ブクマつながり
-
月曜日。普段と同じように起きだした俺は、普段と同じように朝食を取り、学校へと出かけていった。いつもと同じ時刻に学校に着き、昇降口で靴を履き替えて、校舎に入って教室に行く。
教室に入った俺は、いつもの癖でリンの席を見てしまった。リンは大抵俺より先に来るので、俺が教室に入ると、自分の席で本を読んでい...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十二話【マネシツグミを殺すな】
目白皐月
-
安心させたところにこんな話をして、大丈夫だろうか……。でも仕方がない。もともと、この話をするために来たんだ。
「……家族と話し合って決めたんだけど、俺、しばらく母さんとニューヨークに行くことにした」
俺の言葉を聞いたリンは、驚いた様子で顔を上げ、こっちを見つめた。
「そんなのおかしいわ。レン君は...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十五話【夜は恋人たちのものだから】後編
目白皐月
-
帰宅すると、靴脱ぎに姉貴の靴があった。……あれ? 今日姉貴、仕事だよな? なんで家にいるんだ? 居間を覗いてみるが、誰もいない。
俺は買ってきたものをとりあえず冷蔵庫にしまうと、二階に上がっていった。姉貴の部屋のドアの前に立って、叩こうとした時、中から姉貴の声が聞こえて来た。
「ああ……まあ、そ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十九話【心を決めて望むことを】
目白皐月
-
向こうに行く準備が整うまでの間、俺とリンは、俺の家で過ごすことになった。すぐにでも発ちたかったけど、やらなければならないことがある。姉貴も交えてどうしたらいいかを話し合い、次の日から行動を開始した。
俺と一緒に向こうで生活するとなると、当然、今の学校は辞めなくてはならない。相談の結果、リンは向こ...アナザー:ロミオとシンデレラ 最終話【この瞬間よ永遠なれ】
目白皐月
-
思い余った私は、ガクトさんに電話をかけてしまった。といっても今は仕事中だから、「時間が空いたら少し話がしたい」とあらかじめメールをしてからにする。ガクトさんからはすぐ電話がかかってきた。
「どうした。ルカ、何かあったのか?」
「あ……その……今、時間いいの?」
「ちょうど一区切りついたところだ。心...ロミオとシンデレラ 外伝その四十八【嫉妬は愛の子供】その四
目白皐月
-
あ、レン君の話はまだ途中だったんだ。わたしったら、自分のことにかまけてばっかり。
「ええ……ごめんなさい、遮ってしまって」
わたしがそう答えた後、レン君はまたしばらく黙っていた。言いにくい話みたい。安心したのに、また心の中に不安が広がっていく。
「……家族と話し合って決めたんだけど、俺、しばらく...ロミオとシンデレラ 第六十九話【まだ諦めてはいけない】後編
目白皐月
-
ずっとリンと抱き合っていたかったけれど、そういうわけにも行かない。明るくなったら、誰かに見つかりやすくなってしまう。だから、俺は暗いうちにリンの家を出ることにした。
脱いだ服を身に着ける俺を、リンは泣きそうな表情で眺めていた。そんな顔しないでくれ。
「リン、俺はもう行くよ」
引き伸ばすと、余計...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十六話【分かれた道】
目白皐月
-
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
外伝その四十【夜更けの出来事】のレン視点のエピソードになります。
また、外伝その三十九【家族の定義】のネタバレを含みますので、そこまでの話を読んでから、読むことを推奨します。
【心安らかなる時を】
夜、俺は居間で雑誌を読んでいた。...ロミオとシンデレラ 外伝その四十三【心安らかなる時を】
目白皐月
-
言われた意味を理解するまで、またしばらくかかった。カードの文章は、ミミがロジャーに気持ちを告げるところのもの。ずっと愛していたって……。
それって……レン君がわたしを好きだってこと? ロジャーがミミを好きなように? いえ、台詞はミミだけど……いやだ、なんだか頭が上手く回らない。
心臓の鼓動が早...ロミオとシンデレラ 第五十四話【もつれた糸玉】後編
目白皐月
-
レン君が演劇部の人たちに話をしたところ、異論を挟む人はいなかったとのことで、『ロミオとジュリエット』に決定した。グミちゃんも「あたし、悲劇のヒロインって一度やってみたかったんです!」と、役に積極的だったので、わたしはほっとした。
ミクオ君もマーキューシオ役に決定した。これでミクちゃんが喜んでくれ...ロミオとシンデレラ 第六十一話【死ではなく愛】
目白皐月
-
六月の最後の日曜日、わたしはレン君とのデートの待ち合わせ場所にいた。今日の行き先は美術館なので、お母さんには「美術館の展示を見に行ってくる」と言ってある。
もう、六月も終わり。時間が過ぎるのが、なんだか早くなったように思う。……特に、レン君と一緒にいる時間は早く過ぎるように感じてしまう。
七月...ロミオとシンデレラ 第六十四話【育ちは誰よりも上】前編
目白皐月
-
初音さんたちが戻ってきたので、俺たちは一緒にオペラ『チェネレントラ』を見た。リンの言うとおり、確かに喜劇だ。音楽は終始明るいし、歌もそう。出ている歌手の人たちもコミカルに動くし、ギャグも入っている。早口言葉みたいな歌の応酬も楽しい。……ところで、お菓子の箱に賄賂を隠すのって世界共通なのか?
