タグ「初音ミク」のついた投稿作品一覧(104)
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50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~後編~
教会の鐘が鳴り響いて一日の終わりを告げた。夜八時の、この日最後の鐘の音だ。
「じゃあ、メイコ。私、そろそろ下の食堂で歌ってくるね」
メイコが、自分の寝台に立てかけた楽器を右手に取り、菓子を食べ終えた盆に二人分の杯を左手に乗せて器用に扉を開けた。
「メイコも、...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~後編~
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50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~前編~
夕方になっても、黄の国の王都の興奮は収まらなかった。夏の暑さはすっかり引き、涼しい風が夜と星を連れてくる。
相変わらず乾燥した満天の星空の下、秋の始まりの日の夜は、人々の熱気に包まれていた。
「いいぞー! メイコー!」
「姐さん、かっこいいよな!」
「恐怖の...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 50. 誕生、紅き鎧の女騎士 ~前編~
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49.イグニッション(点火)
「パンを寄こせ!」
「パーンをよーっこせ!」
群衆の叫びに節が乗り、さらに声が大きく広がっていく。
「……ふふ」
王宮広場に続く回廊を歩きながら、リンは薄く微笑んでいた。
「……こんなに困窮するまで、あたしたち王や諸侯に頼りきりだったくせに」
ドレスをひるがえして...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 49. イグニッション(点火)
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48.秋の月、第一日目の朝
夜明けとともに、遠くから、近くから、ざわめきが聞こえてくる。それはやがて小さなまとまりとなり、だんだん大きな塊となり、乾いた黄の大地を埋め尽くす。
昇る陽とともに、熱い人のうねりが近づいてくる……。
「リン様! リン様!」
朝一番に駆けこんできた女性の召使は、すで...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 48. 秋の月、第一日目の朝
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46.革命の萌芽 ~前編~
黄の国の王都は、静まり返っていた。
いつもの夏の終わりのような、落ち着きのある静けさではない。人は居るのに扉の向こうで息をひそめているような、そんな不気味な静けさである。
とある宿の食堂で、『巡り音』のルカは歌っていた。日も暮れてから大分経ち、通りはすっかり静まり返...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 46. 革命の萌芽 ~前編~
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45.5 間章 ~カイトとハク、それぞれの帰路~
すっと陸から風が吹いた。
「……緑の国に、秋がくるな」
そうつぶやいたのは、カイトである。
カイトは、緑の港の沖合に浮かぶ船の上にいた。カイトは、緑の国まであとわずかという所で、黄の国の港から回ってきた船団に、緑の港をふさがれた。使節団として緑...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 45.5 幕間 ~カイトとハク、それぞれの帰路~
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45.海の見える場所
丘を上ったところに、緑の王族の眠る墓地がある。他の国の王族とは違い、この国の王は才能の競争の中で選ばれる。墓も平民とともに眠る。
海に開けた丘は、展望は一級だったが、その墓石は名と簡単な言葉を刻む、質素なものが多い。海を渡りゆく先祖をもつ緑の民は、大地へのこだわりは今でも薄...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 45.海の見える丘
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44.晩夏の葬列 ~後編~
「何!」
しっかりとかぶった皮の頭巾のせいで、蹄の音に気づくのが遅れた。ハクはあわてて四人の子らを集めたが、間に合わなかった。
「誰か居るな!」
男の声の呼び掛けと同時にバタンと戸が弾かれ、兵士が三人、屋敷の土間に居たハクたちの前に降り立った。ハクはとっさに腕を広げて...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 44. 晩夏の葬列 ~後編~
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44.晩夏の葬列 ~中編~
緑の国の王宮に居るリンに、ヨワネや他の職人町の自決の知らせが届いたころ。
ハクは、教会の敷地の隅に立つ、石造りの小屋の前にいた。
その小屋は、北向きの日陰に隠れるようにして立っている。緑の国の夏の太陽は、徐々に高く上り、輝きを増しつつあるが、常緑の大木に隠れるように...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 44. 晩夏の葬列 ~中編~
