タグ「巡音ルカ」のついた投稿作品一覧(66)
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雪の便り
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着想・歌詞引用元/ひらさき様『秋煙』
陽の傾きかけた夕方の街を、草薙瑠香(くさなぎ るか)は靴音高く歩く。カツカツと鳴る固い音がアスファルトを叩き、石造りの街の闇に吸い込まれてゆく。
ふいに首筋をなぜた涼しい風に、瑠香は思わず身をすくめた。風が、まるで細い糸が巻き付くように、するりと喉元を締め上...秋煙 ~金木犀の薫るころ~
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38.最終回・海と空の伝説 ~滄海のPygmalion~
「……今でも、ここは、あの時と同じ風が吹いているのよ」
語り終えたレンカは、そう言って笑った。
傍らに腰掛けた孫娘は、海を見つめ、レンカを振り向き、そして今も岬に残るサンダルの像に駆け寄った。
ぺたぺたとさわり、目を丸くする。
「本当に...滄海のPygmalion 38.最終回・海と空の伝説 ~滄海のPygmalion~
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37.永遠の愛
いとしいひとよ、あなたをよぶ。
リントとルカが、歌いながら岬への道を登る。その後ろを、ヴァシリスとレンカが並んでついていく。
岬の先に、手を広げて立っていた女神像は消えていた。
まるで海に飛び出していったかのように、そのサンダルだけを綺麗に脱ぎ捨てて。
「リントの飛行機が、落...滄海のPygmalion 37.永遠の愛
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36.そして終わる戦、始まる日々
戦争は、終わった。
銃弾が飛び交った島の中央広場では、はがれた石畳や崩れた建物の撤去が始まっている。レンカもヴァシリスも無事であった。
博物館の建物も、半分崩れてしまっていたが、幸いなことに火災は起こらなかったおかげで、資料のほとんどが無事に残された。
「これ...滄海のPygmalion 36.そして終わる戦、始まる日々
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35.空に散る
リントは目一杯操縦幹を引いていた。
いつもの離脱コース。女神の岬を島から海へと抜けるコースのはずだった。しかし、高度が上がらない。加速も減速も出来ない。舵の自由も効かない。
「駄目だ! 操縦全部持っていかれた!」
「無茶するから!」
ルカの声がする。その通りだとリントは思った。...滄海のPygmalion 35.空に散る
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34.神話
島の人々と奥の国の兵士が見上げる中、リントの飛行機と奥の国の飛行機は互いを牽制するように旋回しあっていた。
リントは、慎重にタイミングを測っていた。
「手紙はすでに撒ききった。オレの仕事は終わった。離脱するぞ!」
しかし、相手の飛行機に後ろを取られれば、撃ち落される可能性もある。
...滄海のPygmalion 34.神話
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33.空戦と奇跡
少し前のこと。
飛び続けるリントたちの視界に、いよいよ島が見えてきた。
真っ青な水平線の間に緑の線分が浮かんでいる。
島の上空にさしかかる前に、リントたち郵便飛行機隊は散開を決めた。
「リントとバルジ機は島の広場へ、右翼の二機は島の右側から回りこんで、東の端と北東の集落...滄海のPygmalion 33.空戦と奇跡
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32.君に伝えたいこと ~後編~
迫り来る命の危機の中で、ヴァシリスが告げた、レンカに伝えたかったこと。それは「島の女神像の対となる、王の像が大陸で発見された」ということであった。
「俺たちがこんなになってしまう前。リントが逃げてくる前に届いた、大陸の博物館の報告書に書いてあったんだよ!」
思わ...滄海のPygmalion 32.君に伝えたいこと ~後編~
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32.君に伝えたいこと ~前編~
リントの飛行機は、まっすぐに島へ向かっていく。
リントが合計五機の飛行機の先頭を飛び、他の四機が二機ずつ、リントの両翼に従うようについてくる。
「ルカ」
リントが声をかける。
「なに、リント」
ルカの返答を待ち、リントは声をかけた。
「……レンカと、ヴァシリ...滄海のPygmalion 32.君に伝えたいこと ~前編~
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31.炎の島
