タグ「小説」のついた投稿作品一覧(110)
-
19
「え……」
アルタイルも、レティシアも、セディンの突然の行動に、声を失った。
「僕は、少年の頃、ルディのいない世界に戻すために、自分が何か出来ると信じていました。でも、僕の力では、故郷の、この小さな村の小役人になるのが、精一杯だった。
……仕事と言えば、たまに訪れるゼルの方のために、街までの...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 19
-
18
「いつも熱心ですね」
日の暮れた時刻に訪ねてきたセディン・アノールは、テーブルの上の資料と、顔を突き合わせて話し込んでいるレティシアとアルタイルを、ほほえましそうに見やる。
「こちらこそ、いつも資料を提供していただいて、助かります。外、冷えましたよね」
レティシアがセディンに熱いお茶をすすめ...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 18
-
17
村に滞在した三ヶ月間、二人は、全力でルディのことを調べ上げた。ルディから生まれたハーニィを育てていくために、なるべく多くの資料が必要だと思い立ったからだ。
「まず、ルディは、湖から現れるというけど、誰も現場を見たことがないんだ」
アルタイルは、役場の役人に掛け合って、出来る限りのルディの生...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 17
-
16
やがて、アルタイルは、立ち上がった。
立ち上がったばかりの、少女の手を引いた。
「レティを、迎えにいこうな」
少女が、アルタイルの手を、握り返した。
「ゆっくり歩いていけばいい。朝には村の外に着く。いざというときに情に弱いあいつが、俺たちをそうそう捨てられるわけがないんだ。」
アルタイ...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 16
-
10
アルタイルは、天幕の中で目を覚ました。
幕越しに伝わる闇とひんやりとした空気は、どうやら夜が来ているようだった。
「レティ……?」
つい数日前、そうされたように、額には濡らした布に包んだ風の加護が乗っかっていた。
そして、天幕の中には、アルタイル一人のようだった。
「どこいった、あいつ...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 10
-
9
「ちゃんと前を見て。大丈夫。怖くないよ」
アルタイルは、その言葉を聞くたびに足元をすくわれるような感覚に襲われる。
レティシアは、一撃で自分をしとめられるはずなのに、何度か剣を打ち合わせてくれる。どうやら自分の打ち込みのパターンが単調だと気付かせたいようだ。
アルタイルはそのことに気...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 9
-
6
「鎧、見立ててあげる」
店の親父が、レティシアを見てにこりと笑った。
「お姉さん、若いのに、ずいぶん使い込んでいるじゃない」
「へへ……」
一目で気に入られたようだった。いったいどこにその評価点があったのか、アルタイルには見当も付かない。
「接ぎだよ、坊や。お姉さんの鎧は、よく使ってある。そ...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 6
-
5
「あの、」
「ん?」
ちら、と顔を上げたレティシアに対し、横柄に返事をするアルタイル。
「……あなたが剣を振るうとしたら、私が魔法を担当するの?」
ルディ退治に向かうグループ、サリの基本の組み方は、ルディを直接倒す剣士と、それを援護する魔法士で構成される。
アルタイルが剣士なら、当然、レテ...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 5
-
「トカゲでもデキれば良いぜ?俺は」
狼族の男が、ねっとりと笑う。
「げぇ! 俺はごめんだね! あの鱗の尻尾が気味悪いったら」
鷲の男は、ばさっと羽をたたんだ。
レティシアの声は聞こえない。アルタイルは、一直線にテーブルへ向かう。
「お前は知らないから言えるんだよ。初めて見たときは卒倒するかと思っ...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 4
-
3
「待ってよ~」
どんどん歩くアルタイルを、レティシアが追いかける。
アルタイルが立ち止まった。
「遅い!」
平日のため、人通りも少なくなった、隣村へ続く道であった。
明るい日差しが、森の中へ続く小道にさんさんとさしている。
「ごめん~」
レティシアが弱弱しくへらっと笑った。その表情を見...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 3
-
レティシア・バーベナ。
その名は、ルディ退治に関わる者の間では有名だった。
いわく、「闇討ちのレティ」。
レティシア・バーベナは、いつも一人で仕事をする。そして、確実にルディを倒す。ルディの被害に悩まされている多くの町や村が、彼女を呼びたがっていた。仕事は正確で、報酬は一人分で済むのだか...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 2
-
「努力を重ねればいつか必ず成功する」
そう信じてきた。
「信じるものは救われる」
そのはずだった。
しかし、いつか、という何の保障も無い約束を、信じてしまった世間知らずは、どのような代償を支払うのだろうか。
十五歳を半年越えたばかりの少年、アルタイル・イーゴリの場合、それはどうやら命...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 1
-
……オリジナルでファンタジーを書いてみた
『夢と勇気、憧れ、希望』
~湖のほとりの物語~
注!ボカロメンバー、いません! ただ、テーマが、『唄』です。唄と魔法と奇跡の物語です。
☆文庫本1冊分です。きっちり完結。全部で34回!
