タグ「鏡音リン」のついた投稿作品一覧(94)
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「向こうの世界...?」
ミクさんはつぶやくように繰り返して、考え込む表情になった。
紙魚子さんも、何かを考えているようだった。
少したって、2人はほぼ同時に口を開いた。
「それで」
お互い、目を見合わせた。
ひと呼吸おいて、ミクさんが切り出す。
「きょう、ここにお邪魔したのも、そのことを伺おうと思...玩具屋カイくんの販売日誌(264)
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月光企画という会社について、話し始めた紙魚子さん。
明るい日差しが窓から差し込んできて、おだやかなひと時だった。
でも、話の内容は、それとは似合わない、ちょっと不気味なものになった。
「いろんなとこで、今までよく、聞いてきたのよ。“神隠し”が起こるってこと」
メガネの奥の大きな目をしばたかせて、彼女...玩具屋カイくんの販売日誌(262) 彼女の行方
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「サナギが、行方...不明」
「そうなんですよ。バンドのみんなで、連絡を取ろうとしてて。ちょっと用事があってね」
コヨミ君は、困ったような声で言った。
「でも、昨日からどこにいるのか、わからないんだ。家にも、帰ってないみたいだし」
立ちつくすリンちゃん。コヨミ君は言う。
「何かわかったら、連絡します...玩具屋カイくんの販売日誌(261) 起こっちゃった!?
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通話の向こうで、ミクさんまであわて出したようなので、リンちゃんは変だな、と思った。
「そうね、紙魚子さんに聞いてみよう。何か、わかるかも」
ミクさんの、つぶやくような声が聞こえた。
リンちゃんは、聞いてみた。
「あのー、サナギが、どうかしたの?」
「うん」
はっきりとは答えずに、ミクさんは言った。
...玩具屋カイくんの販売日誌(260) リンちゃんは無事だ!
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けわしい表情のベニスズメさんは、リンちゃんの方を振り返って、言った。
「仕事、長いあいだ、お疲れ様でしたね。リンちゃん。気をつけて帰ってね」
そして、あたふたとホテルの部屋を出て行ってしまった。
ひとり取り残されたリンちゃんは、しばらくポカンと、ベッドの縁に座ったままだった。
さっきから、手に握った...玩具屋カイくんの販売日誌(259) ささげものの攻防
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ベッドに座るリンちゃんの顔をのぞき込みながら、ベニスズメさんは言う。
「よかった。出ないでくれて。無事で、よかった」
ぼんやりとする頭を、自分の片手で叩きながら、リンちゃんはつぶやいた。
「あたし、眠っちゃってたんだ…」
だんだん、頭がはっきりとしてくる。そして、少しずつ記憶がよみがえってきた。
「...玩具屋カイくんの販売日誌(258) 無事で、よかった…?
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たしかに、頭の中で声がした。サナギちゃんの声のようだった。
リンちゃんは、凍りついたようにそこに立っていた。
すると、不意にすごい眠気が襲ってきた。まるで、立っていられないくらいに。
「な…なんで?…」
彼女はその場に座りこむようにして、目を閉じてしまった。
さっき聞いた“開けちゃダメ”という声を、...玩具屋カイくんの販売日誌(257) 一夜が明けて
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ベッドに横になったまま、リンちゃんはいつの間にか、眠り込んでしまっていた。
「あ、寝ちゃったか。うへ、服も着替えてないや」
身を起こして、部屋の時計を見る。
「あれ?」
リンちゃんの泊まっているホテルの部屋には、机の上にデジタル文字の時計がついている。
でも、その時計に文字は出ていなかった。
「時間...玩具屋カイくんの販売日誌(256) ホテルの夜 ~その3~
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運ばれてきた食事を、夢中で食べるリンちゃんを尻目に、サナギちゃんは考え込んだ。
ベニスズメさんの伝言が書かれたメモに、じっと見入っている。
「どうしたの。冷めちゃうよ。早く食べなよ」
早くもデザートの皿を引き寄せて、サナギちゃんに声をかけるリンちゃん。
彼女は言われて顔を上げたが、ふたたび小首をかし...玩具屋カイくんの販売日誌(255) ホテルの夜 ~その2~
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「お食事をお持ちしました」
ワゴンの横のボーイが、うやうやしく頭を下げて言う。
廊下に飛び出そうとしていたサナギちゃんは、出鼻をくじかれた感じで立ちすくんだ。
「失礼します」
ボーイはそう言うと、部屋の中にワゴンに乗った夕食を運びこみ、うやうやしく一例して部屋を出ていった。
「うわ。すごいよ、これ」...玩具屋カイくんの販売日誌(254) スタジオでの出来事 ~ホテルの夜
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スタジオでの3日目の夜。
ここで仕事をしていることを知らないはずの、ミクさんからメールが来た。
リンちゃんと相棒のサナギちゃんが、首をかしげ、顔を見合わせているところに…
また、部屋の電話が鳴った。おずおずと、リンちゃんが受話器を取る。
「あ、ベニスズメさん? はい。え?」
さっきと同じように、何か...玩具屋カイくんの販売日誌(253) やっぱり帰ったほうが… ~スタジオでの出来事 5
