タグ「MEITO」のついた投稿作品一覧(44)
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処刑台の前には、多くの見物人が黒い波となって押し寄せていた。
『処刑』とは、重税などでこれと言った娯楽を楽しむ余裕も無かった庶民たちにとって、一つの気晴らしでもあった。両手首をならで縛られた状態で、メイコは処刑台の前に進み出た。処刑台の上には大きな十字架が立っていて、メイコはそれが自分をくくりつ...Fairy tale 30
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背中で両腕をしばられ、メイコはその場に跪いた。
苦しげな表情が浮かぶ。
「めーちゃん、何やってんの?」
まだポカンとした様子のカイトにはメイコも驚いたが、跪いている体勢の足は焼け付くように痛い。
答えようにも答えられないのだ。…いや、答えてはいけない。
確かに私は思いとどまり、短刀を海へと...Fairy tale 29
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「…あの、もう一度、言ってもらいたいのですが」
そう言って、メイトは呼吸を整えた。
「ええ、何度でも言うわ。…私と浮気をして?」
「…いいですか、浮気と言うのは…」
「分かっているわ、それ位。…お付き合いしている異性が居るのに、別の異性とお付き合いすることでしょ?」
「分かっているなら…」
「それ...Fairy tale 28
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「…え?」
思わず、メイコは聞き返した。
「だ、だから、その…」
ごにょごにょとメイトが口ごもって、小さな声で何かを言いながら顔を真っ赤にするのを、メイコはきょとんとした表情で見ていた。メイトの言葉が聞こえなかったわけではなくて、聞き間違いか何かだろうと思って、聞き返したのである。
「ち、ちゃん...Fairy tale 27
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「――あ、これ似合うっ!」
そういって、衣裳部屋のハンガーにかかっていた黒と赤のドレスをメイコにあてがい、アリスはお人形遊びでもするように嬉しそうに笑った。すると、メイコの方が今度はアリスに似合いそうなドレスを選び、白と緑の清楚なドレスをだした。胸元の大きなリボンが可愛らしい。
「似合う?」
ド...Fairy tale 26
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朝。
窓から降り注ぐ温かな日差しに目を覚まし、それぞれの“今日”が始まろうとしているというのに…。
「ダメな騎士ね!」
と、言ってやりたい気分だった。
何度かゆさゆさと揺さぶってみたが、メイトは起きる気配が無い。どうにかカイトに言って、別の奴に変えてもらおうと思ったが、かわいそうな気もするの...Fairy tale 25
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「――めーちゃん」
顔を上げると、そこにはアリスが立っていた。
『何?』
筆談は多少不便だが、なれてくるとそう煩わしいものではない。
「何の絵を描いているのかなぁって思って」
何と無しにアリスにその絵を見せてやると、アリスは驚いたような表情になった。もしかして変な絵でも描いていたのだろうか、と...Fairy tale 24
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-おまけ-
『鏡の悪魔』を見ていない方、またその世界観を壊したくない方や、腐向け表現に不快感を感じる方は、Uターンを推奨します。
まあ、腐向けっつったって、たいしたことないんですけどね!!(←ここ大事)
さて、それでは始めましょう。残った方々にのみ、知ることのできる、
『裏鏡の悪魔』です。
『-密...鏡の悪魔Ⅳ 9.5
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-走って-
しばらくそれを眺めていたリンだったが、はっとしてそれらを机の上におくと、走り出した。
写真たてに隠されていたのは、小さなタオルの切れ端と手紙と、赤い押し花のしおりだった。タオルにはいくつかのシミがあって、どうも子供がよく使うタオルのように見えたが、そのタオルの...鏡の悪魔Ⅳ 9
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-偏愛と純愛の狭間-
足が石になってしまったように動かない。まるでさび付いているようだ。
しびれるような空気感と、自らに向けられたシルバーの銃口で、ルカは息が詰まりそうだった。
「カイコさん、もうやめて下さい。このままでは、誰も喜びません。貴方も、ひどく悲しむことにな...鏡の悪魔Ⅳ 8
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-まるで牢獄-
しばらく流れたはずの沈黙は、数秒だったのか、数分だったのか、あるいは数十分だったのか。それすらも分からなくなるような長い時間が流れていた。――実際、ルカの腕時計の針は一分と三十九秒分しか進んでいなかった。
「…それ、楽しい?」
もう一度念を押すようにメ...鏡の悪魔Ⅳ 7
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-密室-
「あ、メイコさん…どうしたんですか?」
自分のほうにメイコが走りよってくることに気づいたカイコは、できるだけ平静を装い、笑顔でメイコに声をかけた。するとメイコは少し困ったような、それでもさっきより少し安心したかのような不思議な表情になった。
「ねえ、カイコ...鏡の悪魔Ⅳ 6
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-爆弾-
教会の玄関で靴についた泥を落とし、両手に抱えたビニール袋を一旦下ろすと、辺りを見回した。
「カイコ――?買ってきた物ってどこに置けばいいんだ?」
呼びかけても返事がない。仕方なく、メイトは荷物をリビングのテーブルの上に置き、カイ...鏡の悪魔Ⅳ 5
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-雨で-
いつの間にか、外は大きな音を立てながら滝のような雨が降り注いでいて、窓から外を見ると酷く歪んで見えた。
「――お昼、食べました?作りますよ」
突然、カイコガ言った。
「ああ、食べてないわね。…作るなら、手伝うわよ」
やっと気がついたというように、メイコが...鏡の悪魔Ⅳ 4
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-紅と藍-
無理やりリンをたたき起こし、レンがリビングへ降りてくると、既に荷物は出来上がっていて、メイコ・ルカ・リンとレンの分で、大きなバッグ二つと小さ目のバック二つにまとまっていた。そんな荷物を軽々と持ち上げ、玄関のほうまで運ぶ役目を、メイトがきっちりとこなしていた。...鏡の悪魔Ⅳ 4
