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うっかり口を滑らせたのは認める、いきなり驚かせたのも認める、だけど…。
「普通蹴るかよ…。」
時間が経ったら腹も立って来た。しかしあの髪、あの顔、小柄で細身な体…どっかで見た事ある気がするんだよな。気になって目が冴えて寝付けなかった。
「何処で見たんだっけな…?」
気でも紛らわせようと少し船内を散歩...DollsGame-19.柊-
安酉鵺
あれから数日、私や他の参加者は【DollsGame】の会場へ向かう船の中に居た。所謂『豪華客船』だろうか、ホテルみたいな広さの船だった。海外ではなく場所が判らない様にわざとぐるぐる船旅をしてから目的地に行くらしく、ここはちゃんと国内らしい。豪華客船に揺られて数時間…。
「うぇええ…気持ち悪ぅ…。」
...DollsGame-18.白椿-
安酉鵺
部屋に戻った時、外はもう明るくなっていた。浬音はまるで子供が身を守る様に身を固くして眠っていた。傷が痛むのか、少しうなされて寝苦しそうだった。
「浬音?浬音、大丈夫か?」
「う…ん…うぅっ…!」
悪い夢でも見てるのだろうか、苦しそうに涙を零して、手は宙を掴み、声を殺してうなされていた。
「浬音…大丈...DollsGame-17.ルピナス-
安酉鵺
私は知らなかった。私の知らない場所で、とんでもない計画が動いていた事を。
「やれやれ…なんだって俺があの人の尻拭いなんだか…。」
「ま、良いんじゃない?俺も妹の方が勝てると思うし。」
――ピンポーン。
「はい…どちら様で…?」
夏なのにスーツ…?刑事…?いや、ホスト…?黒髪と金髪…何か無駄にゴージャ...DollsGame-16.ミムルス-
安酉鵺
―――Pririririri…Pririririri…Priri…
「…もしもし…?」
「丑三つ時だな、密。」
「………社長っ?!えっ…?!あ…?!」
「709号室に居るから、上がっておいで。大至急。」
「は、はい!」
通話の切れた携帯を見る。AM.2:30。確かに丑三つ時…。いや、良いか、そんな事...DollsGame-15.ナスタチューム-
安酉鵺
中学をそこそこの成績で卒業した。高校も悪く無い成績だった。大学は近くて偏差値も低く無い所へ行った。
「おし、レベル上がったーっと、セーブセーブ…。」
そんでこの体たらく。就職試験に20社落ちた。自分の勉強して来た事は面接では聞かれなかった。じゃ、何であんなに必死で単位取ったんだ?論文だのレポートだの...DollsGame-14.麒麟草-
安酉鵺
ドアが閉まる音がした。私、お礼も言って無い…、だけど、だけど足が震えて動けないよ…!手も足も傷だらけで、包帯だらけで、こんな可愛い服なんか絶対似合ってない…!
「…困らせたか?」
躊躇いがちな声が聞こえた。何か言いたかったけど、首をぶんぶん横に振るしか出来なかった。服に緊張してお礼も言えないなんて駄...DollsGame-13.孔雀草-
安酉鵺
――Q,この世で一番大切な物は何だと思いますか?
