タグ「巡音ルカ」のついた投稿作品一覧(66)
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11.白皙の頬をした兵隊
島でただ一つの博物館の、学芸員を務めるヴァシリス・アンドロスは、島の人間ではない。大陸の国から、島の歴史の魅力に惹かれてやってきた、移住者だった。
家族はおらず、ただひとりで博物館のとなりに小さな部屋を借りて暮らしている。両親を十歳のころに亡くしてからそれぞれの進路を見...滄海のPygmalion 11.白皙の頬をした兵隊
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10.黄色の郵便飛行機
島の空に双発機のプロペラ音が響いた。
鮮やかな黄色に塗られた飛行機が、島の広場をぐるりと旋回した。
広場で遊んでいた子供たちが空を見上げ、わあっとはしゃいだ声を上げた。
「レンカちゃーん! レンカちゃーん!! リントが帰ってきたよー!」
広場の一角から狭い石段を駆け上...滄海のPygmalion 10.黄色の郵便飛行機
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9.四年後 ~レンカとリント~
レンカが十八歳となった夏、十三の歳から始めていた彼女の岬の女神像にまつわる探究活動はあっさりと幕を下ろした。
ある嵐の日、女神像が倒れ、その台座の下から、建てられた当時の石版が見つかったのだ。
『国の守りとして、ここに像を建てる』『岬の端、大陸勢力への見張りとして...滄海のPygmalion 9.4年後 ~レンカとリント~
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8.間章
「ねーえ。レンカおばあちゃん」
岬の端のサンダルの像の前に、老人と少女は並んですわり、真っ青に澄み渡る海を眺めていた。
「おばあちゃんは、ここから海に飛び込んだの?」
孫娘がこわごわと、這って崖ににじりより、ひゃっとすぐに悲鳴をあげて戻ってくる。
三階建ての建物くらいの高さはあるよう...滄海のPygmalion 8.間章
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7.石像の心
「冷たく白い石像、面影にそっと手が触れるとき」
白い女神像が、真っ青な海に向かって手を広げる隣で、白い頬をしたルカの唇が小さく動く。
「朱に染まり色づく頬、あなたに逢いたい……」
真昼の、海から吹く風が、ルカの唇にそっとくちづけては陸へと飛び去っていく。
ルカは、昼食を取らずに博...滄海のPygmalion 7.石像の心
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6.ルカの家庭
島の昼間。夏も近づくこの頃の太陽は、眩しく高い。白い石畳と粘度の壁が、鮮やかに光を反射している。時折家々の軒先に日よけとしてしつらえられた葡萄の棚が木陰を落とす中、ルカは濃い影を映しながら歩いていた。
「冷たく白い石像、面影にそっと、手が触れるとき……」
うつむき歩くルカの桃色の...滄海のPygmalion 6.ルカの家庭
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5.歴史と伝説とレンカ
「歴史と伝説は違うよ」
レンカにそう教えてくれたのは、この島のただひとりの学芸員のヒゲさんことヴァシリス・アンドロスだ。
「歴史は事実で、伝説は文化だ。歴史は事実だから、ただひとつしかなく、変わらない。しかし伝説は、人の数だけ生まれるといってもよい」
* ...滄海のPygmalion 5.歴史と伝説とレンカ
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4.女神像とルカ
今日も岬日和だった。「島の名物は、景色!」。その謳い文句の通りに、リントとレンカは、ルカを岬に連れてきた。
ひとしきり女神自慢、伝説への考察を披露したあと、リントは女神の足元におさまり、レンカはいつものように海へと向かっていった。レンカはルカにも海に入らないかと誘ったが、ルカは...滄海のPygmalion 4.女神像とルカ
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3.夕焼け色の髪の少女・後編
ルカがレンカの拾い集めた石片を弾き飛ばしたことに、リントは凍った。あまつさえ、彼女はその石片の一つを掴んで投げようとしている。
「あいつ! やっていいことと悪いことが……! レンカ! 落ち着けよ?!」
リントが、ルカを押さえるかレンカを心配するか迷った隙に、レンカが...滄海のPygmalion 3.夕焼け色の髪の少女・後編
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3.夕焼け色の髪の少女・前編
岬から白い石の道をたどって下り、広がる葡萄畑を通り過ぎ、再び街のある高台へと向っていく。この島の大地と同じ色で作られた石粘土と漆喰の壁が立ち並ぶ街は、訪れたばかりの青い夕闇に抱かれて、にぎやかな喧騒を見せていた。
「しまった! 明日は休日だった!」
「ヒゲさん、まだ仕...滄海のPygmalion 3.夕焼け色の髪の少女・前編
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2.島の双子 リントとレンカ
その女神像は、岬の先に、真っ青な海に向って腕を広げて立っていた。
大きさは、ちょうど大人の平均身長より少々高いくらいか。真っ白な大理石で出来た石像は、海から吹く潮風にもその肌を曇らせることなく、毅然として立っていた。
その女神像の足元に、今、一人の少年が座っている...小説『滄海のPygmalion』 2.島の双子 リントとレンカ
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1.滄海のPygmalion
真っ青に透き通った海に向かって、岬が張り出している。
風にあおられた短い草に覆われたその突端には、真っ白なサンダルの石像が一揃い、海を向いてしつらえられていた。
白い大地のむき出しになった細い道が、岬のたもとから、そのサンダルの像のある岬の先まで続いている。草の中...小説『滄海のPygmalion』 1.滄海のPygmalion
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表紙
『滄海のPygmalion』
発想元・歌詞引用 U-ta/ウタP様『Pygmalion』
http://piapro.jp/t/n-Fp
*この物語はファンタジーです。実際の出来事、歴史、人物および科学現象にはほとんど一切関係ありません。
*曲への愛のままに、気ままに書きます!...表紙 『滄海のPygmalion』
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【歌詞】桜色スナフキン
花の舞い散る 春の丘で
あなたの夢を 見つけました
そっと両手で 掬(すく)ってみたら
ふわりと空気に とけました
淡く染まった 花の中に
そっと残った 雪の香り
頬に両手を 当ててみたら
あなたのぬくもり 辿(たど)るように
優しい笑顔に なれるでしょうか?...【歌詞】桜色スナフキン
