ブクマつながり
-
俺の肩にもたれて眠っていた巡音さんが、不意に身動きした。……あ、目が覚めたのかな? 見守っていると、巡音さんが目を開けて身体を起こした。二、三度まばたきをして、ぼんやりと辺りを見ている。寝起きで頭がはっきりしていないらしい。
「あ……巡音さん、起きた?」
声をかけると、向こうは弾かれたみたいにこ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十一話【全て同じというわけではないけれど】
目白皐月
-
金曜の夜、なんだかよくわからない食事会の後で帰宅した俺は、自室のPCで柳影公園の場所を調べた。そこそこ距離があるな。巡音さんはよく知ってるみたいだから、彼女の家からすると行きやすいんだろう。
翌日、普通の時間に起きだした俺は、朝食を取って身支度をすると、ポケットに財布と家の鍵と携帯を突っ込んで、...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十話【折れた翼であの子は歌う】前編
目白皐月
-
午後になって、ミクちゃんがやってきた。……けど、ミクちゃんだけじゃなかった。
「リン! 大丈夫なのか!?」
「……レン君!?」
わたしは呆然として、こっちに駆け寄ってきたレン君をみつめた。どうしてレン君が一緒なの?
「リン、怪我の具合は? そんなにひどいのか? 階段から落ちたって、どういうことな...ロミオとシンデレラ 第四十七話【無くし物をした少女】後編
目白皐月
-
「ルカおねえちゃん、あそんで」
「今お勉強でいそがしいの」
「ルカおねえちゃん、なんでいつもおべんきょうなの?」
「大事なことだから。リン、あんたももっとお勉強しなさい」
「……リン、おべんきょうきらい」
「お勉強ができないと、パパにほめてもらえないわよ」
「いいもん、ほめてもらえなくたって。ママは...ロミオとシンデレラ 三十四話【やがて綺麗に澄んでゆるやかに】
目白皐月
-
その日の夜遅く、わたしは自分の部屋でぼんやりとしていた。頭の中には、色々な考えがとりとめもなく渦巻いている。その考えは、大きく分けると二つ。片方は、鏡音君のことだ。どうして、今日は態度が妙だったというのかということ。何かした憶えはないけれど、わたしは人の心の機微には疎いから、気がつかないうちに何か...
ロミオとシンデレラ 第四十二話【辛すぎる忍耐は心を石に】後編
目白皐月
-
次の日、わたしは『ピグマリオン』を鞄に入れて登校した。鏡音君が登校してきたので、本を渡す。本を受け取った鏡音君が喜んでくれたので、わたしは少し安堵した。少なくとも、一つはいいことができた。
その日の昼休み、いつものようにミクちゃんとお弁当を食べていたわたしは、ふと思い立ってミクちゃんに訊いてみた...ロミオとシンデレラ 第二十八話【わたしには姉さんがわからない】
目白皐月
-
昨日見た夢が頭に引っかかっていたせいか、今朝の目覚めはすっきりしなかった。また、妙な夢を見なかったことだけが幸いかもしれない。夢の中とはいえ、巡音さんの翼を折るような真似はもうごめんだ。あんな風に泣いてほしくない。誰かが泣くのを見て楽しむなんて精神は、俺には理解不能だ。
学校に着いて教室に入ると...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十七話【それは普通でなくはない】
目白皐月
-
その次の日、夫は遠出する必要があるとかで、朝早く起きてきた。そしてあわただしく朝食を食べると、ルカを連れて出かけてしまった。その前に、リンを今日と明日は外出禁止にしたので外へ出すなとだけは言っていったが。……そういうことだけは、いつも忘れない。娘の誕生日を憶えているかどうかすら、怪しいのに。
普...ロミオとシンデレラ 外伝その十一【ほんの少しの優しさを】後編
目白皐月
-
「もういいこいつは埋める!」
「あ、手伝うわ」
「レン、落ち着けっ! 蜜音も煽るんじゃない!」
クオが俺の制服をつかんだ。なんで止めるんだよ。こいつは埋めた方が世の中のためだぞ。
「あのなあコウ、好きでもない男に抱きつかれて喜ぶ女の子なんかいないんだよ。グミがああ言うのは、グミが俺のことを好きだか...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十三話【見てもいいが触るのはいけない】後編
目白皐月
-
すまん姉貴、説得にちょっと利用させてくれ。姉貴がどう考えているのかなんて、例によって知らないけど。
「わたし、どうしたらいいの?」
「巡音さんは、初音さんや俺と一緒にいたくないの?」
ちょっと意地悪な質問かな……いや、仕方がない。大事なのはどうしたいかなんだ。
「……一緒にいたいわ」