話の...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十話【決して手を離すことはない】
目白皐月
-
ホームシアタールームで、わたしたちは、ミクちゃんが選んだクリスマスが題材のラヴコメ映画を見た。ミクちゃん好みの、可愛くて楽しくて、そして少し心が温かくなるような、そんな映画だ。
映画が終わると、わたしたちは食堂に移動して、みんなで一緒にお昼を食べた。クリスマスだからなのか、食卓も綺麗に飾りつけて...ロミオとシンデレラ 第五十四話【もつれた糸玉】前編
目白皐月
-
俺は電車を乗り継いで、初音さんの家に向かった。前に来たから道は憶えている。インターホンを押すと、クオが出てきた。
「レン……どうしたんだその顔」
途中で確認したが、殴られたところは腫れていた。当分目立つだろうなあ、これ。
「初音さんは?」
「奥にいるぜ、入れよ」
クオに言われるまま、奥の部屋に...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十九話【アモール・プロイビード】後編
目白皐月
-
作り方の本を見ながら、私はパン作りを始めた。作るパンは、どれがいいのかよくわからなかったので、とりあえず一番最初のページに載っていた「テーブルロール」にする。まず、材料を全部量る。それからバターと牛乳を温めておき、ぬるま湯でイーストと砂糖を溶かす……変な匂い。大丈夫だろうか、これで。
溶き卵、溶...ロミオとシンデレラ 外伝その四十四【きつね色の時間】後編
目白皐月
-
十二月の二十八日、俺は自分の部屋で掃除をしていた。いわゆる、年末の大掃除、という奴である。普段から掃除はしているんだが、家具を動かしてみると、見たくないぐらい埃は溜まっていた。誰でもいいから、埃が溜まらない装置とかを発明してほしい。
「レン~、捨てる本くくって出しといて~」
下から母さんの叫ぶ声...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十二話【ハッピー・ニュー・イヤー】
目白皐月
-
どう言おうか考えながら、リンを見る。と、また表情が翳っていた。あ……まずい。なんか誤解させたみたいだ。
「ね、ねえ……ぬいぐるみに名前を付けて、お友達として扱うのって、子供っぽい?」
俺が口を開くより早く、リンの方がそう訊いてきた。え? どうやらリンは、自分がぬいぐるみに名前を付けて、相手が心で...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十九話【言わなくてはならないことがある】後編
目白皐月
-
クオと初音さんが昼食を薦めてくれたので、昼は初音さんのところでご馳走になった。二人とも、気が咎めているらしい。二人のせいじゃないんだが。って、今日はこんなことばかり考えているな。
昼を食べ終えると、俺は帰宅した。心の中にがらんどうの場所ができて、そこに風が吹き込んでいるような気分だ。……平たく言...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十一話【塔の中の姫君】
目白皐月
-
演劇部の連中に、学祭は抽象的な演出で『ロミオとジュリエット』をやることにに決めたというと、反対意見もなく、あっさり決まった。一点を除いて。
まあ平たく言うと、部長が部を私物化するのはどうかという点だ。これは確かに言われても仕方がない。話し合った結果、文化祭は二日に亘るので、主役はダブルキャストに...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十六話【それは自然で不思議なもの】
目白皐月
-
俺が帰宅してからしばらくして、クオから携帯に電話がかかってきた。
「……もしもし」
取った電話の向こうで、クオが黙り込む。……おい、お前の方からかけてきたんだろ。
しばらく待っていると、ようやくクオが口を開いた。
「レン……今日のことは悪かったよ」
巡音さんにバカをけしかけたことを言ってんの...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十六話【どうかここにいて】
目白皐月
-
初音さんは自宅まで乗せてってあげると言ってくれたが、そこまでしてもらうのはさすがに気が引けたし、考えたいこともあったので、俺は一人で帰宅することにした。
電車に揺られながら、俺はリンのことを考えていた。怪我のことはもちろん心配だが、今日見た限りでは元気そうだった。多分、数日で退院できるだろう。
...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十三話【君に出会ってからは旋風のようで】