気長にお付き合いいただ...【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 表紙
-
「夢みることり」を挿入歌に使ってファンタジー小説を書いてみた [5](最終回)
マルディンが目覚めたとき、すでに部屋の中は真っ暗であった。
体に張り付く汗の感覚と、何かが抜けたような虚脱感。
夜か、それとも早朝か。寝台から起き上がり、窓のカーテンを引いた。
外を見ると、うっすらと雪が降り...「夢みることり」を挿入歌に使ってファンタジー小説を書いてみた [5] (最終回)
-
「夢みることり」を使ってファンタジー小説を書いてみた [4]
「おいしかったね、あのお茶」
「ああ。マルディン用のも、楽しみだな」
蛍屋の印の押された、茶色の紙袋を抱えて、二人は街の石畳をあるいてゆく。
緑色の外灯が、道に光を落として、ぼんやりと光る。
「って、雪、降ってないか?!」
「うわ。本...「夢みることり」を挿入歌に使ってファンタジー小説を書いてみた [4]
-
「夢見ることり」を挿入歌に使ってファンタジー小説を書いてみた [3]
……アークのさした看板は、
『蛍屋』
「何の店?」
アークは答えずに、その店の木戸と押した。
きぃっときしんだ音を立てて中に入ると、ろうそくの炎の色のような暖色の光が二人を包んだ。
「いらっしゃい」
五十がらみの男の声が、店...「夢みることり」を挿入歌に使ってファンタジー小説を書いてみた [3]
-
「夢みることり」を挿入歌に使ってファンタジー小説を書いてみた [2]
* *
「いよっしゃ! 今日は臨時休講だな! 街に行ってもいいか、マルディン?」
「こらアーク! 不謹慎でしょ!」
憎まれ口を叩くアークを、リリスがたしなめる。
「これぞ鬼の霍乱って奴だな! いや~初めて見た...「夢みることり」を挿入歌に使ってファンタジー小説を書いてみた [2]
-
『夢みることり』を使ってファンタジー小説を書いてみた [1]
大きな湖に、豊かな土地。
この国が、ルディと呼ばれる怪物に悩まされ始めてから随分経つ。
四十年だった。
この国は、真ん中に大きな湖を抱えており、国境を接する外縁は、はるかな山々に囲まれていた。春になると雪解け水が豊かな水を湖に供給...夢みることりを挿入歌に使ってファンタジー小説を書いてみた [1]
-
発想元・歌詞引用: トラボルタP様・ジュンP様
『ココロ・キセキ』エピローグ ある晴れた春の終わりに
語り手:織也拓海
「博士・・・・・・」
レン・カガミネが亡くなったのは、春の終わりの晴れた日だった。
吸い込まれそうな蒼穹の空に、送り行く車のクラクションが高く響いていった。
心なしか、喪服...ココロ・キセキ エピローグ -ある晴れた春の終わりに-
-
ココロ・キセキ ~ある孤独な科学者の話~
発想元・歌詞引用:トラボルタP様・ジュンP様 『ココロ・キセキ』
……一度目の奇跡は
きみが生まれたこと
二度目の奇跡は
君と過ごした時間……
『ココロ・キセキ ~ある孤独な科学者の話~』
「初瀬 鈴(はつせ りん)です。よろしくお願いします」
レンこと鏡音...『ココロ・キセキ』-ある孤独な科学者のはなしー [1]