タグ「小説」のついた投稿作品一覧(31)
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オレは手首に巻かれたリボンから目を離して、前方を見直す。
相変わらず行く手どころか、360度見回しても砂漠しかない。
ミクは、オレの事をどう思っていたのだろうか?
ミクはオレを“セカンド”だと見抜いている節があった。最初に出会ったとき、オレの瞳を覗いていたから、その時にバレていたのかもしれな...この世界の果てで 第10章 その4(完結)
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オレはミクに嘘をついていた。
オレが“探索者”である事や、“施設”からやって来た事や、本部に“ロスト”扱いにされたら大規模な調査隊がやってくる事は、全部本当の事だ。
ただひとつ、オレは大きな嘘をついていた。
──オレは、人間ではなく“セカンド”なのだ。
オレたち“探索者”には、旧時代の文明...この世界の果てで 第10章 その3
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それからミクは、ガウルに頼んでオレの車を街まで運んできてくれた。
元はと言えば、奴がオレの車を横転させたんだから、持ってくるのが筋ってもんだが……まあ、ここはミクの顔に免じて不問にしておこう。いや、決して力じゃかなわないからそういう風に言ってるわけじゃない。ホントだぞ。
幸いにしてエンジン部分...この世界の果てで 第10章 その2
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かれこれ半日ほど走っているが、相変わらず見える景色は砂漠しかない。
四隅が曇っているフロントガラスには風に乗った砂がぶつかっている。この車はもう10年以上も前から使われているが、換えのパーツがないためにフロントガラスも傷ついたら傷つきっぱなしだ。とはいえ、ほとんどが砂漠を走破するだけだから、それ...この世界の果てで 第10章 その1
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さっきまでのミクの澄んだ声と規則的に流れてくる音が、ドラマチックに空気を振るわせていたのが嘘だったかのようの静けさだった。全てが終わった静けさが、そこにあった。
ミクは目を閉じていた。再び、月明かりの中に佇む彼女は、とても神秘的で悲しかった。
あれ……? どうしたんだ? 胸が苦しくて、鼻がツン...この世界の果てで 第9章 その4
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「2曲目、行くわよ!」
その声を合図に、ミクを照らしていたライトが消える。一瞬ミクを見失ったが、徐々に暗闇に慣れてきた目が、難なくミクを発見した。
それは、月明かりだった。
彼女を照らすのは、月明かり。夜空に瞬く星々。そして水面に反射した月光。
決して明るくはない。だが、暗くもない。先ほどの...この世界の果てで 第9章 その3
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「ケイ、ミライ、お待たせー!」
明るいミクの声が、広場中に響く。それと同時に、オレたちの目の前にあった、一段高い台座のような場所がライトで照らされた。ライトは……オレ達の後ろにそびえ立つビルから照らしているようだった。
「ラー……ラララー♪」
透き通るような綺麗な声が響いた。何という声だろう……...この世界の果てで 第9章 その2
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満月だった。
砂漠の夜空に、無数に瞬く星々。
暗い。だが、柔らかに降り注ぐ月明かりが辺りを照らしていた。その光は泉の水面にも届いていた。わずかに水面が揺れるたびに、無数の瞬きを生み出している。
まるで、地面にも夜空が現れたようだった。
綺麗だな……。オレの、このわけのわからん感情を抱えてく...この世界の果てで 第9章 その1
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自分でも不思議なくらい冷静だった。全てがスローモーションに見えた。地面が、ゆっくりと近づいて来る。
「いやあああああああっっっっっ!」
ミクの悲鳴が聞こえてきた。でも、なぜかそれは聞こえているのに、どこか遠くで聞こえるような感じだ。オレを見て上げた悲鳴なのだろう。妙に醒めた頭で、そんな事を思った...この世界の果てで 第8章 その4
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通路にはコンクリートの残骸が散乱していた。ヒビが入り、床も崩れ落ちている。そうか、下層は砂に埋まっているから、ここは別に1階ってわけでもないんだよな。これは慎重に歩く必要があるな。こんなところにハマり込んで二次遭難なんて洒落にならねぇ。
階段を見つけた。コンクリートが欠けている。どういう構造にな...この世界の果てで 第8章 その3
