ブクマつながり
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リンの抱えた問題を話し込んでいたせいで、この日は戯曲の話を進めることができなかった。リンは例によって散々恐縮していたが、原因の一端は俺にあったわけだし、それにリンが安定していないと作業どころじゃない。
さてと、どうしたもんかな……明日また部活休むか。とはいえ、リンの方の都合もあるよな。それを聞い...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十一話【君のための歌】
目白皐月
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駅に着くと、僕は帯人兄さんの住んでいる家の最寄り駅までの切符を買った。改札を抜けて電車に乗る。電車に揺られながら、僕は今度は帯人兄さんのことを考えていた。ちょっとは落ち着いていてくれるといいんだけど……。
次兄の帯人兄さんは、僕の五歳上。優等生だったマイト兄さんと比べると、帯人兄さんは「問題児」...ロミオとシンデレラ 外伝その十五【カイトの悩み】後編
目白皐月
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注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの長姉、ルカの視点で、彼女の九歳の誕生日の話です。
この話に関しては、外伝【わたしはいい子】【ルカの日記】を読んでから、読むことを推奨します。
【ケーキと愛情】
「ルカ、もうじきおたんじょう日よね」
パパとさいこんして、新しい...ロミオとシンデレラ 外伝その十四【ケーキと愛情】
目白皐月
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この週のうちに、戯曲に関する作業は全部終わらせることができた。ほっとした半面、淋しいと感じてしまう自分がいる。レン君と一緒に作業をしたことが、とても楽しかったから。もっとこの時間が続いてほしいと、わたしは思ってしまった。……でも、そういうわけにはいかない。きちんと終わらせないと、向こうが次の段階に...
ロミオとシンデレラ 第四十五話【裸の王様】
目白皐月
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四月七日
今日から二年生です。クラスがえがありました。たんにんの先生も新しくかわりました。
二年生になっても、しっかり勉強していい子にしていようと思います。
さいきん、パパとママはけんかをしなくなりました。いいことです。けんかはうるさいからきらいです。これで、パパがもっと早く家に帰ってきてく...ロミオとシンデレラ 外伝その十二【ルカの日記】後編
目白皐月
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月曜日、リンちゃんの席はまた空だった。またお休みかあ……心配になったので、メールを送っておく。ついでにクオにも、お昼のお誘いをかけておいた。
昼休み、わたしが携帯をチェックすると、リンちゃんからメールが入っていた。「ごめんね、ミクちゃん。実は階段から落ちて入院することになったの。でも大したことな...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十四話【ミクとお見舞い】
目白皐月
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期末が終わると、わたしは家中をクリスマス仕様にする仕事に取り掛かった。もちろん全部の部屋じゃないけれど、お客様が入る可能性のあるところはできるだけ飾り付ける。当然、クオにも手伝ってもらった。努力の甲斐あって、とても素敵な出来栄え。お父さんとお母さんも「ミク、今年はすごいわね」と褒めてくれた。
そ...アナザー・ロミオとシンデレラ 第五十一話【ミクとミスルトゥ】
目白皐月
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帰宅すると、靴脱ぎに姉貴の靴があった。……あれ? 今日姉貴、仕事だよな? なんで家にいるんだ? 居間を覗いてみるが、誰もいない。
俺は買ってきたものをとりあえず冷蔵庫にしまうと、二階に上がっていった。姉貴の部屋のドアの前に立って、叩こうとした時、中から姉貴の声が聞こえて来た。
「ああ……まあ、そ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十九話【心を決めて望むことを】
目白皐月
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注意書き
この作品は、doriko様の「ロミオとシンデレラ」を題材に、黒刃愛様が作成したPVにインスピレーションを受けて、私が書いた小説『ロミオとシンデレラ』の、レン視点バージョンです。レン以外に、ミクなどの視点が入ります。
もともとは頭の中を整理するために書いていたのですが、割とまとまって一...アナザー:ロミオとシンデレラ 第一話【大丈夫?】
目白皐月
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放課後、俺は初音さんと一緒に初音さんのところの車に乗せてもらって、リンの入院している病院へと向かった。車だとさすがに早く、割とすぐ病院に着いた。
初音さんはさっさと病院の中に入っていくと、受付の人と話し始めた。しばらくすると、こっちに戻って来る。
「リンちゃん、311号室だって」
エレベーター...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十二話【それが多分たった一つのできること】後編
目白皐月
