作品一覧
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青い空には、雲ひとつなくて清々しいほど晴れ渡っていた。
雲に遮られることの無い強い陽射しが、燦々と私を照りつけるけれど、その熱は風に飛ばされていく。
冷たいうえに強い冬の風が徐々に体温を奪っていき、手の先から冷えていくのがよく分かった。
凍える手を強く握りしめてみたけれど、手のひらに爪が食い込むばか...サイハテ
tou
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ひとまず居間に置きっ放しのダンボールを片付けて、卓は何枚かの紙を持って居間のテーブルに突っ伏す。うぅ、という唸り声とともに顔が上がる。
「なんだよ、使用書とか保証書とかあると思ったらこれ伝票とかしか入ってないじゃないか。どうなってるんだよ」
なんとなくだが今後の方針とか具体的にやることとかはわか...小説『ハツネミク』part.1スタートライン(2)
warashi
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・・。今だに信じられない。
自分の体を見るとどう見てもリン。
リンのトレードマークである頭の大きいリボンが
「俺」の頭の上にある。
で、俺の体を自分自身が見ている。
「あ。あ・・あ。」
声を出してみた。困った。ソプラノだ。
・・。どうなってんだ?
「うまくいったみたいね。」
突然背後から声がした。...チェンジ・ザ・フタゴ 第一話「青い悪魔」
トレイン
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「めーちゃん、今日は何の日か知ってる?」
「今日って……何あった?」
にこにこと笑みを浮かべるカイトに、メイコは怪訝な顔をする。何か企んでいるに違いない、と自然に警戒心が働いた。
「本当にわからないの?」
「だって……もう誕生日は終わったでしょ?」
先日誕生日を迎えたメイコは、今目の前にいるカイトを...キスの口実(カイメイ)
駿河そると
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朝、寒くて目を覚ました。
ベッドから起きてカーテンを開けると、隣の家の屋根が真っ白。
驚いて、隣のベッドで寝ていたレンを起こす。
「レン、レン!起きて!」
「ん…何だよリン…まだ早いじゃんか…」
一体どうしたのかと眠そうにしながらも起きるレンに、リンは笑顔で窓を指差す。
「見て!雪が降ったの...音雪-otoyuki-
咲宮繿
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11月下旬、閑静な公園にはミクとリンの姿があった。
「ねえねえレンちゃん、そのマフラーどこで買ったの?」
「あ、これ? レンが『寒いだろ』って買ってきたからわかんないんだー」
黄色と黒を基調としたボーダーマフラーはふわふわとしていてとても温かそうだった。
両手を擦り合わせてハーッと息を吐くと空に...白い空、冷めたココア
SHiNA
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私は歩いた。
その先にある家を目指して。
ハァ、ハァ…
だんだんペースが速くなる。
不安だから…
なのだろうか?
早く誰かに会わせて
寂しいよ
心の中では思っている。
ただ、表に出さないだけ…。...夢の国~The land of dreams~ 2dream
柊 ハク
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彼女は辺りを見回し、人物を探す
「こっちだよ」
少年は呼ぶ
金色の髪を後ろで結い上げ、
顔の上半分しか覆わない独特の仮面
身長の割にとても大人びているこの少年を探していた
公爵様だ。
この国を治めている1人。
この辺の地は王族にしか金色の髪がいない為、
みなが彼をここでは「公爵様」と呼んでいる。...仮面の奥に#01
紅蘭 蝶
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・・。ウソだろ?
・・。勘弁してくれよ。
どうしてこんなことが起きるんだ。
入れ替わっちまうなんて・・。
しかも・・。リンと。
・・。本当なの?
・・。こんなことあるんだぁ・・。
・・。
「入れ替わってるね。」
「・・。勘弁してくれよ」...チェンジ・ザ・フタゴ プロローグ
トレイン
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……。
ここは…
何処?
私は……
一体何故ここに?
