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次の日。
宰相執務室で日常通りの仕事を午後から時間を作るために二倍速で片づけていると、歩哨と聞き覚えのある声の短い口論が聞こえ、それから歩哨の制止の声を遮って乱暴にドアが開けられた。そうして入って来た総務大臣と、その後ろから小柄な身体をただでさえ小さく丸めた恋人が続く。
二人とも両手一杯に書類...悪ノ召使 番外編(17-2
星蛇
第十七部 嫉妬
青の国第十七王女、ユリーシャが黄の国に来た次の日の夜。まだ期間にして丸二日も経っていない二も関わらず、アズリの精神状態は最悪を極めていた。
「また、夕飯さぼられた」
寝る仕度を済ませてしまってから、苛々と吐き捨てて自室のベッドに潜り込む。そんなに長い時間付き合わないと言っていた...悪ノ召使 番外編(17-1
星蛇
カイル王子が帰国した次の日。イルはレンとセシリアと共に、応接間で賓客を待ちうけていた。相変わらず親友はこの期に及んでも冷静で、他二人の方が緊張しているのは火を見るより明らかだ。
レンが部屋に来る前にカイルにユリーシャ王女の密かな恋心を打ち明けられて、イルはほとほと困り果てた。政治的な理由ではなく...悪ノ召使 番外編(16-2
星蛇
第十六部 縁談
青の王子の突然の来訪から六日、帰国前夜にレンは再びイルに王子との晩餐に誘われた。
「カイルがどうしてもって言うんだよ。時間取れないか?」
話があるなら何度も行った会議中にでも言ってくれればいいのに。そんな事を思いながらも、その日は仕事が定時に終わったので親友の部屋に赴いた。夕食...悪ノ召使 番外編(16-1
星蛇
遅れに遅れた仕事をようやくこなして、セシリアとカイルとのんびり夕食をとった後のこと。
「マリルもダヴィードも、悪いようにはしないで済むと思う」
広間のソファに隣り合って座りながら、会議の結果を訊ねられたのでこう返すと、元青の王女はとても嬉しそうだった。
「ありがとうございます。彼らには、本当にお...悪ノ召使 番外編(15-2
星蛇
第十五部 夜伽話
「なんで僕の寝間着着せてるの?」
サリーにしっかりと世話を頼んだはずで、しかし会議を終えて部屋に戻った時なぜかアズリはレンの寝室で寝ていて、そして科白通りレンの寝間着を着ていた。
「女性の家具の中覗く趣味はありません」
レンのクローゼットを漁る趣味はあるのだろうか。悪戯心たっ...悪ノ召使 番外編(15-1
星蛇
なんでこんな事態になっているんだろう。
地下に造られた練兵室。表向きは武術とは無縁の貧弱男である、レンが訓練するときのために作ったもので、位置的にも滅多に人は近づかない。その部屋で繰り広げられている木剣のぶつかり合いを見ながら、レンはこう思わずにはいられなかった。
カイルの知らせから数時間。有...悪ノ召使 番外編(14-2
星蛇
第十四部 青の王子
鬼も逃げ出しそうな殺気を放ちながら、嬉々として謁見の間を出て行く親友の背中を見送った。
運の悪い奴だな。その外交官も。
内心で呟く。他国から来る外交官に毒を盛られたことなど、レンは普段きっちり記録しつつも感情的には全く気にしてはいない。
今回あれほど憎悪を漲らせているの...悪ノ召使 番外編(14-1
星蛇
今度こそ、レンもイルとセシリアと共に、顔を引き攣らせた。反応する間も無く青の王子は情報を付け加えていく。
「青の国では近年漁獲高が落ち込み、第二の食料生産である牧畜に頼って消費と国益を得ている事は、ご存知だと思います。しかし、家畜の飼料の原料となる穀物は、黄の国からの輸入に頼り切っているのが現状で...悪ノ召使 番外編(13-3