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砂嵐以降、天気はずっと快晴だ。
まあ、砂漠の天気が荒れることはそうそうないんだがな。
空は相変わらず青く、突き刺さる日射しは肌を刺す。その日射しは、廃墟と化したこのビル群を鮮明に映しだしてゆく。所々欠けている白い壁、コンクリートからはみ出した灰色の鉄筋。それらの生々しいまでの傷口を、容赦ないま...この世界の果てで 第8章 その2
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特にこれと言って変わった事はなかった。
ミクはいつもと変わらず不機嫌だし、相変わらずオレの食べる姿を飽きもせずに眺めていた。あの日の出来事はまるで夢だったかのような振る舞いだ。
だが、たまに目が合ったりすると、頬を紅く染めて慌てて視線を外したりする。だからまあ、彼女なりに自然に振る舞おうと必死...この世界の果てで 第8章 その1
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「……なあ、ミク」
ミクの嗚咽が完全に聞こえなくなって、落ち着いたところを見計らってオレは声をかけた。ミクは、オレの胸に埋めている顔をわずかに左右に動かした。
それを返事だと解釈して、オレは続けた。
「お前はボーカロイドなんだろ? 歌を、聴かせてくれないか。オレは歌ってのを聴いたことがないんだ。...この世界の果てで 第7章 その3
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オレは……オレには……そんな事、できるはずがない。
ミクはいつも不機嫌な顔で、オレを見下した態度で話しかけたり、その上我が儘で、ムカつく事もいっぱいあるが……でも、たまに見せる笑顔は可愛くて、ドキッとしてしまうほど可愛くて……そう思ってしまう自分が悔しくて……でも、時折見せる寂しい顔を見せられる...この世界の果てで 第7章 その2
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「私の事を殺してって言ったら、あなたは私を殺してくれる?」
何を言っているんだ、コイツは……。
目の前にいるのはいつものミクで、いつもより機嫌が良くて、笑顔がちょっと可愛かった。
なのに……そんな笑顔で、何でそんな物騒な事を言ってるんだよ。
「お前……何言ってるんだよ」
やっとの事で声を絞り...この世界の果てで 第7章 その1
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「この花はね──」
突然話題が変わった事に戸惑うオレ。だがミクはそんな事など関係ないと言った風情で抱えていた花を1輪、オレに差し出してきた。
「──この街のプラントで作られたものよ」
オレはその花を受け取った。名前はわからないが……白くて花びらのたくさん付いた、シンプルだが綺麗な花だった。
「こ...この世界の果てで 第6章 その4
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「……ねぇ」
気づいたら、彼女は立ち上がってオレの方を向いていた。
「ん? 何だ?」
「あなたは……自分の生きている意味って考えたことある?」
そんな大層なことをいきなり聞かれても困る。だが、ミクの表情は真剣そのものだった。それはまるで、ちょっとした勢いで糸が切れてしまいそうな危うい表情に見えた...この世界の果てで 第6章 その3
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ミクは大きなドーム状の建物に入っていった。屋根が所々落ちているが、かなり頑丈で大きな造りをしている。ミクは、正面に出来ている大きな亀裂から入っていった。
オレも後を追って亀裂へ進んだ。かなり大きい。オレの背丈よりも倍ぐらいありそうだな。
中にはいると、暗かった。外の強い日射しとは無縁の世界なの...この世界の果てで 第6章 その2
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一晩経ったら、砂嵐は通り過ぎた。
今日は、昨日の事が信じられないほど快晴だった。
ミクとは結局あれっきり話してない。夜中には砂嵐は止んでいた。ミクは体が自由に動くようになると、倉庫からオレの食料を出してそのまま自室に籠もった。
オレは、久々にひとりだけの食事を摂った。
それは、味気なかった...この世界の果てで 第6章 その1
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さて、何を話したら良いものやら……。
「オレの事話せって言われても、いざ何を話せば良いのかサッパリだな」
「難しく考える事でもないと思うけど……。じゃあ、あなたはどこから来たのよ?」
「どこって……ここから西に行った所にある“施設”から来た」
「その“しせつ”って何なのよ?」
「へ? “施設”は“...この世界の果てで 第5章 その3