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十二月二十四日、早起きしたわたしは、生クリームを固く泡立てて、ケーキに塗った。綺麗に平らにならすんじゃなくて、尖った感じにした方が可愛いかな。その上からココナッツをかけることが多いんだけど、小粒のアラザンにした。ミクちゃん、きらきらしたものが好きだものね。ヒイラギの枝を刺して、できあがり。
わた...ロミオとシンデレラ 第五十三話【ヒイラギ飾って】
目白皐月
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十二月二十四日、俺はリンへのプレゼントを鞄に入れて、家を出た。風は冷たいが、空は綺麗に晴れている。……まあここ、東京だしな。クリスマスに「ほら、雪が降ってきた」なんてのはありえない。ニューヨークじゃないんだ。
電車に乗って、クオの家に向かう。相変わらずでかい家が視界に入った時、車が一台俺を追い抜...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十八話【クリスマス・ベルズ】
目白皐月
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「じゃあ見ましょうか」
姉貴はそう言って、DVDをプレーヤーに入れた。オペラが始まる。今回は劇場の外観は出てこず、抽象的な映像が映って、それからメニュー画面になった。
オペラが始まると、砂漠の中(例によってセットが凝ってる)で、黒ずくめの修道士たちが歌っている。そこに、主人公のアタナエルとやらが...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十五話【悲劇か喜劇か】後編
目白皐月
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初音さんは自宅まで乗せてってあげると言ってくれたが、そこまでしてもらうのはさすがに気が引けたし、考えたいこともあったので、俺は一人で帰宅することにした。
電車に揺られながら、俺はリンのことを考えていた。怪我のことはもちろん心配だが、今日見た限りでは元気そうだった。多分、数日で退院できるだろう。
...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十三話【君に出会ってからは旋風のようで】
目白皐月
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初音さんたちが戻ってきたので、俺たちは一緒にオペラ『チェネレントラ』を見た。リンの言うとおり、確かに喜劇だ。音楽は終始明るいし、歌もそう。出ている歌手の人たちもコミカルに動くし、ギャグも入っている。早口言葉みたいな歌の応酬も楽しい。……ところで、お菓子の箱に賄賂を隠すのって世界共通なのか?
話の...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十話【決して手を離すことはない】
目白皐月
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グミヤの話を聞いてから、俺は改めてどうしたらいいのかを考えた。
今までと同じ……でも、表向きは不都合はない。俺たちは仲のいい友人で、一緒に本や音楽の話をする。リンは今までと同じように、接してくれるだろう。
けど……客観的に見て、リンは可愛い。リンにいらないちょっかいを出す奴が、また出てる可能性...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十七話【川より深く、山より高く】
目白皐月
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わたしが幾ら悩んでいても、朝はいつもどおりやってくる。憂鬱な気分で起きだしたわたしは、洗面所で顔を洗うと、部屋に戻って制服に着替えた。鏡を見ながら髪を梳いて、リボンを結ぶ。学校……行ったら、鏡音君に会うわよね。同じクラスだもの。
どうしてわたしは、鏡音君に迷惑ばかりかけ倒しているんだろう? 事の...ロミオとシンデレラ 第二十六話【アングルド・ロード】前編
目白皐月
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ハク姉さんとひと悶着あってから二日後。放課後に、鏡音君がわたしに声をかけてきた。
「巡音さん、ちょっといい?」
「……鏡音君、どうしたの?」
例の「好き」と「嫌いじゃない」の話のおかげか、わたしたちは、また普通に話せるようになっていた。……ミラーハウスでのことは事故だったと思って、忘れた方がいい...ロミオとシンデレラ 第二十七話【お芝居には恋愛が必要】前編
目白皐月
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注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の設定を使った、ハロウィンのショートエピソードです。
おまけ的なものなので、外伝としてのナンバリングはしておりません。
ただし、『ロミオとシンデレラ』を、第三話ぐらいまでは読んでないと、話の背景がよくわからないと思います。
クオ視点で、クオとミク...ハロウィンなんか大嫌い
目白皐月
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夜、わたしは自室で、レン君が貸してくれた『歌う船』というSF小説を読んだ。身体に重度の障害があるけれど通常の知性を持って生まれた赤ん坊は、すぐに金属の殻に入れられて、神経シナプスをコンピューターと接続されて、一種の人間コンピューターみたいな状態で生きられる世界の話だ。この作品では、そう言う状態で生...