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ハミングスから発売される、新商品の「リンリン・はっちゅーね」。
その商品宣伝の「プロモーション・ビデオ」の撮影を、スタジオにこもって続けさせられている、リンちゃん。
ついに3日目の夜。「きょうもここに泊まろうか」と、相棒と話しているところへ…
泊まっている部屋の内線電話が鳴った。
「はい。ええ、リン...玩具屋カイくんの販売日誌(252) リンちゃん、家に帰りなさい ~スタジオでの出来事 4
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「それで、その朝の10時過ぎまで、ヒュンダインさんを待ってたんだ」
リンちゃんは続ける。
「ふうん。で、一緒にビデオに出てくれたわけ?」
レンくんが聞く。
「うん!一緒に、ちょっとからむ感じでね。楽しかったよ」
リンちゃんは、ニコニコして言う。
「私とサナギが演奏してると、ドラムの影から急に、あの人...玩具屋カイくんの販売日誌(251) リンちゃんの3連泊! ~スタジオでの出来事 3
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「ふうん。それで、日曜の夜もそこに泊まったわけか」
レンくんはそう言って、自分もクッキーに手を伸ばした。
「でも、お前それで、月曜の朝には、うちに帰ってこなかったじゃないか」
リンちゃんはそう言われて、バツの悪そうな顔をした。
「うん。帰ろうと思ったけど。明け方になって、起きて帰る支度をしてたら」
...玩具屋カイくんの販売日誌(250) コラボの魅力!? ~スタジオの出来事 2
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リンちゃんの話をリビングで聞いていたレンくんは、思わず聞き返した。
「泊まっていけ、って…? そんなに、大げさな仕事だったの?」
リンちゃんは、口をとがらせて答える。
「うん。そこのスタジオに入ったのが土曜だったでしょ。アタシもサナギも、けっこう乗ってやってたからね」
そういって、コップのミルクを口...玩具屋カイくんの販売日誌(249) スタジオでの出来事
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4日ぶりに、わが家に帰ってきたリンちゃん。
心配していた兄のレンくんも、とりあえずホッと安心。
ちょうど両親とも出かけていたので、レンくんはリンちゃんを連れてリビングにおりてきた。
何となくお腹がすいている様子で、彼女はレンくんの出したクッキーを食べながら…
この数日の次第を、話し始めた。
それによ...玩具屋カイくんの販売日誌(248) リンちゃんと、紅スズメ
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紙魚子さんの話を聞いたりりィさんは、首をかしげて腕を組んだ。
「ふぅん、不思議な、面白い噂ね。でも、仕事で一緒に組むと、必ずヒットするなんて…」
彼女はちょっと身を乗り出して、ニコッとした。
「クリエイターの人なら、ちょっと興味が沸く話ですね」
紙魚子さんは、ちょっと驚いたように目を見開いた。
「あ...玩具屋カイくんの販売日誌(247) クリエイターなら気になる…?
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ちょうど、お客さんも途切れているので。
紙魚子さんと、りりィさんはカウンターを挟んで、話に熱が入っている。
「吸血鬼?それ、どういう事なんでしょう」
りりィさんの問いに、意味ありげにうなずく紙魚子さん。
「もちろん、例えですよ。ホントに血を吸う訳でもなくて」
そう言って、彼女はお店の中の、いろんな雑...玩具屋カイくんの販売日誌(246) 大ヒットと、紅スズメ。
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れおんさんのいる「ハミングス」1階のカフェ、「カフェ・ドナ」で。
ミクさんのはっきりとした言葉を聞いた、オサカモトさんは、黙って彼女の顔を見つめていた。
しばらく、2人は静かに見つめ合っている。
やがて、オサカモトさんは口元に少し、笑みを浮かべて、ミクさんとれおんさんに言った。
「わかりました。あな...玩具屋カイくんの販売日誌(244) “はっちゅーね”と、不思議な世界
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「せっかく、いろいろ考えていただいて、残念ですけど」
ミクさんは、そう言って、笑った。
「は?」
オサカモトさんは、いぶかしげに彼女を見返す。
「どういう意味ですか?」
2人の間に、少し、気まずい空気が流れた。
ミクさんがさりげなく、でもハッキリと言い放ったので、れおんさんは思わず2人の顔を見やる。...玩具屋カイくんの販売日誌(243) ミクさんと“はっちゅーね”
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れおんさんたちのいる「カフェ・ドナ」にやってきたのは、ミクさんだ。
「お待チシテマシタ。あ、ご紹介します。こちら、ミクさん。“はっちゅーね”のドールの、生みの親デス」
れおんさんは、彼女をオサカモトさんに紹介した。
新商品の“リンリン・はっちゅーね”で、いま一緒にコラボをしているけれど…。
ミクさん...玩具屋カイくんの販売日誌(242) ミクさんと“リンリン・はっちゅーね”
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「ここ、お料理がいつもおいしいですのね。わたくし、時々利用してます」
「オゥ、そうだったんデスカ。アリガトウゴザイマス。うちのシェフのソラさんは、ウデは確かなんですヨ」
オサカモトさんの言葉に、れおんさんは笑いかける。
れおんさんのいる会社、ハミングスの1階にあるカフェ・レストラン「カフェ・ドナ」。...玩具屋カイくんの販売日誌(241) リンちゃんは私たちが!
