タグ「KAITO」のついた投稿作品一覧(31)
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2013年2月15日……。
新たなフィールドを得たあの日から、俺は不思議な夢を見始めた。
折に触れ何度も見る夢。
明るくて、暗い。
温かいのに、冷たい。
完全な静寂と、萌えいずる喧噪。
よく知っているはずなのに、始めて体験するような感覚。
舞い上がるような喜びと、押しつぶされるような...Birth~無音の声 無色の緋~ 心象描写「So-La 2013 」
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Act1 鏡音リン
一階にあるリヴィングから、三階にある自室に戻ろうとした鏡音リンは、途中の二階で、とある部屋の前に立つメイコを見つけた。
その部屋はちょうどメイコの部屋の正面。空き部屋のはずだ。
レンからは何度も、あの部屋には絶対、どんなことがあっても近づくな、と言われている。
「メイコ...V3の前日The MEIKO
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1
草木も眠る丑三つ時。
女は矢庭に立ち上がると、目の前にいる菖蒲色の侍を指さした。
「私は必ず戻ってくる! その時再び勝負だ! 神威がくぽ!」
指さされた侍は、猩々緋を纏う女を見上げた。
「うむ、よかろう。某(それがし)、逃げも隠れもいたさん」
「よく言った!」
女は崩れ落ちるようにソファ...【カイメイ】悪い男14~ある意味カイトの真実?~
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壱
あの日と同じ、冬の天空に上弦の月が、浮かぶ夜に思い出す。
寄せ木細工の自鳴琴(オルゴール)を人知れず開き、流れ出る懐かしい曲に、耳を傾けるように。
普段は記憶の底に封じ込めた、雪に落ちたあの花の姿を。
上弦の月が照らす道に、響く固い足音。
道の石畳に落ちる、月光が作る薄い影。
月夜に...雪の褥(しとね) -心象描写 上弦の月-
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色々となめていた。としか言い様がない。
まず、晩夏の残暑をなめていた。
次に仕事が昼前に終わることをなめていた。
なんと言っても、『モジュールジーニアス』をなめていた。
詳しく説明するとこうなる。
八月も終わろうとしている今日の仕事は、『モジュールジーニアス』でのサムネ撮影。
予定...夏の終わりのブルー
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その白い姿に、神威がくぽが気づいたのは、偶然だった。
そうでなければ車道を挟んだ反対側にある、フラワーショップから出て来たただの客として、視界の端へと流してしまっていただろう。
晩夏の日差しにも眩しい、ベージュのダブルのスーツは、見た目涼しげな麻の生地。
目深にかぶった白い帽子の下からは、...Prayer
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カイトの家のリヴィングでは、エアコンを二十八度というやや高い温度設定で使っている。
そのせいかソファで横になり、眠っているミクは、首筋にうっすらと汗をかいていた。
テーブルの上には、大量の英語のテキスト。
ヒアリングのためのポータブルオーディオプレイヤーに、ヘッドフォン。
英語の声(D...V3 ENGLISH の前日 The ミクさん
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1
リビングから聞こえる明るい笑い声は、少女特有の少し甘くて高い音色。
知らず知らずのうちに、カイトの口元に笑みが浮かんでいた。
扉を開けると、二人がこちらを見た。
「ミク、リン、レン、そろそろ出かける時間じゃないの?」
二人は身支度をすませ、リビングのフローリングの床に直に座って話しをし...悪い男10 ~レンの憂鬱 カイトの沈黙~
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悪い男 番外編 ~影の人~
「ルカ、お茶入ったわよ」
両手にマグカップを持ったメイコが、リビングに入ってきた。
「ありがとうございます。お姉様」
ソファで寛いでいたルカの前とその隣にカップを置き、メイコはルカの隣に座ると、早速コーヒーを飲み始めた。
「どう、ルカ。仕事には慣れた?」
カップ...悪い男 番外編 ~影の人~
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流 星 -心象描写 Pane dhiria-
天を貫くようにそびえる岩山。頂へと続く螺旋の道。
長い旅路の末、男は山頂にたどり着いた。
元は端正であっただろうと思われる、頬が落ちた顔に、蒼髪を乱れさせた男が持つのは、竪琴一つ。
他に武器もなく、支える者もいない。
それでも男の、至極の青の...流 星 -心象描写 Pane dhiria-
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前編
1 一月十四日
隣で動く人の気配に、メイコは目を覚ました。
(カイト……?)