リントたちの飛行機が飛び立った直後から、ドレスズは戦場となった。地下の遺跡は、ほどなくして火の海になった。
それもそのはず、ドレスズの地上に基地を構える『奥の国』が、至近距離から打たれた大陸の国への発信に気づかないはずはない。ルカたちが島に来て、ソレスとエスタが大陸に連絡を入れたあ...滄海のPygmalion 31.炎の島
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30.飛翔
「リント?! ここは……」
驚きのままに言葉を紡ぐルカの前で、リントはやや慌てた様子で首を振った。
「あ、着替えさせたのはオレじゃないよ。ここの島の女の人たちだから」
ちぐはぐな答を返され、ふとルカは自分の体を見た。着ていた軍の制服のズボンと機能性重視のシャツは脱がされ、ゆったりとし...滄海のPygmalion 30.飛翔
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29.奇跡の始まり
リントから遅れること数刻、ルカたちはドレスズ島に到着した。
リントたちの島から、ドレスズ島までは、船で六時間かかる。それは作業工程的にはほぼ一日作業に近い。
ルカたちのような大陸軍の船がドレスズにいく時にいつも使う港があるのだが、今回は奥の国の動向を警戒して、人里から離れた...滄海のPygmalion 29.奇跡の始まり
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28.翼の矜持
ぐ、とリントの喉が詰まった。溢れた吐き気と熱をこらえきれずに、リントは思い切り思いをぶちまけた。
「悪いけど、オレには無理だ! 誰かを守るために他のどこかを犠牲にするとか! 手を汚さずに綺麗ごとばかり言うなとか!
……いいじゃないかよ! きれいごと言ったって!」
リントの絶叫が、...滄海のPygmalion 28.翼の矜持
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27.ドレスズ島の真実
「何をする! やめろ! 放せ!」
リントは全力で暴れた。頭では相手が放すわけないとわかっていたが、それでも力のかぎりに暴れた。相手は四人。ひとりがリントの背を押さえつけ、一人がリントの口に布をかませ、一人がリントの手を後ろに回し、一人がリントの足首を地面に縫い付けていた。
...滄海のPygmalion 27.ドレスズの真実
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26.守る者、守られる者
空気を切り裂く音が耳を掠めた。
「来たぞ!」
驚いて思わず物影に身を引いた若者のかわりに、ヴァシリスがさっと物陰から銃口を出して、風の来た方向に続けざまに撃つ。
響いた音に、広場の緊張が一気に高まった。
瓦礫の山に身を隠しながら、ヴァシリスの班の六人は、二人ずつ組に...滄海のPygmalion 26.守る者、守られる者
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25.防衛開始
海岸では、駐留部隊の高射砲が空に向かって火を噴いていた。
牽制にはなっているようだが、飛んでくる飛行機の数のほうが多い。
一機しかない高射砲の火線をすり抜け、次々に飛行機が飛んでくる。
爆撃機は島の中央を目指し、落下傘を落とす飛行機は島の外縁を旋回する。
駐留部隊は必死に対...滄海のPygmalion 25.防衛開始
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24.破壊される島
激しい轟音とともに、島の景色は一変した。
突如襲った激しい音と揺れに、ヴァシリスは慌てて子供たちを腕の中に抱きこむ。パウロ医師が飛び出そうとした子供たちの代わりにドアを開けて外を見た。
坂をまっすぐ降りたところに、島の中央、市庁舎と広場がある。
その広場から、土煙が上って...滄海のPygmalion 24.破壊される島
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23.晴天の雷鳴
リントが空の異変を見つけた頃、医院では、レンカがゆっくりと目を覚ましたところだった。
「三日も立ち通しだったんだ、三日は寝ておれ!」
ふらつきながらも、せっかく医院にいるのだからと仕事をしようとしたレンカを、パウロ医師が厳命してやっと休ませたのである。
「パウロさん! 水、汲ん...滄海のPygmalion 23.晴天の雷鳴
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22.襲撃の始まり
陽の光と熱を感じ、リントは目を覚ました。固い小船の上で眠る生活も、これで三日目である。食料は、この小船の持ち主が、船底に保存してあったのを使った。
「いつまで、隠れていれば良いのだろう」
潮に焼けて乾いた髪が、ばりばりと音を立てるほどに荒れていた。
レンカは、リントを逃がす...滄海のPygmalion 22.襲撃の始まり