ロミオとシンデレラ 第五十二話【どのような悲しみが来ようと】
目白皐月
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変な時間に起きたせいか、昼にまた眠りこんでしまい、目が覚めたのは午後九時だった。……寝過ごさなくてよかった。これで寝過ごさなくてってのも変だけど。あたしは、携帯を取り上げると、登録してあった先輩の携帯の番号を選んだ。コール数回。先輩が出る。
「もしもし、ハクちゃん?」
「先輩、お久しぶりです」
...ロミオとシンデレラ 外伝その九【突然の連絡】後編
目白皐月
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わたしは現在、クオと喫茶店で作戦会議の真っ最中。作戦というのは当然、リンちゃんと鏡音君の仲を親密なものにするためのものだ。
同じクラスとはいえ、基本的に二人は全くといっていいほど話す機会がない。というより、リンちゃんはわたし以外と喋ることがほとんどないのよね。だから何としてでも、二人っきりにして...アナザー:ロミオとシンデレラ 第七話【作戦会議中のミク】
目白皐月
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夢の中で、わたしはタイスになっていた。場所はタイスの部屋。中央に大きなベッドが置いてあって、わたしはそこに座っている。
どうしてわたしは、ここにいるのだろう? 考えてもわからない。わたしは立ち上がって、部屋の中を歩き回った。がらんとしていて、ほとんど何もない。壁際に、大きな鏡がかかっているぐらい...ロミオとシンデレラ 第十四話【鏡よ、答えて】
目白皐月
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月曜の朝、登校してきた俺は、学校の校門のところに、見覚えのある車が止まっているのに気づいた。あれは巡音さんのところのだ。
見ていると、運転手さんが車から降りて後部座席のドアを開けた。車の中から巡音さんが出てくる。運転手さんは一礼して車に戻り、そのまま発進して行った。巡音さんは、校舎に向けて歩き出...アナザー:ロミオとシンデレラ 第九話【凍るか、燃え上がるか】
目白皐月
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わたしは、鏡音君と一緒に駅へと向かった。来る時は緊張で周りの景色を見ることもできなかったけれど、帰りの道はもう少しゆったりした気分で歩けたので、歩きながら辺りを眺めることができた。この辺りは住宅街なのか、小さな家がずっと並んでいる。
「姉貴の言うことは、あんまり真に受けない方がいいと思うんだよね」...ロミオとシンデレラ 第十九話【死ぬ前に一度は生きてみたい】前編
目白皐月
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わたしが立てた作戦は完璧だった。まず、わたしがリンちゃんを「映画でも見ない?」と言って家に呼ぶ。そして同じ日に、クオがやっぱり映画を口実にして、鏡音君を連れてくる。後はわたしとクオが喧嘩をする振りをして、二人だけ部屋に残して出て行ってしまうのだ。これで、リンちゃんと鏡音君が部屋の中で二人っきり、と...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第四話【ミクの不満】
目白皐月
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いいものなのか、嫌なものなのか。作品ごとに褒めてあったりそうでなかったりで、わたしには余計にわからない。
「うーん……俺とユイは中三の時に委員会が一緒で、それで仲良くなって、秋頃にユイが『好きでした』って言ってきて、それでつきあおうかって話になったんだけど、何せ中三の秋だろ。受験に追われてろくにデ...ロミオとシンデレラ 第二十三話【恋とはどんなものかしら】後編
目白皐月
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月曜の朝、学校に行く前にハク姉さんに声をかけてみようかと思ったけれど、誰かに見咎められるのが嫌で、声をかけることはできなかった。お父さんやルカ姉さんとばったり会って、何をやっているのか訊かれたら答えづらいし……。
ちょっと暗い気分でわたしは朝食を食べ、学校に向かった。教室に入り、自分の席に座る。...ロミオとシンデレラ 第二十話【どうか扉を開けさせて】
目白皐月
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日曜日がやって来た。今日は外出の予定はない。家で本でも読むか、オペラのDVDでも見てようかな……そんなことを考えながら、わたしは階下に降りて行こうとして、凍りついた。食堂から、お父さんとお母さんの話し声が聞こえてくる。ううん、これは、話しているんじゃない。
……喧嘩、しているんだ。
「朝からそん...ロミオとシンデレラ 第十話【嵐】
目白皐月
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土曜日の夕方。俺が自分の部屋で課題を片付けていると、携帯が鳴った。かけてきたのは……クオか。
「もしもし」
「よう」
「どうした?」
「ああ……えっと、お前、明日暇か?」
なんか歯切れ悪いな。いつもならもっと立て板に水みたいに話すのに。
「暇だよ。晩飯作らないといけないから、それまでだけど」
...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三話【何故ならそれこそが恐怖だから】前編
目白皐月
