タグ「白ノ娘」のついた投稿作品一覧(84)
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第七章 戦争 パート1
盆の間に開催される遊覧会が終わると、ミルドガルド大陸は駆け足で秋が訪れる。平原を流れる風は途端に肌寒いものとなり、実りの時期を迎えた作物は夏の間にふんだんに吸収した養分をその果実に凝縮し始めるのだ。その秋風が吹きすさぶ中を帰還した黄の国の一行はしかし、実りの秋を迎えたと言う...ハルジオン24 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート7
細波の声と、木々を揺らす風の音だけが耳を打つ。周囲に人はいない。いるのは一人、カイト王だけであった。闇夜の為に湖畔を見通すことは出来なかったが、湖に映る月明かりを見ながら暫くの間カイト王は余った時間を過ごすことにしたのである。そろそろ、ミク女王が来てもおかしくない時間では...ハルジオン23 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート6
その後晩餐会はつつがなく進行した。ミク女王も単なる一時的な離席だったらしく、騒ぎが起こってから数十分後には再びその姿を晩餐会会場へと現しており、僅かに不安を感じていた一同を大いに安堵させた。一体何をしていたのかをミクは一切話さなかったが、その件に関しては大した話題にもなら...ハルジオン22 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート6
「アク殿、どちらまで向かわれる。」
リン達と離れ、一番巨大な王族専用の別荘から抜け出したガクポは、前をひたすらに歩むアクの背中に向けてそう声をかけた。近場で会話をするのかと考えていたが、アクは湖の湖畔までひたすらに歩くと、そこで方角を変えて湖畔に沿って歩き出したのである...ハルジオン21 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート5
翌日、午前中の時間を使ってリン女王以下の黄の国の一行はオデッサ街道の支線であるパール湖街道を行進することになった。風光明媚なパール湖に到達する為に緑の国がパール湖周辺を覆う森を切り開いて造った街道であるから、その周りは深い森に覆われている。さんさんとその枝葉を伸ばす木々の...ハルジオン⑳ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート4
遊覧会は例年一週間の日程で開催される。その前日、事前に遊覧会の準備の全てを滞りなく完了させたミクはようやく公務から解放され、私室に戻るとソファーに座りこんで思いっきり身体を伸ばした。両方の掌を組んで、真上に伸ばしてそのまま背中を反らせる。いつの間にか凝り固まっていたのだろ...ハルジオン⑲ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート3
返答期限が迫ってきている。
奇しくも同じ日に、遊覧会への準備を進めていたミク女王はそう考えて深い溜息をついた。場所は緑の国の王宮、巨大な屋敷と表現される建築物の三階にあるミクの執務室である。返答期限とは勿論、カイト王に対する返答であった。この件についてはグミと何度も協議...ハルジオン⑱ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート2
レンと別れたメイコが赤い鎧姿のままで向かった先は父親であるアキテーヌ伯爵の執務室であった。黄の国の重鎮であるアキテーヌ伯爵は王宮の第三層にその私室と執務室を与えられている。第三層の大理石造りの廊下に軽い音程で反響する靴音を鳴らしながらアキテーヌ伯爵の執務室の目の前に到達し...ハルジオン⑰ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート1
長い雨の一日であった。昨年全く吹かなかった季節風は今年ようやく職務を思い出したのか、十分な湿気を伴って黄の国を覆い、そして大量の雨を黄の国にもたらして行った。その雨の降る黄の国の城下町の一角を、騎士の一団が闊歩している。メイコ率いる赤騎士団の警備隊であった。雨天ということ...ハルジオン⑯ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第五章 緑の国 パート3
本来ならば国賓として迎え入れなければならないカイト王の突然の来訪ではあったものの、今回はお忍びという立場をとっている為に盛大な出迎えは控えることになった。それでも相手は大国の国王。無下に扱える訳もないというミクの判断により、自ら緑の国の王宮を囲む内壁正門まで出迎えることに...ハルジオン⑮ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第五章 緑の国 パート2
ミクの私室を退出したハクは、ミクの指示通りにネルとハクを呼び出す為に二階へと向かうことにした。緑の国の王宮の二階は高級官僚の私室や、官僚たちの為の執務室が並んでいるフロアとなっている。緑騎士団騎士団長であるネルも、緑の国唯一の魔術師でありかつ参謀であるグミも二階フロアに居...ハルジオン⑭ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第五章 緑の国 パート1
ハクがミク女王に仕えるようになってから、瞬く間に一カ月の時間が過ぎ去った。近頃はようやく周囲を観察するだけの余裕を持つようにはなっていたが、これまでビレッジの外へ出たことの無かったハクにとって緑の国の王宮は驚きの連続であった。ミクの統治する緑の国は、ミルドガルド大陸の南東...ハルジオン⑬ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第四章 青の国 パート2
さて、どんな動きを見せてくれるのか。