星蛇
カイル=ミットフォード、さっきも言った通り青の国第五王子で、さらに第一王位継承者でもある。しかもその地位を受け取ったのは、いや正確に言うと奪い取ったのはつい二カ月前だ。本来第三妃であった母親が、どういう手を使ったのか正妃を引きずり降ろしてその座に就いたのである。
青の国では正妃から産まれた長男が...悪ノ召使 番外編(13-2
星蛇
第十三部 来訪
国王陛下暗殺未遂から三週間経ったこの日、アズリ=セフィラドは人生究極の悩みを抱えていた。
「だめ、だよなあ。やっぱり」
今日は珍しく仕事が少なくて、ディーの厚意で午前の業務を早めに切り上げて帰ってきたのだが、当たり前のようにそこに多忙を極める宰相の姿は無かった。溜息をつきつつ、主...悪ノ召使 番外編(13-1
星蛇
ふと目が覚めると、レンはモーテルの固い寝台で一人寝かされていた。窓の無い部屋だったので金時計で確認して、取り返しのつかない時間になってしまっていることを確認した。
もう急いでも無駄だったが、それでも人目の少ない早朝に戻るに越した事は無かった。
研究所で着替えて髪の染料を落とすついでに身体も洗い...悪ノ召使 番外編(12-3
星蛇
「その前に、もう一つだけ下らない話をさせてください」
実に愉快そうな大臣は、もう少しレンをからかいたいらしい。他の奴らならいざ知らず、彼の要望にはどうにも断り辛い。理由は明白で、レンは心のどこかで彼に許されたいと思っているからだ。
「どうぞ」
「貴方は変わりましたね。イルと会ってから少しずつ、七か...悪ノ召使 番外編(12-2
星蛇
第十二部 名前
すぐに蹴りが付くと思われていた暗殺未遂事件。しかしダヴィード護衛官はなかなか動こうとはしなかった。ヴィンセントの部下に見張らせているのだが、国境沿いどころか手紙の一つも受け取らない。
もうマリルを吐かせようと思ったが、ディーが仕事をできないお陰でそれまでとも比較にならない仕事量を...悪ノ召使 番外編(12-1
星蛇
Ⅰ Montrosia〈モントロージア〉 ロージア島(左上)に位置する国。
Ⅱ Theatore〈テアトール〉 ナイアデス地方北西部に位置する国。
Ⅲ Interlia〈インターリア〉 ナイアデス地方のほぼ中央に位置する国。
Ⅳ Galiciria〈ガリシリア〉 インターリアの南に位置する国。
Ⅴ ...悪の王国 舞台 修正①〈説明〉
やくると
いつも…
僕の目の前にはキミが居た。
離れ離れだった時間は、
もう取り戻せない。
だから、
その時間を忘れてしまうくらい、
たくさん思い出を作るつもりだった…。
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キミは、周りから
暴君王女、と呼ばれている。...1人牢屋で・・・
友愛@in不可
念の為のワンクッション。
えと、こんにちは。lunarです。今回書いたのは前に書いた「自己解釈トワイライトプランク」のレン生存ルート話です。
自己キャラ出てきますのでご注意下さい。
寧ろトワイライト読んでからの方が分かりやすいかと思われます。
以上です。大丈夫な方はこのまま前のバージョンで...終わりの始まり
lunar
金と黒曜石、黒御影石をふんだんに使った城は、きらびやかな中にも重厚感を漂わせる。大陸に城は数多くあれどその中でもテアトールの宮殿はひときわ美しい名建築と呼ばれていた。赤いカーペットの敷かれた長い廊下は、使用人の有能さを示すかのように汚れひとつない。ずいぶんと高くなった日の光を浴びて光るその廊下を、...