目白皐月
-
姉貴との冷戦は、結局次の日にはなし崩しに無かったことになった。……いや、仕方がないよ。同じ屋根の下に住んでいるんだから、そうそういつまでも険悪ではいられない。色々と不都合も多いし。
とはいえ、あれ以来、二人の間で巡音さんの話題が出たことはない。要するに、お互いまた険悪になるのが嫌だから、意図的に...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十九話【自分の道を行けばいい】
目白皐月
-
頭の中が真っ白な状態で、わたしは鏡音君と一緒に歩いていた。どれだけ歩いたのか、それすらもよくわからない。とにかく、しばらく歩くと、鏡音君が立ち止まり、わたしの肩を抱く腕を放してくれた。
「……ごめん、変なことに巻き込んじゃって」
「ね、ねえ……何だったの、今の? あの子たち、中学の同級生って言って...ロミオとシンデレラ 第二十三話【恋とはどんなものかしら】前編
目白皐月
-
気づいてみると、その事実はなんとも単純で……でも、だからこそ、俺は対応に困ってしまった。
リンのことが気になっていたのも、自分の活動にリンを巻き込んだのも、自分らしくないと思いながらもリンの力になろうとしたのも、リンに抱きついたコウにどうしようもなく腹が立ったのも、何かある度に触れたり抱きしめた...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十六話【マイ・シンデレラ】
目白皐月
-
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの長姉、ルカの視点で、彼女の九歳の誕生日の話です。
この話に関しては、外伝【わたしはいい子】【ルカの日記】を読んでから、読むことを推奨します。
【ケーキと愛情】
「ルカ、もうじきおたんじょう日よね」
パパとさいこんして、新しい...ロミオとシンデレラ 外伝その十四【ケーキと愛情】
目白皐月
-
「しばらく入院する」という言葉どおり、リンは次の日もその次の日も学校に来なかった。リンと話すのが日常になっていたせいか、不在が淋しい。
部活の方は、順調に話がまとまり、配役も決まった。メインキャストはヒギンズ教授が蜜音、ピカリング大佐がグミヤ、イライザが雪歌である。
リンが入院してから一週間が過...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十五話【誰にも間違ってるなんて言わせない】
目白皐月
-
リンと妙なことになりかけた後、俺たちは日常に戻った。戯曲の改定の残りは、学校でやることにしたし。……周りに人の気配があれば、妙なことをする気にはならないだろう。そうでないと困る。
そして、四月が終わる前に戯曲の修正は終わり、俺たちは練習に入れるようになった。学祭が終われば、俺たち三年は引退だ。否...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十八話【この世は辛いところ】
目白皐月
-
レン君と一緒に家を出たわたしは、しばらくレン君の家に泊めてもらうことになった。その日の夜、レン君やお姉さんを交えて今後のことを相談した結果、わたしはレン君と一緒にニューヨークに行くことにした。レン君は最初からそのつもりだったし、わたしも異論はなかった。ただ、すぐにとは行かない。大学のことがあるし。...
ロミオとシンデレラ 最終話【笑顔と涙とわたしの人生】
目白皐月
-
「……リンちゃん、何があったの?」
レン君が部屋を出て行くと、お姉さんは少し落ち着いた口調で、わたしに訊いてきた。
「えっとあの……」
「軽くふざけあうぐらいで、椅子から落ちたりはしないでしょ? それにリンちゃん、さっきから肩を押さえているし」
ぶつけたところが痛むからだ。……もしかして、痣にな...ロミオとシンデレラ 第六十二話【カリンと梨】
目白皐月
-
日曜日を一日使って、俺は『ピグマリオン』をPCのテキストデータへと移した。かなり面倒だし時間がかかったが、ネットに公開されているフリーの訳とかが無いんだから仕方がない。これで、後はこのデータのどこに修正をかけるかを決めて、決定稿になったらプリントアウトしてからコピーしてみんなに配ればいい。
巡音...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十三話【見てもいいが触るのはいけない】前編
目白皐月
-
その次の日。わたしは鬱々とした気分で目を覚ました。時計を見る。結構早いな……いつもより早いぐらい。学校の支度……あ、今日は第二土曜だから、学校は無いんだっけ。
あれ……? 意識に何か引っかかってるな……?