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月曜の朝、わたしが教室に入ると、リンちゃんが鏡音君と話をしていた。見た感じだと、前よりもリンちゃんは打ち解けてきているみたい。……やったわ! クオにはお前の作戦全然効果なかったじゃないかとか言われたけど、なんだかんだで距離は縮まっていたのね。
わたしがリンちゃんにおはようと声をかけると、鏡音君は...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十八話【ミクの奔走】
目白皐月
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巡音さんと話をしたその日の夜、俺は姉貴に日曜の予定について訊いてみた。
「日曜? 出かける用事も無いし、家にいるつもりだけど」
それが、姉貴の返事だった。
「じゃ、その日は家にいるんだ。俺、日曜に学校の友達を家に呼ぼうと思ってて」
「邪魔だから出かけててほしいってこと?」
「逆。家にいてくれ」
...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十三話【来て一緒に歩こう】
目白皐月
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火曜日。めまいは治まったので、学校に行こうとしたのだけれど、お母さんに止められてしまった。
「昨日倒れたのよ。リン、大事を取って今日も休みなさい」
「……もう平気よ」
「いいから、今日は家にいなさい。学校には連絡しておくから」
結局、わたしは休むことになってしまった。何だかちょっと後ろめたい。朝...ロミオとシンデレラ 第十三話【わたしの魂は空虚で】
目白皐月
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折角巡音さんとまともに話せたと思ったのに、帰宅後に姉貴が余計なことを言い出したせいで気分がぶち壊しだ。その日の夕食の際、俺は姉貴と全くといっていいほど口をきかなかった。大体、この状況で話せることなんかあるわけない。姉貴も一言も喋らなかったので、おそろしく寒々しい食卓となった。
そして翌日。姉貴の...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十七話【暗い表情の君を見たくない】
目白皐月
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例のしつこい子も、それ以上後を追いかけてくるようなことはなかった。まともな感性の持ち主なら、この後はむしろ逆方向へ行くだろう。しつこい子はともかく、ユイとチカはまともなはずだし。
充分距離を取った辺りで、俺は巡音さんの肩を抱いた腕を外した。巡音さんはまだ顔が赤い。
「……ごめん、変なことに巻き込...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十話【青春の光と影】前編
目白皐月
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注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
外伝その二『ママ、かえってきて』から、三年後のハクを書いたもので、こちらもハク視点となっています。
三年生になったので、少し漢字が増えました。
【やさしいうそと、むごいうそ】
あたしたちの、新しいママだという、カエさんという人が来て...ロミオとシンデレラ 外伝その三【やさしいうそと、むごいうそ】
目白皐月
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ミュージカル『RENT』は、不思議な作品だった。『ラ・ボエーム』とは、同じようでいて、違う。『ラ・ボエーム』が十九世紀半ばのパリを舞台としているのに対し、『RENT』の舞台は二十世紀末のニューヨーク。百五十年でこんなに色々変わってしまったのかと思えるところと、ああ、やっぱり同じ話なんだと思えるとこ...
ロミオとシンデレラ 第十七話【一歩一歩、一言一言】
目白皐月
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注意書き
これは拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの長姉、ルカの視点で、彼女が十五歳の時の話です。
この話に関しては、『ロミオとシンデレラ』を第十四話【鏡よ、答えて】までと、外伝【わたしはいい子】を読んでから、読むことを推奨します。
なお、ルカさんの性格は、【わたしはいい子】の時...ロミオとシンデレラ 外伝その七【ある日のアクシデント】前編
目白皐月
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その日の夜、俺は晩飯の後で、姉貴に訊いてみた。
「今日、クオから映画のDVD借りてきたんだけど、姉貴も見る?」
「何借りたの?」
「『ブレインデッド』ゾンビ映画。ピーター・ジャクソン監督」
ちなみに、姉貴は変な映画が結構好きだったりする。弟の俺でも、姉貴の映画の趣味をはっきりとは把握していない。...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五話【ブレインデッド】
目白皐月
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お母さんはまだ心配そうだったけれど、わたしはもう大丈夫と何度も言って、この日は学校に行った。
学校に着いて教室に入ると、わたしはいつものように持ってきた本を広げた。そう言えば、この本は何だったっけ……。思わず本の表紙を確認してしまう。ガルシンの短編集だった。……なんでこんな本、持って来ちゃったん...ロミオとシンデレラ 第十五話【その耳に届くただ一つの調べがあれば】