丘陵の上に到達したカイトは、部下が用意した折りたたみ式の椅子に腰かけると、眼下に広がる自らの軍勢を眺めながらその様な思考を巡らせた。隣にはルカがカイトに同じように用意された椅子に腰を落としている。ルカが着用している黒一色の外套を目の...ハルジオン⑫ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第四章 青の国 パート1
ミク女王の失踪事件が解決した翌日、緑の国の遥か北方、ミルドガルド大陸東部に位置する青の国の王宮では国王であるカイト王が一人の客人を迎え入れているところであった。客人の名はルカ。黄の国を飛び出して一直線に青の国の王宮へと向かったルカがようやく目的の場所へと到達したのである。...ハルジオン⑪ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第三章 千年樹 パート 4
ハクはその後、自宅に戻るまで結局一言も言葉を発しなかった。重たい沈黙を感じながらミクはハクに続いてハクの自宅に再び侵入し、そして自宅の扉を閉めた。ぱたん、という小気味の良い音がミクの耳朶を軽く打つ。そのままドアノブから手を話したミクは、うな垂れたままのハクの背中を見つめ...ハルジオン⑩ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第三章 千年樹 パート3
少し、寝坊したかしら。
そう思いながら、ミクは寝台から起き上がり、上半身を思い切り伸ばした。心地よく身体が伸び、それによってまだ目覚めていない細胞が活動を開始するシグナルを感じてからミクはベットから降りた。ハクと同じベットに寝ていたはずだが、ハクの姿はない。朝の準備に出...ハルジオン⑨ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第三章 千年樹 パート2
グミがネルの元に到達したのは日付も変わる頃であった。ミルドガルド大陸でも南部に位置する緑の国は比較的温暖な気候で知られているが、今日に限っては妙に肌寒い風が馬を駆けさせるグミの身体を吹きさらしている。周囲に視覚として確認できる姿は天空の星空と、近くを走る先導の兵士の姿だけ...ハルジオン⑧ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第三章 千年樹 パート1
少し、遠出をしすぎたのかしら。
若草の様な淡い緑色の髪をツインテールにした少女はそう考えて、騎乗した馬の手綱を一度引き絞った。それに反応して、馬の歩みが止まる。
ここはどこだろう。彼女はそう考えて、周囲を見渡した。周囲に見えるものは彼女の髪の色よりも深い緑の木々ばかり...ハルジオン⑦ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン⑥ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第二章 魔術師ルカ パート3
何よ、ルカまで!ルカとの謁見を数分で切り上げたリンは、大股で私室へと入室するとそのままベットに飛び込んだ。そのまま枕に顔をうずめて、軽く歯ぎしりをする。少し視線を逸らせると、一本丸太から作成された幅三メートルはあるだろう大きな机...ハルジオン⑥ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン⑤ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第二章 魔術師ルカ パート2
「ルカ様!」
ルカがガクポを連れて王宮に到達すると、出迎えに来ていたレンが大きく手を振りながら笑顔を見せた。
相変わらず、元気みたいね。
ルカはそう考えながらレンに対して軽く手を振り返し、こう答えた。
「久しぶりね、レ...ハルジオン⑤ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン④ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第二章 魔術師ルカ
農耕技術が発達していないこの時代、農作業は天候との戦いであり、運任せであり、神頼みであった。平年通りの気候に恵まれればそれなりの収穫が見込めるが、気候の変動があった時、この時代の農業は果てしなく弱かったのである。実際、昨年黄の国を襲った乾...ハルジオン④ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン③ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第一章 黄の国の暴君 パート2
剣の訓練を終えたレンは汗に汚れた訓練着を脱ぐと、普段召使として使用している、少年の身には少し威厳がありすぎる執事服に着替えを済ませた。そして、時刻を見る。
「もうこんな時間だ。」
時計の針は午後二時半。そろそろリン女王のお...ハルジオン③ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン② 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第一章 黄の国の暴君 パート1
「レン!遅いわ!もうおやつの時間よ!」
その言葉が王宮内に響いたのは午後三時、ハルジオンが咲き誇る、春先のうららかな一日のことであった。この王宮では特に物珍しい光景でもない。場所はミルドガルド大陸西端に存在する黄の国の王宮。...ハルジオン② 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン① 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
プロローグ
それは夜。ハルジオンが野に咲き誇り、街を、そして野山を白く、黄色く染め上げていく季節。世界を淡く銀色に染め上げる満月の光が、人の身長の二つ分はあるだろう大型のガラス窓で覆われた王宮の一室を照らし上げた。その光に照らされた人物は男性一人。物音は無...ハルジオン① 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】