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44.晩夏の葬列 ~前編~
「なんですって? 」
緑の女王の玉座には、現在、黄の女王のリンが座っている。
「緑の民が、次々に自殺している?! 」
緑の各地に展開する黄の軍から次々にもたらされる情報に、リンはがたりと玉座を立ちあがった。
「織物の町ヨワネ、鉄鋼の町ククンダ、木材加工のシルガンド。住...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 44.晩夏の葬列 ~前編~
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43. ハク、新生
昔住んだ森の中に、ハクはひっそりと身を寄せた。
ヨワネの町のほうから、時折騒ぐ声が聞こえてくる。黄の兵が、ヨワネに到達したのだと気づいた。
「……」
ハクは、工芸の町ヨワネの工房に、物心ついたら住んでいた。同年代の子供たちよりもだいぶ早く針を握り、そして森の中に小さな家を与...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 43.ハク、新生
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42.罪なき逃亡者、ハク ~後編~
一軒の工房の前でハクは立ち止まった。
そこは、ハクが長い間、刺繍職人として働いた場所だった。
森の中にたった一人で住み、毎日ここへ通ってきていたのだ。
町を出た日と変わらない、長い年月に乾いた木の扉が、ハクの目の前にある。
「……どうも……」
ほかに、言...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 42.罪なき逃亡者、ハク ~後編~
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42.罪なき逃亡者、ハク ~前編
走り去るハクの背に、暗闇の中からネルの悲鳴が聞こえた気がした。
「ネルちゃん……! 」
しかし、振り返ろうとするとすかさずネルの相棒の鷹かハクの頭をつつく。
「痛い! 痛い! 解ったってば! 」
振り返ろうとする視界は翼にさえぎられ、うしろ髪を引かれる耳はその...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 42.罪なき逃亡者、ハク ~前編
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【ねんど】くるくるみくみく
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【ねんど】ある森の小さなお店の一日 4番
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ネルがハクに教えたミク様の誕生日を祝う歌。
Uoy, ot yad htrib yppah, MIKU-sama Raed,
ファ、ソ ファ ラ シーシ、レ ミ ファ(フェルマータ;任意に伸ばす)
Yad htrib yppah, uoy
ラ ド ド ファ(フェルマータ;任意に伸ばす)
Ot yad...【歌詞】ネルがハクに教えたミクの誕生日を祝う歌 メロディガイドつき
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『一ヶ月と三日遅れの誕生日』後編!
「で? 声が出ないって」
「うん。なんだか、恥ずかしくって」
「そりゃそうか。『生まれてきてごめんなさい』な人だもんね、あんた」
ネルが鼻歌で曲を付けて歌う。
「もうこれでいいんじゃない? 題は『白の娘』」
「いいわけないでしょ! もう……困るよ」
「ああほんと...ちょっと一休み『一ヶ月と三日遅れの誕生日』後編!
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ちょっと一休み・『一か月と3日遅れの誕生日』前編!
それは少し前の緑の国のお話。
「ミク様はわがままだ。」
ハクが緑の国の女王、ミクのお付きとなって3か月ほど過ぎたころ、ハクはそう学習した。
ハクは、緑の国のヨワネという紡染織で有名な工芸の村で、刺繍職人として働いていた。腕前はすこぶる良かっ...ちょっと一休み『一ヶ月と三日遅れの誕生日』
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41.ネルの意地
ネルとハクは王宮を出て夜の町を走っていた。
「ネルちゃん、ネルちゃん……待って」
ハクの足がもつれ、ネルがもどかしげに引っ張る。
「何よ! 急いでどこかに隠れないと! 黄の国の軍が押し寄せてくるわよ! 」
「待って! 」
強くハクが引っ張り、ネルはつんのめるように振り向く。
...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 41.ネルの意地
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40.最後の言葉
「……ねぇ、レン。リンと一緒に、私の家来におなりなさいな? 」
命を失う直前、抱き上げたミクは、レンにそう囁いた。
「さすが、ハクの惚れた男だわ」
レンのことを、ミクはそう評した。
なんという皮肉だろう。レンは、ハクと青の国で別れた後、もう二度と交わることのない運命だと覚悟し...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 40.最後の言葉
