タグ「小説」のついた投稿作品一覧(208)
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ようやく体調が回復し仕事に復帰した僕を社長が待ち構えていた。
何の御用かは分かる。この前鈴木君が知らせた、とある大規模な計画のことに違いない。
社長は僕と鈴木君を社長室に通し、鍵をかけた。
「掛けなさい。」
社長は社員である僕に応接用の椅子に腰を降ろすことを許し、雰囲気が静まり返ったとこ...Eye with you第十三話「計画」
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三十センチ踏み出しただけで、まだ夏も遠い午後十時の冷たい気温が体を包み込み、震わせた。それは人の肌を持つミクも同じだった。
「ミク。寒くない?」
「うん。」
ミクは僕に身を寄せ小さく返事をしたが、そのか細い声すらも、微かに震えているような気がした。
寒気ではなく、それは恐らく、緊張と、...Eye with you第十ニ話「月に夢見る」
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ミクが自力での自立を果たしてから、僕達は時間を忘れて歩く練習に没頭していた。
人間より数倍の学習機能を持つミクの足取りは次第に安定し、僕に任せる体重は見る見るうちに軽くなっていく。自室からリビングへ。リビングから自室へ。段差はまだ難しいが、約五十メートルの距離を踏破したのは、立ち上がったばかりの...Eye with you第十一話「ソファー」
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ふと意識が戻ると、どうしたものか、一瞬で眠気が消え去っていった。
外界とカーテンで遮断された、この薄暗い場所に視線を巡らすと、私の脳裏に、昨日眠りに付く前の記憶が鮮明に蘇った。
クリプトンでの仕事も遂に佳境へと突入し、押し寄せる仕事のおかげで長らく帰宅できない状態となってしまった私に、クリプト...Eye with you第十話「自立」
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「もう大変でしたよ先輩。警察が会社や開発関係者の家宅捜査の話まで持ちだしますし、みんなショックで落ち込んだり怒り狂ったり・・・・・・まったく、先輩って人はホント物事顧みませんね。まぁ今回はこうでもしないとミクを助けられなかったでしょうし、この子を助けるという意味では懸命だったかもしれませんが。とも...
Eye with you第九話「夢中」
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目覚めた時から、どういうわけか胸が弾んでやまない。
罪を犯した罪悪感や、尚も体から離れてくれない微熱と眩暈があろうとも、そんなことはまるで気にならず、僕はデスクのPCに向かいインターネットにアクセスしていた。
忙しなくマウスをクリックさせ、行き着いた先は・・・・・・。
「ひろき・・・・・・?...Eye with you第八話「支度」
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「先輩。先輩。」
「・・・・・・。」
同じことを繰り返している気がする。
前にも僕は同じ風景を見たはずだ。自分のベッドに横たわり、鈴木君の呼び声で目を覚ます。
同じことが、二度繰り返されているのか。
「先輩・・・・・・!」
「ああ、鈴木君・・・・・・どうしたの。」
「どうしたのじゃ...Eye with you第七話「家族」
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光も、人も、何もなかった。仄かな暗闇が覆う、ただ無人の研究室。
ただ金属製の台の上に、ミクは、静かに目を閉じたまま、石像のように静止していた。こうして体中をケーブルに縛られ、台座の上に固定されている様を目の当たりにすると、どうしてもミクを同じ人間の意志を持っていることを忘れてしまう。
雨を吸...Eye with you第六話「雨」
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澄み切っていたはずの天候は徐々に鈍色が覆い始めていた。午後には雨が降り出すことだろう。
天候の方は不調だが、スケジュールの方は思いのほかすっきりとしており、早々と仕事を引き上げた私は、仕事仲間のランスと事務所のソファーでくつろいでいた。
その時、憤怒の形相で顔面を歪ませた白衣の人物が二名、事務...Eye with you第五話「薄暗い場所」
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また誰かが読んでいる。一度眠りに付いた僕を、呼び起こそうとする。
誰かの呼び声と共に眠りについて、誰かの呼び声に誘われ、僕は目を覚ました。
眠りの中、僕はやはり一人だった。
暗黒の世界。冷たい風も、鈍色の雨も、そんな物悲しいものの代表さえないそんな世界なのに、真っ暗闇に取り残された僕の心は、...Eye with you第四話「混濁の中」
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その話は珍しく私の興味を引いた。