ようやく...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十話【ボーン・トゥ・フライ】後編
目白皐月
-
次の日、わたしはいつもと同じ時間に登校した。昇降口に入った時は、ちょっとだけ怖さを感じたけれど、もうあの男の子もいなかったし……。
教室に入って、本を開く。今日持ってきたのは、ジョルジュ・サンドの『愛の妖精』だ。フランスの農村を舞台にした、双子の兄弟と風変わりな少女の恋の話。
「おはよう、巡音さ...ロミオとシンデレラ 第四十話【空想の虹はすばやくかききえる】
目白皐月
-
あれ以来、レン君はわたしに、CDや本を貸してくれるようになった。少し後ろめたい気持ちはあったけれど、わたしは好奇心に勝てず、そういったものを貸してもらった。今まであまり聞いたことのなかった音楽や、読んだことのなかったタイプの本。世の中には色々なものがあるのだと、改めて気づいた。
お返しというわけ...ロミオとシンデレラ 第五十一話【恋はハートが決めるもの】前編
目白皐月
-
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
ルカが小学校の時に、課題でつけていた日記を抜粋したもので、時期としては日記のつけはじめ~最初の継母が出て行くまで(ルカが三年生の春)となっています。
なお、ルカは小学生ですが、家庭教師について幼稚園の頃から勉強していたために、そこそこ...ロミオとシンデレラ 外伝その十二【ルカの日記】前編
目白皐月
-
俺の計画は、あっさり破綻した。昼休みにミクからメールが届いたのだ。「鏡音君がリンちゃんに話してるのを聞いたんだけど、演劇部お休みなんだって? 一緒に帰れるね」と書かれている。レンの奴、巡音さんに部活が休みになったこと喋ったのかよ! あいつ、何てことしてくれたんだ! 意趣返しのつもりなのかっ!? き...
ロミオとシンデレラ 第三十八話【クオの後悔】後編
目白皐月
-
それからしばらく、俺たちは戯曲の話をしたり、公園を散歩したりして過ごした。巡音さんも午後になると多少は気分が上向いてきたらしく、笑ってくれるようになった。
三時になると、巡音さんは淋しげに「もう帰らなくちゃ。今日はありがとう」と言って、帰って行った。……本当のことを言うと家まで送って行ってあげた...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十二話【疑問は多くあれど答えは少ない】
目白皐月
-
自分の教室に入って席につくと、ようやくわたしは少しだけ落ち着いた。ミクちゃんは自分の席から椅子を引きずってきて、わたしの向かいに座っている。
「災難だったね、リンちゃん」
「……うん。ものすごく驚いたし……怖かった……」
一体何だったんだろう、さっきの人。思い出したらまた気分が悪くなってきた。
...ロミオとシンデレラ 第三十六話【もう飛ぶまいぞ、この蝶々】後編
目白皐月
-
わたしはその日、授業を受けながらクオのことを考えていた。クオがあの男の子に「ミクにちょっかい出すな」と言ったのは、わたしのことを心配してのことだろう。それは間違いない。それ意外に、クオがそんなことをする理由、ないもの。
でもじゃあ、クオはどうしてあの男の子をけしかけるような真似をしたのかしら? ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十五話【ミクのお茶会】後編
目白皐月
-
月曜の昼休み、俺はミクから、巡音さんが階段から落ちて、入院する羽目になったと聞かされた。
階段から落ちただけならドジだなあ、で、済むが、入院となると大事だ。何だってまた、と思ったが、ミクも細かい話は聞いていないらしい。
「そういうわけだから、わたし、放課後はリンちゃんのお見舞いに行ってくるわ」
...ロミオとシンデレラ 第四十九話【クオ、部活にて】
目白皐月
-
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
『アナザー:ロミオとシンデレラ』の方に登場した、メイコのボス、マイコ先生の弟のカイトの視点です。
この作品に関しては、『アナザー:ロミオとシンデレラ』を第四十三話【君に出あってからは旋風のようで】まで読んでから、読むことを推奨します。
...ロミオとシンデレラ 外伝その十五【カイトの悩み】前編
目白皐月
-
年が明けた。わたしは、重たい気分で目を覚ました。今日は元旦だから、家にはお客さんが来る。毎年の恒例行事。
朝食を食べた後、わたしとルカ姉さんは、お母さんに着物を着せてもらった。ルカ姉さんは濃紺に梅の柄、わたしのは淡い緑に福寿草の柄だ。
正確に言えば、着せてもらったのはわたしだけで、ルカ姉さんは...ロミオとシンデレラ 第五十七話【こうもりワルツ】