(うーん。)
考えてみた
思い出そうとしても何も思い出せない。
考えると…
頭が痛い。...夢の国~The land of dreams~
柊 ハク
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次の日私は学校を休んだ。
……。
好きになった私が馬鹿だったんだろうか
それともカイトの気持ちはウソだったのか
今になってはもうどうでもいい。
私は……。
死にたい。
そうだ。
死んでしまえば
この苦しみから解き放たれる……。...【9話-死-】恋
柊 ハク
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<ココロの力、キセキの音>
――それはまさしく、『奇跡』。
あの瞬間、私にココロが生まれた。
「おはよう」
オハヨウゴザイマス、と私は返した。
彼のように滑らかな声では無い。
だけど彼は笑顔で私の頭を撫でた。
「初めまして。君の名前はリンだ」
「リン」
繰り返す。リン。私は、リン。...ココロの力、キセキの音
咲宮繿
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それから僕はずっとそこにいた。
他に行く場所もなかったし、外に出してもらえる機会のなかった僕には、他の場所という概念自体がなかった。帰り道なども、覚えられるはずがない。あの時、去っていく母の後を必死追っていれば、と幾度か思い浮かんだが、それも無理だろうと諦めるしかなかった。
それに、ほんの少し...鬼の子-その2-
痛覚
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†はじまりは朝から†
チチッッ、ピュルル・・・。
小鳥のさえずり。自然法則に従って昇ってく太陽。
全てが今を朝だと告げる。
二度寝したくとも、こんなに騒がしくて眩しいんじゃ落ち着いて寝られねーよ。・・・起きるかなぁー。
と考えたりするのだが、体は言う事を聞いてくれない。
体が重い・・・。...女神よ我らに祝福を。②†はじまりは朝から†
夢緒
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籠の鳥
ある住宅街に、3人の帰宅途中の学生がいた。
3人は共通のセーラー服を着て、かしましく会話をしながら夕焼けで橙色に照らされる歩道をゆっくり歩いている。それはとても和やかで、日本の治安の良さの証明でもある。
ただその中で1人、談笑の合間をついて薄い溜め息をつく少女がいた。髪は艶のある黒色で...籠の鳥
秋徒
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終章
願い事を考えて、この海を見つけるまで時間がかかりすぎて、夜になってしまっていた。 小瓶には、メッセージとペンダント二つが入っていた。
リンはその小瓶を海に投げると、目を閉じて祈るように手を握った。
すると、突風がリンを襲い頭に映像と声が流れた。
まだ日がある。いつなのか、レンはここに走...【悪ノ】哀れな双子 終章
紺スープ
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†プロローグ†
―全てを飲み込んでしまうかのような、深い闇が支配する時間―
みんなもう寝てっかなぁー。
・・・ん~、確実に寝てんなぁ。ちょっと置いてけぼり食らった感じがするわー。
ブイーン。
聞こえるのは冷蔵庫の静かな機動音だけ。
苦笑しながら今までの事を思い浮かべてみた。夕飯を食べ終えた...女神よ我らに祝福を。①†プロローグ†
夢緒
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「あれ? なんだろ?」
小さく独り言を言ってしまったのはいつものクセ。
いつも隣にレンがいるから、たまに一人で行動する時もつい、隣にいるように話しかけちゃう。
ま、それはいいとして。
あたしがなんだろ? と呟いたのは、妙なモノを見つけたから。
道の真ん中でもぞもぞとうごくそれは、遠目に大雑把に見れば...リンが猫になる話
@片隅
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( 1 )
「 はぁあああっ。」
世にも切なげなため息をつきながら、
移調 珀世( はくよ )は、悩んでいた。
ヘタウマな曲が、
なぜか、世間の底辺の共感を呼ぶと話題になり、
弱音ハクの芸名で、そこそこ稼いでる彼女にも、
悩みはそりゃああるが、ここのところのスランプは、
底なし...伝説歌神 あんじぇの~と・・・ハク編 【改定版】
神河 龍歩
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( 1 )
ここは、音楽創作の理想郷。神奏日本。
そこの、科樂庁で
秘密裏に創( つくられ )られている楽器があった。
究極の楽器となる予定の機体は、
対防衛戦術型音響兵器APA(Android of Phono-Aegis)-V_02 を