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題 「本物のツバサ」
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たとえそれが 蝋で出来た
偽の翼で あるとしても
太陽さえ 超える気持ち
本物にも 負けはしないよ
A
悲しく 苦しく 暗い闇の中で
おびえて凍える身に
ひとつ射した光...【歌詞】本物のツバサ【卒業】
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55.王の首の収穫祭 ~運命の午後三時~
午前十時の鐘が響くころには、すでに王宮広場は人で溢れていた。
みな、女王の処刑を見に来たのである。
自分たち黄の民を苦しめた、悪の女王の最期を見届けに来たのである。
その日も朝から快晴であった。
夏の暑さも涼やかに去り、見事な秋晴れである。
レン...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 55.王の首の収穫祭 ~運命の午後3時~
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54.囚われの女王
てっきり地下の牢屋もしくは強盗や殺人などの罪を犯した者たちの監獄へと送られると考えていたレンだったが、その予想は外れた。
メイコが女王の拘置場所に選んだのは、国教会の塔の一室であった。
とはいえ、だんだんと秋の気配の濃くなる季節に、石造りの塔の部屋に幽閉されるのは苦しかった...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 54.囚われの女王
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53. 悪の娘、悪の召使
「この、無礼者!」
レンは、自分の声が凛と響いたことに満足した。
「……よかった。間にあった。」
……自分が、彼女の身代わりになれる間に、この国は変化を成し遂げた。
顔はいくら似ていても、もうじきレンの声は太い男の声に変わる。
兆候は出ていた。だから、レンは出来るだ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 53.悪ノ娘、悪ノ召使
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52.リンの本音、レンの告白
「これを着てお逃げなさい」
レンが自分の服を突然脱いで差し出したのを、リンは呆けたように見つめていた。
「レン。逃げるのは召使のあなたの方でしょう? あたしは女王ですもの、ちゃんと残って、王の政治の責任を取らないと」
「馬鹿野郎!」
ついにレンは怒鳴った。
「君は女...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 52.リンの本音、レンの告白
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51.レンの思い
もうすぐこの国は終わるだろう。
この朝、レンは目覚めてふと、確信した。
この日の朝も、王宮広場は日の出から大騒ぎだった。だんだんと、武具を持った人が増えてくる。王宮に武器を向けることを恐れなくなってきているのだ。
やや黄色みのかかった木の葉が、レンの目の前を風に吹かれて舞い...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 51.レンの思い
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50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~後編~
教会の鐘が鳴り響いて一日の終わりを告げた。夜八時の、この日最後の鐘の音だ。
「じゃあ、メイコ。私、そろそろ下の食堂で歌ってくるね」
メイコが、自分の寝台に立てかけた楽器を右手に取り、菓子を食べ終えた盆に二人分の杯を左手に乗せて器用に扉を開けた。
「メイコも、...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~後編~
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50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~前編~
夕方になっても、黄の国の王都の興奮は収まらなかった。夏の暑さはすっかり引き、涼しい風が夜と星を連れてくる。
相変わらず乾燥した満天の星空の下、秋の始まりの日の夜は、人々の熱気に包まれていた。
「いいぞー! メイコー!」
「姐さん、かっこいいよな!」
「恐怖の...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 50. 誕生、紅き鎧の女騎士 ~前編~
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46.革命の萌芽 ~後編~
「……おい! 」
押し込んだ男の一人ががなる。
「なんのつもりだ、てめぇ!」
「酒なんて飲んでやがって、てめえ」
男たちがぐっとメイコに向かったそのとき、彼女はその目の前で鮮やかに薬草酒をあおった。そして、その杯を音高く彼らの足元めがけて叩きつけた。
男たちの動きが...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 46. 革命の萌芽 ~後編~
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46.革命の萌芽 ~前編~
黄の国の王都は、静まり返っていた。
いつもの夏の終わりのような、落ち着きのある静けさではない。人は居るのに扉の向こうで息をひそめているような、そんな不気味な静けさである。
とある宿の食堂で、『巡り音』のルカは歌っていた。日も暮れてから大分経ち、通りはすっかり静まり返...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 46. 革命の萌芽 ~前編~
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【ねんど】くるくるるかさん
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【ねんど】ある森の小さなお店の一日 5番のハミング 11月編
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【ねんど】ある森の小さなお店の一日 5番
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【ねんど】ある森の小さなお店の一日 4番
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【ねんど】ある森の小さなお店の一日 3番
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【ねんど】ある森の小さなお店の一日 2番