目白皐月
-
結論から言うと、わたしの怪我は大したことはなかった。脳の映像を撮ってもらったりしたけれど、異常は何もないということで、一週間で家に帰れることになった。土曜日の午前中、お母さんが迎えに来てくれて、わたしは多少の怯えを感じながらも帰宅した。
お母さんは、ミクちゃんのお見舞いのことについては、特に何も...ロミオとシンデレラ 第四十八話【一人離れて行く者】
目白皐月
-
廊下を走ってはいけない。それはわかっている。だが、今の俺にそんなことを気にしている余裕は無かった。校舎の出口に向かって走る。巡音さんの性格上、寄り道するとは考えにくいから、この途中にいるはずだ。校舎の外に出てしまっていたとしても、校門の辺りで迎えを待つだろう。
下駄箱のところまでいくと、見慣れた...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十七話【君は特別な人】
目白皐月
-
ルカ姉さんがわたしに助けを求める……そんなこと、あるんだろうか? ……あるはずがない。だってルカ姉さんにとってわたしは、いない方がいいんだから。
でも……鏡音君がかけてくれた言葉の中のわずかな希望に、わたしは縋ってしまった。縋らずにはいられなかった。それは一種の逃避に過ぎないのに、そんなことある...ロミオとシンデレラ 第四十三話【歌の翼に乗せて】後編
目白皐月
-
朝、昇降口で、あの男の子に抱きつかれた時、わたしが感じたのは強い嫌悪感だけだった。ただひたすらに気持ち悪くて……正直、吐き気すら感じてしまったぐらい。今でも思い出すと気分が悪くなってくる。
でも……ミラーハウスの中で鏡音君がわたしを抱きしめてくれた時は、わたしが感じたのは強い安堵だった。もちろん...ロミオとシンデレラ 第三十七話【希望は羽根のある小鳥】
目白皐月
-
レン君とつきあうようになって、わたしの生活は多少変わった。今までミクちゃんと二人で食べていたお昼を、ミクちゃんとレン君とミクオ君と一緒に食べるようになった。たまに、グミちゃんと躍音君が混ざる時もある。
レン君とは今までどおり、朝や昼休みに話をする。放課後も話したかったけど、わたしは家に帰って勉強...ロミオとシンデレラ 第五十八話【子供の情景】
目白皐月
-
その次の日。わたしは鬱々とした気分で目を覚ました。時計を見る。結構早いな……いつもより早いぐらい。学校の支度……あ、今日は第二土曜だから、学校は無いんだっけ。
あれ……? 意識に何か引っかかってるな……?
首を軽く横に振りながら、わたしは身体を起こした。いやだ、わたしったら服のままで寝ちゃった...ロミオとシンデレラ 第三十三話【どうしても影がほしいの】前編
目白皐月
-
その日の夕食前、わたしが階下に下りて行くと、神威さんが玄関ホールに立っていた。……珍しいな。今日は平日なのに。
「こんにちは」
わたしは立ち止まって、神威さんに丁寧に頭を下げた。
「確かルカの妹の……」
「下の妹のリンです」
答えながらふっと気づく。神威さんと喋ったのって、考えてみたらこれが初...ロミオとシンデレラ 第三十九話【それなら太陽を愛せばいい】
目白皐月
-
昨日リンちゃんはわたしに電話をかけてきて、今日、鏡音君と作業の続きをしたいので部活を休んでもいいかと訊いてきた。もちろんOKに決まっている。無理して出なくてもいい部活だしね。わたしとリンちゃんは、どっちも英会話部に所属していて、わたしが部長、リンちゃんが副部長を務めている。他の部員のうち、半分ぐら...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十八話【ミクの見解】
目白皐月
-
普段より早く自宅を出たので、当然、学校に着いた時間も早かった。とはいえ、もう開いているので、教室に入って自分の席に着く。……まだ誰も来ていない。
わたしはがらんとした教室を見回した。……鏡音君の席が目に入る。途端、また、昨日のことを思い出してしまった。ああもう、いい加減にしないと。鏡音君と顔をあ...ロミオとシンデレラ 第二十六話【アングルド・ロード】後編
目白皐月
-
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
レンの姉、メイコの視点で、外伝その八【あの子はカモメ】外伝その九【突然の連絡】の続きです。
この作品に関しては、『アナザー:ロミオとシンデレラ』を第二十三話【真実はいつも少し苦い】まで読んでから、読むことを推奨します。
【シンデレラ...ロミオとシンデレラ 外伝その十【シンデレラごっこ】前編
目白皐月
-
