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「カンタレラ」と「悪ノ娘・悪ノ召使」の世界を強引に繋ぎ合わせた、中世風ボーカロイドMIX小説です。
設定について
登場人物
ミクレチア・ボカロジア・・・ボカリア公国公女。愛称ミク。
ローラ・・・ミクレチアの侍女
カイザレ・ボカロジア・・・ボカリア公国公子
ハク・・・カイザレの側近
リン・クリプトン・...【完結済】 「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【設定と目次】
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一面に咲き乱れる白い薔薇の花は、月光に薄蒼く輝くようだった。
広大な庭の一角を占めるその花に囲まれて建つ、小さな東屋。
昼間は彼女のお気に入りの場所でもあるその床の上に、少女は壊れやすい細工物よりも大切に下ろされた。
硬い石の床を足元に感じながら、普段、見慣れない夜の庭を見渡す。
どんな花もその骨頂...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【カイミク番外編】 第5話
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堅い木の扉を通して、抑えたノックの音が部屋に響く。
答える声のない沈黙に、間をおいて更に二度。音が繰り返した後、ゆっくり扉が開いた。
静かに踏み込んだ影は、室内の暗さに戸惑ったように、一度その場で足を止めた。
闇に目を凝らすと、そこへ差し出すように薄明かりが差した。
淡い光源に目をやれば、それは窓越...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【カイミク番外編】 第4話
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複雑に交じり合う楽器の音色が奏でるのは、聞き慣れぬ哀切な旋律だった。まるで遠い国の音楽のような、それでいて、どこか懐かしさも感じられる不思議な響き。
それに合わせて広間の中心で踊る、この国の大公と公女。他には動く影すらなかった。
二人の足が刻むありふれたステップが、時折見慣れない形を踏み、その度に室...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【カイミク番外編】 第3話
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「初めまして、侯爵夫人。お会いできて光栄です。今宵はようこそお越しくださいました。もの慣れぬ身ゆえ、不調法があればお許しください」
淡い薔薇色の唇が開き、細く甘い声が零れた。
控えめにドレスの裾を摘んだ少女に、年かさの貴婦人が強い視線を向ける。
「こちらこそ、光栄ですわ。お名前をお聞きしてもよろしい...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【カイミク番外編】 第2話
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賓客らを迎える広間の明かりは、その歴史ある屋敷にはいかにも似合いの抑えた明るさだった。
無数の光を灯す銀の蜀台は華美ではないが隅々まで磨きこまれ、瞬く炎が揺らめくたびに天井や調度の片隅に不思議な影を作り出す。
壁際に下ろされた幕の向こうでは、既に集まった客人の会話の邪魔をしない程度に管弦楽の音がゆっ...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【カイミク番外編】 第1話
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「メイコは行ったようですね」
背後からひっそりと掛けられた声に、彼は静かに応えを返した。
「終わったか?」
「ええ。・・・少し歩きませんか」
音もなく横に並んだ影に、黙って頷く。
一斉に、歓声の聞こえたほうを目指そうと流れる人々の間を抜け、さりげなく人気のない方へと足を進め、彼らが向かった先は閉ざさ...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第25話】後編
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「・・・・・・これから、どうするの?」
「どうとは?」
何事もなかったように襟元を正しながら、青年が首を傾げた。
掴み掛かられたことを気にした様子はない。鷹揚というよりも無関心に近い、手ごたえのなさだった。
「国を挙げて動けないあなたが、ここまで密かに私達を支援してくれたことには感謝するわ。でも・・...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第25話】中編
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城の入り口付近は、人波でごった返していた。
外から城内へ踏み込んでくる解放軍はまだ引きも切らず、念願の王城陥落に興奮した声を上げている。
王女を捕らえよと城の奥を目指す彼らの合間、城の内にあって監視の目から逃れることが出来ずにいた下働きの人間や、王女の不興を買って城の地下へ投獄されていた人々が保護さ...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第25話】前編
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広間を駆け出ると、喧騒はいっそう大きくなった。
剣戟に入り混じる悲鳴と怒号で、耳がおかしくなりそうだ。
「兵はどうしたの!?」
誰ともなく叫べば、見知った家臣の一人が駆け寄ってきて手を伸ばした。
「リン様!この国はもう落ちます。お逃げください。さあ、こちらへ!」
「待って!離して!レンがまだ帰ってき...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第24話】後編
