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第七章 戦争 パート7
その頃、レンは混乱を続ける戦場の中で一人、メイコの姿を探して駆けまわっていた。緊急を伝える銅鑼の音で飛び起きたまでは良かったが、赤騎士団とは少し離れた場所に宿舎を構えていたレンがメイコと合流できた訳もなく、とにかく直属の百名程度の歩兵部隊と共に乱戦の中に飛び込むことし...ハルジオン31 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート7
緑の国の軍勢がミルドガルド山地から撤退したのはそれから三十分程経過した後の事であった。乱戦不利とみたネルが早々に軍を引いたのである。敵将ながら天晴と感じたのはおそらくメイコだけではなかったであろう。引き際のタイミングも撤退方法も完璧と表現するべきものであり、赤騎士団を始め...ハルジオン30 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート6
さて、どう戦おうか。
ミク女王の執務室から退出し、青の国への出立の準備へと向かったグミとも別れた後、ネルは自身の私室へと戻るとその様なことを考えた。そのまま、窓際に立てかけてある緑の国の全図を取り出して私室の中央に用意されている長机の上に広げる。長机とほぼ同じ大きさの地図...ハルジオン29 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
緑の国が滅ぼされてから何ヶ月かが立った。
私は港町の教会で新たに暮らし始めた。
革命で王女が死んだと風の噂で聞いた。
彼女と出会ったのは教会の前。
礼拝に行く時に倒れている彼女を見つけた。
「大丈夫ですか」
「はい、おかげ様で。それで・・・」
「ああ、私はハクと言います」
「ハクさん、ありがとうござ...白ノ娘 ③
美花
私達は二人で村を飛び出して、街で暮らす事にした。
街には他の国から来ている人も居て、私のような白い髪でも皆普通に接してくれた。
私達の仕事は裕福な商人の婦人の使用人。
生きる為に選んだ、私達の仕事。
不慣れな生活や仕事でも一緒なら大丈夫。
色々な情報も手に入って、新鮮な暮らしだった。
ある日屋敷で見...白ノ娘 ②
美花
第七章 戦争 パート5
黄の国の軍勢が来襲。
その報告が緑の国のミク女王に届けられたのはそれから三日後のことであった。私室でいつもの様にハクが淹れた紅茶を嗜んでいたミク女王は、ミク女王直属の親衛隊であるウェッジからもたらされた報告に思わずティーカップを手から滑り落とし、床に落下した白磁のそれ...ハルジオン28 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
「生きていてごめんなさい」
いつの間にか人と出会うたび、嫌味を言われるたび言っていた。
口癖になっていた。
弱音ばかり吐いていた、私のちっぽけなつまらない人生。
彼女と出会う事で全てが変わった。
私が住んでいる村は皆綺麗な緑の髪で、髪色に男女の差は無い。
だけど私だけ仲間はずれの白い髪。
母だって父...白ノ娘 ①
美花
第七章 戦争 パート4
「内務大臣が来たの?」
リンがアキテーヌ伯爵の来訪を女官から告げられた時、リンは自身の私室で普段と同じように城下町の様子を眺めている時分のことであった。急用だと言っている様子だが、一体何事だろうか。煩わしい、とリンは考えたが、内務大臣の直々の来訪を蔑ろにする訳にもいかない...ハルジオン27 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート3
緑の国の侵攻軍、総勢三万の兵士達が土埃を巻き上げながら黄の国の王宮を出立したのは翌日の早朝のことであった。その中には当然レンの姿も見える。バスタードソードを腰に装着して騎馬を行うレンは、どうしようもなく心が痛むことを自覚した。つい二日ほど前に戻って来たオデッサ街道を再び歩ん...ハルジオン26 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート2
どれくらいの時間が過ぎたのだろう。時間の感覚は既にリンの身体から失われていた。どうやら今あたしは黄の国の王宮、自分の私室の寝台に横たわっているらしいという認識だけはあったが、一体パール湖からどのようにしてここまで帰還したのか、皆目見当がつかない。あの時パール湖湖畔で最後に許...ハルジオン25 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第七章 戦争 パート1