首を軽く横に振りながら、わたしは身体を起こした。いやだ、わたしったら服のままで寝ちゃった...ロミオとシンデレラ 第三十三話【どうしても影がほしいの】前編
目白皐月
-
ルカ姉さんがわたしに助けを求める……そんなこと、あるんだろうか? ……あるはずがない。だってルカ姉さんにとってわたしは、いない方がいいんだから。
でも……鏡音君がかけてくれた言葉の中のわずかな希望に、わたしは縋ってしまった。縋らずにはいられなかった。それは一種の逃避に過ぎないのに、そんなことある...ロミオとシンデレラ 第四十三話【歌の翼に乗せて】後編
目白皐月
-
駅に着くと、僕は帯人兄さんの住んでいる家の最寄り駅までの切符を買った。改札を抜けて電車に乗る。電車に揺られながら、僕は今度は帯人兄さんのことを考えていた。ちょっとは落ち着いていてくれるといいんだけど……。
次兄の帯人兄さんは、僕の五歳上。優等生だったマイト兄さんと比べると、帯人兄さんは「問題児」...ロミオとシンデレラ 外伝その十五【カイトの悩み】後編
目白皐月
-
「巡音さん、大変よくできていますよ」
大学の先生はそう言って、わたしが渡した原稿を置いた。
「ありがとうございます」
「じゃあ、これ、次の分ね」
どさっとプリントが渡される。わたしはそれを、自分の鞄に仕舞った。
「できたら来新学期が始まるまでには仕上げてもらえる?」
わたしはかかる時間を計算し...ロミオとシンデレラ 第七十三話【わたしの望みは大きすぎるの?】
目白皐月
-
ずいぶんと時間が経過したように思えたけど、実際はそうでもなかったんだろう。とにかく警察がやってきて、ソウイチさんは連行された。もう大丈夫と言われたので、わたしとハク姉さんも部屋の外に出る。わたしの姿を見たお母さんは、蒼白になって駆け寄ってきた。
「リン!」
わたし、きっと、ひどい姿なんだろう。鏡...ロミオとシンデレラ 第七十五話【生と死の狭間で】後編
目白皐月
-
日曜日、わたしは久しぶりに自分でクッキーを焼いた。三年くらい前までは、自分でクッキーやケーキを焼くこともあったんだけど、いつの間にかやらなくなっていた。
色々考えて、わたしは絞り出しクッキーとチーズを入れたパイクッキーを焼くことにした。どっちも前に――大分前だけど――作ったことがあるし、コツさえ...ロミオとシンデレラ 第三十六話【もう飛ぶまいぞ、この蝶々】前編
目白皐月
-
わたしが大学に入学した年の六月、ルカ姉さんはガクトさんと結婚した。こっちの家に入る形になるので、ガクトさんの方が巡音の姓を名乗ることになる。
こういう家だから仕方がないけれど、大きな式場で、かなり派手な式になった。そしてお母さんに訊いてみたのだけれど、ルカ姉さんは結局、式に対して自分の希望は全く...ロミオとシンデレラ 第七十二話【滅びにいたる門は大きく】
目白皐月
-
レン君とつきあうようになって、わたしの生活は多少変わった。今までミクちゃんと二人で食べていたお昼を、ミクちゃんとレン君とミクオ君と一緒に食べるようになった。たまに、グミちゃんと躍音君が混ざる時もある。
レン君とは今までどおり、朝や昼休みに話をする。放課後も話したかったけど、わたしは家に帰って勉強...ロミオとシンデレラ 第五十八話【子供の情景】
目白皐月
-
その日の夕食前、わたしが階下に下りて行くと、神威さんが玄関ホールに立っていた。……珍しいな。今日は平日なのに。
「こんにちは」
わたしは立ち止まって、神威さんに丁寧に頭を下げた。
「確かルカの妹の……」
「下の妹のリンです」
答えながらふっと気づく。神威さんと喋ったのって、考えてみたらこれが初...ロミオとシンデレラ 第三十九話【それなら太陽を愛せばいい】
目白皐月
-
わたしはどうして、生きているんだろう。
たまに、そう思ってしまう時がある。そういう風に考えるのはよくないのだろうけど、自分が生きているのが不思議に思えることがあるのだ。
部屋に閉じこもって、ミミを膝に抱いて撫でながら、ぼんやりとする。ソウイチさんに殴られてからというもの、わたしはそんな風にして...ロミオとシンデレラ 第七十七話【水晶の心が砕ける時】
目白皐月
-
「ねえ……このペンダントトップ、もしかして、靴の形をしていなかった?」
巡音さんが遠慮がちに割り込んだ。靴? どうだったかな……。
「壊れる前のは見てないから、わからない」
俺の答えを聞いた巡音さんは、黙ってしまった。
「リン、思い当たるところがあるんなら言ってやれよ」
「う、うん……あのね、こ...ロミオとシンデレラ 外伝その三十五【君に捧げるガラスの靴】後編
目白皐月
-
この週のうちに、戯曲に関する作業は全部終わらせることができた。ほっとした半面、淋しいと感じてしまう自分がいる。レン君と一緒に作業をしたことが、とても楽しかったから。もっとこの時間が続いてほしいと、わたしは思ってしまった。……でも、そういうわけにはいかない。きちんと終わらせないと、向こうが次の段階に...