そうなったからには、私は仕事の一部を削り彼に付き添うことを決めたのだ。
「あんたも付いて来るのか? 珍しいじゃないか。」
私が珍しく興味を持ったことに、彼は機嫌を良くした。
仕事の関係で顔を合わせることが多く、友人としての関係を築いた仲ではあるが、互いの趣...Eye with you第三話「闖入者」
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朝から研究室は大賑わいだった。
僕と共にミクの目覚めを待ち焦がれていた開発者の皆は、言葉賭けたり触れてみたりで、とにかくもうミクに夢中だ。
ミクもまた、あっという間に言葉を覚え、片言ではあるが僕達と会話することができるようになっていた。
物覚えが早い。これなら、1ヶ月程度で常人と同じように会...Eye with you第二話「シーチキン」
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僕はいつも一人だった。
物心付く前から、僕は孤児院で暮らしていた。
内向的すぎたせいか、友人は持てず、やはり一人だった。
一人で遊ぶ事さえ知らなかった僕は、仕方なく勉強していた。
親類がいないせいで引き取り手もなく、入学してからも僕は孤児院に住み、一人で勉強していた。
そうする内に、いつ...Eye with you第一話「目覚め」
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共に振り上げ、渾身の力を込めて繰り出された拳は空中で衝突し、俺とメイトの体は反動で大きく仰け反った。
「ぐっ!」
次にメイトは足を鞭のようにしならせ俺を薙ぎ払うが、俺はその瞬間に跳躍し、メイトの頭上を飛び越え背後に貼りつき、首根っこを捕まえて後頭部に一発の打撃を与えた。
脳に強烈な振動が加...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十八話「soldier」
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薄暗い照明の下に、細長いコンテナを手にしたミクオの姿が照らし出された。
「この中に、あなたの装備が全て入っています。」
ミクオはコンテナを足元で開き、中から俺の着ていたス二―キングスーツを取り出した。
「さ、早く着て下さい。」
「ああ。」
振り向くと、ワラはこちらに背を向け、しゃがみこん...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十七話「皮肉」
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思い返してみると、この任務も終局に向かっていることに気がついた。
いや、向かっているというより目前なのだ。
俺が既にピアシステムを制御不能にするワームをマザーコンピューターに挿入したことで、あとどれくらいかは分らないが、時間が経てばシステムは完全に分解され、停止し、テロリストの兵器は一切使い物...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十六話「ストリーキング・ミッション」
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・・・・・・。
「ボスお目覚めのようです。」
「ふん。案外としぶといものだ。」
右も左も分らない暗闇が薄れて、それが去った時、視界が、眩い光で真っ白に塗りつぶされていた。
目が痛くなるほどの光も徐々に薄れ、俺は三人の人影が、目の前に立っていることに気がついた。
「よく眠れたか?A-D。い...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十五話「託された未来」
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鋼鉄の咆哮。深紅の雷鳴。黒き銃声。
このコロシアムに耳を劈き天地を揺るがす轟音が響き渡った。
そして、網走智樹の乗るアシュラが、一瞬で眼前に映っていた。
「ッ!!」
装甲をパージする前とは桁違いのスピードを前に、俺はただレバーのトリガーを引くことしか出来なかった。
即座に40mmバルカン...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十四話「最期の笑顔」
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ただ茫然と、俺は目の前のモニターに映し出された光景を眺めているだけだった。
そこには、レーザーの直撃を受け、黒煙を上げながら沈黙している、ソラの機体。
そして俺と同じく、茫然とこの光景を目の当たりにしながら沈黙を始めた、四機の戦闘機とそのパイロット。
誰もかもが、一言も声をあげず、ただ茫然と...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十三話「役立たず」
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鋼鉄の巨獣に乗り、一歩、また一歩と鋼鉄の大地を踏みしめる。
視線の先には、暗いトンネルから差し込む、太陽の光。
あの先へ、あの光の先へ抜ければ!
