かぎろい灯火の投稿作品一覧
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終わりのときが近づいていると
こうしてわかるのね
儚いもの 頼りないものよ
人の命なんて
幸せな人生だったとは
どうしても言えないわ
囚われず生きたことを
後悔してはいないけど
もしもあなたの隣りを
離れずにいたならと...56.せめて最後に
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当たり前とも思わずに
ほとんど意識もせずにいて
ああ 恵まれていたんだと
君に触れてやっと気づくんだ
何の努力もしていないのに
僕は楽々できること
死に物ぐるい 血をにじませて
それでも得られない人がいるって
君がその手を伸ばしても
届かないのならば...君が僕の目をひらき
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それは悲劇 知らぬうちにどこかで決まった答え
気づいたときには全てが終わってしまっていた
もし何歩か踏み出したら もしも手を伸ばしていたら
何か変えられていたんじゃないかと
誰かが得られなかった今日の日を
また繰り言で消費するのかい?
やり直したいと願うなんて
やり直せば今度はうまくいくとでも?
愚...やり直しても僕らはきっと
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そんなところに気がつくのって
驚嘆しきりよあなたには
新しいこと 変わったことを
途切れず見せてくれますね
飽きる間もなく次から次へ
自分もときめくものですか
輝いた目で振り仰ぐ
あなたが創り上げるもの
拍手喝采 称賛を
流石と言わせてくださいな...新しい風へ
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爽やかに晴れた空には
ひとひらの憂いすらも
みつけられないのにね
胸の内は曇るばかり
あぢきなく世を思ふゆゑに
今日も絶え間ない物思い
あるいは愛おしく人をみつめつつ
静まらぬ心に揺れ動くこの身です
あざやかに咲いた花には
つゆほどの気負いすらも...99.物思ふ身は
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急に人生が終わったとしても
悔いも未練も残らないぐらい
いつも全力でいるつもりだけど
やっぱり未練は残るんだろう
明日を迎えれば また君と会える
何度重ねても飽きない夜明け
胸膨らませて歩き出す朝
生きていきたいと心から願うよ
君と過ごす時をいついつまでも
惜しからざりし命さへ大切に...50.君といたいと心から
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田子の浦にやってきたよ
話に聞いていた景色
あれに見えるはこの国一の
写真にだって絵にだって
心打たれたものだけど
やっぱり実物には敵わない
その名は知られる 古来より
鄙に轟く評判の
田子の浦を通り抜けて
打ち出でてみれば ほらそこに...4.富士の高嶺
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俯いていた日々を
決して忘れてはいないけど
今日も明日もわたしは
顔を上げ胸を張っている
差し伸べられたその手を取った
見える景色さえ塗り替えたあの日から
生まれ変わって
いつかの自分をあんなに苦しめていた
世界がこんなに愛しく見える
ただ一つのことを信じられたから...今は輝く世界で
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このところ忙しい日が続いていたから
一息ついた帰路にようやく気づいた
肌刺す空気が澄んで 吐く息が目に見えて
だいぶ厚着になったじゃないか
いつの間に 無意識に
かささぎが翼を並べて恋人を渡した
引き裂かれた二人を再び出逢わせた橋も
今では真っ白に霜が降りているのだろう
すっかり冬も深まって 季節は...6.冬の夜更け
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風吹く朝だよ 草がさやさや
寂しい景色を予想しながら
覗いてみたんだ そしたらね
きらめく世界が広がっていたよ
ほぐしたシャンデリアみたいに
光の粒でいっぱいだったの
ねえ 見て見て きれいだよ
風の吹きしく秋の野に
きらきらきらと玉が散る
宝石みたいな白露が...37.つらぬきとめぬ玉が散る
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倒れ込むベッドで天井を見上げて
いつになく慕わしく浮かぶのは
遠い昔の過ぎ去った日々
蘇る記憶は しんどかったことも
苦しくて悔しくて泣いたことも全部
忘れずに伝えるけど
辛い日もあったあの頃を
今は恋しく思い出すよ
かつてはこんな風に
懐かしむとは思わなかった...84.今は恋しいあの頃の
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あの山のふもと 広がっているのは
一面の笹原よ 名所だと君が語った
通り過ぎる風に さやさやとそよぐ
そよぐ そよぐ そうよ そうよ
さやさやと ささやきあった
二人でつむいだ愛を
どうして忘れるでしょう
わたしが忘れるでしょう
いつもいつも心から
想っているというのに...58.どうして君を忘れるでしょう
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何気なく見上げた夜空に
いつの間にか月が白く照っていて
満月が近いわねなんて
知らず口元に笑みが浮かんだわ
そんな自分に気づいたときには
雲の陰へと隠れていたけれど
見しやそれとも分かぬ間に
つれないことね 仕方ないけど
ゆっくり眺めたかったのに
偶然人波にみつけた...57.見しやそれとも分かぬ間に
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昨日も今日も飽きることなく
岸に波が寄せては返し
返した波がまた寄るように
繰り返す日も 明けては暮れる
夜になるたび 夢を見るたび
誰にもみつからなくなるたび
人目気にして昼は会えない
あなたと会えたらいいのにな
夢の通ひ路 辿っていくよ
せめてひとときの慰めを...18.夢の通ひ路
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垂れ込める雲 土砂降りの雨
気が滅入るんだよ 気圧のせいさ
自分の外に理由探して
尤もらしく説明しても
天高く風そよぐ穏やかな日も
変わらず心は晴れぬまま
わかってるんだ本当は
目を逸らしたって消えやしない
かこち顔に涙伝うけど
月やは物を思はする...86.月やは物を