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21.太陽の供物
明け方の雲が去り、地獄のように青い空が広がり、力強く太陽が昇ってくる。
午前八時。
平日である。島は農作業や商売のために往来する島の人々や舟の行き来でやってくる外の人で活気付く時間であるが、この日の朝は、異様な静けさに包まれていた。
その原因が、市庁舎の前、石畳の広場の真ん...滄海のPygmalion 21.太陽の供物
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20.懲罰
「やはり、隠し通すことは出来なかったか」
ヴァシリスは呻いた。彼自身もレンカも、リントを十日間、うまく隠しおおせたと思っていたのだ。しかし、軍が博物館の近所やレンカの勤める病院、そして、リントとレンカの自宅付近の者たちの証言を集めるだけで、あっと言う間にレンカとヴァシリスは追い詰められ...滄海のPygmalion 20.懲罰
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19.愛の形
岬の先端、海を臨む女神像の足元にたどり着き、リントとルカは息をついた。
上り坂を駆け上がったにも関わらず、ルカの息はそれほど上がっていない。
「リント。……体力、持ち直せる?」
ルカが岬のふもとに目をやった。
制服集団が、ちょうど岬のふもとに差し掛かったところで、横に隊列を展開...滄海のPygmalion 19.愛の形
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18.逃避行
待った。ちょっと待った、レンカちゃん。
現在十八歳のレンカよりも二回りも年上のはずのヴァシリスの頭の中が、真っ白であった。
リントを隠さねばならない。それは解る。踏み込んできた連中の目を何とかひきつけなければならない。それも解る。
……しかしなぜキスか?!
扉を破られた音がし...滄海のPygmalion 18.逃避行
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17.覚悟
「本当は、リントとレンカちゃん、二人同時に見せるべきなのだろうけどね」
ヴァシリスが、自身の机の引き出しを開け、ある汚れた袋を取り出した。
「これが、君のご両親の遺品だよ」
初めて見る両親の遺品、そして「遺品」という生々しい言葉に、リントの手が震えた。
「開けてもいい?」
「全部、し...滄海のPygmalion 17.覚悟
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16.正義と過去
市庁舎の掲示板にリント捜索のポスターが貼り出された半時後には、近所の者の手によってヴァシリスの博物館の扉が叩かれていた。
「ヴァシリスさん! いるかね!」
ちょうどレンカは仕事に出ており、博物館ではいつものようにリントとヴァシリスが二人で資料の整理をしていた。
ヴァシリスは急...滄海のPygmalion 16.正義と過去
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15.発覚
ルカの仕事は、部隊長の秘書といっても、基本的には事務官である。島の外から情報を受け、部隊長に報告をし、部隊と島の市長らとの連携を取り、さまざまな調整を行うことが仕事であった。
島の外の主な情報源、新聞では、連日のように大陸の国と奥の国の戦況が報道されている。
新聞は大陸の国で発行さ...滄海のPygmalion 15.発覚
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14.有事の日常
島に大陸の国の駐留部隊が来て半月が経った。市庁舎に掲げられた旗の色が、島の緑から同盟旗の赤に変わっても、島民の生活はいつものようにすぎていった。
変わったことといえば、大陸の国の駐留部隊が、砂浜で上陸訓練と防衛訓練を行うようになったこと、海岸の山沿いに、空を向いた大砲が設置され...滄海のPygmalion 14.有事の日常
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13.再会
まだ夜が明けやらぬ中、ルカはひとりで岬への道を辿っていた。本日は一日非番である。島での行動は、ルカたち大陸の国の駐留部隊は制限されていなかった。
有事のたびに駐留軍は島に降り立ち、ことが終われば去っていく。それは数年おきに繰り返されることもあれば、長い間が空くこともある。今回のように...滄海のPygmaliion 13.再会
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12.秘密
ヴァシリスの決断は早かった。リントをかくまうことは彼の中でゆるぎない決定事項だったが、島民みな知り合いのような島で、人ひとりを隠すことが難しいことを彼は気づいていた。そして、島民はいざというときには結束するが、その状態に至るまで、すべての人が同じ考えを持つとは限らない。
「いざというと...滄海のPygmalion 12.秘密