫌な噂ばっかりね。
メイコは南大通を一人歩きながら、その様なことを考えた。ここ数日間市井を賑わしている噂は黄の国王立軍による略奪の話ばかりであったのである。その略奪を主導しているのはロックバード伯爵であるという。騎士の中の騎士と言われたロックバード伯爵がどのような思いで略...ハルジオン51 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第九章 陰謀 パート6
天嶮ザルツブルグ。
後の世に出会いの町ザルツブルグという肩書で呼ばれることになる、温泉が名物であるその町にグミが活動拠点を置いてから既に二週間程度の時間が経過していた。すぐに黄の国へと侵入しなかった理由は二つ。一つは情報収集、もう一つはメイコに反旗を翻させるための戦略を練...ハルジオン50 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第九章 陰謀 パート5
レンが商人からの略奪を終え、ロックバード伯爵の私室へと戻ったとき、それぞれの仕事を終えたらしいロックバード伯爵とガクポが少し疲れた表情をしてレンを迎え入れてくれた。疲労というより心労だろう、とレンが考えていると、ロックバード伯爵が話すことも億劫だと言う様な口調でレンに向かっ...ハルジオン49 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第九章 陰謀 パート4
僕の担当は南東地区か。
三十名ほどの兵士を連れて城下町へと向かったレンは努めて無機質にそう考えると、騎乗している馬の手綱を少しだけ緩めた。最近、良いか悪いかの思考を敢えてしないようにしている。リン女王が望むことを全て叶える以外の目的は今の自分に見出すことはできなかったし、...ハルジオン48 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第九章 陰謀 パート3
いい加減、限界だな。
国庫の残りを確認していたロックバード伯爵は、文官から手渡された帳簿を一読してからその様なことを考えた。アキテーヌ伯爵の処刑以降、空席となった内務大臣の業務は自然とロックバード伯爵が執り行うことになっていたのである。リン女王から明確な指示があった訳で...ハルジオン47 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第九章 陰謀 パート2
「よく来てくれた、グミ殿。」
グミがアクに案内されてカイト王の執務室へと入室したとき、カイト王はグミに向かってそう告げた。普段通り、優しげな微笑を保ったままである。そのカイト王に敬礼を行いながら、グミは室内をざっと観察した。相変わらず殺風景な室内にいる人物はカイト王の他に...ハルジオン46 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第九章 陰謀 パート1
カイト王の野望は一体何だったのか。後の歴史学者の必須のテーマとして残されたその疑問に対しての返答は大きく分けて二つ上げることが出来るだろう。一つは政治的な要素、即ちミルドガルド大陸の統一、もう一つは一人の人間としての要素、それがミク女王との婚姻である。しかしこの段階でミク女...ハルジオン45 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第八章 残された者達 パート5
お父様、お父様。
黄の国の王宮、第四層に配置されている謁見室から離れた後、メイコは拭いても、拭いても溢れてくる涙を零しながら第三層へと向かっていた。ロックバード伯爵からは私室に戻れと言われたが、一体何をしたらいいのかまるで見当が付かない。ただ、頭が白紙になったかの...ハルジオン44 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第八章 残された者達 パート4
レン達が帰還した、という報告を受けて、一番喜んだ人物は誰よりもリン女王であっただろう。聞けば、ミク女王を殺したのはレンだという。あたしの召使は、今回もあたしが望む成果を上げてくれたらしい、と考え、そして一人微笑みを見せてからリンは立ちあがった。それまで帰還をして来る...ハルジオン43 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
語り部の白ノ娘
ようこそいらっしゃいました。このたびお聞かせするのはたった一人白い髪を持った娘の物語です。
その娘は、周りの人々が皆きれいな緑の髪をしている中、いつも爪弾きにされており「生きていてごめんなさい。」そんな言葉がいつしか、口癖となっていたそうです。
そして、いつも一人森の奥で密かに聳え立...語り部の白ノ娘
文鳥
第八章 残された者達 パート2
この時代、最も時代を動かした人物は誰か。