俺は端の躊躇いもなく前進し、鋼鉄の巨獣、ハデスと共に光の中へと飛び込んだ。
そして次の瞬間には、眼前には、広大なグラウンドが広がっていた。
...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十二話「THE・SORROW DUEL」
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三人で細長い通路を駆け抜けていく。
これからどうするか、そう脳内で模索を続けながら。
「ワラ、ヤミ。で、脱出の目処は立っているか。」
「ええ。ちょっと大げさな方法かもしれませんが。」
「大げさっていうか、大胆な感じ?」
足を止めず、ワラとヤミが答える。
「ほう、どうするんだ。」
「こ...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十一話「光射す先へ」
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今まで行動を共にしていたはずの二人が、突如として、俺に刃の矛先を向けていた。
「おい!どうしたんだ二人とも!」
呼びかけても二人から返事はなく、次の瞬間、俺はワラの放った大蛇の如き草日から身を翻していた。
「ミクオ!!どういうことだ!」
振り向くとミクオのいた場所に巨大な光の円が飛び去り...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十話「Indulge in TWO」
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ハンガーを出てコンピュータールームに向かう途中、無線機に通信が入った。
相手側の周波数は分らない。セリカやタイトではないだろう。
「誰だ。」
『僕です。』
無線に応答すると、ミクオの声が返ってきた。
「何の用だ?」
『僕はコンピュータールームに居ます。今、貴方がワームをインストールしや...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十九話「処刑」
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鋼鉄の装甲を纏い、背の翼で飛翔し、巨大な砲塔を片手で振りまわす。
その異様な姿の彼女、重音テトの、装甲に包まれたヘルメットのセンサーが、しかと俺を睨みつけている。
「さぁ、消えるがいい!!」
テトの叫びと共に、その手にある巨大な銃の砲身が光を放ち、モーターのような音を響かせ、光を収束し始めた...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十八話「FOR FUTURE」
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広大な鋼鉄の空間に独り取り残された俺は、一刻も早くここから抜け出そうと考えたのだが、たった今、ミクオから聞かされた重大な事実を少佐に報告しなければならないと思い、無線でセリカを呼びだした。
「セリカ。少佐と繋いでくれ。」
『はい。』
すると一度無線の反応が切れ、別の周波数に接続された。
『...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十七話「憤怒のキメラ」
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果てしなく広大で、果てしなく静寂な鋼鉄の空間、ハンガーに、彼のつぶやきが響き渡った。
ミクオが発した言葉は、間違いなく、俺のことを指していた。
意外すぎる出来事に思わず目を見開いた。
「ご覧になっていたんでしょう。大丈夫、攻撃したりはしません。」
クロークを起動し、気配すらも押し殺していた...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十六話「何が正義か」
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タイトに背を任せ飛び込んだ先は、思いのほか静寂に包まれていた。
階段から見下ろした先には、広大なハンガーが広がっている。
どうやら航空機用のカタパルトらしいが、無数あるカタパルトには四機の黒い戦闘機が設置されているだけだった。
さらに奥へスコープをズームさせると、人型の巨大なABLがある。
...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十五話「自由のために」
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自分を中心とした十字線を取り囲む、無数の光源。
ここもすぐに、大勢のアンドロイドが警戒に押し寄せてくる。
「・・・・・・クローク、起動。」
適当な壁に張り付き、スーツのモードを切り替えると、スーツのセンサーが壁の色をスキャンし、その表面を壁と同化させていく。
クロギンの話によれば、この状...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十四話「紫の包帯」
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蒼い魔女が微笑んだ。彼女の手招きを目にした瞬間、そんな風に見えた。
四肢に装着した拳銃。流れる青い髪。妖艶な微笑み。
苦音シク・・・・・・。
数百の銃口を向けられようとも、そんな威風堂々たる姿を崩さない彼女の態度に、俺は一瞬、体を縛られたような感覚に陥った。
「デル!おい!!」
背後から...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十三話「蒼い魔女」
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体は無重力に包まれ、視界に蒼き地表が広がっていた。
ここは高度五万フィートの空。地球から、宇宙へと繋がる場所。
ミサイル型カプセル、ドローンの窓から周囲を見渡すと、そこには俺と同じくドローンに搭乗した仲間、そして、役五百発の空対地ミサイルだ。
これから、この仲間とミサイルと共に、的の重要施...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十二話「ハイテンション・ダイヴ」