盆の間に開催される遊覧会が終わると、ミルドガルド大陸は駆け足で秋が訪れる。平原を流れる風は途端に肌寒いものとなり、実りの時期を迎えた作物は夏の間にふんだんに吸収した養分をその果実に凝縮し始めるのだ。その秋風が吹きすさぶ中を帰還した黄の国の一行はしかし、実りの秋を迎えたと言う...ハルジオン24 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第六章 遊覧会 パート7
細波の声と、木々を揺らす風の音だけが耳を打つ。周囲に人はいない。いるのは一人、カイト王だけであった。闇夜の為に湖畔を見通すことは出来なかったが、湖に映る月明かりを見ながら暫くの間カイト王は余った時間を過ごすことにしたのである。そろそろ、ミク女王が来てもおかしくない時間では...ハルジオン23 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第六章 遊覧会 パート6
その後晩餐会はつつがなく進行した。ミク女王も単なる一時的な離席だったらしく、騒ぎが起こってから数十分後には再びその姿を晩餐会会場へと現しており、僅かに不安を感じていた一同を大いに安堵させた。一体何をしていたのかをミクは一切話さなかったが、その件に関しては大した話題にもなら...ハルジオン22 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第六章 遊覧会 パート6
「アク殿、どちらまで向かわれる。」
リン達と離れ、一番巨大な王族専用の別荘から抜け出したガクポは、前をひたすらに歩むアクの背中に向けてそう声をかけた。近場で会話をするのかと考えていたが、アクは湖の湖畔までひたすらに歩くと、そこで方角を変えて湖畔に沿って歩き出したのである...ハルジオン21 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第六章 遊覧会 パート5
翌日、午前中の時間を使ってリン女王以下の黄の国の一行はオデッサ街道の支線であるパール湖街道を行進することになった。風光明媚なパール湖に到達する為に緑の国がパール湖周辺を覆う森を切り開いて造った街道であるから、その周りは深い森に覆われている。さんさんとその枝葉を伸ばす木々の...ハルジオン⑳ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第六章 遊覧会 パート4
遊覧会は例年一週間の日程で開催される。その前日、事前に遊覧会の準備の全てを滞りなく完了させたミクはようやく公務から解放され、私室に戻るとソファーに座りこんで思いっきり身体を伸ばした。両方の掌を組んで、真上に伸ばしてそのまま背中を反らせる。いつの間にか凝り固まっていたのだろ...ハルジオン⑲ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第六章 遊覧会 パート3
返答期限が迫ってきている。
奇しくも同じ日に、遊覧会への準備を進めていたミク女王はそう考えて深い溜息をついた。場所は緑の国の王宮、巨大な屋敷と表現される建築物の三階にあるミクの執務室である。返答期限とは勿論、カイト王に対する返答であった。この件についてはグミと何度も協議...ハルジオン⑱ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第六章 遊覧会 パート2
レンと別れたメイコが赤い鎧姿のままで向かった先は父親であるアキテーヌ伯爵の執務室であった。黄の国の重鎮であるアキテーヌ伯爵は王宮の第三層にその私室と執務室を与えられている。第三層の大理石造りの廊下に軽い音程で反響する靴音を鳴らしながらアキテーヌ伯爵の執務室の目の前に到達し...ハルジオン⑰ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第六章 遊覧会 パート1
長い雨の一日であった。昨年全く吹かなかった季節風は今年ようやく職務を思い出したのか、十分な湿気を伴って黄の国を覆い、そして大量の雨を黄の国にもたらして行った。その雨の降る黄の国の城下町の一角を、騎士の一団が闊歩している。メイコ率いる赤騎士団の警備隊であった。雨天ということ...ハルジオン⑯ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第五章 緑の国 パート3
本来ならば国賓として迎え入れなければならないカイト王の突然の来訪ではあったものの、今回はお忍びという立場をとっている為に盛大な出迎えは控えることになった。それでも相手は大国の国王。無下に扱える訳もないというミクの判断により、自ら緑の国の王宮を囲む内壁正門まで出迎えることに...ハルジオン⑮ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第五章 緑の国 パート2