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ミクはソファーの上でダウンしていた。
うーん……心休まらない食事だった。ミクはもの凄い形相でオレを睨みつけるように見ていた。そんな視線を感じながらの食事というのは……たぶんこの先あり得ない状況だろうな。おかげで味がよくわからなかった。
そんな妙な緊張感を孕んだ食事が終わると、ミクは力尽きたかの...この世界の果てで 第5章 その2
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窓ガラスがガタガタと音を立てていた。
そのせいで目が覚めた。かなり激しい音だ。割れなければ良いが……。
窓の外を見てみると……何も見えなかった。一面黄色だ。これは……砂嵐か。細かい砂が窓に当たって、こんな音を出していたのか。
これは眠れそうにない。ちょっと早かったが、ベッドから抜け出した。
...この世界の果てで 第5章 その1
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気を取り直して、オレはソファーに座り直した。向かい側にはミク。テーブルの上には、さっき闖入してきた小動物が、旨そうに缶詰の肉を食ってやがる。
くそ、コイツのせいでオレはとんだ大恥をかいたって言うのに……。
ミクはというと、慈しむような穏やかな顔をして小動物を眺めていた。あー、まったく、その十分...この世界の果てで 第4章 その2
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旨かった。
保存食料なんだろうけど、何だろうこの味は。肉にはちゃんと肉汁が含まれていて、噛めば口の中に広がるのだ。こんな旨い肉、初めて食ったぞ……。
「味はどう?」
「旨い! こんな旨いもん、初めて食った!」
「そう。それは良かったわ」
ミクは嬉しそうにこっちを見ていた。食事をする必要がないの...この世界の果てで 第4章 その1
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「そうだ、ケイ。お腹空いてない?」
「……ああ、そうだな」
ミクにそう言われて、急に空腹を感じた。考えてみれば今日は全力疾走したり、命の危機を感じたり、こんなハードの話を聞いたり、本当に疲れる一日だった。だからまあ、オレの体は当然の権利とばかりに、今更空腹を訴えてきた。
そういえば、携帯食料も全...この世界の果てで 第3章 その3
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「その写真、どのくらい前のものなんだ?」
ミクはしばらく答えなかった。写真立てを見たまま、自分の中にあるものを整理しているように見えた。色々と、複雑な思いがあるのだろう。
「……20年ぐらい前かな」
オレを見ているというよりは、オレの後ろにいる誰かを見ているような遠い目をしながら、彼女は口を開い...この世界の果てで 第3章 その2
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ミクの部屋は廃墟となってるビルの一室だった。この砂の埋もれた街の中では、比較的背の低いビルだ。地上3階建てといった感じだな。もっとも、下の方は砂に埋まってるため、本来はもっと階数のある建物だったんだろうけど。
外見は廃墟なんだが、中は意外と綺麗だ。部屋の隅の方に、何だかガラス片やら鉄片やらで積み...この世界の果てで 第3章 その1
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そうなのだ。あの大戦で、人類の文明の多くは失われた。特に栄華を極めた大戦前の技術のほとんどは、今では闇の中だ。かろうじて手元に残った技術を、原理の分からないまま使ってるのが大戦後の人類の現実なのだ。
それなのに、この小娘は失われた技術を普通に使ってやがる。一体何者なんだよ?
「お前って……失礼ね...この世界の果てで 第2章 その2
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扉を開けると、砂漠のきつい日射しが目に付いた。
眩しい。室内からだと、この日射しは本当にきつく感じる。思わず手を掲げて目を細めてしまう。
目が慣れてきた。白い景色がだんだんと輪郭を取り戻し、色が付いてゆく。とは言っても砂漠の中だから、黄色一色なんだけどな。
ん? でも何かここは違うな。
「…...この世界の果てで 第2章 その1
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急いで眼鏡を拾い上げると、走りにくい砂の上を走って、少女のいる向こう側へ向かう。
砂丘を回り込むように走っていて気づいたのだが、彼女は砂の中にあるハッチのような丸い扉を開けて身を乗り出していた。砂の中に、何か埋まっているようだな。それこそ、大戦で使われた戦艦とかそういう乗り物の類だろうか?
ま...この世界の果てで 第1章 その2
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