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コヨミくんの言葉に、テトさんとマスターは、びっくりした。
「えっ、行方不明って、なに? どうしたの」
コヨミくんはコーヒーカップを置くと、ちょっと考え込むようにして続けた。
「ええ。昨日ですけど、ボクの店の“鑑定団”に、リンちゃんのお兄さんのレンくんが来たんですよ」
「うん」
「その時、彼、心配そう...玩具屋カイくんの販売日誌(240) 妹が行方不明で
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だんだん、大きなヒットになっている“リンリン・はっちゅーね”。
でも、その裏に見え隠れするウワサの“妙な会社”…。
そんななかで、そのライバルとしてやっぱり人気が出始めているのが、“テト・ドール・ナチュラル”だ。
作者の雑貨アーティスト、テトさんのお店「カフェ・つんでれ」。
ここで、彼女と、仕事の仲...玩具屋カイくんの販売日誌(239) リンちゃんが一昨日から…
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「ねぇねぇ、その、“リンリンはっちゅーね”と組む、“月光企画”って、どういう所なの?」
レイムさんは、興味ありげに聞いた。
「最近、紙魚子さん、話の中でときどき、口に出すよね。その会社の名前」
レイムさんの問いに、紙魚子さんは答えた。
「うん。変わった会社でね。このごろ、またあそこが動き出したのかな...玩具屋カイくんの販売日誌(238) 変わった会社
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「そうですか。テトさんの新商品、好評なんですね。私も頑張ろうっと」
レイムさんは、手に持った発注書を机の上でトントン、と揃えて言った。
その横で、紙魚子さんとりりィさんが微笑んで見ている。
ここは、レイムさんの入居する「ニコビレ」。
今日は彼女の事務所に、りりィさんが来ていた。
新作のアクセサリーを...玩具屋カイくんの販売日誌(237) はっちゅーねの新商品に?
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レンくんは、少し心配そうに言う。
「あいつ、何か最近、落ち込んでるようなことが多くて」
「あら、あのいつも元気なリンちゃんが?」
ゆくりさんは、聞き返した。
彼は話をやめて、手に持ったガチャのカプセルを、筐体に入れ終えた。
そして話を続けた。
「うん。あいつの部屋に行っても、ぼーっとしてることも多い...玩具屋カイくんの販売日誌(236) 妹がヘンなんです
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ダンボール箱を開けながら、レンくんが言う。
「わあ、この“進撃の騎士”、なんか可愛いね。デフォルメ・タイプのやつですね」
箱の中の、大きなビニール袋の中に、小さなカプセルに入ったフィギュアがいっぱいつまっている。
「夢中になって、仕事忘れないでよー」
袋を手に持って、ためつすがめつしているレンくんに...玩具屋カイくんの販売日誌(235) 販売好調、ドール新製品!
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はりきって、商品を売っていたリンちゃん。
ごったがえしていたブースの前も、やや落ち着いてきた。
その様子を見ていて、ルカさんは、れおんさんに言った。
「ねえ、そろそろ、開放してあげたら?リンちゃん」
れおんさんは、うなずいた。
「ソウデスネー。ボクもちょうど、そう思ってマシタ」
そして、おおげさに言...玩具屋カイくんの販売日誌(234) アリガトウ、ゴザイマシタ
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ブースの売り場には、リンちゃん目当てに行列ができている。
リンちゃんは、テキパキと商品をレジ打ちしたり、にっこりと手渡したり。
ときには、握手などもして、サービス満点だ。
「ねえ、れおんさん。ダメでしょ、大事な彼女にあんなことさせて」
ルカさんは、ブースの横からその光景を眺め、ちょっと口をとがらせる...玩具屋カイくんの販売日誌(232) リンちゃんに魅入る人