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39.ミクの命
夜の闇に鋭く響いた笛の音。それを聞いた瞬間、召使の姿をしたリンは、手持ちの荷物に火打石を打った。
乾いた縄に火花が散る。鞄の布の端に着火したことを確認すると、リンはその鞄を与えられた控え室に置いたまま、部屋を走り出た。
「あっ。どこへ行かれます……」
扉の前で控えていた緑の国の...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 39.ミクの命
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38.密会
ミク女王とリン女王。小さな緑の国と、大きな黄の国を守る二人の女王が、真夜中の庭で対峙した。
「ミク様」
「リン様、ご即位おめでとうございます」
ミクが、大きな月を背に静かに微笑んだ。薄い闇と黒い木立、そして静かな池がミクの背後を守っている。
昼間は美しい緑を見せる庭も、この夜は静か...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 38.密会
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37.運命の歯車
「緑の国は、青に渡さない」
それは黄の国のリン女王の願い。
「黄の国を、青の皇子への手土産に」
それは緑の国の女王、ミクの願い。
互いの国の幸せを願う、二人の女王の思惑が、夜半過ぎの緑の王宮で、ひそやかに激突しようとしていた。
ネルは王宮の通用門から黄の国の二人を中へと導い...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 37.運命の歯車
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36.国境
黄の国の一隊長セベクの天幕にて待つ緑の国の密使、ネルのもとへ、乗馬の装備に身を固めた女王と、荷物を抱えた召使が現れた。
「ミク様にお会いするためのドレスです」と召使は説明した。
「お待たせいたしました。ネル様。参りましょう」
静かな声音で女王がのたまう。風は徐々に夕方の気配を含み始め...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 36.国境
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35.太陽の陰で
まずリンがしたことは、全軍にネルの存在を知らせることだった。
「あなたが、緑の国からの使者だということは皆に知らせておいたほうが良いわ」
ネルがリンの居場所を突き止める前に、他の黄の兵士に捕まったことで、「黄の軍に緑の者が紛れ込んでいる」という噂が広まってしまっていた。
「もし...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 35. 太陽の陰で
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34.届けられた密書
リンは進軍の只中にいて、集まる人々を激励し、鼓舞した。
「黄の国の明日は、あなたたちにかかっているわ! 」
実際その通りだった。旱魃で苦しむ人々は、女王から支給される食べ物と賃金は本当に魅力的だった。もとより居た兵士たちは新しく参じた人々を兵士として激励し、新しく兵士となっ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 34.届けられた密書
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33.緑の思惑、黄の進軍 ~黄編~
そのころリンは、ホルストの編成してあった軍を動かし、緑の国に向かっていた。
「ホルストはたしかに、良い読みをしていたわね」
王都は諸侯に任せてある。リンは彼らにある仕事を頼んでいた。
ホルストとシャグナの遺体と領地の後始末である。
ホルストの遺骸は、見つか...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 33.緑の思惑、黄の進軍 ~黄編~
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33.緑の思惑、黄の進軍 ~緑編~
「ミクさま!」
この日も緑の国の女王、ミクは、ハクとともに刺繍にいそしんでいた。そのミクのもとに、金色の髪の若い女が飛び込んできた。ハクとともに和やかな時を過ごしていたミクの緑色の目が、一瞬で緊張をはらんで輝く。
「ネル! 待ちかねたわ!」
ミクが玉座から立ち...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 33.緑の思惑、黄の進軍 ~緑編~
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空よ 風よ 高き峰よ、
唄う雲になりたい
君の影に重ねて
そっと守るよ
暑いときは日陰に
寒いときは雪綿
そっとかぶせてあげる、
唄う雲になりたい...【歌詞】唄う雲になりたい
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31.落ち逝く星
「ホルスト様!」
玉座の間の外の番兵が、血まみれになって出てきたホルストと医者のガクに色を失った。
「すぐに医者と担架を!」
「私が医者だ。担架と、そして部屋をひとつ空けてくれ! そして私の道具を返してくれ!」
すぐに走り出そうとした番兵を、ホルストの声が止めた。
「いい。……...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 31.落ち逝く星