ロミオとシンデレラ 第四十五話【裸の王様】
目白皐月
-
ニューヨーク行きの話が出た翌日、俺が学校から帰ってくると、意外な人がいた。
「初めまして」
「え?」
相手の顔を見て、俺はびっくりして声をあげた。……写真で見ただけだけど、この人は知っている。リンのお姉さんだ。
「ハクさん、ですよね? 引きこもっているって、聞きましたけど」
「あ、うん。今も表向...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十四話【君に続く道】
目白皐月
-
時間が過ぎて、寝る時間になった。でも、少しも眠くなってくれない。ベッドに寝転がって、わたしはぼんやりとしていた。
その時、またドアを叩く音がした。……お父さんじゃないわよね。わたしは首だけ起こした。またドアを叩く音。わたしがそれでも返事をせずにいると、今度は声がした。
「……リン、もう寝ちゃった...ロミオとシンデレラ 第六十六話【わたしはずっと嘆いていなければならないの?】後編
目白皐月
-
リンは家のことがあるので、つきあうといってもあまり派手なことはできない。とはいえ、できる限りは一緒に過ごしたい。俺はリンと相談して、昼食を一緒に食べることにした。急に二人きりになるのにはクラスの目があるので、初音さんとクオも一緒だ。クオは当初むくれていたが、数回でなれた。それになんだかんだ言って、...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十三話【エンチャンテッド】
目白皐月
-
巡音さんは同じクラスなわけだから、何かというとその姿は俺の視界に入る。授業を受けているところや、初音さんと話しているところ。俺は何度となく、その姿を目で追ってしまっていた。……いったい何をやっているんだ、俺は。下手をしたら俺の方が危ない奴だぞ。
そうこうするうちに放課後になった。初音さんが手を振...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十四話【馴染んだ君の姿に】
目白皐月
-
次の日、わたしは『ピグマリオン』を鞄に入れて登校した。鏡音君が登校してきたので、本を渡す。本を受け取った鏡音君が喜んでくれたので、わたしは少し安堵した。少なくとも、一つはいいことができた。
その日の昼休み、いつものようにミクちゃんとお弁当を食べていたわたしは、ふと思い立ってミクちゃんに訊いてみた...ロミオとシンデレラ 第二十八話【わたしには姉さんがわからない】
目白皐月
-
その次の日の昼休み。俺は購買部でサンドイッチとおにぎりを買うと、校庭でそれを食べながら音楽を聞いていた。ちなみに今日も聞いているのは『RENT』のサントラだったりする。何度聞いても『RENT』の曲はいい。
食べ終わった後も、俺はずっと『RENT』を聞いていた。……あれ、誰か来たぞ。
顔を上げる...アナザー:ロミオとシンデレラ 第八話【芸術家の暮らし】
目白皐月
-
週末には、包帯が取れてわたしの足は元通りになった。そして週が開けると、中間テスト。特に難しいということもなく、簡単ということもなく、いつもどおり。
ハク姉さんとは、まだ話せずにいる。同じ家に住んでいるのに、二週間近く顔をあわせないというのは奇妙に思えるかもしれない。でも、ハク姉さんが自発的に部屋...ロミオとシンデレラ 第二十二話【わたしには何の取り得もない】
目白皐月
-
巡音さんは相変わらず真剣なまなざしで、こっちをじっと見ている。参ったな……。どう答えたもんか……。
そもそも、俺はなんでユイとつきあってたんだっけ?
「うーん……俺とユイは中三の時に委員会が一緒で、それで仲良くなって、秋頃にユイが『好きでした』って言ってきて、それでつきあおうかって話になったんだ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十話【青春の光と影】後編
目白皐月