――A,お金だと思います。
「お先に失礼しまーす。」
「はい、お疲れー。」
間延びした挨拶をして店を出た。辺りはすっかり暗くなっていた。時間を見ると20時を過ぎている。軽く何か食って帰るか…。
「居たぁ―――!!ちょっと!!そこのチャラ男!!」
クラ...DollsGame-12.猿取茨-
安酉鵺
弄ってて濡れたのと、服屋さんに促されたのとで結局お風呂に入っていた。『手伝いましょうか?』って当然の様に言われたけど、流石に恥ずかしくて遠慮した。お湯につかりながら、今更手足のあざや傷が目立つ様で気になった。お風呂から上がると脱衣所に置いた服が無くなっていた。
「あれ…?…あの…私の服は?」
「クリ...DollsGame-11.宿根霞草-
安酉鵺
――何が最善か何が最悪は考え方次第であり、何が幸福か何が不幸かは考え方次第である――
昔読んだ本にそんな言葉が書いてあった。続きもあるんだけどこのフレーズが気に入ってる。今の私の座右の銘。
「ルイちゃん、ルイちゃん、今日バイト何時迄?」
「6時です。」
「じゃあさ、終わったら一緒に飯でも行かない?安...DollsGame-10.透かし百合-
安酉鵺
車を走らせて少し経って、密さんが口を開く。
「服が汚れたな。」
密さんが肩をトントンと指す。服を引っ張って見ると、肩と胸に赤く染みが落ちていた。
「服なんて洗えば直ぐです…それより病院に行かなくて本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。頭の傷は少しでも結構血が出るから大げさに見えるだけで、少し切れた
...DollsGame-9.グロリオサ-
安酉鵺
静かな回廊に自分の足音が響く。
「確か、ここに居るって聞いたんだけど…。」
パイプオルガンの音が微かに聞こえた気がして、礼拝堂の扉をゆっくり開いた。ステンドグラス越しに木漏れ陽の様に差し込んで光が帯みたいに連なっていた。溜息が出る程綺麗な光景に思わず足が止まる。
「わぁ…!」
上を見上げたまま暫くの...DollsGame-8.クレマチス-
安酉鵺
車の中は沈黙が続いていた。何を話したら良いか判らなくて、時折道を聞いてくる密さんに『右』とか『真っ直ぐ』とか、カーナビ程度の言葉しか出て来なかった。家の直ぐ近く迄来た時、お兄ちゃんの姿が見えた。
「浬音!」
「お兄ちゃん…。」
「浬音!ごめん!お兄ちゃんどうかしてたんだ!ごめん!ごめんな浬音!」
お...DollsGame-7.ストレプトカーパス-
安酉鵺
昔から此処一番では負けなかった。受験だって楽勝でクリアしたし、それなりにモテたりもした。全部が全部思い通りになるとは流石に思ってないけど、結構あたしはツイてる方かも…なんて思ってる。
「えぇ?!店を閉める?!」
「ごめんなさいね、メオちゃん。ウチも結構厳しくなっちゃって…今月分のお給料は
ちゃんと...DollsGame-6.鳳仙花-
安酉鵺
駐車場に着いた所で密さんは押し黙ってしまった。眉間に皺を寄せて何か考え込んでいるみたい。と、携帯を取り出し物凄い速さでメールを打ち始めた。何度かメールをやりとりしていた様だけど、溜息を吐いて携帯をしまった。
「大丈夫ですか?お仕事とかなら、私、バスとかで…。」
「朝吹浬音。」
「は、はい!」
「騎士...DollsGame-5.杜鵑草-
安酉鵺
「お客様、申し訳ありませんが当店はペットのお連れ込みはご遠慮させて頂いて
おりますので…。」
「……。」
「又のご来店を~。」
今日は3件断られた。盲導犬は良いのに何で駄目なんだろう…?
「世の中はまだまだウサギに冷たいな、ゲルニカ。」
ゲルニカと会ったのは半年位前の事だった。
『…の地域に上陸し...DollsGame-4.蜆花 -
安酉鵺
目を開けると白い壁天井と壁が見えた。辺りに微かに漂う消毒薬の匂い…病院…?
「大丈夫か?」
ふっと自分の前に影が差した。顔を上げると長身の人が私を見下ろしていた。驚いて思わず体がビクッと強張った。
「どこか痛むのか?」
「え…?あ…あの…大丈夫で…痛っ…!」
慌てて起き上がろうとしたら、脚に力が入ら...DollsGame-3.梔子-
安酉鵺
「ナチ!ナチ兄!ねぇお腹空いた!」
「ボクも~…。」
「俺はお前等のおかんか!」
兄弟に憧れる人達に言いたい。理想です、幻想です、優しい兄弟なんてこの世には存在しません。別世界のお話です。どっかに心の優しい可愛い妹とか、ダンボールに詰められて落ちていないか時々本気で探したくなります。
「あのぉ…。」...DollsGame-2.連翹-
安酉鵺
小さな頃から夢を見ていた。多くを望んでた訳じゃない。ただ、誰かに此処に居ても良いと言って欲しかった。私が必要だと言って欲しかった。たった一人で良いから…私は…。
「浬音!」
「あ、は、はい!」
「ぼけっとしてないで!さっさと朝御飯作りなさい!全く役立たずなんだから…!」
「ご、ごめんなさい!お母様…...DollsGame-1.スノードロップ-
安酉鵺