そうだ。昨日の夜、カイトを引き止めて……そのまま……。
まだぼやけている意識の中で、メイコはぼんやりと考えた。
姉弟から恋人同士になってやっと一ヶ月。
メイコの部屋でカイトが夜を過ごしたのは、今回が初めて...【カイメイ】解放の前日
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Act1 鏡音レン
一階にあるリヴィングから、三階にある自室に戻ろうとした鏡音レンは、途中の二階で、とある部屋の前に立つカイトを見つけた。
そこは『カオスの部屋(悪い男3番外編「カオスの部屋」参照)』と呼ばれる、この家最大の謎の部屋だった。
真剣な顔で扉を見つめるカイト。
いつもは穏やか...V3の前日
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序
それは、いずれの時代のことでありましたでしょうか。
気が遠くなるほどの、遠い昔。
人々がまだ、弓を引き、槍を持ち、刃を振るい、軽々に命を散らしていた頃のこと。
この地は戦場(いくさば)でございました。
幾度も繰り返される、愚かな戦い。
大地は数多の血で穢され、屍肉は野に晒され、弔いの...夢告げの夜 ~捧(sasagi)-心象描写「祈声」- 前日譚~
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悪い男 7 がくぽのローズレッド
ノックを軽く二回。
「俺です。迎えに来ました」
三階にあるルカの部屋まで、がくぽが迎えに来たのは、仕事に行く為ではない。
今日は二人でだけでの観劇。
ルカが観たがっていた、ミュージカルのチケットを手に入れ誘ってみると、喜んで誘いを受けてくれたのだ。
「どう...【ぽルカ】悪い男(7)~がくぽのローズレッド~
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マスターとカイトと涙の理由(わけ)
レコーディングスタジオへの階段を、メイコは駆け上がっていた。
もちろん、エレベーターはあるのだが、そんな物は待っていられない。
今日は久しぶりのオフ。
家で昼食をとった後、さて、どこかに出かけようかと思っていた時に、なじみのマスターから電話が入った。
「...【カイメイ】マスターとカイトと涙の理由(わけ)
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真実の真相~ truth of the truth~
何千人の人群れの中でも、後ろ姿ででも、俺はきっとその姿を見つけられる自信があった。
だから今日も見つけた。
「めーちゃん」
見つけたのは、レコーディングスタジオのある建物を出てすぐ。
夕日が当たって、少し眩しかったけれど、ちゃんと分...【カイメイ】真実の真相~ truth of the truth~
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Grow
-同じ人間が二人-
顔も姿も違うのに、始めてリンとレンに会った時、俺はそう思った。
その事をめーちゃんに言うと、何も言わずに笑って頷いていた。
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ベッドの上で寄り添うように、二人は眠っていた。
掛け布団の下になって見えないが、二人がお互いの手をしっかりと握っている事を、俺...【カイメイ】Grow
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悪い男(6)~現金と密約~
正月の朝-と言っても、もう朝九時前。
メイコはそっと、玄関のドアを開けて、家の中に滑り込んだ。
普段着にコートを引っかけただけの姿。手には少し大きめの財布。
家に入るなりメイコは、大きくため息をついた。
「めーちゃん、お帰り」
突然掛けられた声に、飛び上がりそう...【カイメイ】悪い男(6)~現金と密約~
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年の瀬の「マイマスター」
「いないな」
カイトの部屋のドアを閉めながら、レンが呟いた。
「だとしたら、こっち?」
レンの後ろにいるリンが、向かいの部屋のドアを指さした。
年の瀬はいつも以上に忙しい。
特に十二月二十七日が誕生日の、鏡音リン、レンにとっては、十二月二十四日のクリスマスイブ前か...【KAITO】年の瀬の「マイマスター」
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……and MERRY CHRISTMAS
玄関先でブーツを履いていためーちゃんが、見送りに来た俺の方を振り向いた。
「カイト、今日の予定は?」
「掃除して、洗濯して、ご飯作って、食べて寝るだけ」
ボーカロイドとして生まれて十ヶ月余り。
笑えるぐらい売れてない、仕事のない状態の俺の日常は、こん...【カイメイ】……and MERRY CHRISTMAS
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悪い男(5)~がくぽの恩義~
エプロンのポケットに入れている携帯から、メールの着信を知らせる音が鳴った。
シチューをよそうために手にしていた皿を、調理台に置き、カイトは携帯電話を取りだし、ボタンを操作した。
「めーちゃん?」
『ルカと飲んで帰るから遅くなるよ~( ̄ー ̄?).....????』...【ぽルカ】悪い男(5)【カイメイ】~がくぽの恩義~
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夜明け前
メイコが目を覚ましたのは、隣の部屋から聞こえる、微かな物音のせいだった。
(カイト……? 帰ってきた?)