悪の王国③
やくると
【リン】
「リン王女、青の商人の一行が黄の国の港を出たとの報告が入りました」
「そう」
私室の窓から城下を眺め下ろしながら、大臣の報告を聞いて目を細める。
ああ、やっと。
もうすぐ。
もうすぐ、きっと元通りになる。
「出兵の準備はとうに出来てるんでしょうね?」
「はい、勿論。明日にでも出発す...【悪ノ派生小説】比翼ノ鳥 第二十七話【カイミクメイン】
甘音
66.ゆすらうめの花 ~白ノ娘、ハクの最終回~
初夏。緑の国が一年で一番輝く季節。
ハクは、緑の王都の港に近い、海の見える丘の上にいた。
「ミクさま。ネルちゃん。……来たよ」
ミクの墓に植えられた木は、美しい若葉を輝かせており、その下に寄り添うネルの墓には、ゆすらうめの樹が植えられていた。ユス...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 66.ゆすらうめの花 ~白ノ娘、ハクの最終回~
wanita
65.再び、海辺の町にて ~リン~
* *
少しだけブリオッシュが上手く焼けるようになったころ、ハクは、リンをもとの緑の王都の酒場まで送ってくれた。
酒場の夫婦は心配のあまり、帰ってきたリンを怒りまくり、そして、玄関の扉を開けて抱きしめてくれた。
「君は王女、僕...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 65.再び、海辺の町にて ~リン~
wanita
64.リグレット・メッセージ
「レン……!」
暁色の髪の青年が、飛びこんできた彼女を、立ち上がってしっかりと抱きとめた。
青年の腕の中で、リンの息を吸い込む音が、浜辺いっぱいに響いた。
「……背、伸びたね」
「うん」
「……声、変わったね」
「うん」
「ねぇ、レン」
「うん?」...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 64.リグレット・メッセージ
wanita
63.輝きを留める者
おだやかな波が、朝の浜辺を寄せては返していく。同じ動きをくりかえしてはいるが、同じ波は二度とは来ない。
「……前は、蹴られたのに」
「今は、そんなことしないよ」
男が、手に握った短剣の柄を向けて、ハクにそれを返す。光の中で見ると刃は少し欠けていた。ハクの命を、暴徒から救っ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 63.輝きを留める者
wanita
62.暁
刃を前に、リンの唇がつぶやいた。
「ただの娘として生きてしまって、ごめんなさい。わたしは、悪ノ娘なのに」
……わたしに斬られたホルストやシャグナは、痛かっただろうか。刃を向けられたメイコは、怖かっただろうか。そして、死に追いやったミクやレンは、苦しかっただろうか。
ハクの刃の狙いが、わ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 62.暁
wanita
61.白ノ娘、悪ノ娘
星明りを頼りに、ハクはリンを散々探した。
そしてついに、まだ夜の明けきらぬ青い闇の中で、ハクは浜辺にたたずむリンを発見した。
「リン……! やっと見つけた……!」
一瞬子供たちに囲まれて笑顔をみせるリンが脳裏をよぎったが、腹の底から燃え上がる恨みと怒りの炎がそれを吹き消...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 61.白ノ娘、悪ノ娘
wanita
60.真実と葛藤とミクの短剣
ハクは走っていた。真っ暗な夜道の石畳を、リンを追って走っていた。
戸口から駆け去る際にちらりと見えたリンの向かった先は、海の方角である。
「あの娘、あの娘、あの娘……! 」
ハクの奥歯が、ぎりりと噛みしめられる。
「あの娘、本当に、『女王リン』だ……!」
ハクの...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 60.真実と葛藤とミクの短剣
wanita
59.巡り音の青年
ハクー、出発するよー、と、外から叫ぶリュイの声がする。
ハクは教会の脇の宿坊の、二階にある自室で、町にとまるための荷物をまとめていた。
替えの服と日用品の準備はとっくに終わっているのだが、ハクの手はあるものの前で荷物に加えるか否かを迷っている。
それは、五年前、ミクがハク...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 59.巡り音の青年
wanita
58.ヨワネの今、ハクの今
ハクの心配に反して、リンと名乗った少女はすんなりと子供たちの輪になじんだ。
「リン! これ、あたしの刺繍だよ! きれいでしょう!」
「あー! リュイはすぐ得意な柄ばっかり見せるんだから! ハクさんには、別の柄の練習もしなさいって言われているのに」
「自分の最高の作品を見...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 58.ヨワネの今、ハクの今
wanita
57.教会の少女
リンの目の前に、白い髪の女が居た。
そして、たくさんの子供たちが、リンをぐるりと囲んでいた。
リンの目の前には、温かな葉野菜と根野菜を煮込んだスープ、そして穀物と豆の粥がある。
食事が乗っているのは、質素な長四角のテーブルだった。しかし、大きい。長四角の卓が二つ並べられ、十...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 57.教会の少女
wanita
安全のため、アズリは食事が終わってもイルの部屋に留まりながらも、ただでさえディーが居なくて滞っている仕事を再会していた。黄緑色の少女はディーのもう一人の助手と共にイルの部屋の前室で、遅れに遅れた計算を何とか間に合わせようと頑張っていた。
いい加減、執務室ってのを作るべきだな。
今までは仕事をで...悪ノ召使 番外編(11-2
星蛇