巡音さんが言葉どおり『ピグマリオン』を貸してくれたので、俺は休み時間や、部活が始まるまでの短い時間に、最初の方を読んでみた。……映画を見た時はそこまで感じなかったけど、ヒギンズ教授って相当性格イタくないか? まあ、そこがギャグとして機能してるんだろうが……。お前はだだっ子かよ、と突っ込みたくなる部...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十五話【自分はありふれた人間】
目白皐月
-
「……ありがとう」
「急にどうしたの?」
「色々、してもらっちゃったから」
わたしの方がしてもらってばかりだから、どうしても申し訳ない気持ちになってしまう。
「そんな気にしなくていいよ。友達だろ?」
鏡音君がそう言った時だった。突然、室内の明かりが消えて、真っ暗になってしまった。
「え……? な...ロミオとシンデレラ 第二十四話【二重になった物語】後編
目白皐月
-
駅までへの帰りの道。巡音さんは来た時よりは落ち着いた様子だった。行きはがちがちに緊張していたもんなあ。何にせよ、打ち解けてくれるのはやっぱり嬉しい。
「姉貴の言うことは、あんまり真に受けない方がいいと思うんだよね」
歩きながら、俺は巡音さんにそう言った。
「どうして?」
「ん~、滅茶苦茶言う人だ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十六話【トゥルー・カラーズ】
目白皐月
-
週末には、包帯が取れてわたしの足は元通りになった。そして週が開けると、中間テスト。特に難しいということもなく、簡単ということもなく、いつもどおり。
ハク姉さんとは、まだ話せずにいる。同じ家に住んでいるのに、二週間近く顔をあわせないというのは奇妙に思えるかもしれない。でも、ハク姉さんが自発的に部屋...ロミオとシンデレラ 第二十二話【わたしには何の取り得もない】
目白皐月
-
頭の中が真っ白な状態で、わたしは鏡音君と一緒に歩いていた。どれだけ歩いたのか、それすらもよくわからない。とにかく、しばらく歩くと、鏡音君が立ち止まり、わたしの肩を抱く腕を放してくれた。
「……ごめん、変なことに巻き込んじゃって」
「ね、ねえ……何だったの、今の? あの子たち、中学の同級生って言って...ロミオとシンデレラ 第二十三話【恋とはどんなものかしら】前編
目白皐月
-
この後、わたしと鏡音君は、ミクちゃんたちと合流して、一緒にお昼を食べた。ミクちゃんはすごくはしゃいでいた。午前中はミクオ君と一緒に、絶叫マシンにずっと乗っていたらしい。
「やっぱり遊園地の醍醐味って言ったら絶叫マシンよね。リンちゃんも怖がらずに乗ってみればいいのに」
「わ、わたしはちょっと……」
...ロミオとシンデレラ 第二十四話【二重になった物語】前編
目白皐月
-
昼は初音さんとクオと合流して、四人で取った。二人とも午前中ずーっと絶叫マシンに乗っていたらしく、なんというか、ハイになっていた。人はあの手のものでもハイになれるらしい。
ついでなので、クオにグミヤたちと会った話もしておく。クオもあの二人がつきあっていたのは初耳らしく、驚いていた。
「へえ、グミヤ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十一話【ここにいるよ忘れないで】
目白皐月
-
姉貴との冷戦は、結局次の日にはなし崩しに無かったことになった。……いや、仕方がないよ。同じ屋根の下に住んでいるんだから、そうそういつまでも険悪ではいられない。色々と不都合も多いし。
とはいえ、あれ以来、二人の間で巡音さんの話題が出たことはない。要するに、お互いまた険悪になるのが嫌だから、意図的に...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十九話【自分の道を行けばいい】
目白皐月
-
「せんぱーい、幾らなんでも悪ふざけが過ぎますよ! あたし、一瞬本気にしたじゃないですか!」
ラブホテルを出て目的地に向かう最中、ハクちゃんはそんな文句を私に言っていた。
「あっはっは、あの時のハクちゃんの顔、見ものだったわ」
「もう、先輩って悪趣味!」
「心配しなくても、私はストレートだってば」
...ロミオとシンデレラ 外伝その十【シンデレラごっこ】後編
目白皐月
-
姉貴に『エンダーのゲーム』を渡して、俺は学校へ向かった。学校に着いて教室に入ると、いつものように自分の席で本を読んでいる、巡音さんの姿が目に入った。……どうしたもんかなあ。向こうは本に集中しているので、俺のことには気づいてない。けど、ここで声をかけないのは、それはそれで「昨日のことを気にしてます」...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十三話【真実はいつも少し苦い】後編
目白皐月
-
四人で遊園地に行った翌朝、俺は落ち着かない気分で目覚めた。今日は月曜だ……。そういや、『憂鬱な月曜日』って歌、あったなあ。断っとくけど、死にたいわけじゃないぞ。