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王宮は斜陽の内にあった。
窓から差し込む西日は目を眩ませるばかりに輝き、幾つもの広間や回廊に立ち並ぶ無数の柱、その表面に施された細かな彫刻のひとつひとつまでも照らしながら、その後ろに迫る終わりを暗示するかのような長く黒い影を作り上げている。
その最後の輝きのような眩さに怖れながら息を潜める人々、各々...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第24話】前編
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全身にぶつかってきた鈍い衝撃に、ミクは身を硬くして息を詰めた。
網膜に焼きついた、空を切る刃の残像。
次に襲い来るだろう苦痛に、全ての意識を向けて身構える。
酷く長く感じる一瞬の後、けれど予想した痛みは襲ってこず、代わりに耳元へ届いた低いうめき声に、彼女は瞑っていた目を見開いた。
「え・・・?」
気...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第23話】
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「お前の、嫁ぎ先が決まった。ミク」
その言葉に、彼女はただ目を見張っていた。
思いもよらないことを告げられた驚きが、その表情には現れていた。
無理もないとカイザレは思う。
世の娘なら誰しも、特に貴族社会の娘ならば、年頃になれば真っ先に持ち上がるのが結婚の話だ。身分の高い娘ならなおのこと、本人よりも早...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【幕間】
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闇に荒い呼吸の音だけが響く。
首筋に押し付けられた刃の冷たさが、その存在を伝えていた。
振り向くことも出来ないままで、ミクは必死に背後の気配を探った。
「よく知りもしない場所で、正体も知れぬ者をひとりで追うなど、軽率に過ぎるんじゃないか」
刃よりも冷ややかなその声に、背筋が震えた。
弾む息を抑えて囁...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第22話】後編
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報告を受けた小競り合いは、大したことではなさそうだった。
二人の足が現場にたどり着く頃には、騒ぎの原因らしき兵士たちが、既にほとぼりも覚めて小さくなっていた。
騒ぎの内容が兵士同士のただの喧嘩なら、ミクが首を突っ込むような話ではない。
レオンが当事者の兵士たちを前に責任者と思しき上官から話を聞いてい...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第22話】前編
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「あの薔薇はボカロジア家だけが育てている薔薇よ。美しい純白だったでしょう。一族が誇る最高の美、そして親愛なる共犯者よ。一族に嫁いでくる花嫁を祝福して、結婚式で贈られる花でもあるの」
「共犯者というのは?」
何気なく問いかけたレオンの腕に、蔦のように伸びた細い腕が絡みついた。
動きを止めた男の肩に顔を...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第21話】後編
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束の間、和んだ空気を破ったのは、慌しい足音だった。
「怖れながら、申し上げます」
扉の外から響いた兵士の声に、辺りの空気が一気に張り詰める。
「入れ」
入室した兵の報告を聞いていたレオンが、ふと肩から力を抜いた。
緊張気味に様子を見ていたミクも、それに胸を撫で下ろした。
最も懸念する事態、小康状態を...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第21話】中編
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戦況が動いたのは、それから間もなくのことだった。
『クリピアの本国で、民の暴動が起きているらしい』
どこからともなく、そんな噂が聞こえ始めた。
それはシンセシスの明暗を分けると言っても良い、重大な一報だった。
日夜もたらされる前線の報告に加え、巷に流れる埒もない噂までもつぶさに集めて、レオンは報告に...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第21話】前編
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戦場は陸路の国境にほど近い街だった。
美しい石造りが風光であった街は炎に煤け、あるいは崩れた姿を晒しながら、なおも戦火に耐え、その面影を留めていた。
その外れ、忘れられたように残されていた、かつての時代にもここが戦場であったことを示す古く堅牢な城が、戦の本営の置かれる場所となった。
戦況は圧倒的にシ...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第20話】
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「レンから離れて!」
何人をも従える澄んだ声が、光の溢れる庭園に響く。
幼ささえ残るその声は、今日までお気に入りの青年に向けて。
陽光に眩く輝く金色の髪を揺らし、足早に近付いてくる少女の歩みに、向かい合うように対峙していた二人が場を譲るように退いた。
割り込むようにして二人の間に立ち、リンは大きく息...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第19話】後編