デビューしてしばらくは仕事が無く、時間をもてあましていたカイトだが、最近では露出も増え、すっかり忙しくなっていた。
今日もそう。
そろそろ眠ろうとした時には、カイトはまだ帰っ...【カイメイ】夜明け前
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初 恋
感情、初恋、花、孤独……光ノ中デ震エテ揺レル……
それは少しだけ昔のこと。
その頃の俺の仕事は、留守番だった。
同居人であるボーカロイドMEIKOこと、めーちゃんは売れっ子で、家にいない事が多かった。
俺はと言うと、全く、本当に、笑いがとれるぐらい売れていなかった。
失敗とか、...【カイメイ】初 恋
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悪い男(4)~カイトの戯れ がくぽの本音~
「ただいま」
そう言いながら巡音ルカがリビングに入ると、テレビの前にコの字型に置かれたソファに座った男達が振り向いた。
「お疲れ様、ルカ殿」
「お帰り、お疲れ様」
一人はこの家の住人であるカイトなので、別にどうとも思わなかったが、もう一人は隣に...【カイメイ】悪い男(4)【ぽルカ】~カイトの戯れ がくぽの本音~
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悪い男(3-上)番外編 カオスの部屋
入り口のドアが開くのには気づいた。
人が入ってくるのも分かった。
それでも入ってきた人物が、声を掛けてこなかったので、『人物』の思いやりに甘え、カイトはそのままピアノを弾き続けた。
カイトが今いるのは、レッスン室。
二階にあるカイトの部屋の正面に...悪い男(3-上)番外編 カオスの部屋
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悪い男(3)~鏡音レンの反乱(下)~そしてがくぽ編
「義兄者(あにじゃ)?」
二階を通り過ぎようとするカイトの背に、がくぽは声を掛けた。
「なに?がっくん」
「打ち合わせは義兄者の部屋ではないのか?」
「うん、今日はバナナイスだし、レンの部屋でやろうと思って」
「ああ、そうですか」
...悪い男(3)~鏡音レンの反乱(下)~そしてがくぽ編
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悪い男(3)~鏡音レンの反乱(上)~だからカイト編
「ただいま」
カイトが仕事を終え、家に帰り着いたのは、夜の十時をまわった頃。
玄関のドアを開け、誰に言うともなく言った時だった。
「カイト兄~~~~~!!」
飛びついてきたのは黄色い塊。
いや、一番小さい妹、鏡音リンだ。
「おっ...悪い男(3)~鏡音レンの反乱(上)~だからカイト編
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悪い男(2)-がくぽの華-
コーヒーの載ったトレイを手に、スタジオに戻ってきた神威がくぽは、目当ての人をすぐに見つけた。
色鮮やかな長い髪、綺麗と可愛いがいい感じで合わさった、魅力的な顔立ち。ほっそりとした姿態に似合わぬ、豊かで形のよい胸。網タイツに包まれた、すっきりと伸びた長い足。黒いミニの...【がくルカ】悪い男(2)-がくぽの華-
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悪い男(1)-カイトの真実- 後編
「それが、まあ、馴れ初め?っていうのかな」
焼酎のグラスを片手に、メイコは少し照れたように、正面に座るルカにそう言った。
「やっぱり、最初から主導権は、お姉様ですのね」
と言って微笑むルカの手には、レモンサワーのグラスが握られている。
二人とも結構酔って...【カイメイ】悪い男(1)-カイトの真実- 後編
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悪い男(1)-カイトの真実-前編
その夜のメイコは極めて上機嫌だった。
気心の知れたPの今回の曲は、今までの中でも指折りの傑作。収録も滞りなく進み、会心の歌が歌えと思う。Pからも大絶賛のお褒めの言葉をいただいた。
その後のスタッフとの打ち上げも、楽しくて……楽しすぎて、かなり飲み過ぎた。
...【カイメイ】悪い男(1)-カイトの真実-前編
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