ベッドから抜け出して一階に下りる。洗面所に行って顔を洗い、居間へ行く。台所では、姉貴が朝食の支度をしていた。
「おはよう、姉貴」
「お...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十三話【真実はいつも少し苦い】前編
目白皐月
-
「巡音さん、ちょっといい?」
水曜日の放課後、俺は巡音さんにそう声をかけた。
「……鏡音君、どうしたの?」
とりあえず、また以前のように話せるようにはなっている。……これでいいんだよ、これで。……多分ね。
「実はちょっと相談に乗ってほしいことがあって」
「え……わたしに?」
心底驚いたといった...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十四話【ショウほど素敵な商売はない】
目白皐月
-
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
ルカが小学校一年生の時の担任の先生(本編には登場しません)の視点で、外伝その十二【ルカの日記】のサイドエピソードとなっています。
したがって、【ルカの日記】を読んでから、お読みください。
【先生の思い出話】
巡音ルカですか? 憶え...ロミオとシンデレラ 外伝その十三【先生の思い出話】
目白皐月
-
「……生きた人間が出てこないお芝居は演じにくい?」
ちょっとふざけて、わたしは鏡音君にそう訊いてみた。
「人生を描くには、あるがままでもいけなくて、かくあるべきでもいけなくて、自由な空想に現れる形じゃないといけないんだよ」
あ……わかるんだ。何だか嬉しい。
「お芝居には恋愛が必要なのよ」
そこ...ロミオとシンデレラ 第二十七話【お芝居には恋愛が必要】後編
目白皐月
-
「だってフレディって、何の役にも立ちそうにないじゃないか。確か定職ついてなかっただろ、あいつ。そんな甲斐性なしと一緒になっても、幸せにはなれないんじゃないの?」
鏡音君はきつい口調でそう言った。役に立ちそうにないって……。確かにタクシー捕まえられなくて、母親と妹に呆れられたりしているけど……。どう...ロミオとシンデレラ 第二十九話【愛される権利】後編
目白皐月
-
下駄箱まで来て、靴を取り出そうとした時、わたしは運転手さんにメールを送っていないことに気がついた。あ……しまったな。しばらく、お迎えを待たないといけない。
わたしはため息をつくと、鞄を開けて携帯を探し、メールを送信した。その時だった。
「良かった……まだいたんだ」
「え……?」
わたしは驚いて...ロミオとシンデレラ 第三十話【ガラテアはピグマリオンに恋はしない】
目白皐月
-
「ついでにさ、あの人は変なところでプライドが高いから、目の前にいるイライザのことをちゃんと認めてあげられないんだよ。イライザのことをいつまでも花売り娘ってバカにしてるけど、家のあれこれを任せてたってことは、本当は信頼してたってことだろうし」
ただの花売り娘だったら、あんな短時間でちゃんとした貴婦人...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十六話【望むのはどこかの部屋】後編
目白皐月
-
初音さんたちが戻ってきたので、俺たちは一緒にオペラ『チェネレントラ』を見た。リンの言うとおり、確かに喜劇だ。音楽は終始明るいし、歌もそう。出ている歌手の人たちもコミカルに動くし、ギャグも入っている。早口言葉みたいな歌の応酬も楽しい。……ところで、お菓子の箱に賄賂を隠すのって世界共通なのか?
話の...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十話【決して手を離すことはない】
目白皐月
-
わたしたちは、残りの昼休みの間中、結局ずっと一緒にお喋りをしてしまった。躍音君は、風邪を引いてお休みらしい。
その時に教えてもらったのだけど、グミちゃんは中学入学時に、今の住所に引っ越して来たのだそうだ。そして馴れない土地な上に、もともとの方向音痴が加わって、迷子になってしまい、途方にくれている...ロミオとシンデレラ 第五十一話【恋はハートが決めるもの】後編
目白皐月
-
巡音さんは同じクラスなわけだから、何かというとその姿は俺の視界に入る。授業を受けているところや、初音さんと話しているところ。俺は何度となく、その姿を目で追ってしまっていた。……いったい何をやっているんだ、俺は。下手をしたら俺の方が危ない奴だぞ。
そうこうするうちに放課後になった。初音さんが手を振...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十四話【馴染んだ君の姿に】
目白皐月