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「指輪を返してくれないかな」
そう言った男の顔には、常と変わらない穏やかな笑みが浮かんでいた。
まるで紅茶のお代わりを頼むような気軽さで、この王宮に数多ある中庭のひとつに据えられたテーブルセットに寛いだ様子で頬杖を付いたまま、彼は呼び止めた召使の少年に声を掛けた。
「何のことです」
前置きもなく告げ...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第19話】中編
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「王女様」
呼び止める声に、リンは振り返った。
視線の先には人気のない回廊が、歪みなく続いている。
柱越しに続く内庭の方にも視線を漂わせるのだが、やはりそこにも声の主と思しき姿はおろか人影ひとつも見えなかった。
奇妙なほど静まり返った周囲に眉を潜め、視線を先に戻そうとして、リンはぴたりと足を止めた。...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第19話】前編
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「公子」
先触れもなく現れた影が、足元に膝を突く。
待ち構えていたように、カイザレも前置きを抜きに要点だけを短く尋ねた。
「戻ったか。どうだった?」
「近隣三つの村が焼き払われました。娘だけは助けられましたが、他の村人は・・・」
手短に報告するハクが、歯切れ悪く言葉を切る。
彼女は確か父親がいると言...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第18話】
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待ちかねた勅使の帰還を告げる報告に、ミクは謁見の広間へと駆け込んだ。
いきなり飛び込んできた公女に勢いよく詰め寄られ、驚いた顔の勅使が後ずさる。
「こ、公女殿下・・・!?」
「お兄様は、何て!?」
「は、いえ、詳しくは大公閣下に・・・」
「お父様は今、臥せってるのよ!言葉なら私が伝えます!」
それこ...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第17話】後編
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王宮へ戻ったカイザレを待ち構えていたのは、不機嫌さを隠しもしない王女の姿だった。
自室に戻る間もなく呼びつけた青年をねぎらいもせず、気に入りの長椅子に凭れた少女が、険を含んだ視線を向ける。
「随分と遠出だったようね。城下ならまだ分かるとして、辺境の村にまで何の用だったの?」
その言葉に、カイザレは訝...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第17話】前編
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「せっかく訪ねて来てくれたのに、何のおもてなしも出来なくてごめんなさい」
「構わないで良い、こちらこそ急に訪ねて失礼をしたね」
申し訳なさそうに謝るメイコに、突然の客人は笑って首を振った。
その貴族然とした振る舞いと同時に、不思議なほど拘りのない鷹揚さは、以前に押しかけた離宮で会った時と何ら変わる様...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第16話】後編
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「公子に、伝令?」
「本国より至急の知らせを預かっております。恐れながら、殿下へのお目通りを願いたく」
謁見の広間に張り詰めた男の声が響く。
公子の故国から火急の知らせを携えてきたというその勅使を、玉座の王女は気のない様子で見やった。
当の公子は、またぞろ町や都市を見たいと言って城下に下りている。
...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第16話】前編
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「ボカリアへ・・・?」
「――・・・父が倒れたと知らせが。容態が思わしくないそうなのです。看病に戻ることをお許しください」
母国からの知らせを携えて、玉座の前に跪いた王妃は暇の許しを願い出た。
深く顔を伏せて、王の返事を待つ。
僅かな間に痛々しいほど憔悴した姿は、彼女こそが今にも倒れそうなほどだ。
...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第15話】後編
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深夜。控えの間で休んでいたローラは、鋭い叫びに眠りを破られた。
俄かには夢か現かわからず、暗闇で目を開いたまま、ほんの一瞬前の記憶を辿る。
高く響く、若い女の声。場所は壁をはさんで、すぐ近く。――隣の部屋にはミクがいる。
一気に繋がった思考に、彼女は跳ねるように身を起こし、主人の部屋へ通じる扉へ駆け...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第15話】前編
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「お兄様」
軽いノックの音に続けて、少女は扉の隙間から室内を覗きこんだ。
「お忙しい?今入ったら、お邪魔かしら」
扉から半分だけ顔を出し、遠慮がちに声をかける。
その声に、調べ物のために自室に篭もっていた彼女の兄は、手にしていた書物から顔を上げた。
いつも穏やかな蒼い瞳がこちらを向く。
「そんなこと...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第14話】後編
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