目白皐月
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注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの次姉、ハクの視点で、彼女の実母が出て行く前~出て行った後のエピソードです。
年齢を考えてひらがなばかりにしたので、読みにくいかもしれませんが、ご了承ください。
【ママ、かえってきて】
さいきん、ママがなにかおかしい。ぜんぜん...ロミオとシンデレラ 外伝その二【ママ、かえってきて】
目白皐月
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図書館に着いたわたしは、座席に座ってひとしきり勉強した。集中しきっていたため、時間の経過に気づかず、気がつくと閉館の時間になっていた。いけない、もう外は暗くなりかけている。荷物をまとめ、わたしは帰路についた。
帰り道では、行きのような妙な人に遭遇することはなく、家まで真っ直ぐにたどり着いた。玄関...ロミオとシンデレラ 外伝その七【ある日のアクシデント】後編
目白皐月
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鏡音君のお姉さんが作ってくれたパスタは、とても美味しかった。鏡音君はああ言っていたけど、多分謙遜していたのだろう。
そのお姉さんは、わたしのお弁当箱のおかずを「美味しい」と感激しながら食べていた。鏡音君がやや呆れた表情で、そんなお姉さんを見ている。
ハク姉さんの先輩ということは、ルカ姉さんとハ...ロミオとシンデレラ 第十八話【何がわたしの心をひきつけるの】前編
目白皐月
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クオの家で映画を見てから、数日が経過したある日。俺は学校の図書室で『RENT』のサントラを聞きながら、歌詞をチェックしていた。この前見た舞台は字幕がいいかげんで、話の意味を取りづらかったんだよな。そんなわけでネット通販でサントラを購入したんだが、歌詞カードがついていなかった。幸い、歌詞を全部載せて...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第六話【檻の虎に太陽を見せて】
目白皐月
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「ハク姉さん……」
「どーせ、あたしは厄介者~」
今度は歌いだした。うちで日常的にお酒を飲むのはお父さんぐらいだし――お母さんとルカ姉さんは、おめでたい時にワインかカクテルをグラス一杯飲むぐらいだから――そのお父さんにしても、前後不覚になるまで飲むなんてことはまずやらない。だから人が酔っ払った時、...ロミオとシンデレラ 第十九話【死ぬ前に一度は生きてみたい】後編
目白皐月
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注意書き
これは、拙作「ロミオとシンデレラ」の外伝です。
オープニングはミクが高一の時で、そこから子供のころを回想するストーリーとなっています。
【ミクの思い出】
日曜日。わたしは、ふと思い立って、部屋の片づけをすることにした。わたしの家では定期的にお手伝いさんが掃除をしてくれるのだけれど...ロミオとシンデレラ 外伝その五【ミクの思い出】
目白皐月
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「作戦はうまく行ったわっ!」
その日の夕方頃――ちなみに、中間テスト一週間前なので部活は休みである――俺の部屋にノックも無く駆け込んできたミクは、いきなりそんなことを言いやがった。……あのなあ、俺は勉強中だぞ。
「作戦って、なんの」
訊き返す義理はないような気がするのだが――何せ俺は勉強中なわけ...ロミオとシンデレラ 第二十一話【クオと電話】
目白皐月
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月曜日、登校してきたわたしは、リンちゃんの席が空なのに気がついた。……いつも、わたしより早く来るのになあ。お手洗いにでも行っているのかな。
自分の席に座って、わたしはぼんやりしていた。普段はリンちゃんとお喋りしている時間。ちょっと手もちぶさた。
結局、始業のベルが鳴る時間になっても、リンちゃん...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十話【ミクの苛立ち】
目白皐月
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「いやああああっ!」
びっくりしてそっちを見る。初音さんが悲鳴をあげていた。あれれ。巡音さんも画面を見るどころじゃなく、初音さんを見ている。
こんな反応するってことは、初音さんってホラーが全くダメなタイプ? クオ、お前、何考えてんだ。俺と巡音さんはどっちも唖然として、悲鳴をあげる初音さんを見てい...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三話【何故ならそれこそが恐怖だから】後編
目白皐月
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登校して、ミクちゃんとお喋りして、授業を受ける。授業が終わったら、部活のある日は部活動。それが無い場合、大抵は真っ直ぐ家に帰る。帰宅後は家庭教師の先生について勉強。それが、わたしの日常。何事もなく、日は過ぎていく。
そんな、ある日の放課後。授業が終わって帰り支度をしていると、携帯にメールが届いた...ロミオとシンデレラ 第七話【わたしが街を歩くと】
目白皐月