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-出発準備-
しばらくすると、教室は静まり返った。
それから、どっと笑いが起こる。何故笑われているのか分かっていないのは、メイトただ一人だった。きょとんとしているメイトを見て、皆が笑っていることは明白だった。
「…メイトさん、それ、棒タイです。ネクタイじゃありません...鏡の悪魔Ⅳ 3
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-学園祭準備-
スクールバックを持って、弁当を押し込むと、靴に無理やり足をねじ込んで一旦振り返ると、リンはメイコに言う。
「それじゃあ、行ってきます!」
「ええ、いってらっしゃい」
ドアを開けるなりレンの手を引いて家を飛び出す。家の前ではミクとプリマが並んで立っ...鏡の悪魔Ⅳ 2
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鏡の悪魔Ⅳ
-紅いもの同士-
「ちょっと疲れた…。少しゆっくり帰っても大丈夫よね」
そう独り言をいい、メイコは公園のベンチに座って買い物帰りのエコバッグから『鮭とば』と缶ビールを取り出し、まっていましたと言うように嬉しそうに鮭とばの袋を開き、缶...鏡の悪魔Ⅳ 1
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-第三十四章-
何かが破裂するような、乾いた音が廊下に響き渡る。広い廊下に反響し、何度も山彦のように重なって、次第に音は小さくなり、消えた。
その場に、リンが倒れこむ。しかし、リンは無傷だった。その手についた赤々と燃え盛るような紅のそれは――。
「レン、何、やって...真実のガーネット 35
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-第三十三章-
しばらくいくと、ひときわ大きな美しく豪華に縁取りされた扉の前に行きついた。
何度か深呼吸をし、扉をぐっと開いた。扉の向こうにいたのは、顔のよく似た金髪の少女と少年の二人だけ、他に人間らしき影は見えない。――猫はいたが。
中にいた二人は驚いたよう...真実のガーネット 34
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-第三十二章-
ひたすらに走り続ける。
行く先、直線上には何の障害物も見当たらない。人気(ひとけ)もなく、まるでこちらが敵の手の上で転がされているような、わざと泳がされているような風にすら思える。ぞっとするような感覚を抑え、メイトは一度、深呼吸をしてまた走り出した。...真実のガーネット 33
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-第三十一章-
まるで風があせりや不安を代弁するかのように、大きく木々を揺らして青々としたまだ若い葉を落としていく。街路樹がシンクロするように皆かぜに合わせて不安を大きくさせるように『ザァァァァアアアア』と音をならしていた。
「――大丈夫、だな」
そう、メイトが...真実のガーネット 32
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-第三十章-
退院の手続きを終え、ルカは病院を出た。
狭苦しい病院の敷地内から出るのは、もう一週間以上も久しくおもえ、ルカは大きく深呼吸をした。そして、空を見上げると、少し表情を変え、歩き出した。その表情からは、緊張が見られた。
ふと、街路樹の陰から見える人らしき...真実のガーネット 31
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-第二十九章-
「ただの風邪…ですか」
「そうです。それと、睡眠不足とストレスですね。帝国のこともあって、疲れがたまっていたのでしょう。一応、薬を飲んでぐっすり眠れば、すぐに治るでしょうから、安心してください」
そういった女性は『ハク』と名乗った。あの、ルカが入院して...真実のガーネット 30
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-第二十八章-
ふと、レンは顔を上げた。不思議そうにリンがレンの顔を覗き込む。
「リン、ちょっと、ケータイで、メイト兄に電話して。登録してあるから。…ちゃんと名乗ってよ」
「え?うん、わかった。…あ、これね」
そういってリンが橙色の携帯電話を耳に当て、「トゥルルル...真実のガーネット 29
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-第二十四章-
高いヒールが、コンクリートの地面に音を立てる。
「ちょっと、カイト?」
事務所のドアを開くなり、メイコはそういった。中で新聞を読んでいたカイトは顔を上げ、不思議そうにメイコの顔を見て、新聞をたたむと立ち上がった。
「めーちゃん、どうしたの?こんな昼間に...真実のガーネット 25
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-二十三章-
病院の中の静けさは、異常とすら思えた。
薬品の鼻につんと来るにおいが、途切れることなく病院中にぎっしりと詰まるように漂っていた。病室まで辿り着くまで、殆ど人とすれ違うことはなく、それが病院内に人気がないことを物語っていた。
「あ、あの病室ですよね」
「...真実のガーネット 24
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-第二十二章-
「ああ、そう。よくわかったわ。大変だったわねぇ」
別に大変でもなさそうな声で、ルカは言った。
「あ、うん。まあね」
ふう、とルカが天を仰ぐようにため息を漏らすと、レンがそれを真似るように天井を見上げた。真っ白い天井に所々黄ばんだ部分がある。みていて面...真実のガーネット 23
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-第二十一章-
無意味な沈黙が病室を支配する。
「…あの、さ。ルカ?」
「はい?どうしたのかしら?」
ふっとルカが顔を上げた。
「いや、なんだってこともないんだけど」
「レン、そこの赤い色鉛筆とって。…まあ、メイトは気を使ってくれたようだし、帝国がどうのこうのって、詳...真実のガーネット 22
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-第二十章-
数分の時が流れた。
ルカの不敵な笑みはそのまま、メイトは凍りついたようになった。手に持ったままの携帯電話の画面が、少し震えたように思えた。
微笑んだまま、ルカが取り出したのは、桃色の小さなポーチだった。中には黒くスタイリッシュな携帯電話がさも当た...真実のガーネット 21
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