ミクの私室を退出したハクは、ミクの指示通りにネルとハクを呼び出す為に二階へと向かうことにした。緑の国の王宮の二階は高級官僚の私室や、官僚たちの為の執務室が並んでいるフロアとなっている。緑騎士団騎士団長であるネルも、緑の国唯一の魔術師でありかつ参謀であるグミも二階フロアに居...ハルジオン⑭ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第五章 緑の国 パート1
ハクがミク女王に仕えるようになってから、瞬く間に一カ月の時間が過ぎ去った。近頃はようやく周囲を観察するだけの余裕を持つようにはなっていたが、これまでビレッジの外へ出たことの無かったハクにとって緑の国の王宮は驚きの連続であった。ミクの統治する緑の国は、ミルドガルド大陸の南東...ハルジオン⑬ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第四章 青の国 パート2
さて、どんな動きを見せてくれるのか。
丘陵の上に到達したカイトは、部下が用意した折りたたみ式の椅子に腰かけると、眼下に広がる自らの軍勢を眺めながらその様な思考を巡らせた。隣にはルカがカイトに同じように用意された椅子に腰を落としている。ルカが着用している黒一色の外套を目の...ハルジオン⑫ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第四章 青の国 パート1
ミク女王の失踪事件が解決した翌日、緑の国の遥か北方、ミルドガルド大陸東部に位置する青の国の王宮では国王であるカイト王が一人の客人を迎え入れているところであった。客人の名はルカ。黄の国を飛び出して一直線に青の国の王宮へと向かったルカがようやく目的の場所へと到達したのである。...ハルジオン⑪ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第三章 千年樹 パート 4
ハクはその後、自宅に戻るまで結局一言も言葉を発しなかった。重たい沈黙を感じながらミクはハクに続いてハクの自宅に再び侵入し、そして自宅の扉を閉めた。ぱたん、という小気味の良い音がミクの耳朶を軽く打つ。そのままドアノブから手を話したミクは、うな垂れたままのハクの背中を見つめ...ハルジオン⑩ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第三章 千年樹 パート3
少し、寝坊したかしら。
そう思いながら、ミクは寝台から起き上がり、上半身を思い切り伸ばした。心地よく身体が伸び、それによってまだ目覚めていない細胞が活動を開始するシグナルを感じてからミクはベットから降りた。ハクと同じベットに寝ていたはずだが、ハクの姿はない。朝の準備に出...ハルジオン⑨ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第三章 千年樹 パート2
グミがネルの元に到達したのは日付も変わる頃であった。ミルドガルド大陸でも南部に位置する緑の国は比較的温暖な気候で知られているが、今日に限っては妙に肌寒い風が馬を駆けさせるグミの身体を吹きさらしている。周囲に視覚として確認できる姿は天空の星空と、近くを走る先導の兵士の姿だけ...ハルジオン⑧ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
第三章 千年樹 パート1
少し、遠出をしすぎたのかしら。
若草の様な淡い緑色の髪をツインテールにした少女はそう考えて、騎乗した馬の手綱を一度引き絞った。それに反応して、馬の歩みが止まる。
ここはどこだろう。彼女はそう考えて、周囲を見渡した。周囲に見えるものは彼女の髪の色よりも深い緑の木々ばかり...ハルジオン⑦ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
ハルジオン⑥ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第二章 魔術師ルカ パート3
何よ、ルカまで!ルカとの謁見を数分で切り上げたリンは、大股で私室へと入室するとそのままベットに飛び込んだ。そのまま枕に顔をうずめて、軽く歯ぎしりをする。少し視線を逸らせると、一本丸太から作成された幅三メートルはあるだろう大きな机...ハルジオン⑥ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ
ハルジオン⑤ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第二章 魔術師ルカ パート2
「ルカ様!」
ルカがガクポを連れて王宮に到達すると、出迎えに来ていたレンが大きく手を振りながら笑顔を見せた。
相変わらず、元気みたいね。
ルカはそう考えながらレンに対して軽く手を振り返し、こう答えた。
「久しぶりね、レ...ハルジオン⑤ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
レイジ