後の歴史学者はその様な問いをすることがある。最も一般的に、青の国のカイト王という返答を用意する学者が多い中で、一部の学者は強い調子でこう評価する傾向があった。即ち、歴史の早い段階でその役目を終えたはずのミク女王こそが最もこ...ハルジオン41 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第八章 残された者達 パート1
「う・・。」
ハクはそう呻きながら、瞳を開いた。首筋が僅かに痛む。一体何が起こったのだろうか、と考えたハクは、今自分が寝かされている場所に気が付き、驚いた様子で上半身を起こした。どうやら質素な部屋のベットに寝かされていたようだった。木造らしいベットがハクの動きに合...ハルジオン40 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート15
どうして、笑ったのだろう。
謁見室の扉が開き、そして現れたレンの姿を眺めながら、ミクはつい、その様なことを考えた。私の望み通りの人物が現れたからだろうか。そうかも知れない、と考えて、ミクはその形の良い唇を開いた。
「待っていたわ、レン。」
その言葉に、レンは戸惑う。...ハルジオン39 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート14
一方で、アレク率いる赤騎士団とレンは、民衆を蹴散らした後、予定通りに内壁正門へと到達していたのである。ロックバード伯爵の予想通り、軍の主力はこの場所に集まっていたらしい。城壁の上から撃ち降ろされる、まるで猛吹雪の様な火縄銃の攻撃を受けてその数を減らしながらも、赤騎士団は開...ハルジオン38 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート13
城門が破られた時、メイコと共に突撃の準備を終えていたレンは思いつめたように唇を少し、噛みしめた。不思議な感覚だった。城門が破られれば、数で圧倒する黄の国の勝利はほぼ確定されたようなものだった。なのに、何も感情が湧きおこらない。理由はレンには分かり切っていた。黄の国の勝利と...ハルジオン37 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート12
黄の国の軍隊が緑の国の王宮を包囲したのは、ミク女王の予測通り、その日の午後を迎えてからのことであった。黄の国総勢二万五千に対して、緑の国の残存兵力は三千程度であったと言われている。数だけを見れば黄の国の圧倒的な有利ではあったが、それでもロックバード伯爵は油断をする気分には...ハルジオン36 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート11
ネル率いる緑の国最精鋭部隊である緑騎士団が全滅の憂き目にあった頃、距離にして数百キロ北方に位置する青の国の王宮から、カイト王自らが率いる緑の国の救援軍が総勢二万の兵士を連れての進軍を開始していた。青の国から緑の国へと移動するには、ただひたすら南へと延びるリンツ街道を...ハルジオン35 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
白ノ娘
「ああ、醜いわ!どうしてこの美しい村にこんな白い髪の娘が生まれたのかしら!」
どんなに耳を塞いでも飛び込んでくる。そのたびに涙が溢れそうになった。
ああ、醜い!どうして私はこんなに醜い白なの!
そんなこと、分かっているのに。分かって、いるのに・・・。
消えてしまえたなら、いなくなってしまえた...白ノ娘(派生小説)―①
りうの
第七章 戦争 パート10
ここが最後の防衛線になるはずだけど。
翌日、インスブルグの街中に陣を構えたネルはそう考えながら、黄の国の軍の到来を待つことにした。計算では黄の国の軍は昨日中にインスブルグの町に入るはずだった。それが到来しなかったのは街中での夜襲を警戒した為だろうか。では、正々堂々と日中...ハルジオン34 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート9
まさか、そんなことは無いだろう。グミはそう考えて、今想像した嫌らしい思考を追い払うように一度頭を左右に振った。きっと疲れているせいだ、と考え直してからグミは階下へと降りることにした。とにかく、カイト王に援軍を派遣させるという当初の目的は果たせたのだから、まずは良しとするべ...ハルジオン33 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート8
ロックバード伯爵が緑の国の王宮への進軍行程を決議したころ、緑の国から遥か北方、青の国の王宮に到達した一人の女性が存在した。緑の国の魔術師かつ参謀であるグミである。グミは緑の国の王宮から正に飛ぶように駆け続け、そしてたった五日で数百キロの行程を制覇したのである。その為に活用...ハルジオン32 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