元に、マスターとなる人の
思考...伝説歌神 あんじぇの~と【初版版】・・・序章
神河 龍歩
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『カイト』
マスターから名前を呼ばれると嬉しくてでも何故か胸が苦しくて…
原因が分からない。
検索をかけても異常なし
この苦しみはどうにか出来ますか―…
恋の蕾
「なぁカイト、次の曲さどんなのが歌いたい?」
マスターから新しく作ってくれる歌の相談。
歌える事が嬉しくて楽しかった。
「...恋の蕾
紅月@煌
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「おいカイト今日の買い物当番お前だろ」
寝ている青年の横腹を蹴り入れた紅い出で立ちの青年はアカイト。
「んっ…もぅ少しだけ…」
カイトと呼ばれた蒼い青年はタオルケットを抱き締めたまま惰眠を貪っていた。
夏から秋へと移り変わり部屋に差し込む日差しは暖かく眠気を誘う。
アカイトは寝息をたてているカイトの...オモイ
紅月@煌
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その港町にある砂浜には、よくガラスの小瓶が流れ着いて来る。
栓のされたその小瓶の中には、必ず羊皮紙が入っていた。そこに書かれているのは、誰かに向けて書かれたメッセージではない。
《いつまでも幸せでいられますように》
《おじいちゃんの病気が治りますように》
そんな、誰に宛ててでもない、願いを書いたメッ...リグレットメッセージ の。後日談?
へいがに:Lv10
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( 1 )
「 あの娘には、戦ってほしくないのよ。」
戦いの後、メイコは、唱太にそう、告白した。
少し寂しそうな笑みを見せて言葉を続ける。
珀世は、先に家で待っているからといって、
先に帰ってしまった。
「 だって、あの子は人間の友達として、作られたの。
兵器じゃないの。戦いが未熟...伝説歌神 あんじぇのーと・・・ 幕間編
神河 龍歩
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飛行機のエンジン音が部屋に響いてきた。基地へ戻ってきたのだ。
一機、二機、三機、四機、そして五機……たぶんミクだろう。何かの任務だろうか。
僕はベッドに横になると灰色の鉄の天井を見上げた。 タイトとキクは基地の中を散歩してくると言って僕の部屋から出て行ってしまった。無理もない。
この基地は...Sky of Black Angel 第十五話「怠惰」
FOX2
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今日は日曜日。
だから目覚ましだって黙り込んでいるし、
朝日だって、無視しても怒りはしない。
いつまでも寝ていられる♪
最高だね!
…って、はずなのに。
…………めちゃくちゃ寝苦しい。
私は重いまぶたをゆっくりと開いた。
「んぅ~…」
ぼやけた視界。...優しい傷跡 第07話「おはようございます」
アイクル
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三角草という花があって、淡い紫色の花を咲かせる。
少し肉厚の花びらが、なんとなく和菓子に見えてくる。
そんなことを姉に言ったら、それは花びらではなくがくなのだと、
ころころと鈴が震えるように笑った。
三角草の花が咲く
そのころに前後するくらいに、のどの調子が悪くなった。
こほりこほりと何...三角草の花が咲く
11月
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屋上
うっ、うっ、ひっく…。
涙が止まらない。
私は五分程泣いている。
何で、何でカイトが…。
バンッ!!
扉の開く音が聞こえた。
トタトタトタッ…
誰かがこっちに近づいてきた。
「ミクッ。探したぞ。」...【8話-想い-】恋
柊 ハク
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学校
はぁ、はぁ…
トタトタトタ…
今、私は走っている。
(遅刻しちゃう。)
そう、遅刻しそうだからである。
ガラガラガラッ!!
教室の扉を開けた。
先生はまだいない。
(ふぅ。)...【7話-悲しみ-】恋
柊 ハク
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私はコンビニによってアイスを買った。
なにが好きなのか、わからなかった。
だから、ちょっと高めのバニラアイスを買ってみた。
喜んでくれるかな…。
その日、私はいつもより歩幅を広げて歩いた。
でも、それだけじゃあ足りない気がした。
もっと早く帰りたい。
もっと、もっと、もーっと早く。
だから、私はルー...優しい傷跡 第06話「アイスクリーム」
アイクル