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わかってはいたことでした
あなたを何も知らないと
かつて演じたヒーローと
重なるあなたはあれからも
自分の道を歩き続けて
今その場所に立っている
早幾歳の感慨と
実は少しの失望と
予想と違うあなたを前に
波立つ胸を自覚する...かつてのヒーローへ
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神さまに一つ頼るなら
つれないあの人を どうか振り向かせてと
そよぐ風になびくように 僕になびかせてと
そう祈るでしょう
ねえ 初瀬の山おろしよ 聞いておくれよ
あの人の心を そっと一吹きしてよ
恋の苦しみばかりを 煽らないでよ
激しかれとは祈らぬものを 今日も胸が痛いんだよ
叶わない夢だというなら...74.風に祈りを
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のびのび過ごして夏休み
みんなでお喋りするうちに
山際しらしら夜が明ける
まだ宵だと思ってたのに
お空の散歩に出かけた月は
西のお宿に着けたのかしら
あっという間の 夏の短夜
楽しい時間はおひらきよ
あなたと二人で夕涼み
夜風に吹かれているうちに...36.夏の短夜
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僕だけの恋だったあの頃を通り過ぎ
君との恋になったあの瞬間から
バラ色の日々がこのまま続くと信じていた
二人の想いさえ一つなら何でも乗り越えていけると
広がる海を前にして 楫を失くした舟人が
ゆらゆらと頼りなく 波間を漂うように
行方も知らぬ恋の道 世界はこんなにも大きくて
僕らはこんなにちっぽけだ...46.楫を失くした舟人が
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しばらく遠くへと行くことになりました
よんどころない事情なので
ずっとではないけれど 長くはなりそうです
何ヶ月では足りないくらい
君と だから もう 会えなくなるけど
因幡の山の峰に生ふる松の
もしも君が待っていてくれるなら
何が立ちはだかって 僕を妨げたって
きっと帰ってくるよ 君のそばに再び
...16.君が待っていてくれるなら
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心弱いと 後ろ向きだとは
重々承知で思いを馳せる
まぶしく振り返る過去の日々は
両手広げてもあふれるほど
ひとり気ままに駆け抜けたとき
あなたとふたり安らいだとき
それぞれの道を歩いたとき
力をあわせて挑んだとき
数えれば尽きぬ宝物は今や
手を伸ばせども届かぬ彼方...100.過ぎた昔を懐かしみ
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それでは一つ謎をかけましょう
テーマは「恋」でどうですか
沖の石とかけて我が袖と解く
その心は さあわかるかしら
平気な顔がうまくなったわ
いい比喩でしょうとうそぶいて
日の光を浴びた水面(みなも)が
明るくきらめくように
潮が引いても隠れて見えない
沖の石のように 僕の袖は...92.沖の石の僕の恋
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景色美しいあの島を
あなたに見せてあげたいわ
今日も漁師が海に出る
波の間を舟が行く
まるでこのわたしも
あの中の一人みたいね
絶えず飛沫を浴びて
海で生きているかのよう
雄島のあまの袖こそは
かくも濡れたことでしょう...90.見せてあげたいこの袖を
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何に動じ揺れる様子もない仮面を
今日もわたしは被れていたかしら
可愛げがないくらいでちょうどいいのよ
恋心なんて無縁なふりをして
芽生えた想いは 気づいていたけれど
何ができたでしょう 許されぬ立場にあって
絶えなば絶えね玉の緒よ 人に知られるくらいなら
忍ぶることのいずれは 弱ってしまうから……
...89.絶えなば絶えね玉の緒よ
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ドアを叩くよ教えておくれ
新しいこと次から次へ
未知の世界はいつだって
曰くありげに僕らを誘う
視界の靄が一気に晴れて
霞んでいたと初めて悟る
隅から隅まで鮮明な
見慣れぬ景色に息を呑み
秘密を暴く無粋にも
両手合わせて目をつぶり...Knock on the door!
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馴染みのなかった世界へも
躊躇うことなく飛び込んで
得意と苦手の隔てを置かず
一から学んで伸びていく
怖けることも知らぬげな
強さに勇気を貰いつつ
それはどういうことなのと
踏み込む問いも的確な
あなたを仰いでいるだけで
わたしも一歩を進めます...違う畑から来た人へ
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「その鶏は函谷関の?」 言ってやりましょドヤ顔で
「このウソツキ」ってだけよりも 気が利いてるでしょ?
ひけらかしたい気持ちは 正直わりとあるけど
通じることがまず嬉しいの 君ならピンとくるわよね
「夜の鶏ならば!」
「そうきたか!」って手を打ってよ
それでこそ やりがいがあるわ
知っているだけじゃ...62.知的遊戯を存分に!
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明るい陽射しが嬉しい
晴れやかな昼下がり
春は今真っ盛りだよ
ほら 外に出ようよ
咲き誇る花の雲を
仰いで歩こうよ
時折足を止めて
光のどけき春の日をゆく
薄紅色の吹雪をくぐって
しづ心なく花の散るらむ...33.光のどけき春の日に
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あなたと過ごしたひとときは
かりそめの宿り 短い夜
たとえれば刈り取った芦の
ほんの一節ほどの
難波江の 芦のかりねの
一夜ゆえ いついつまでも
想っています あなたを深く
季節すぎても散らぬ花
切ない心はあなたのものです
忘れられたらどんなにか...88.一夜ゆえ
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僕らは似てると気づいたときに
拓けた世界が今ここにある
ささいな日々を切り取って
もっと作ろう楽しいものを
こうしてみよう ああしたらどう
暇さえあれば組み上げて
これでいいんだ できるんだって
わかったからにはもう怖くない
顔を上げよう晴れ晴れと
見てくださいな僕らです...相棒と